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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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沼の底へ*5

 はい。ということで、腕輪が外れました。リーザスさんが切って、俺が腕輪外して、ミシシアさんがポーションですぐくっつけた。その間、10秒くらい。

 ……ダンジョンの主の人はというと、当然、絶叫しておられたが、今はまあ……落ち着いてきたらしく、ぜえぜえやりつつもちゃんと生きてる。よかった、ダンジョンの主の腕輪は外した瞬間に死ぬ、とかそういうかんじのブツじゃないらしい!

「ありがとうリーザスさん。嫌な役目をさせてごめん……」

「いや、問題ないさ。何と言っても、俺はあのラペレシアナ様の騎士団に居たんだぞ?慣れっこだ」

 リーザスさんには嫌な役をやらせちまったなあ、と思うんだが、リーザスさん本人はあっさりしたものである。……まあ、俺が気にしないように、そういう風に振る舞ってくれてるってところもあるんだろうから、あくまでも『申し訳ねえ!』の気持ちは忘れずにいよう。


「で、問題はここからなんだよなあー……」

 さて。一応、無事に……無事に?まあ、無事に、『ダンジョンの主の腕輪を外す』っていう実験は成功した。

 が、ここからだ。

「腕輪が、ちっちゃいままなんだよなあ」

 外した腕輪だが……ダンジョンの主の人の手首サイズなのである!

 これだと、小学生ボディの俺なら手を通せるだろうが、人間の大人には無理だな。さっきみたいに、一旦手を取り外す方向で進めればまあ、可能なんだろうけども……。

「これ、何かの魔法で伸びたり縮んだりしてるんだよな……?」

 ならばその魔法を確認してみた方がよかろう、ということで、腕輪を観察してみる。が、何も分からん。一度持ち帰って、パニス村ダンジョンで分解吸収してみてもいいかもね。まあ、それは最後の最後の実験になるだろうけども。

「私もその腕輪、見ていい?」

「うん。どうぞ」

 まあ、餅は餅屋というし、俺よりファンタジー適性の高いミシシアさんに腕輪をパス。何か分かることを期待。

「うーん……駄目。何も分からないよ。魔法の気配もあんまりしないかんじ。不思議な腕輪だねえ」

「あ、そうなの……」

 が、駄目!

 いや、まあ、『何も分からない』ということが分かる、というのも一つの重要な情報なんだよな。こうやって色々虱潰しにやっていくことによって、科学は発展してきたのだ。うむ……。




「じゃあ、2つ目の実験に移るか。えーと、腕輪は外れちゃった訳だけど、ダンジョンをどうこうすることってできるのかな?」

「分かる訳がないだろう!ダンジョンから離れているのだから!」

 はい。2つ目に、『ダンジョンの主の腕輪が外れた状態でダンジョンパワーは使えるのか』っていうところを確かめたかったんだが、これは駄目であった。

 いや、まあしょうがないね。コレばっかりはしょうがない。えーと……また後程。或いは、スライムとかなら腕輪を外すのに人間ほど難しさが無いはずだから、スライムがダンジョンの主をやってるダンジョンで確認させてもらった方がいいかもね。


「えーと、じゃあしゃーねえな。3つ目の実験に移るか。じゃあ……別の人に、このダンジョンの主の腕輪を装備して頂いてェ……」

 仕方がないので、次の実験だ。

 ……ダンジョンの主じゃない人に、このダンジョンの主の腕輪を装備してもらう。

 えーと、つまりね……。

「……リーザスさん!」

「ああ、問題ないぞ」

「ミシシアさんも!」

「ポーションの準備はできたよ!」

「あと、俺!はい!俺も準備オッケー!」

 ……さっきやったことの逆をやるんだよォ!




