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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第二章:ダンジョンは国を平和にした!
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祝福あれ*3

 ということでやってきました王都。始まりました実験。

「チキチキ!スライムに植えた種は何日で発芽するかなの実験!」

「わーっ!」

 ……俺とミシシアさんは非常に元気いっぱいである。こういう時はね、テンションを無駄に上げて、無駄に楽しむに限るぜ。

「アスマ様!こっちのスライムはトマトでいいのか!?」

「あ、うん!そっちの列の……あっ!?待って!待って!列が乱れている!そっちの列とこっちの列が混ざってあああああああ!」

 ……まあ、スライムは今日ももっちりもっちり、非常に気ままなもんで苦労してますけどね。これもこいつらのチャームポイントってことで……。




 王都の土地は、ラペレシアナ様が用意してくださった土地である。

 本来はここ、畑なんだと思うんだけど、しばらく使用していないらしい。まあ、そういうかんじの土してるよ。硬い。石混じり。雑草ワサワサ。

 だがまあ、こういう環境でもスライム農場なら問題ないからね。スライム農場があらゆる土地で実用化できれば、開墾の労力がかなり減る訳だ。これは期待が持てるぞ!

「アスマ様ー!草の背が高くてスライムを見失っちゃうよー!」

「あー、じゃあ草刈りするかあ……」

 ……まあ、草刈りと土起こしとじゃ、かなり労力が違うし。草刈りはしなきゃいけないとしても、それでもまだ、プラスだし……。




 ということで草刈りした。この世界には芝刈り機は無いが、大鎌がある。

 ……そう。大鎌である。でっけえ鎌である。死神が持ってるアレである。

 アレ、きちんと農機具なわけで、アレをぶん回すと雑草がスパスパ刈られていくって訳だ。大鎌を使ってリーザスさんがひたすら草刈りしてくれている。

 のだが……。

「大鎌、かっこいい……」

「そ、そうか……?」

「うん。かっこいい……」

 ……いや、ほら、大鎌ってかっこいいじゃん。憧れじゃん。じゃん。

 なのでしばらく、大鎌による草刈り風景を眺めさせてもらった。いやあ、命を刈り取る形してるからさあ。それが実在して、こういう風に実用されてるところ見るとね!ついね!浪漫が溢れちゃうね!


 浪漫はさておき、リーザスさんがひたすら草刈りしてくれている横で、俺とミシシアさんは柵を建てていく。

 いくらスライム放し飼いって言っても、流石にどこまでもどこまでもフリーダムに出ていかれちまうと困るので、柵を設けておこうってことである。

 ……スライムを閉じ込めるっていうよりは、スライムに対して『この先には行かないでね』と教えるための柵だな。だから、隙間なくミッチリ!なんてこともなく、適当に杭を打ち込んで、ロープを張っただけのものだ。まあ、スライムは賢いからこれでも十分だろ。

「スライムの水場……うわ、ダンジョンパワーが無いと水場作るのも大変だ」

「ああ、水場については、夕方前にはラペレシアナ様が水の魔法を使える魔導士を派遣してくださるそうだぞ。簡単な牧舎のために、土の魔法の魔導士も来るらしい」

「ファンタジー!」

 更に、より簡単に色々なことが進んでいく。いやあー、そうかあ、この世界、建築も造園も、下手すりゃ治水も何もかも、魔法でできちゃうんだもんなあ……。そりゃ、科学が発展する余地は無いわ。

 というか、科学の感覚では分からん飛び飛びの発展の仕方してる、っていうか……えーと、『水平を取る方法が分からなくても魔法で完璧な建築ができる』みたいな……俺達の感覚で『基礎』になってる部分が必要ないかんじっていうか……あーもうファンタジーッ!


 まあ、そんなこんなで、一応スライム農場試験場が完成した。

 完成したばかりの試験場にスライムを放つと、スライム達はもっちりもっちり、と刈られたばかりの雑草の上を進み、もっちりもっちり、と水場を確かめ、もっちりもっちり、と牧舎にも入ってのんびりし始めた。やっぱり水場と牧舎が気に入ったみたいだ。中には刈った雑草が積み上げられた山の上に居るのも居るが。

「じゃ、しっかり植えていくからなー」

 ……ということで、スライム試験開始である。俺は、スライムを1匹1匹捕まえては種を植えた。

 種は試験ということもあって3種類だ。トマトと、人参と、あと薬草。この3種。実と根と葉をそれぞれ使う植物を選んでみた。

 で、半数には持ってきた肥料を与え、もう半分には水だけ与える。水は王都の水。つまり、これから普通に各地でスライム農場を展開していく時の想定通りのやり方ってことになるか。

「さて、これがどうなるか、だね!ちょっと楽しみ!」

「そーね。俺としてもちょっと楽しみ!」

 後は待ちの一手である。俺とミシシアさんは『楽しみ!あと暇!』ということで手を取り合って踊っておくことにした。まあ、順調にいけば明日の朝にはトマトが実っているはずだからな!




