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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第一章:ダンジョンは村に進化した!
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もてなせ!ダンジョンの村*6

「アスマ様ー!アスマ様ー!相手に動きがあったよー!」

 さて。諸々準備していた俺達のところに、ミシシアさんが帰ってきた。おかえり!

「暗殺者2人組はとりあえず退いたみたい。話している内容ははっきりとは聞き取れなかったけど、『明日』『やはり予定通りダンジョンで』『20人で』みたいなことは確実に言ってた!」

「でかした!ありがとうミシシアさん!耳良いんだな!」

「えへへ、耳がちょっと大きい分、音は拾いやすいんだよね」

 ミシシアさん、偵察として滅茶苦茶優秀だな……。俺の視覚聴覚を移しちゃう奴だと、臨機応変な細かい対応をしにくいもんだから、ミシシアさんについてて貰えてよかったぜ。


「……で、えーと、アスマ様ぁ、これ、何……?」

 で、ミシシアさんからの報告はさておき、こっちね。うん。

 ……水晶に埋もれた電球によって、仄明るい部屋。

 部屋の壁や天井を埋め尽くさんばかりの水晶。

 神秘的で厳かな雰囲気の部屋の中……その中央には!

「ジェネリック世界樹ポーションクソデカスライム!」

「ジェネリック世界樹ポーションクソデカスライム!?」

 俺が作ったのは、コレである。ジェネリック世界樹ポーションの、クソデカいスライムである。……いや、ほら、俺の飼いスライムじゃないスライムってのが、このダンジョンにいないとなんかおかしいよな、って思ったんで……。

「ジェネリックって何!?」

「あ、そこ……?えーとね、再構築で世界樹に入ってるのと同じ魔力を生み出しているだけで、世界樹から作っている薬ではないので……でも、魔力自体は同じ構造のものを作ってあるから、世界樹由来のポーションと同等の効果が期待できるので……」

 ミシシアさんと、なんとも言えない顔のリーザスさんに『そもそもジェネリックとは……』という話をした。多分、この話はしなくてもよかったね。うん。




 ……で、ジェネリックはさておき。

「えーと、王立第三騎士団の人達には、このポーションで怪我を全治させてもらう。で、ラペレシアナ様の暗殺に備えてもらわなきゃいけない訳よ」

 俺の計画では、とにかくさっさと第三騎士団の面々を治療しちゃいたいんだよな。

「できるんだったら、ダンジョンが手出しするのは『怪我の治療』だけに留めたい。暗殺者達は第三騎士団が自力で撃退してくれると助かるっていうか……ダンジョンが恣意的にどっちかの味方に付いて何かやってる、ってのは、怪しいし」

「……暗殺者集団が全員生きてダンジョンを出られなかったら、情報は漏れないんじゃないか?」

「リーザスさん、結構怖いこと言うね……。でもほら、ラペレシアナ様達が暗殺者集団に情報を吐かせることを考えたら、やっぱり生かして帰した方がいいし……となると、第二王子陣営というか、ヤベえ連中に『あのダンジョン、敵ですよ!』って伝わったら嫌だし」

「ああそうか……生かして王城まで連れて帰った方が、ラペレシアナ様にとっては有利に働くんだな……うーむ」

 俺としては、やっぱり世界樹の存在は隠しておきたい。ミシシアさんにとって大事なものだし、あんまり世界樹のことが知れ渡ると、良からぬ人ばっかり来そうな気がするし。

 が、王立第三騎士団の面々は、治したい。

 ……でも、一度彼らが『ダンジョンに入って、怪我が完治しました!』ってなったら、当然、このダンジョンにはそういうものがあることになってしまう。

 というか、一度そういうものを作って運用したんだったら、それを期待してここへ来る人は善人悪人問わず絶対に現れるはずだから、今後もそれが必要になる時が来ると思うんだよな。こう、情状酌量の余地しか無いタイプの案件が絶対に来る。俺には分かる。分かるぞ……。