「はい、無事装備して貰えたぜ。よかったよかった……いや、ほんとごめんこんなことに付き合わせて……」

「気にしないでくれ」

「そうだよ!こういう時こそ助け合わないと!」

 モロにグロ画像な光景が繰り広げられた訳だが、リーザスさんは肝が据わっているし、ミシシアさんは謎のやる気でカバーしてくれてるし、本当にありがたい限りだ。

「被験者の君も、ありがとうね……。すまんね、ほんとね……」

「……すまないと思っているなら、こんなことはやめてください!」

 死刑囚の人もありがとう。でもな、多分、もう一回これやるからごめんな……。


「で、被験者さんは何か変化とか、あった?」

「分かりませんよ、そんなの……」

「そっかー、まあそうだよなあ」

 で、新たにダンジョンの主の腕輪を装備した人は、特に変化に気づかない模様。ダンジョンに居る訳じゃないからなー、色々と分からんのかも。

 ……だが。

「ん?あれ?ねえ、アスマ様!この腕輪、大きさが変わってる!」

「なんだと!?」

「さっきまでもうちょっと緩かったもん!それが今、ぴったり!」

 ……どうやら、変化はあったっぽいんだよね。




「成程なー。今回のケースだと、『本来ならば外れることのないダンジョンの腕輪を、ダンジョンの主が生きているまま外させて、それを奪って装着した』って状況な訳だけど……それでもダンジョンの主の腕輪のサイズが変わった、ってことを考えると、ダンジョンの主の権限はもう移ってるかんじ、と……」

 ダンジョンの腕輪は、新たに嵌めた者を主と認める、と。どうやらそういうことらしい。

 ダンジョンの主を死なせずにダンジョンの主の権限を別の生き物に移す方法がこれでやっとわかったぜ!

 まあ、現状、そのためにはダンジョンの主と、権限の委譲先の手首を一旦切り落とす必要があるんだけどね……。


「他にも条件、あるかなー。オウラ様の話から推測する限りでは、ダンジョンの主を殺した場合、ダンジョンの主不在になるからダンジョンの主の腕輪はフリーサイズになる、って説が濃厚だけど……」

「あー……殺して確かめるか?」

「いや、死刑執行は最後の最後でいいと思う……。先に調べられること、まだあるし……」

 オウラ様は、確かダンジョンの主やってた熊をぶっ殺して、腕輪を奪ってダンジョンの主になっちゃったんだよな。

 ……『気づいたら嵌めてた』みたいなこと言ってたし、記憶がいくらか食われてる可能性あるから何とも言えないけど、まあ、ダンジョンの主の腕輪が新たな主に装着しやすいように、大きさを変えてくれるんじゃないかと推測できる。

 それくらい融通利かせてくれるんだったら、なんか、他にもダンジョンの主の権限を委譲する方法があるんじゃねえかと思うんだけどなあ。無いかなあ……。


「アスマ様ー、次、何調べる?」

「……後は、ダンジョンパワーがどんなもんかは知りたいね。つまり、えーと、この人達を実際にダンジョンに連れていきたい。だから、それは最後で……後は、えーと、あ、ダンジョンの腕輪を2つ装備したらどうなるのかは知りたいのと、ダンジョンの腕輪自体に色々やったらどうなるのかを調べたいかな」

「ってことは、この場でできるのは、後はダンジョンの腕輪を2つつけるやつだね!」

「まあそうね……よし、やるかぁ。じゃあもう1人、ダンジョンの主を連れて来てもろて……」

 まあ、やりたいことはもう決まってるから、後はどんどんやっていくだけだな。よし。遠慮してちんたらしててもアレだし、ガンガンいこうぜ!




 ということで、片っ端から実験していった。

 まず、『ダンジョンの主の腕輪を2つ以上身に着けるとどうなるか』というやつについては……えーと、『そもそも装備できないっぽい』が答えになっているようである。

 どういうことかっていうと、えーと、腕輪Aを装備している人が腕輪Bを装備しようとしても、腕輪Bは反応しない。サイズの変更も特に起こらないので、多分、ダンジョンAとダンジョンB両方の主になることはできないんだと思う。


 じゃあ、腕輪Aを装備していた人が腕輪Aを外して、代わりに腕輪Bを装備した場合、どうなるのかな?というところも実験。

 そちらについても、『装備できない』が答えっぽい。

 ……えーと、腕輪Aに変化は無し。新たに装備しようとした腕輪Bもサイズの変更が起きず。ほーん。


 ならば、外した腕輪Aを別の人が装備したら腕輪Bを装備できるようになるんじゃないか!?というところでまた実験してみたところ……。

「……えーと、これもダメなのかぁ……」

 なんと。これもダメ!