 ……その日は王都の宿に泊まることになった。

 めっちゃいい部屋なので、俺とリーザスさんはちょっと緊張した。ミシシアさんは『わーい!綺麗なお部屋ー!』と大喜びであった。彼女みたいな生き方をしてみてえ。

 尚、この宿代はラペレシアナ様持ちである。『研究の為の経費であろう?ならばこちらが出すのが筋というものだ』とのことでした。恐縮です!

 まあ、ミシシアさんほどのはっちゃけっぷりは難しいにせよ、パニス村の宿泊施設の参考になることは間違いないので、俺も堪能させてもらうことにした。


 ……で、翌日。

「生えてない!?何故!?」

 なんと!まだトマトが実っていないのだった!




 確認してみると、スライムの頭に生えているトマト。成長してはいるんだが……実が実るところまでは行っていない。

 肥料をやった方は、苗くらいまで育った。が、水だけの方は、残念ながら芽が出たくらいで止まってしまっている。

 トマトのみならず、人参や薬草も似たような具合だった。これは困ったね。

「これは由々しき事態だ……。やっぱり肥料が必要だったのか……?」

「或いは、魔力かもしれないよ。ほら、パニス村の湧き水って魔力たっぷりじゃない?」

「あ、そうなの……?」

 俺、自分のダンジョンエリア内じゃないと分解吸収再構築ができないから、パニス村の外の水の分解吸収とかはやったことが無いんだよな。だから、『一般的な水の魔力含有量』とか知らない訳だ。

「パニス村の温泉の効果が高いのは魔力が多い源泉が理由だって言われてるよ!」

「あ、そうなんだ……」

 ……ま、自分のダンジョン内の温泉の評価くらいは、もっとちゃんと知っておくべきだったな。うん……。いや、でも確かにそうか。うちの温泉、スライムの出汁が出て『もっちりやわらかの魔力』が濃い訳だから……そりゃ魔力が多い温泉になるのは当然であった。


 スライム出汁はさておき、作物だ作物。

「うーん……要は、スライムの脳天の農作物を育てるのにも魔力が必要、ってことだよなあ」

「だろうな。となると、別で魔力を補う必要が出てくるか……?」

「ポーションぶちまけるとかは……あー、ポーション自体、魔力が多い水じゃないと作れないのか……」

 魔力不足だっていうなら魔力を補えばいいんだろうけど、魔力を作るための魔力が無い。……正確に言うと、今必要なのは特定の魔力分子じゃなくて、ジャンク魔力……バラバラの魔力元素の方だな。

 元素は元素なので、無いなら無い。新たに虚無から生み出せるもんでもなさそうなので……こればっかりは、中々どうしようもないな。

「魔力の濃縮って点については、ひたすら煮詰めるとかでなんとかならねえかなあー……いや、それをやる手間がどのみち掛かるから難しいか……?」

 うおおお、考えてみても解決策が見当たらねえ!

 少なくとも、パニス村の外だとスライム農業が上手く回らない可能性が高いってことが分かっただけでもかなりの収穫なんだが……うーん、『飼育する環境によってスライムが変質するかもしれない』とかそういう話どころじゃなくなってきちまったぞ。どうするかなあ……。




 それからもう1日頑張ってみたんだが、やっぱりスライム達はもっちりもっちり、暢気に過ごしているだけだったし、作物は収穫できる段階まで行かなかった。

 肥料を与えてもコレだもんなあ。与えないよりは与えた方が圧倒的に育ち方がいいんだが、それでもファンタジーパワーには負けるか……。

「ダンジョン産の宝石から魔力を抽出する、ってのも……難しいかなあー」

「全てのダンジョンがパニス村ダンジョンのように宝石を産出するわけじゃないからな」

 だよねえー……。うーん、難しい。難しすぎる。魔力不足が原因だってのはなんか分かるんだが、なら『必要魔力量を減らす』か、『与える魔力量を増やす』しか今すぐ考えられる対策が無い。

 で……多分、最終的には『必要魔力量を減らす』方がいいんだろうな、ってのは分かる。

 多分、ジャンク魔力が無秩序に必要なんじゃなくて、植物を育てるための特定の魔力分子がいくつかあって、それの合成のためにジャンク魔力が大量に必要、ってことだろうから……本当に必要なものだけちゃんと精査して与えるようにすれば、必要な魔力量はそんなに多くならないと思うんだよな。

 だがしかし、その特定の魔力をピンポイントで作るってことが現状できねえわけで、ならばジャンク魔力を大量に与えて、スライムにそれを合成してもらうことになる……のか?いや、そもそもなんでスライムを土壌にすると農作物の育ちが滅茶苦茶早いんだ?

