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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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そして、神になる*4

 検査入院させられた俺ですが、元気です。ついでに、俺が検査入院するとなって駆け付けてくれた父母にはしこたま怒られましたが俺は元気です。

 いや、怒られてもね。しょうがないっていうかね。俺はただシタシタと軽やかにステップ踏んでただけだし。地面が崩壊して異世界行きになっちゃったのは俺のせいではないし!

 ……が、まあ、俺は『謎の穴に落ちてそのまま一週間程度安否不明になっていた』らしいので……心配を掛けたことは間違いないのであった。すまねえダディとマミィ。

 まあ……そこで色々と現状を聞けたので、それはありがたかったね。


 まず、俺については『一週間安否不明』だった、とのこと。つまるところ、どうも、こっちと向こうとで時間の流れがおかしなことになっていたっぽい。

 ……ということは俺が向こうの世界に戻ったら数年後になってました!とかそういうこともあり得る!?うわあ怖い怖い怖い!退院したらすぐGOGOだなこりゃ。

 まあそれはそれとして……続いて、こちらも当然ながら、大学キャンパス内にいきなり生じた亀裂と深穴については、調査が進められていたっぽい。

 特に、俺が『るんたったるんたった』と軽快なステップを踏みながら大学生協を出てきたところは多少の人々に目撃されていたらしく、そして、そんな俺がいきなり生じた亀裂に飲み込まれて消えていくのも、目撃されていたらしい。

 ……つまり、俺以外に落ちた人は居なかったらしいからそれは良かったんだけど、『1人、踊ってた奴が落ちた!』っていうのは知れ渡り……そして、それによって救助活動が行われるに至った、ということである。

 が……この救助活動が難航した。というのも、一定以上の深さにまでワイヤーロープを垂らして穴の深さを測ろうとしたところ、途中からすぱりとワイヤーロープが消えちゃったからである。

 まあ、分解吸収されちゃったんだろうね。そしてあのキラキラした光になっちゃったんだろうね……。

 これで、もうね、救助どころじゃねえ、ってなっちゃって、でも人が1人落ちたんですよ!?ってなっちゃって、いやでも中に落ちたものが消える穴に落ちた人なんてもう生きてないでしょ!とか、それは倫理的に問題が!とか、色々とわーわーやりつつどうすんのこれ、ってやってたら、俺が飛び出してきた、と。

 ……そういう訳なので、こう、俺は錯乱していると思われたらしいが、実のところ、周りの人達もかなり錯乱というか混乱していたらしい。

 まあ、でしょうね!




 そんなこんなで、ひとまず俺は病院に入れられちゃったので、動けなくなっちまった。点滴とか打たれてる。いや、いらんて。俺、健康なんだって!

 ……が、そんな状態でも、とりあえずやらねばならぬことがある。

「あー……ママ上。ちょっと悪いんだけど、俺の鞄と俺のじゃない鞄の中に大量のお土産が入ってるから、ちょっとそれ開けてくれる……?えーとね、あ、そっちの鞄の一番上に入ってるのベーコンだから、できたら冷蔵してほしいんだけど……」

「あんた穴の中から何持って帰ってきたの」

「一番重いものは使命。使命持って帰ってきちゃった。後はチーズワンホールが結構重い」

「穴の中でチーズ転がし大会でもあったの?」

 そう。お土産の開封。こればっかりは、さっさとやらなきゃ問題があるからね……。うっかり要冷蔵品も持たされてるからね、俺……。

「えーと、ブランデーケーキ2本でしょ?吊るしベーコンと、アロマオイルと、麻のシャツと……あとさっきのチーズワンホールと、ナイフ形蜂蜜キャンディと、ドライトマトと、舐める用ナイフと、どんぐりと、ミュー毛のマフラーと、世界樹の樹液と、いいかんじの枝と、焼き菓子と、全てをスライム状に変える生ワインと……」

「なんか変なの紛れてなかった?」

 紛れてるっていうかね、半分ぐらいは変だと思うぜマミィ!