 だがやっぱり、極力トラブルになることは避けたい。となると、『怪我を治したいから来る』人はまあウェルカムとして、『世界樹ポーションを売って金にしたい』とか、『世界樹ポーションを悪用したい』はできるだけ排除したいわけだ。

 ……で、考えたんだけど。

 この条件を満たすためには、『ポーションを持ち帰れない状態にする』っていうのが、一番手っ取り早いんだよな。

 転売お持ち帰り禁止。このダンジョン内で使って、ダンジョン内で治って出ていってください、という。

 ……ただ、それに気づかれたら絶対にそれはそれでまた策を弄されそうな気がするので……ならば、と俺はまた考えた。

 いっそ、使用者すら気づかない内にポーション使っちゃえばよくね?と。


 なので……今回、俺は暗殺者集団にも、王立第三騎士団にさえもよく分からない内に、王立第三騎士団の面々を治すつもりである!

 それに用いるのが!今回の!ジェネリック世界樹ポーションクソデカスライムだ!




「え、あの、アスマ様?この子、どういうことになるの……?」

「気絶した第三騎士団の人達を全員飲み込んではポーション飲ませて、ぺいっ、て吐き出す」

 まず、このジェネリック世界樹ポーションクソデカスライムは、洞窟第二層、宝玉樹の部屋に新たに設けた小さな滝と滝つぼから生まれてしまっていたクソデカスライムに『じゃあ悪いけどこれ抱えておいてね』とジェネリック世界樹ポーションを持たせたものである。

 ……大福みたいな状態だ。こう、スライムが餅で、世界樹ポーションが餡子。そういうクソデカ大福だと思ってもらえれば、概ね合ってる。

 スライム本人としては、まあなんか美味しいもの抱えて、それをお駄賃代わりにちびちび頂きつつ仕事すりゃいいから、割とご機嫌である。よかったね!


 ……スライムを世界樹ポーションの運用に活用する狙いは2つある。

 1つは、ポーションを『浴びせる』んじゃなくて『飲ませる』となると、自発的に飲んでもらうか、はたまたこっちが頑張って色々やるしかないわけだ。

 その点、スライムって、そういうの得意なんだよな。自走式ドリンクサーバー兼哺乳瓶になれるポテンシャルがある!唯一の欠点は、預けておいたジェネリック世界樹ポーションをちびちびとネコババされることくらいだ!

 で、もう1つのメリットは……スライムって、個体の区別がほぼつかねえんだよな。

 つまり、今後も俺の飼いスライムなのか、ダンジョンの野良イムなのかが曖昧な状況で運用できるっていうメリットがかなりデカい。

 ついでに、スライム自身が何か喋るでもないし。情報を漏らす心配が無いし、それは敵も味方も全員分かってるから、スライムを捕まえて尋問を!とかに絶対ならない。『スライムがやったことだからね、しょうがないね……』で終わる!

 まあつまり、都合のいい災害みたいなもんだよな。いやー、居てくれてありがとうスライム。これからもよろしく頼むぜスライム。




 ということで。

「じゃあ、俺とリーザスさんが王立第三騎士団の皆さんを誘導して、さっさとジェネリック世界樹ポーションクソデカスライムの手前の部屋まで連れていく。そこで全員まとめて気絶して貰って、ジェネリック世界樹ポーションクソデカスライムに治してもらう」

「アスマ様。やっぱりこのスライムの名前、長いと思う。もうちょっと短くならない?」

「じゃあジェネリックとするか」

 ……確かにね。『ジェネリック世界樹ポーションクソデカスライム』は長いもんな。その呼称、ジェネリックになりませんか?なります。します。ということで今日からお前はジェネリック!

