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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第一章:ダンジョンは村に進化した!
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もてなせ!ダンジョンの村*8

 クソデカいスライムが、発光している。それも、ちょっとやそっとじゃない眩さで。

「アスマ様、これは一体……!」

「わ、わかんない!」

 リーザスさんは慄いてるし、俺も理由が分かる訳じゃないし、そんな中、ラペレシアナ様達も、暗殺者達も、目覚めて一番にこの発光スライムを見つけて、ただ茫然としている。

 そうしている間にも、スライムの発光は続く。閃光に照らされた俺達の影が洞窟の中にハッキリと落ちて、何か圧倒的なパワーを感じさせる様子でスライムは光り続ける。

 一体、何が起こるんだ!?このスライムの、この状態は、一体何だ!?

 もしかして……進化とか、するのか!?




 ……ということで、皆でスライムの発光を見守りながら5分が経過しました。

「何も起きねえ」

 この5分間、ジェネリック君はただ光って、そしてただ光っていた。うん。つまり、光る以外のことは何もしていなかった。

「もしや……これは、ただ光っているだけ、なのか……?」

 ……うん。どうやら、そうらしい。

 このジェネリック君、特に何ってこともなく……ただ、光るだけ光ってる!何も無い!びっくりするほど、何も無い!

 マジかよ!なんか期待させといてこれかよ!そんなのってないよ!もおおおおおおおおおお!


「いや……何も起きていない、という訳では、無さそうだぞ……」

 だが、この頃にはラペレシアナ様達も、自分達の状態を把握していた。

「……体が、動く!」

「お、おいおいおい!お前、傷が治ってるじゃないか!」

「見ろ!俺の腕……戻ってるぞ!」

 そう。ここに来て、世界樹ポーションの効果に皆が気づいて……その結果。

「……あの光り輝くスライムが、俺達を治してくれたのか……!?」

 なんか、一周回って正解に辿り着いていたのであった。まあ、あのスライムが治したと言えば、そう。でも、光は関係無いんだよ。あの発光はマジで何の効果も無いんだよ。びっくりだろ?


「さて……折角、こんなに体が動くんだ。久しぶりに楽しませてもらうとするかな……」

「ああ。丁度、鈍った体を解すのにいい相手が居ることだしな……」

 そうして王立第三騎士団の騎士達は、それぞれの武器を構えて……暗殺者達に向かっていった!

「姫様をお守りしろおおおお!」

「神に与えられたこの機会!無駄にしてはならん!」

 士気は十分!調子も抜群!ケリを付けるまであと1分!……そんな調子で戦う騎士達によって、暗殺者は圧倒されていく。

「……ファンタジーだ。ファンタジーだよぉ……」

 そして俺は、そんな様子を慄きながら見ていた。いや、だって、ファンタジー。めっちゃファンタジーなんだけど。ねえ。

 騎士達、なんかあまりにも強すぎるんだけど。というか、ファンタジーすぎるんだけど。何あの飛ぶ斬撃。何あの謎の炎。何あの人間とは思えない移動速度ぉ!

「怖いよぉ……ジェネリック君も光り続けてるし、怖いよぉ……」

 もう、戦闘においては一切役に立たない俺は、せめて誰の足も引っ張ることのないように、光り輝くジェネリック君に埋もれていることにした。んだけど、発光するスライムって埋もれるには向いてねえな!眩しいの!眩しいのよ!こいつね!

 誰か!サングラスか何かください!




 ……そうして暗殺者集団は見事、第三騎士団によって討ち取られてしまった。いや、まあ、あのファンタジー騎士団の手にかかりゃ、イッパツよ。当然よ。あのファンタジーを前にして、暗殺者達、むしろ頑張ったと思うよ……。

「ふむ……全員、負傷した者ははないか!」

「ええ!むしろ怪我は全快しちまいましたよ!」

「我々の体が、すっかり元に戻っています!ああ……夢のようだ!」

 暗殺者達はすっかりしっかり捕縛されて、元気に『殺せ!』ってやってる。本当にこの人達、捕まったら『くっ殺せ!』って言うんだね。なんかテレビで見たことしかなかった生物の実物を見た時みたいな感覚だ……。


「……こうなっては探索どころではないな。この曲者共を、城に提出してやらねばなるまい。引き返すか」

 ということで、ダンジョンの視察はここまでとなった。視察どころじゃないもんな。それはそう。

「ラペレシアナ様!このスライムはどうしましょう!」

 が、正直なところ、騎士団の興味は暗殺者よりもこっちらしい。まあそうだよな。光るスライムだもんな。今も光ってるもん。なにこれ。

「……ところで少年。そのスライムは飼いスライムか?」

「いや、飼いスライムじゃないスライムです。光るスライムは知らない……」

 俺は『この謎スライムとは無関係です』とアピールしておいた。そして光り輝くジェネリック君も、いつも通り、もっちりもっちり、特に何も考えていない様子で這い回りつつ発光しているだけなので、ラペレシアナ様もこれ以上は言及できないって訳だ。

「多分、ダンジョンの子なので。このままそっとしておいてやった方がいいと思いますよ」

「ふむ……それもそうだな。近々、また視察に訪れた際に詳しく調査するか……」

 そうして無事、謎発光ジェネリック君への言及は避けてもらって、俺達は地上へと帰ることになったのだった。

 ……騎士達、すごいね。『怪我が治って体が動く!超元気!』ということらしく、暗殺者を2人ずつ俵担ぎにして運んでるよ。マジファンタジー。




 さて。

 こうして俺達は地上に出た。そして、暗殺者集団については一旦、村の牢屋を貸し出すことになった。ホントこの牢屋、大活躍だな……。

 で、騎士達はもう、体が治った喜びと暗殺者達を退けた喜びとでハイテンションだし、ラペレシアナ様も楽しそうにしてらっしゃるし、昼間ではあったが、『怪我が治ったよおめでとうパーティー』が開催される運びとなった。

 まあ、こんな村ですんでね。娯楽がそう多いわけじゃないが、食べ物は美味いよ。何せ肥沃な農地スライムに育てられた野菜は新鮮で美味いし、野菜は新鮮で美味いし、野菜は新鮮で美味いからな!