 とりあえず、日本の湿度だとベーコンは冷蔵してあげた方が良さそうだし、まあ、色々とあるので、仕分けていくらかお土産を預けることにする。

 逆に、『私そんなにいっぱい持って帰れないから!』とマミィに言われちまった分については俺が退院後に自力で持って帰ります。チーズワンホールは俺が抱えて持って帰ります。ダディが持って帰ってくれてもいいんだぜ……って思ったんだけど、ダディはパニス産ブランデーの瓶抱えて踊ってるところだから駄目。

「で、他にも色々……このもぞもぞぷるぷるしてるのは何?カツオノエボシ?」

「え?」

 が、そんな中、お土産バッグを漁って整理していたマミィが声を上げて、もにっ、と掴んで、ぷるっ、と出したのは……。


「うわあああああ!スライムお前ついてきちゃったのぉおおお!?」

 スライム!スライムが!マミィにわしづかみにされて!力無くもよもよしている!あああああ!あああああああああ!




「ぷ、ぷるぷる……この子は悪いスライムじゃないよ……。解剖しないであげて、解剖しないであげて」

「しないけども……まあ悪いスライムじゃないならいいんだけど……あらま、いい揉み心地!」

 俺が『おろ……おろ……』とやっている間も、マミィはスライムをもにもにもちもち、揉んでいる。スライムは上下関係がしっかり分かっていると見えて、抵抗しない。お前も長いものには巻かれるタイプか……。

「……でもちょっとおいしそうねえ」

「食べないでね!食べないでね!この可愛いぷるっともちっとした生き物を食べるだなんてそんな酷いことはしないよね!?」

「でも食べちゃいたいくらいかわいいって言葉はあるのよ卓弥」

「流石俺のママ上!やめてね!やめてね!」

 なんか、久々に『この血の運命!』を感じながら、俺は必死に母を止めた。その内ダディが参戦してきて、『かわいそうだよぉ、そんなに揉んじゃ……』と仲裁してくれたので、スライムはそっと救出された。サンキューチッチ。


「……で、この謎の生き物は何?生きてるの?」

 スライムに『お前、よかったな……パパ上が来なかったらお前、死んでたかもしれねえぞ……』と脅しを掛けつつ、スライムを抱っこして保護。ああー!抱き心地がいいー!

「うん。多分生きてるし意思もある。そして多分、こいつは俺に懐いてくれている……」

 スライムは俺の頭の上にもっちりもっちりと這いあがって、そこで、もよん、と揺れている。おお、かわいいかわいい……。

「……で、これ、どうするの?うちで飼うの?」

「……できれば元居た場所に帰してあげたいんだけど、その前に新種の生物として学術論文とかに掲載しませんか?って適当な教授唆すつもり」

「相手は選びなさいよ」

 うん。そりゃあね。勿論ね。……誰に言ったらいいんだろうねこれ!まあ、それは先輩とかに色々聞いて決めることとしよう。俺が所属しているサークルには幸いにして、院生どころかドクター進んじゃった人まで所属してるからね……。情報には困らんよ。

「脳があるようには見えないねえ。クラゲみたいなものかな?骨も無いのにこの体積を支えていられるのはすごいねえ。あっ、すごい!これ、全身に筋肉がある!?かなり自在に動くんだねえ!おお!こっちに伸びて、そっちにも伸びられる!おおお!縮む!おおおおお!すごいねえ!君、すごいねえ!かわいいねえ!」

「その前にパパがメロメロになってるわよどうすんのこれ」

「うーん、引き離すのは酷な気もしてきた」

 ……まあ、今日一晩くらいはこのスライムはうちでお預かりすることにしよう……。パパ上がすっかりスライムにメロメロというか興味津々で、『こういう段差も乗り越えられる!?こっちの机から椅子までは……跳ねたァ!』ってやってることだし……。

 うーん、やっぱりこの血の運命ェ……。




「ところで、俺ってこれから一躍時の人だったりする?」

 で、この機会にさっさと確認しておきたいことは山ほどある。特に、俺自身のことはね。早急に。

「そうねえ……まあ、キャンパス内のあの亀裂のことはニュースになってたけど……『関連があるかも』ってことで注目されてるくらいだしねえ……」

「どちらかというと、今はそれどころじゃないねえ」

 ……ん?