「で、ジェネリックまでの道は、前回も猛威を振るった二酸化炭素トラップ。で、全員が気絶したら床を落とし穴にして、ジェネリックが居る部屋に繋げるつもりだ」

「つまり、ジェネリック君のお部屋の真上が気絶用の部屋になるという訳か」

「そういうこと。なので……唯一、怖い点があるとすると、第三騎士団の気絶後に暗殺者達に襲い掛かられると二重の意味でヤバい」

「二重に?」

 うん。そうなんだよな。そうなんだよ。王立第三騎士団の人達を運搬するためにも、ジェネリック世界樹ポーションの存在を隠すためにも、なんとしても気絶はしてもらわないといけないんだけどさ……。

「1つには、単純に命の危機。気絶してる人を殺すのって、絶対に簡単だし」

 気絶してると、完璧に無防備だからね。まあしょうがないよな……。

「で、もう1つが……暗殺者が近くに居ると、ダンジョンの分解吸収再構築パワーが使えない!」

「あああー……そっか、そうだよねえ……」

 まあ、気絶状態を守るだけだったら、できるんだ!近くに起きてる敵さえ居なければな!

 ……近くに起きてる敵対者が居ると、分解吸収再構築、できねえからさあ!それが問題なの!何よりもそれが問題なの!


「ということで……まあ、暗殺者集団を撒くか、暗殺者集団にもさっさとオネンネしてもらうか、どっちかってことになるんだけどね……できれば、第三騎士団によって成敗されてほしいし、でもそれどころじゃないかもしれないし、それはもう、実際の暗殺者を見てみないことにはどうしようもないからさ……」

「相手はこのダンジョンの中で暗殺を成功させたいみたいだったからかなり執念深く追ってくると思う!」

「まあ、ダンジョンの中なら、どんな『事故』があったとしても、事件性無しともみ消すのが簡単だろうからな。間違いなく、奴らはここで仕掛けてくるんだろう」

 ね。まあ、相手は確実にダンジョンの中で仕掛けてくるんだろうから、そこは期待しておくとして……。

 ……落とし穴とか、作り足しておこう。




 さて。

「ラペレシアナ様!おはようございます!スライムが粗相しませんでしたか!?」

「ああ。おかげでぐっすりとよく眠れた。ありがとう」

 ……朝になって、俺とリーザスさんは第三騎士団宿泊中のお宿へ突撃。冒険者達が夜通し騒いでいたけれど、防音はしっかりできていたっぽいのでそれはよかったぜ。

 いや……もしかしたら、ラペレシアナ様、部屋に一匹居付いていた奴に埋もれて寝たりした?うん、いや、別にそれでも全然構わないんだけどさ……。

 俺達が挨拶している間に、他の第三騎士団の面々も集まってきた。彼らも、『腰の下にスライムを詰めて寝たら本当に寝心地がよくて!』とか、『いつもなら腕の断面だったところの皮膚が突っ張って痛むんだが、風呂のおかげかそれが無いんだ!』とか、昨日より元気そうな様子である。

 昨夜の風呂にも色々、ポーション入れてあったからね。少しでも効いてくれてるなら幸いです、ってことで。


「じゃあ、そろそろ出発しますか?俺達がご案内しますよ!」

「ああ。では世話になろう」

 さて。それじゃあようやく出発だ。準備に準備を重ねたおもてなしダンジョン……ジェネリックの威力を思い知ってもらおう!




 ……そうして俺達がダンジョン前受付で手続きを済ませている間に、4人組から5人組くらいの冒険者っぽい集団がいくつか、後に続いて手続きを始めた。

 まあ、マジモンの冒険者も居るんだろうけど、こいつらの内の数組は暗殺者だろうからな。

 覚悟しとけよ?何と言っても……今日のダンジョンは一味違うし、第三騎士団はこれから一味違くなるんだからな!

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― 新着の感想 ―
豊穣と再生を司るスライム神教を国教にすべき
『スライムをいじめちゃいけません』っていう、ダンジョン受付時の注意勧告が生きてくるという… そりゃあ、人畜無害とはいえ、スライムが何処にいようと、お風呂も(上限5匹)お部屋も村の中からダンジョンまで、…
クソデカスライムに丸呑みされると怪我が治る、そう噂されて実行されてもパンイチで入り口に返却すればよさそう 文句言ってても皆がそろって、スライムのやることはよく分からん、と言えばヨシ!
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