 ……肉類もちょっと欲しくなってきたね。うーん、すぐに畜産に乗り出すのは難しそうだし、当面は町から買ってくるようだなあ。じゃあ、魚の養殖でも視野に入れるかぁ……。


 まあ、そうして飲んで食べて楽しくやっていたら、王立第三騎士団の怪我が治った話は、すぐさまパニス村に広まった訳だ。

 ……何せ、ラペレシアナ様のご尊顔があるからな。うん。

 うん。そうなんだよ。やっぱりね、ラペレシアナ様の火傷痕も、治っちゃったんだよなあ……。全員等しく治したら、やっぱりここも治っちまったって訳である。

 火傷痕があっても、とんでもねえ美人だったもんね。それが治っちゃったら、なんか、直視するのが躊躇われるレベルでの美人さんなんだよね。おおおお、畏れ多い……畏れ多いよぉ……。

 で、だ。

 ラペレシアナ様のご尊顔はさておき、騎士達の怪我が治っていることにも冒険者達が気づいて……となると当然、『あのダンジョンに、何かがあったのか!?』ってなるじゃん。

 で、そうしたら騎士達から出てくる話は全部……『なんかめっちゃ光るクソデカいスライムが居た』ってことになるじゃん。

 そしたら俺に話が来るじゃん。俺、『いや!俺が使役してるクソデカスライムとはまた別の奴だったよ!』ってちゃんと弁明するじゃん。ついでに証拠として、今日もダンジョン失くしもの捜索サービスに駆り出されていたクソデカスライム連れてくるじゃん。

 ……ここでまあ、俺とダンジョンおよびジェネリック君の関係は否定できたんだけど、その後、冒険者達の間で考察が進んじゃったんだよな。


 最初に、『そういえば宝玉樹の部屋に、光を放つ不思議な水晶が生まれていたぞ』なんて話が出てきた。まあ、それはそう。あまりにも光が無いから、俺が追加した。で、電球盗まれそうになってたから、水晶の中に埋めた。というか、最近は水晶を外装にした電球にしてる。その方が楽だった。

 ……その電球のことを、なんか、一部の冒険者が妙に考察しちゃったんだよな。即ち……『ダンジョンの魔力が癒しの力となって、あの宝玉樹に集まって、周辺に光を灯す不思議な石を生み出していたのでは?』と。

 で、そこに丁度、踏破成功して、宝玉樹の実を採っていったことがある冒険者達が居てさ。『そういえば、宝玉樹の実に入っているポーションは、飲めば疲れが吹き飛ぶ不思議な飲み物だった!』と証言しちゃった訳だ。

 ……そうしたら、なんか……最終的には、『つまり!宝玉樹の癒しの力が集まって光になっており、その化身として莫大な癒しの力を持ったスライムが生まれたのでは!?』とか、『いや、逆に、その癒しのスライムこそが宝玉樹に癒しの力を与えているのでは!?』っていうところまで、与太話が加速していた。

 いや、まあ、いいんだけどさ。俺もこういう与太話、大好きな性質の人間だからさ、別にいいんだけど。

 いいんだけど……その、ジェネリック君、随分と、出世したね……?

 なんかただ滅茶苦茶光るだけのスライムになったかと思ったら、なんか、皆の話題を掻っ攫いまくってるじゃない?うん……。

 ……いや、マジで癒しの力を持つスーパースライムになってねえだろうな。なんか心配になってきたな。後でもうちょい、あの光り輝くジェネリック君については調べておくことにしよう……。




 さて。

 そうして与太話が楽しく加速する一方、やっぱり騎士達は、『腕があるっていいな!』とか、『目がちゃんと見えるっていいな!』とか、やってる訳だ。

 全員、生き生きとしている。やっぱり、怪我ってのは人間の幸福度を大きく下げるんだな、ってのがよく分かるというか。健康な状態ってのは人間の幸福に繋がるんだな、っていうか。

 まあ、よかった。特に……かつての同僚達が喜んでいるのを見たリーザスさんが、嬉しそうにしてるのを見ると、ね。

「少年。少し、よいだろうか」

 ……と、そこに、凛々しくも涼やかに美しい声が降ってくる。

 俺が慌てて畏まると、そんな俺を見たラペレシアナ様は、『そんなに畏まらずともよいぞ』と深いターコイズブルーの目を細めた。……美女の微笑みってのはインパクトでけえなあ。ほげえ……。

「いくつか、聞きたいことがあるのだが……」

「あ、どうぞ。何なりと」

 まあ、見とれてばっかりいる訳にもいかないからな。しゃんとして、ラペレシアナ様の質問を待つ。……すると。

「少年……いや、『アスマ様』か」

 ラペレシアナ様は、ちょっと畏まった様子で、改めてそう前置いて……。

「貴殿、さては……『ダンジョンの守り神』なのではないか?」

「へっ!?」

 そんなことを言い出したのだった!

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― 新着の感想 ―
そりゃね、合図出してたしバレるよ。姫様優秀な指揮官でもあったみたいだし、戦場での違和感を見逃さないでしょ
ナ、ナンダッテー!?
ラペレシアナ様勘がいいな
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