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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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沼のその先へ!*3

「俺の脳……俺の脳を増やすの……?」

「あ、脳だけだったら、そんなに賑やかにならなさそうだね……?」

「それどころではない……!それどころではない……!」

 はい。俺は頭抱えつつ膝も抱えてゴロゴロしているところです。

 何、俺の脳を増やせ、って。なんでピンポイント脳みそ!?


 分かんないのでもうちょっと詳しく聞く。まだ望みはある!まだ望みはある!

「おーいもう1人の俺ー!脳みそ作ってどうすんの!?何にすんの!?食べるの!?」

 分からないことを聞けるってのはいいことだなあ!ありがてえよ!いや、内容が内容だからありがたいっていうよりは怖さが勝るけども!

『きゆうしゆう』

「え?脳を作って吸収すんの……?」

 つまり、『作って壊そ』ってこと……?何故……?

『よそで』

「他所で……!?エッ!?もしかして他のダンジョンに俺の脳みそを提供するの!?」

 ……なんか、色々と不思議なことがバンバン出てきちゃって俺はもう何からどこをどう思えばいいのか分かんなくなってきちまったぜ……。




「ということなんだけど、どういうこと……?」

「ええー……もしかして、他のダンジョンもアスマ様みたいなダンジョンにする、ってこと?」

「おおお、そういうことかぁ……?」

 ミシシアさんの言葉を聞いて、成程ね、とちょっと理解。

 ……まあ、多分、もう1人の俺は、『この世界のダンジョンを消す』方法の1つとして、『この世界のダンジョンの無力化』を提案してきている。


 大体証明されたとはいえ仮定の話になるが、『ダンジョンは吸収した情報で動いている』とか、『ダンジョンは吸収した者の人格を得る』とか、そういうもんだとすると、俺の脳を吸収したダンジョンは、アスマダンジョンとして……こう、パニス村ダンジョン同様のダンジョンになる可能性がある。

 つまり、『魔物が、何故か大人しくて気ままなスライムしか生まれない謎に平和なダンジョン』だ。

 それから、俺の脳を吸収したダンジョンが俺3号とか俺4号とかの意識によって回っていくんだったら、なんかこう……ダンジョン自体がダンジョン乗っ取りとか、ダンジョン乗っ取りからのダンジョンの悪用とかのストッパーになってくれるかもしれない、のか。

「……スライムばっかりのダンジョンだったら、まあ、軍事利用のハードルがぐっと高くなるね……?」

「そうだな……。武器は作れても、兵士は作れないというのなら、まあ……」

 まあね、ダンジョンの意識や人格はさておいても、ダンジョン自身がスライムしか作らん、ということなら……実に平和。少なくとも、教会関係者がパニス村周辺ダンジョンを乗っ取って魔物総攻撃を仕掛けてきたアレみたいなことにはなりようがないね。

 まあ、兵器開発が進んで、この世界の技術の進歩が見られるようになっていったら、ダンジョンの主は『再構築』でいくらでも兵器を作れちゃうんだけどね……。

 なんか……確かに、やってみる価値はある、のかもしれない。が、なんか、こう……色々、複雑な気持ち!




「……根本的な解決、には、ならない気がする……んだけど、まあ、一旦、この国この世界のダンジョン問題の問題を先送りにすることは、できる……と思う」

 まあ、ひとまずこれで問題解決の糸口にはなってしまった。

 ……資源としては、まあ、ダンジョン、有能だしな。それを適切に管理する、っていうところに課題があって、かつ、『ダンジョンが暴走した時に止める手段がダンジョンによる対抗ぐらいしか無い』ってところにも問題があった訳だが……。

「ダンジョンがソーラン節を踊るタイプのスライムしか生産しなくなった時、この国は技術研究に時間を費やして兵器を考えない限り、ダンジョンを利用した大規模な侵略行為は難しくなる。更に、兵器開発を行ったとしても、関連情報を国家機密として国で管理できれば、まあ、ダンジョン乗っ取りからの謀反は限りなく減らせる」

 俺の頭の中ではスライム達が『やさえーえんやー、さーあのどっこいしょ』を踊っているところだ。あいつら微妙にノリがいいからね。それでいて気ままだから100%踊ってくれるわけでもないところがまたチャームポイント。

