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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第二章:ダンジョンは国を平和にした!
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祝福あれ*1

 ということで俺達の前に現れた麗しのバイクライダー。ラペレシアナ様は、村の入り口でバイクから降りると、只々驚くしかない俺達に笑いかけた。

「久しいな。……ふふ、驚かせたか?」

「ええ。とても……」

 驚いたよ。当然、驚いたよ!だって考えられるか!?麗しの王女殿下が、この世界にまだ存在しないはずの大型バイクに乗ってくるなんて、考えられるか!?

「最近、パニス村で開発されたという『自転車』を目の当たりにしてな。城の者達に改良させたのだ」

「おおお……」

 言われてよくよく見てみれば、確かにこの大型バイク、パニス村で俺が開発しているエンジン付きチャリを原型としたものであることは間違いない。

 ただ、大型だし、金かかってそうな見た目してる。具体的には、白地に金銀の装飾が施されている。全くバイクらしくない。ファンタジーバイクである。だがラペレシアナ様にはピッタリだ。

「馬は飼葉や水を必要とする。いざ戦場へ連れ出せば、命を落とす危険もある。長距離を走らせるとなると体力に限りがある。……ならばこの『自転車』を改良して使うのも悪くないのではないか、ということになってな」

「成程……」

 考えてみれば当然なんだが、物資の運搬のための馬車と馬の開発だったが……これ、軍事面でも滅茶苦茶大きいことなんだよな。

 当然ながら、より少ない人員でより多くの物資をよりスピーディーに運ぶことができるなら、それに越したことは無い。補給ってのはどうしても必要なもんだし、それによって戦況が変わることだってあるだろう。

 ……この国は、つい数年前まで戦争やってた国だからな。軍事開発は手堅くやっていきたいところだろうし、そういう意味でも、王城の人達の目にエンジンチャリが留まって、それが研究されて改良される……ってのは非常によく分かる話である。

 ……というか、俺としても、こういう風にこの世界の人達がチャリや馬車を改良してくれるのを期待していた。俺が帰った後のことも考えるならば、やっぱり、この世界の技術として馬車やチャリづくりが定着していくべきだと思うし。それに何より……。

「ファンタジーパワーの扱いは、流石、王城の人の方が上手いですね……」

「ふぁんたじーぱわー……?」

「あ、魔力です」

 ……ファンタジー世界の人の方が、ファンタジー適性が強い。

 そう!つまり!

 俺よりもこの世界の人に任せた方が……技術開発が簡単に進みそうなんだよなあー!なんか納得いかねえー!




 でもいいんだ。バイクに乗った騎士集団っていう、ちょっとおもしろいものを見られたからいいんだ。大型バイクに跨って颯爽とやってきたラペレシアナ様がかっこよかったからとてもいい。

 ……あと、チャリの騎士団にならなかったから!チャリの騎士団じゃないからセーフ!セーフだよな!流石にチャリで来る騎士団はちょっと!

「このようなものを生み出してくれたこと、誠に感謝申し上げる。貴殿の働きによって、国中の輸送問題が解決しそうだ」

「勿体ないお言葉です!」

 ラペレシアナ様に微笑まれ、なんとも勿体ないお言葉をかけて頂けたので俺としてはもう、恐縮の至りである。そもそも大型バイクは俺の開発じゃないよ!そちらの功績だよ!

「パニス村も、また発展を遂げたようだな」

「ええ。アスマ様が次々に施策を打ち出してくださいますの」

 エデレさんまで俺を褒め称えようとしてくる!ソワソワする!落ち着かないのでこういう時には一番頼りになるミシシアさんの背後にそっと隠れさせてもらった!よろしくミシシアさん!

