沼の底へ*3
はい。ということで、なんか希望が見えてきた。
これが希望なのか希望じゃないのかはもう分からん。分からんが……希望だってことにするしかねえ!俺はこの道を行くぜ!行くぜ行くぜ俺は行くぜ!
「まずはボディの材料からだぁあああ!ヒャッハアアア!」
「これ、アスマ様本当に大丈夫かなあ……」
「ダメかもしれないな……。様子を見ながら、こまめに休憩させるようにしよう……」
「そうね。私、何か温かい飲み物を持ってくるわ」
……そして、ミシシアさんとリーザスさんとエデレさんには多大なるご迷惑をおかけしており大変申し訳ございません。俺にはよくよく言っておきますので、なにとぞご容赦を……。
「えーと、まずはオウラ様と話してみたい」
ということで、早速何をすべきか考え始めるよ。
「あ、いきなり実験に入るんじゃないんだ……」
「流石にね……俺もちょっとは慎重になるってばよ……」
だって人体錬成だからね。慎重さを欠いてはいけない。
となると、俺以外でほぼ唯一のダンジョンの主であるオウラ様に色々と聞いてみるってのは間違いなく重要。
ほら、オウラ様も若返りしちゃってるし。アレも、仕組みが分かってない重大事案だし。
……オウラ様もスワンプマンしてる!?やだー!うわああああ!
「ダンジョンの主、かつ人間となると……ラペレシアナ様にお伺いしてみれば、教会関係者や大聖堂関係者がダンジョンの主になったものをそのまま捕虜にして収監してあるかもしれないぞ」
「なんだと!?」
そして更に、リーザスさんから有力情報が!
そうか!確かにラペレシアナ様達が、パニス村周辺のダンジョンを片っ端から潰しまくってくださったんでした!で、ダンジョンの主も生け捕りにしてあるってことね!?すげえな!やっぱり優秀すぎるよ王立第三騎士団!おお、王立第三騎士団!ああ、王立第三騎士団!
「実験し放題!……とは言わんけど、まあ、話は聞いてみたい。あと、若返ってるかどうか、見てみたい」
まあね、いくら敵だったとしても、必要以上に非人道的な扱いをしてよい理由にはならない。捕虜はちゃんと扱うべしって国際法にも書いてある。
なので、あんまり色々と人体実験しようとは思えんが……まあ、うん、取り返しのつく範囲内では、ちょっと試させてもらうかもしれねえ……。その時はよろしくだぜ、ダンジョンの主達!
「それから、ウパルパ達……は、話ができる訳じゃねえしなあ……」
「そうだね。ウパルパは……ウパルパは、えーと、王都に行くなら、その帰りにちょっと様子を見てこよっか……」
「あの呑兵衛ダンジョンがどうなったか、俺、気になります……」
……まあ、今回役に立ってくれそうなのは人間限定だな。うん。ウパルパ達は……その、俺が色々疲れちゃったら、ちょっと、癒しを提供してもらいに行くかな。うん。あのウパルパの、うぱっ、としたやわらかボディは、なんか、アレはアレで揉み心地のいいものだし……。
ということで、まずはラペレシアナ様のところへGO。
ラペレシアナ様達、王立第三騎士団は、朝も早くから捕虜の尋問および輸送の準備のために色々と働いておいでであった。殿下自ら働いておられるので、本当に頭が上がらねえよな……。
「ラペレシアナ様、ラペレシアナ様」
「アスマ様。昨夜はよく眠れたか」
「はい!」
「そうか……奇声が聞こえてきたのは、アスマ様のものではなかったか」
「あ、それは俺です」
……しょっぱなからなんか申し訳なくなってくるが、前回の俺は発狂して奇声を発する反逆者でしたが今回の俺は完璧で幸福なダンジョンの主なのでご安心ください。
「それで、えーと、ちょっとお伺いしたいんですが……オウラ様にお会いすることって、できますかね」
「オウラ様か。あのダンジョンも事後処理があるが、まあ、オウラ様ご本人は手が空いているだろう。彼もまた、アスマ様の助言が欲しいやもしれんな」
おっ。成程ね。まあ、ダンジョン防衛力強化のためにも、ダンジョンの主同士、話したいことは色々あるよなあ。そっちの方も話してみよう。
「それから、捕虜についてなんですけれど……ダンジョンの主がそのまましまってあったり、します?」
「ああ、腕輪を付けた捕虜か。それなら収監してある。そちらも聴取されるか?」
「是非!是非お願いしま……あ、聴取っていうか、その、もしかしたらちょっと実験に協力してもらうことがあるかもしれなくて」
「無論、構わぬ。こちらで必要な情報はもう抜いた。後は処刑を待つのみの連中だ。好きに使って頂きたい」
おお!こっちも快諾して頂けたぜ!ラッキー!……いや、なんか、快諾されたらちょっとアレな内容まで快諾されちまった気もするが。まあ気にしない気にしない。
とにかく、これで俺のボディ復元計画にちょっと近付いたぜ!早速、オウラ様と捕虜に会いに王都へGOだ!