 いや、俺、てっきり、『あの亀裂からの生還者!』ってことで、報道陣に詰め寄られる羽目になるんかな、とか思ってたんだが……『それどころじゃない』とは……。

「うん。僕もさっき実物見てきたけど……あー、ここからでも見えるかな。ほら。見えた見えた」

 俺が首を傾げていたところ、ダディが病室のブラインドを、しゃー、っと上げてくれた。

 ……で、『ほらあれあれ』と指差してくれるのでそっちを確認すると。


「ワァオー……クソデカトゥリー」

 ……遠くの方。そこには、どう見ても東京スカイツリーを超えるであろう高さのクソデカトゥリーが生えているのが見えた。

 あのデカさ……もしやお主、世界樹ではないか……?




「あれが本当のスカイツリー!って話題になってるねえ」

「そりゃあなるでしょうねえ」

「ちなみに生えてる場所は皇居ね」

「インペリアルクソデカトゥリー!」

 皇居……皇居かぁ!確かに日本で一番魔力高そうな土地だわ!世界樹が生えるにあたってピッタリね!

「調べたいけど皇居じゃ入れねえよなぁ……」

「そうね。報道陣もシャットアウトされてるからヘリ飛ばして宮内庁から怒られてるわよ」

「でしょうねえ」

 成程ねー。となると、もしかしたら俺がパニス村ダンジョン側から割れ目の向こうを覗いた時に見えたヘリって、その報道陣とかだったのかね。納得納得。

 しかし、なんだってこっちの世界にも世界樹が生えちまったんだか。曖昧になりすぎた?もしかして世界樹ってそこらへんアホなの?

「あれだけ育たれると東京一帯が日陰だねえ……」

「太陽光パネルを設置していた家から苦情が来そうだわぁ」

「でも夏は涼しくていいかんじじゃん?じゃん?アッでもその前に水資源どうなるんだろ。あれだけクソデカトゥリーだと吸い過ぎて地下水枯渇しそう」

 俺達の世界はファンタジーの世界ではないので、『一晩にしてクソデカトゥリーが生えました!』みたいになっちまうと問題があるのである。現実って厳しいのだ。


「うーん……となると、俺が持ってる情報はさっさと有識者および権力者に引き渡しちまいてえなあ……」

 あのクソデカトゥリーはまあ間違いなく世界樹だろう。ありえないことが起きたなら、そこに在るのは絶対ファンタジー。間違いない。間接的に俺のせいかもしれない。本当に申し訳ない!

「じゃあ、まずはさっさと大学に通報。それから大学に協力してもらって公的機関に通報しなさい。公益性とか必要性が認められないと研究資金が国から出ないんだから!」

 ああ、それはそうね……。『これは大問題ですね!』ってならないことには、金が動かないからね……。となると、まあ、すぐに動けるように色々根回しした上で、極秘に公的機関を動かしてくれる人……つまり公的機関そのものに通報するしかないね……。

「分かったぜマミィ!ところでどう通報しよう」

「なんか未知の生物が居る!とかでいいでしょ」

「スライム君は引き渡せないよ!?僕はもうこの子にメロメロ!」

 ……が、パパ上はすっかりスライムにメロメロである。こいつを引き渡すことはできなさそうである。俺としてもかわいそうなスライムを引き渡したくはねえなあ……。

「あーじゃあ未知の危険物がありますってことで通報するわ。えーと、触れたものをなんでもスライム状にする生ワインがありまして」

「こっわい!なんてもの持って帰ってきたのよあんたァ!」

「やっぱ駄目?ならこちらの、ちょっと空を飛ぶ毛玉から採取してきた毛を……あれ、どこいったかな」

 まあ、こっちはネタには困ってねえからな……。確実に動いて、なんとしても、俺がファンタジー学の研究をできる立場に潜り込めるようにしてやるぜ!


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― 新着の感想 ―
なんかすごい。
ブランデー抱えて踊るダディ!? 不思議なお土産に動じない両親に笑うしかない、もしかして祖父母も同じ感じでしょうか。
アスマ家はさすがの家族であった
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