「それで、ラペレは今日は休暇?お仕事じゃないよね?」

 ほら見ろ!王族相手にタメ口のミシシアさんだぞ!……でも、『ラペレって呼んでいい?』に対してちゃんと許可得てるからなあ。これがミシシアさんの交渉術だ。勉強になるね。参考にはならないね。

「ははは。まあ、休暇半分、仕事半分といったところだな」

「そうなの!?」

「ああ。教会の連中の処分が済んだのでな。その報告がてら、ここへ来た」

 あー……ラペレシアナ様、そこら辺でも忙しいもんなあ。大変だ。本当に大変だ……。




「教会の方は、どうなりましたか」

 さて。こうなるとリーザスさんも気になってきたらしい。まあ、色々思うところはあるよなあ。俺もある。

「うむ。まあ予定通りだ。あの時、パニス村に居た愚か者共については国外追放。適当に国外で野垂れ死んでもらうことになった。その護送も一昨日終わったところだ」

 おおー……そういえば、パニス村にもそういうお触れが来てたな。『こいつらに力を貸したら罰するよ』みたいな奴。うーん、大規模なムラハチみたいなもんだな。

「続いて、他にも教会の悪事がいくつか見つかったのでな。それらについても、同様に処分した。国外追放に名を連ねた者も居る。降格処分で済ませた者も居る。……長年にわたって収賄と横領を繰り返していた者は死刑だ」

 うわっ、そこまでいっちゃったか。まあ妥当だね。死刑にしないことにはもう収まりつかないところまで来ちゃってるんだろうし……。

「そいつは公開処刑にすることになったが……招待はせんぞ」

「しなくていいですよ、殿下。アスマ様にはまだ早いです」

「早いかなぁー……そんなことは無いと思うけどなあ……」

 いや、別に人が処刑されるところを見たい訳じゃないけどさ。『まだ早い』って何よ。俺19よ?一応、R18はクリアできんのよ?リーザスさんもイマイチ俺の実年齢のことが実感無いらしいんだよな……。

「早いよ!アスマ様はそういうの見ちゃダメだよ!もう!」

 ……原因はまあ、ミシシアさんだな。うん。御年100歳を超える彼女にとっちゃ、19歳も7歳も大して変わらねえだろうし……その結果が、この子供扱いよ!そして当然、ミシシアさんの扱いを見てる人達はミシシアさんに引っ張られるって訳だ!


「ま、血生臭い催しなど、この村には似つかわしくないのでな。私も今宵は温泉にゆったり浸かって、つまらんことは忘れることとする」

「あっ!ラペレシアナ様!そういうことでしたらより強力になったパニス村温泉をお楽しみください!美肌効果が格段に上がりましたので!」

 まあ公開処刑よりこっちだな。こっち。

 ……えーとね、温泉をちょっと、広くしたんだよね。で、その分、スライムの同時入浴を12匹まで許可することにした。

 その結果、温泉には概ね常に1ダースのスライムがもっちりもっちりと浸かっていることになり……スライムが持つ美肌効果の魔力が湯に溶け込むことになり、まあ、温泉全体がある種のポーションと化している。

 一度に入れるスライムの量が増え、入浴時間も長くなったことによって、美肌効果もマシマシなのだ。とくと味わっていただきたい!

「それは楽しみだな。ふふふ……」

「お食事も是非楽しんでくださいな。最近、ミューミャの飼育も始めましたのよ。乳製品もお楽しみいただけますわ」

 それに加えて、食事もよりおいしくなってるからな。ミュー乳から作ったチーズやバターやクリーム、そして何よりミュー乳自体をとくと味わって頂きたい!


 さて。

「やはり、この村の発展は著しいな。国全体がこうであればよいのだが……」

 ラペレシアナ様は村の様子を見ながらそう言って、ふう、と小さくため息を吐くと……俺の方へ向き直った。え?俺?俺ですか?

「……ここへ来たのは、報告のためだけではない。いよいよ、『祝福』の謎を解き明かさねばならん。そこで、アスマ様のお力を借りたいと思ってな」

「俺の?」

「ああ。最早、国としては教会の『祝福』に頼りきった政策は出せん。民が苦しめられているのをただ見ているつもりはない。そこで、『祝福』が無くとも作物を効率よく育てる方法を探りたいのだ」

 ……成程。ラペレシアナ様はいよいよ、本格的に動くことになった、と。そういうわけか。

「教会の協力は得られなかった、と?」

「まあ、そういうことになる。奴らめ、自分達が『祝福』を握っている間は、こちらが大きく出られないと高を括っているようでな。……今回の国外追放も、すぐ解かれるものと思っているらしい」

「ワァオー……」

 それは……随分と楽天的だな。同時に、自分達の『祝福』が他の手段で代替できないと信じているからこその出方なんだろう。いずれは『祝福』を交渉材料にして、元の地位に舞い戻るつもり、ということかな……。

 ……どう考えてもそれを許してくれる王家じゃないだろ!ラペレシアナ様が現時点で既にコレだぞ!?流石に見通しが甘いんじゃないかなあ!


