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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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ダンジョン曰く吠えよエルフ*2

 そうして俺達は翌日の昼前にはパニス村に到着したんだけども……なんか、村がざわざわしていた。

「なんかあったん?」

 ということで、いつも村の入口付近に居て『パニス村へようこそ!』ってやっている村人じゃない奴に声を掛けてみた。村に何かが来たなら、彼に聞けばすぐ分かる。だってこいつ、ずっと村の入口付近に居るからな!

「パニス村へおかえり!知ってるか?昨夜、村に珍しい客人が来たんだよ!」

「いや、それを知らねえから聞いてんだってば」

 そして、なんかやっぱり嫌な予感を加速させるかんじの返答を貰った。こういう会話まで微妙にテンプレっぽいのは、こう、狙ってやってるの?それとも、ファンタジーな世界には自然とこういう言動になっちゃう奴が各町村ごとに1人は必ず居るモンなの……?

「客人、っていうと……?」

 まあ、どう考えてもいい報せじゃねえだろうなあ、と思いつつ、聞いてみたところ……。

「冒険者のパーティさ!けれど普通の冒険者じゃなかったぜ!なんと、エルフの冒険者だったんだ!」

 ……やっぱり!やっぱり、嫌な予感が的中しやがった!あああああああ!

「そのエルフ達が、『世界樹を見に来た』って言ってたんだよ!」

「ああああああああああ!」

「多分、宝玉樹のことだと思うんだけどな!まあ、そういう訳でさっきダンジョンに入っていったよ!」

「ああああああああああ!」

 嫌な予感というか!嫌な現実!嫌な現実がここに!あああああああ!あああああああああ!




 一頻り絶叫して転がり回ったら落ち着いたので、早速ダンジョン内の様子を確認。

「まさか、俺達が金鉱ダンジョンでやったのと同じことを意図せずしてやられるとはな……」

「ああ、ダンジョン内に意識が無い時にダンジョン攻略されちゃうとこうなっちゃう、ってことだよね……」

 うん。やっぱりね、ダンジョン内のどこに何がどうなってぱーりー状態なのかが常に把握できるわけじゃない、ってところは俺達ダンジョンの主の致命的な欠陥だと思うんだよね。ここ改善する方法ねえのかなあ!うおおん!

「えーと、居る。あー、うん、居る。とりあえず今入ったばっかりっぽい。割とスタスタ進んでいくから全然止まる気配無いけど」

 そしてダンジョンに視界を移して、そこでエルフのパーティを発見。居るわ。普通に居るわ。なんなんあいつら。

「アスマ様。数はどうだ?」

「俺が今確認したのは5人」

「そうか。あー、すまない、そこの君。エルフのパーティとやらは何人組だった?」

「エルフ5人組だったよ!」

 成程ね。ということは、俺が見ている奴らで全員ってことだな。漏れが無いと分かっただけでもありがてえ。

「5人……まあ、聖騎士が1ダース来た時よりはマシ……か?」

「うーん……どうだろう」

 が、ミシシアさんがやはり険しい顔をしている。

「えーと、アスマ様。今居る5人がどういう装備なのか分かる?」

「おうともよ。ちょい待ち。……えーと、弓が2人。あと3人は……杖?なんか綺麗な棒持ってる」

「あああー、うん、そうだよねえ……」

 ミシシアさんの要望に応えてエルフの装備を確認してみたが、俺としては初めて見る不思議な装備に慄くしかない。

 エルフ5人の内3人が持っている棒は、人を殴るにはちょっと不向きだろうな、という、繊細な細工の代物だった。

 金細工や銀細工で飾られた木の枝、ってかんじだな。素朴さと精密さが合わさった、不思議なデザインだ。まあ、実にファンタジックなアイテムに見える。……で、俺も俺の世界でそれなりにファンタジーを嗜んではいたんで、アレらが『魔法の杖』なんだろうな、という予測はできる。

「ということは、だよ、アスマ様。エルフ5人の内3人が、魔法だけで何でもできるエルフだと思った方がいいよ」

 ……うん。

 俺もね、この世界に来て、この世界のファンタジー力が結構理不尽な強さを誇ることは知ってるからね。それを知った上でそういうこと言われると……本当に『魔法だけで何でもできる』がマジで何でもできるってことなんだろうな、という推測が出来ちまうのよ。

「弓を持ってるエルフ2人についても、魔法が使えない訳じゃない。少なくとも、私よりはずっと使えるはずだよ。杖無しだって、それなりに色々できると思う」

 うん。成程、成程……。

「つまり……エルフ5人っていうのは、人間の聖騎士100人を相手にするのと同じくらい、厄介だと思うよ」

 ……俺、いよいよ嫌になってきちゃったよ!

 なんでそんな奴らがここに来てるんだよ!世界樹か!世界樹の噂か!本当に元大聖堂の連中、碌なことしねえなあ!ああああああ!んもおおおおお!




 だがまだなんとかなる。エルフ達はスタスタ進んでいるが、まあ、それだけだ。

「……じゃあ、ちょっとダンジョンの構造変えて、時間稼ぎだけしておくね」

「あ、うん。まずはそれだね。深部に進まれちゃったら、どんどん身動きが取れなくなっちゃうもんね」

 俺のダンジョンパワーは、敵対する奴が認識している範囲内では発動できない。だからこそ、相手を気絶させちまうとか、そもそも相手が遠くに居るとか、そういう状態で使う必要がある訳だな。

「じゃあ道を……あれっ」

 が。

「……なんか、上手くやれねえや」

 ……恐ろしいことに、ダンジョンパワーでダンジョン内の迷路の道順を変えようとしたら、それができなかったのである。




「……ねー、ミシシアさん。なんか、迷路の道順、変更できなかったんだけど……エルフって、めっちゃ、目が良くて壁の向こうまで透視できたりする……?」

「えっ!?いや、そんなことはないと思うよ!?」

 だよねえ。うんそうだと思うぜ、マジで。

「……あっ!?でも、あああああ!わ、分かった!分かったよアスマ様!多分、妨害の魔法を使いながら歩いてるんだと思う!」

 えっ!?そういうのあるの!?いや分かってたけど分かってなかったなあ!ファンタジーの理不尽って奴をよお!