ということで、村の片付けを終えて、俺達はまた王都へ。なんか最近、パニス村と王都の間を行ったり来たりしまくっている気がする。
今回の旅団は大所帯だ。何せ、護送車がめっちゃいっぱい居るからな!100人近い捕虜の内、『王城で取り調べしたい』という奴に絞って、それでも30くらいは運んでるからね。
ちなみに残りの捕虜はパニス村での処分ってことになるらしいぜ。処理作業自体は王城の人達がやってくれるらしいので、俺達はただ祈る。成仏しなっせ。
……で、そんな大所帯での移動中だが、俺はスライムに埋もれつつ、快適にぷるぷると運ばれているところである。
「やっぱりスライムに埋もれてると楽ちんだねえ、アスマ様!」
「うん。あと、運転がリーザスさんってのもデカい」
「え?」
今回、運転はリーザスさんである。そりゃそうだ。そんなにかっ飛ばす必要も無いからね。安全運転でお願いしてるぜ。とはいえ、ラペレシアナ様もいらっしゃる一団なので、全体的にスピード速めではあるが。
でもミシシアさんの生き急ぎロケット砲みたいな運転じゃないので全く問題無し。アレと比べたら本当に何も問題無し!
「うふふー……この子達、カラスダンジョンのラベンダーを入れたお湯に浸かってた子達だから、ちょっとラベンダーの香りだねえ」
「だねえ。……こっちのスライムはワインを盗み飲みしてたんだな。なんかワインの匂いがする」
「この子はウパルパダンジョンに連れて行ってあげた方が幸せかなあ……。あ、こっちの子はリンゴのパイの匂いだ!」
「こっちはなんか……納豆……お前、マジかよ……」
……埋もれつつスライムテイスティングしてるが、なんかこう、こうしてみるとスライムも個性があるんだよな。一列に並んでもっちりもっちり行進してるだけだとイマイチ個性が分かりにくいが……。
まあ、個性が出てくるってのは豊かさの現れってことかな。あと、単純に俺とスライム達の付き合いが長くなってきたってのがあるか。
「……アスマ様、大きくなっちゃうの?」
「え?うん。いつまでもこのままってのはなあ」
そして、スライムのみならず、ミシシアさんもぼちぼち付き合い長くなってきたんで、今、ちょっと躊躇いがちに聞いてきたミシシアさんの気持ちも、なんとなく分からんでもない。
「……俺、帰る前には色々やってから帰るよ。寂しくないように」
「……うん」
ミシシアさんはちょっと、しゅん……としながら、へにょ、と頷いて……それから。
「うん……アスマ様が大きくなるの、ちょっと楽しみではあるんだ!」
元気に顔を上げて、笑ってくれた。
「そっかー。楽しみにしといて!多分、期待は下回ると思うけど!」
まあ……ご期待に沿えるように頑張りますかね。そんなに大したボディじゃねえけど……。
……元のボディを取り戻す時、ちょっと改良した方がいいだろうか。こう、目からレーザービーム出せるようにするとか……。
俺の身体改造案を考えたものの、結局『目からレーザービーム出るようにしつつ視力を維持する方法を全く思いつかねえ』というところで頓挫した。難しいなあ目からビーム!
で、そうこうしている内に王都に到着した。ラペレシアナ様が捕虜との面会については融通利かせてくださるらしいが、そもそもラペレシアナ様はパニス村ダンジョンに侵入した奴らを王城の監獄および地獄へ連れて行く任務がある。
となると、そっちを先に片付けるためにも流石に時間が必要なので、それは待ち。
その間にオウラ様の方を先に訪問しとくか、ということで、俺達は金鉱ダンジョンの方に向かうことにした。
「ふん、ふんふふふんふんふん、ふん、ふんふふふん……」
「アスマ様ー、その歌、何の歌?」
「鎮魂歌!」
「そっかー。なんだかいい歌だねえ!」
ということで元気にハミングしつつ俺達は金鉱ダンジョンの奥へと進んでいく。多分、オウラ様はもう俺達の来訪に気づいてると思うので、前回、深部へお邪魔する時に使用した通路の方へと向かう。
すると、案の定そこに下り階段を用意して貰えていたので、そっちへGO。そのまま前回同様に進んでいって……。
「オウラ様ー!この度は侵入者撃退、おめでとうございます!」
「どうもありがとう。そちらの助けがあってこその防衛でしたよ」
オウラ様が元気に出迎えてくださったのだった。
……が。
「ところでオウラ様、また若返りました?」
なんか……なんか、オウラ様、その……若くなってるんだけど!やだー!