「そういうわけで、どうにか『祝福』の代替案を出さねばならない。が、幸いにして既に、『祝福』を得ずして繁栄している村がここにあるのでな……どのようにしてこの繁栄を手に入れたのか、教授して頂こうと思い、参じた次第だ」

「えっ、いや、俺、そんな大したことはしてないので、ええと……」

 ラペレシアナ様は俺に対して非常に真摯に向き合おうとしてくださるもんだから、非常に畏れ多い。姫君がこんなところでこんなガキにそんな丁寧な態度取らなくていいと思いますよ……。マジで恐れ多すぎて爆発しそう。

「えーとね、この村の畑は、もうほとんどがスライム畑なんだ。スライムに植えておくと、いろんな作物が元気に育つんだよ!」

 が、爆発しそうな俺がアホみてえに思えるくらい、ミシシアさんは畏れと無縁である。すげえよこの人の胆力。俺も見習いたい。いや、見習いたくない。やっぱり見習いたくない。ミシシアさんの胆力は、俺みてえな小市民にはちょっと無理だ……。

「ふむ……スライム、か。いや、しかし何故、スライムに作物を植えたのだ……?」

「いや、アイツらが植木鉢に入っていたので、つい……」

 ……スライム農法について、思い返せば中々の偶然だった。スライムが偶々やってきて、スライムが偶々植木鉢に入って、そして俺がなんかどうでもよくなってスライムの脳天にドズムッとシャベルを突き立て、種を植えてしまった、という……偶然というか、なんか、うん、今思うと悪いことしたかもしれねえ……。

「えーと、それから、植えた種ですが、ちょっと特殊な種を植えています。ダンジョンの恩恵を受けた種、というか……」

 それからこっちも大事だな。

 やっぱり、生育の環境も大事だが、それと同様に生育の前に既に決定している諸々……つまり、遺伝の部分を大きく弄ってあるのが、かなりデカいはずだ。品種改良された種とそうじゃない種とで、それこそ天と地ほどの差があることだろう。

「ダンジョンの恩恵を受けた種、か……。それはどのようにして作る?」

「あー……これについては、ダンジョンの力抜きで再現するとなると数十年規模です。今ある種を使って頂くのが一番かと」

「或いは株分けしてもいいよね!スライムに植わってる植物、すごく元気だもん!」

 遺伝子組み換え作物についても、ダンジョンパワー無しで維持するのがちょっと難しそうなところだが……一応、種を増やしていく手段はあるからな。まあ、F1雑種になってる種は、増やす方法が無いけど……。

「あと、肥料を与えています」

「肥料、か。どのようなものを?」

「えーと……こっちも、ダンジョンの力で生み出しちゃってるんですよね……」

 ……更に、肥料についても、俺は化学肥料をバンバン再構築して出しちまってるが、今後もポンポンこの手のブツを作りだすことは難しいはずだ。

 うん……。

 やっぱり、これもダンジョンパワー抜きで作れるように整備するべきだな。この国の、平穏の為にも!



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― 新着の感想 ―
チャリで来たラペレシアナ様、スライムたちの歓待はどんな感じだったんでしょうね。 バイクごともっちり包み込まれるような感じ? (知らない人が見たらただの捕食)
がんばれファンタジー開発団!
祝福が受けられなくて来年不作になったとして、もうその頃お前らは野垂れ死にしてるじゃんってね。 財産持ち出してたら別だけど、逆に財産持ち出しを許されたんなら一生不自由なく暮らせるだろうし
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