 ……まあ、あいつらばっかりのダンジョンって、どう考えても、侵略に使うの難しいでしょ。少なくとも、この世界における『手軽かつメジャーな兵器』は魔物な訳だけど、それが使えないなら……。

「ダンジョンを消さなくても、とりあえずは……問題の一部を先送りにすることは、できそう……だなあ」

 一旦は、ここを目指すべき、なのかもしれないね。よしよし。


「えーと、つまり、攻撃に使いやすい部分が消えたダンジョンになる、っていうことだもんね」

「一方で、金塊ばかり生み出されたり、魔剣ばかり生み出されたりしても困ると思うぞ。経済の破壊は可能だろうからなあ……」

 ……まあね。結局のところ、『ダンジョンを消す』のが一番いいことは間違いない、と思う。少なくとも、『管理できる数まで間引きする』っていうのは、必要。

 でもそれが技術的に難しい、ってことなんだと思うんだよなあ、もう1人の俺の感覚でいくと。

 ……うーん。

「俺、もうちょっともう1人の俺とお喋りしてきたい」

 結局のところ、俺はやっぱりもう1人の俺と話してみたいわけよ。

 今後の意思決定について参考になる部分は多いだろうし、そもそも、俺がこのダンジョンについて知らないことは少ない方がいいんだろうし。

 ……あと、単純に、『もう1人』自分が居る、っていうのは、興味深い現象な訳だし……。




 ということで、ミシシアさんとリーザスさんは村の食堂へ行った。『また冒険者達から日記もらってくるね!』とのことである。俺と俺の通信料である魔力を稼ぐため、頑張ってくれるらしい。すまねえ……すまねえ……。

 いや、まあ、魔力については、スライムをドナドナしたお金で買った本で大分充填されたので、ちょっと話すくらいなら問題ない。少なくとも、『2文字にスライム100匹ぐらいを使う』みたいな、そういう元素記号通信をしなければ!ひらがな通信なら1文字あたり15スライム未満で済むから!

 ……では。

「もう1人の俺さー……やっぱり、『俺』っていう自覚、あるの?」

 そう、箱の前で問いかけてみたところ、もそもそ、と魔力が動く気配があり……YESNOの返答用の箱の中にスライムが1匹生まれた。

 こういう風に、YESとNOだけでできる返答については最大2スライムでの意思疎通が可能である。便利!

 ……が、ここから先はYESとNOだけじゃいかねえだろうな。

「ダンジョンになっちゃってるの、辛くない?」

 俺は、ずっと気になっていたことを聞くことにした。

『ダンジョンになってしまった俺』が、どんな感覚でいるのか。そして、そんな『ダンジョンになってしまった俺』を、これから『ふやす』ことについて、どう考えればいいのか。

 そのためにも、彼の意見を聞きたかったんだが……。


『おもろい』

「まあそれはそう」

 ……まあ、俺は俺であった。そりゃあね!ダンジョンとか、おもろいに決まってるわね!




「どういうところがおもろい?」

『ぶんかいさいこうちくとすらいむ』

「あー分かる分かる。ブツの構成物が一発で分かるの楽しいよね!それを組み立てるのも楽しいし、新しいものを生み出すのも楽しい!あとスライムはかわいい!」

 盛り上がったところで、『YES』のスライム1匹がぽよよん、と登場。やっぱりね!楽しいよね!ダンジョン!

「俺もダンジョンの主、楽しいよ。えーと、まあ、色々と物騒なところもあるけど……」

『それはそう』

「まあな。ダンジョンだからな。物騒にもなるよなあ……」

 俺達はまあ、そんな会話を、スローペースに進めていく。何せ、向こうはスライムの生産をしなきゃならんし、俺は俺でスライムのカウントと暗号読解をしなきゃならないからね……。

 ……で。

「……あのさ。そっちの俺は、こっちの俺に、気ぃ遣ってない?」

 なんか、やっぱり気になったので聞いてみる。辛いのに『おもろい』って答えたり、それに乗ったりしてない?っていう。いや、だって、相手、俺だし。

『ちよつと』

「そっかあ」

 その結果、まあ、そういう返答が来たので、『だろうなあ』と思う。うん。まあ、俺も思うところはあるから、分からんでもないよ。ここに立っている俺は、ダンジョンになる経験をしたことが無いので確かなことは言えないけどさ。




 で、ちょっと俺が考えていたら……もそもそもそ、と魔力が動く気配があった。おや、向こうから話題振ってくれるんか?