 そっかー、つまり、一度ダンジョンの腕輪を装備してから奪われちゃった場合、生きてても再びそのダンジョンの主になることはできない、ってこと、なのかな……?

「……腕輪Aを奪って装備した人を殺せば腕輪Aを再び装備できるようになる可能性があると思うが」

「あ、うん。俺もその可能性には思い当たってる」

 ……まあ、後は人の生き死にに関係する実験になっちゃうからね。一旦保留で。




 で。その後はラペレシアナ様達にまたご迷惑をおかけしつつ、手近なダンジョンAまでご同行願った。

 で、ダンジョンAのダンジョンの主の腕輪Aと別ダンジョンの腕輪B、あとダンジョンの主やってるAさんと別ダンジョンの主のBさんと全く関係ないCさんにご協力いただいて色々と検証してみた結果、概ね、『ダンジョンの腕輪を装備している人がそのダンジョンのダンジョンパワーを使うことができる。ただしダンジョンパワーはダンジョン敷地内に居る時にしか発動できない』っていうことが分かった。

 ……ダンジョンの主でも、ダンジョンの腕輪を外していたらダンジョンパワーが使えないっぽい、というところは、まあ、俺自身も検証してみた方がいいかも。うん……。

 それから、腕輪Aを外した状態でダンジョンの主Aさんがお亡くなりになると、腕輪Aが勝手にフリーサイズになりよることも判明。

 で、『腕輪が主を失ってフリーサイズになる』時に発生することがもう2つ、あって……。




「消えた……」

「あっ!アスマ様ー!なんか入り口の方に気配があるよー!」

 ……最初、腕輪は消えたんだよ。ダンジョンの主Aさんがお亡くなりになってちょっとしたら、外しておいてあった腕輪Aが、ぱっ、て消えた。

 が、その腕輪、ダンジョンの入り口付近にリスポーンしていたことが判明。成程ね。ダンジョンの主から外れていた腕輪は、ダンジョンの主が死んだ瞬間にリスポーンね。で、入り口がリスポーン地点になってるってことは、ダンジョンにふらっと入っただけの人に腕輪を発見させてダンジョンの主にしたいってことね。

 ということは……ダンジョンの主とダンジョンの主の腕輪の管理って、結構めんどくせえなあ……。




 で、もう一つは。

「リーザスさん起きて!」

「うわっ……あ、ああ、俺は一体、何を……?」

「ミシシアさんも正気に戻って!」

「へ?え、あ……うん?あれ?」

 ……俺は、リーザスさんとミシシアさんのほっぺをぺちぺち叩いて2人を正気に戻している。

 というのも……。

「フリーサイズの腕輪があるからって、装備しようとしないで!」

「す、すまないアスマ様。体が勝手に……」

「なんかぼんやりしちゃって……」

 ……このダンジョンの主の腕輪。主不在の時には、『さあ私を装備して!』っていうファンタジー力を発揮しよるらしい。周囲に居る者が全員、腕輪を装備したくなって、我を失い始める!

 この腕輪、結構怖いブツなんだなあ!くそー!ダンジョンの腕輪の管理、予想以上にめんどくせえぞコレ!どうすんのコレ!うわあああああ!


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― 新着の感想 ―
フリーだと周辺生物に精神干渉するのか…こわ…
うわーい容赦のない人体実験。 一人で複数のダンジョンの主になるのは無理なんですね。 とするとアスマが近隣のダンジョンをぜんぶ管理するとかは無理だから、けっきょくスライムダンジョン量産路線になるのでしょ…
これ分解再構築は試してましたかね? 一番の情報の塊に見えるけど
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