 ……あー!わかんねえーッ!




 わかんないわかんない、と頭を抱えつつスライムに埋もれた。埋もれられたスライムはちょっと迷惑そうにしていたが許せ。俺はお前に埋もれたいんだよ。

「調子はどうだ?」

 が、そんなところにラペレシアナ様がいらっしゃったので慌ててスライムに埋もれるのを止める。埋もれられていたスライムは、もっちりもっちり、と俺から離れていった。うん。嫌だったね。ごめんね……。

「うまくいきません!」

「そうか。まあ仕方あるまい。何もかもが順調に行くわけもないからな」

 あああ、理解あるラペレシアナ様に余計に申し訳なくなるな……。

 ……俺、大学で研究室入って卒論やってて、なんか実験上手くいかなくて進捗駄目だったらこういう気分になるのかな……。


 ちょっと暗い気分になってきたところで、改めて。

「パニス村のスライム農法はやっぱり、ダンジョンがある村ならではの方法で上手くいっているみたいです」

 報告報告。報告と連絡と相談は大事だって言うからね。ラペレシアナ様は腕組みしつつ、『そうか、まあ仕方がないな』と頷いておられる。申し訳ない……。

「魔力がもっと多い土地柄なら何とかなりそうなんですが……それこそ、ダンジョンの傍とか」

「王都の金鉱ダンジョンの内部なら或いは、ということか」

「はい。それは1つ、アリかもしれません」

 だがまあ、『魔力が足りないなら、魔力が多そうな場所でやればなんとかなるんじゃないか?』っていう推測はできているので、もしかしたらどこかでは実用化できる……かもしれない。

 まあ、王都のダンジョンは割と安全そうだから、やろうと思えばいけるんじゃねえかな……。水場を作るのはダンジョン任せになりそうだけど……。


 だが、それはそれ、だ。

 王都のダンジョンを使ったって、この国全土の食糧を賄うことはできないだろう。

 他のダンジョンも利用する、となると……ダンジョンとの意思疎通が必要になる。ついでに、ダンジョンが裏切らない約束だってできないわけで……まあ、無謀かな、という気がする。

 となるとやはり……。

「……やっぱり、もっと根本から魔法で何とかするような解決方法を考えないとダメかなぁ、と思っておりまして」

 俺は、やっぱりこっちだと思うんだよな。

「『祝福』は、そんなに大量の魔力を消費していたんでしょうか。そうじゃないなら、確実に何か秘密があるはずですよね。先に、そっちの方を調査したいです」

 ……教会の連中がやっていたという、『祝福』。

 アレを調べるのが最優先じゃねえかな、と。そう思う訳だ。




「成程な。分かった。ならば『祝福』を使える者を連れてこよう」

 そしてラペレシアナ様、話が早い!すごく早い!

 いや、確かにそれをしてもらえるんだったら滅茶苦茶早いんだけどさ!それをやってもらえるとは思ってなかったんだよなあ!

「聖女様が適任であろう。今、王城で保護しているところだからな」

「聖女様が!?すごい!」

「やった!すごい!」

 しかも聖女様!聖女様がいらっしゃるとなったら……こりゃあ頑張って分析しねえとなあ!ということで、俺とミシシアさんは踊り出した。こういう時には踊るに限る。

 ……まあ、聖女様の『祝福』も、分析したところで分かるかどうかは分からないし、それを再現できるのかも分からないが。だが、これが上手くいくなら……そりゃ当然、そっちを広く普及させて、特別な技術じゃない状態にしちゃった方がいい。それは間違いない訳だ!

 胸が熱くなる!胸が熱くなるぜ!


 ……と、俺とミシシアさんが踊り、リーザスさんが何とも言えない顔でそれを見ていたところ……。

「ところで聖女様だが」

 ラペレシアナ様は、ちょっと意味深に笑って、言った。


「御年7歳にあらせられる。注意してくれ」

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― 新着の感想 ―
幼女様は聖女! アスマ様とお手手つないで並んでいたらさぞかし可愛いでしょうねぇ。
もっちりスライムと聖女ちゃんの邂逅…かわいい×かわいい!
スライム畑のが成長が早いということは、この世界の植物はファンタジーパワーによって成長するし、カワイコちゃん達(アスマ様含む)の魔力ならハッスルしやすいという…ロリ…
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