 ……と、思っていたら。


『もとのせかいにかえれ』

 そう、告げてきたわけだ。


「……うん」

 これをもう1人の俺に言われるんだなあ、と、なんだか複雑な気分になる。『お前は帰れなくていいの?』っては、聞けねえけどさ……。

『むこうでけんきゆうしろ』

「うん……」

 そりゃそうだよなあ。俺はそういうつもりで生きてきたし。まあ、もう1人の俺だってそういうつもりだったんだろうし……。

『だんじよんのおくの』

「……うん?」

 ……なんか風向き変わったな、と思いつつ、次の言葉を待つべく、通信BOXからスライムを出して、もっちりもっちり、とした行列にしてまた新設した温泉方面へリリースしていく。

 そして、次の言葉がもそもそと生成されていくのを待って……蓋を開ける。


『むこうからしらべろ』




「……向こう、っていうのは、俺達の世界だよね?何?やっぱりあの割れ目、あっちに貫通してるの!?」

『YES』

 もう1人の俺の返事に、俺はちょっと考える。

 ……俺達の世界にも、あの割れ目がちゃんと出現していて……『異世界への入り口』になっちゃってるなら。

 更にそれが、『ダンジョン』という……俺達現代人があれこれ弄ったら、いくらでも悪用できちゃうようなものに、直結しているのだとしたら……それは、間違いなく、やばい。やばすぎる。

「それは……確かに、俺、元の世界に帰らねえとダメだわ」

『YES』

 そして、俺が『やばいやばいやばい』となっている中……もう1人の俺は、ぽこぽことスライムを出して、伝えてくれたのだ。


『かがくでふあんたじいかいめいしろ ふあんたじいでせかいをすくえ』




「……やっぱ、お前って俺なんだなあー」

『YES』

「だよなあ……許せんよなあ、こんな、こんなさあ……よく分からん、謎パワーは……。でも、その謎パワーすらも使いこなせたら……世界はもっと、よくなるよなあー……」

『YES!YES!YES!』

「お前、YESNOのBOX3つも使うくらい同意してんのかよ……」

 なんだか嬉しいというか、やる気が出てきたというか……そういう気分で、俺は通信BOXから出てくるスライムをまた温泉へ誘導していく。そうしながら、『このスライムの生態も、ちゃんと解明できたらおもしれえよなあ』と思うわけだ。

 ……やっぱりね。俺は、科学の徒だから。もう1人の俺と、同じように。

「……分かった。この世界の謎ファンタジーパワーを解明して、ダンジョンの消し方を、模索する!」

 なので俺はそう決意した。

 ……俺は、俺のやり方でこの問題を解決してみせる!




「そのためにも……えーと、俺の脳みそを増やして各ダンジョンに混ぜ込んでスライムばっかり出てくる平和なダンジョン化を図り、同時に俺の19歳ボディの再構築を進めつつ、元の世界に帰るためにあの割れ目を何とかします。で、元の世界に帰ったら向こうでファンタジー学を専攻します」

『がんばれ』

「あ、マジでこの方針で行くことになるんだ……」

 ああ、やることが、やることが多い……!

 でもまあ、大学構内に謎の割れ目が生じてしまったら、そりゃ、調査とか入るだろうし……そこに一枚噛みたいね。

 ま、きっとなんとかなるでしょ。なんとかするよ。

 何せ今の俺はやる気に満ち溢れたニューアスマ!とにかく突っ走れる気分だぜ!やるぜやるぜ!俺はやるぜ!やるぜやるぜやるぜ!


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― 新着の感想 ―
コピー脳を並列化してスーパー生体コンピュータに?
忙しいな〜がんばれ!
ふふ、世界越えたね。スライムも世界越えるのね。楽しみだわー
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