「えっ!?じゃあ何!?その妨害の魔法っていうのがあるから俺のダンジョンパワーが使えないってこと!?」

「可能性としてはあると思うが……その、王立騎士団でも、ダンジョン攻略する際、妨害の魔法を用いてダンジョン内の罠の発動を阻害することはある。だが……精々、自分達の周辺を守るくらいのものだぞ?」

 リーザスさんも俺も困惑する中、ミシシアさんはやっぱり険しい表情である。

「できると思うよ。だって、エルフなんだから。彼らが本気を出したんだったら、妨害の魔法の効果範囲は……相当なものだと思うよ。少なくとも、迷路のほとんどに影響が出るんじゃないかな」

「……ワァオー」

 ……エルフ達は、そんなに深く考えずにその『妨害の魔法』とやらを使っているのかもしれない。少なくとも、『ダンジョンの主を邪魔してやろう!』っていう明確な意図があるとは思えない。流石に。流石にそこまで知られてたら俺はもうどうしようもないから、それはないものとして考える。

 まあ、つまり……ただ、『罠があったらめんどいから、全部妨害しながら進もう』っていう魂胆な訳だ。

「エルフとは、それほどまでに魔力を持っているのか……」

「うん。……私なんかじゃ、太刀打ちできないくらいの魔力を持ってるんだよ」

 リーザスさんのさっきの話じゃ、妨害の魔法をダンジョン全域に広げるってのはとんでもなくコスパが悪いはずなんだが、それを平然とやってのけつつ、それを維持してスタスタ歩いてるってのは……なんとも恐ろしい話だな。


「……これ、世界樹まで到達されちまいかねないよなあ」

 エルフ5人組は、相変わらずスタスタ歩いている。割とのんびりした様子で、警戒している様子はそんなに無い。割と舐め腐り遊ばしてらっしゃるらしい。まあ、それだけの力があるんだろうなあ……。

「ああ……確認だが、ミシシアさん。彼らがダンジョンの最下層に到達した時、何が起こると思う?」

「うー……分からない。ダンジョンに世界樹がある、ってこと自体、かなり珍しいと思うし……そもそも、世界樹を確認しにきた理由が、はっきり分からないんだよね」

 そうだな。まあ、村人もどきの彼のおかげで、エルフ達の目的が『世界樹』だってことは分かってる。

 ということは、それの調査であることは間違いないんだが……なんだってわざわざ、この国まで来てそんなことやってんのか、というところが問題なんだよなあ。

「多分、自分達が知らない世界樹があるならそれは把握しておかなきゃ、って事なんだと思う。基本的に、世界樹ってエルフが種を植えて、それが長い年月を経て成長して、大きな木になるものだから……エルフが世界樹を把握していないっていうことは、かなり珍しいの」

 成程ね。ということは、その調査、ってことかな。

 ……或いは、ミシシアさんの話を聞いている限り、エルフってのはかなりプライドが高い種族みたいだし、自分達が把握していない世界樹があるという状況が許せない、とか、そういうかんじか?だとしたら厄介そうだが……。




「……うーん、一度、対策したい」

 ということで、俺はそう結論を出す。

「相手の戦力も目的も分からない以上、こっちも下手に動けない。そもそも、妨害の魔法とやらを使われちまっている以上、こっちの取れる手がかなり限られちまう」

 エルフ、ってのがかなり警戒すべき相手だということは分かった。

 だが、本当に倒すべき相手なのか、それともまた別なのか……というところからして、俺達は知らない訳だ。

 ……そこがはっきりしないと使えない手ってのが、俺にはいくつかあるんでな。そこを知らない訳にはいかない。

「……一旦、時間稼ぎしたい」

 そういう訳で、俺はそう、決めた。

「彼らを一度、ダンジョンから追い出したい。たとえ、それでこっちの手の内が1つバレちまうとしても、だ」




 そう決めた以上、どこを切るのが最適かを俺は慎重に考えた。

 エルフ達が完璧に敵対する場合のことを考えて、明かす手の内は最低限にしたい。だが、それだけでエルフ達を足止めして、そしてダンジョンから一度引きずり出すには……。

 ……よし。

「ということで、ミシシアさん。出番だ。……あと、ジェネリック君も」

「ジェネリック君……?」

 世界樹の調査にきたエルフ達の興味を引けるものといったら、まあ、同郷であろうミシシアさんと……世界樹由来の魔力をたっぷり食べて光り輝くジェネリック君。この2つだろう。

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― 新着の感想 ―
ミシシアさんとジェネリッくん… 夜間にお散歩しているゲーミングポメラニアンとその飼い主のような姿が思い浮かびました。 暗がりに立ってたらめっちゃ怖そう。
なーに、大きめのスライムで道をミチミチに満ち満ちさせてたら時間稼ぎにもなりますよ。それが植物スライムだったら、手が出せない…だったらいいな!w
魔法があれば、何でもできる。 魔法ですかー!? 1・2・サンダー!!
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