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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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チェーン展開*2

 どうするのどうするのどうするの。今、この部屋まで直通の下り階段ができちゃってるのよ?ここ通ってこられたら、すぐさまダンジョンの主であるカラスに手が届いちゃうってことなのよ!?

 俺が『どうすんのよどうすんのよ』と踊る間も、スライム達はそわそわ動き回り、カラスはかーかー鳴いており……うん。そうだな。俺、踊っている場合じゃねえな。

 だって、カラスだかスライムだか分からんが、とにかくどっちか或いは両方が助けを呼んだんだ。呼ばれた以上、俺が彼らとこのダンジョンを助けてやるのが義理ってもんでしょう。

 よし。


「じゃあカラス。ここ、この図面通りに改築しといて!俺は通路にダイナマイト仕掛けてくるね!」

「ま、待て、アスマ様!俺も行く!」

 ……とりあえず、ダイナマイト。ダイナマイトは大体の事態を解決するし、解決できなかったものについても先送りにはしてくれることが多い。




 ダイナマイトを仕掛けたら、ダイナマイトよりも地下に近い位置で待機。敵が来るのを待つ。

 ……尚、俺も居る。リーザスさんは俺を奥に隠しておきたかったっぽいんだが、今回ばかりは、俺が出てこないわけにはいかないんでな。

 ついでに、リーザスさんには隠れていてもらうことにした。……この後にやりたいことには、どうしてもリーザスさんが邪魔になるというか、リーザスさんが居ると成り立たなくなったり、今後に影響したりするんで。

「おっ、来たか」

 そして、じっと待機している中、階段の上の方からざわざわと声が聞こえてきて……そして。

「よく来たな、侵入者諸君」

 彼ら侵入者御一行様は、堂々と立つ俺の姿を見たのであった!




 まず、ここのダンジョンの主がカラスじゃなくて俺だっていう風に誤認してほしかったんだよね。そうすれば、相手が情報をどう持っていても、こっちが有利に立ち回れる。

 1つ目に、相手が『ダンジョンの主を殺して腕輪を奪えばダンジョンを奪える』ってことを知っていた場合。

 その場合、俺が腕輪を装備しているのを見たら、俺がこのカラスダンジョンの主だと思って、俺を狙うようになるだろう。つまり、カラスを守ってやることができる!

 ……同時に、俺の腕輪を見て反応があるか、っていう確認もできるね。それをやりたかったんで、俺は今、肩まで袖まくりして人工ノースリーブ状態だぜ。小学生がよくやってる奴だぜ。まあ小学生ボディだからこういうことやるんだぜ。


 それから2つ目に、相手が『ダンジョンの主はダンジョンパワーを使ってダンジョンを作り替えることができる。また、ダンジョンの主は、認識されている範囲内ではダンジョンパワーを使えない』っていう情報も持ってる、って状況にも対応できる。

 何せ、相手からしてみりゃ、ダンジョンの主たる俺がここに居るんだから、俺さえなんとかしとけばダンジョンの構造は変えられない、っていう認識になるはずなんだよな。

 が、実際の主はカラスの方だから、侵入者の意識が俺に向いてる間にカラスが動ける。色々と付け焼刃でなんとかできる可能性が残る、ってことだ。


 そして3つ目に……単純に、お喋りできる。

 俺は『ダンジョンの主』として、侵入者と話すことができる。

 ……これによって、相手側の情報を得るのが、今回の俺達の目的だ。




「お、お前は……?」

 侵入者達は、俺を見て困惑している様子であった。まあ、いきなり見知らぬガキが出てきたもんね。しかも、ダンジョンの奥から。これは意味が分からないに違いない。

 ……逆に言うと、ここで『意味が分からない』っていう反応が出てくるあたり、『パニス村ダンジョン=俺=敵』みたいな図式にはなってないんだろうなあ。ありがてえ。最悪の場合、俺の名前もツラも割れてて、ついでに俺がダンジョンの主やってるってことまでバレた上での相対になってただろうから。

「そういうお前らは聖騎士らしからぬ恰好だな。どこの所属だ?」

 俺が一歩進み出ながらそう尋ねると、侵入者達……聖騎士の恰好をしているわけじゃない連中は、どよめいた。

 うーん……こいつら、先にダンジョンに入った聖騎士達の関係者かなあ?だとしたらまあ、納得がいくし、色々と話は簡単なんだよな。こう、ありそうじゃん。『聖騎士達が入って1日経っても戻らなかったら中を確認すること』とか、『聖騎士達が先に入っているから、後から追ってくること』とかの取り決め。

 その場合は、聖騎士が先鋒を務めて、後から『ダンジョンの主に据えたい人』が来る、っていうかんじだとおもうから、今ここに居る人達の内のどれかがそれなんだろう、というかんじか。

 ……逆に、話がややこしくなるのが、これが『教会関係者じゃない場合』だ。

『教会関係者だけど、先に捕まってる聖騎士達とは所属が別』とかなら、全く問題無い。その場合は教会がダンジョン攻略に乗り出してる、っていう方針は変わらないまま、『命令系統が大分ダメになってますね!』ってことで終了なので。

 で、大聖堂関係者だった場合については、『教会と協力してるんですね!』ってことでそれもOK。

 ……だが、もし、ここに居る連中が第二王子派だった場合。

 その場合……ここに居るのは何故だ?ってことになるわけよ。


「さあ答えてもらおうか。お前らの所属はどこだ?誰の命令で動いている?」

 俺が再度尋ねると、連中はひそひそと少し話し合って……それから、黙って剣を抜いた。成程ね。そういう方針って訳か。だが俺は怯まないぜ。

「おいおい、折角、この俺とお喋りできるって時に、何も話さず終わるつもりか?勿体ないこと考えるね」

 俺は尊大に、如何にも『俺は重要人物です!』って具合に振る舞う。こういうのはね、もうね、勢いよ。勢いと、あとね、度胸。

「そうだな……勿論、俺もお前らとお喋りしてみたい。が、お前らが俺とお喋りしたくないっていうんなら……どうだ?こっちも出せるもんを先にチラッと見せるくらいのことはできる」

 俺が喋る間も、目の前の連中は剣を抜いたまま、じっとしてこちらの様子を窺っている。……まあ、つまり、『今すぐ斬り捨てることを躊躇っている』ってことだな。ならいけるね。まあ、いけなかったらその時はその時だ。


「まず……お前らの所属によっては、『仲間を返してほしいか?』って言えるだろうな。或いは、あんた達が第二王子の関係で動いてるんだったら、『隠し事をしている教会連中を強請るための捕虜がここに居るぞ』ってところか」

 俺がそう口にすると、相手はあからさまに動揺した。おっ。どっちだ?どっちだ?

「……一体、誰の話をしているんだ?誰を捕らえている?」

 そして、相手の内、多分リーダーなんだろうな、と思しき人間が、恐る恐る口を開いた。おっ!いいね!お喋りしてくれるらしい!やったぜ!

「おっと、詳細はこの後だ。俺は一つ情報を出した。次はお前らの番だ。『どこの所属だ?』っていう質問に答えてからにしてくれ」

 まあ、ここは焦らず、ちょっとここでひと揺すりしておこう。ゆさゆさ。

「言っておくが、俺はそっちと手を組んでもいい。だが、お前らの敵と手を組むことになるかもしれない。本当にそこのところはどうでもいいんだ。さあ、どうする?先に機会が与えられたのはお前らの方だぜ?よく考えて口を開いてくれ」

 ゆさゆさしつつ向こうの出方を見守っていると、向こうは向こうでちょっとひそひそやって、相談が終わったらしい。緊張気味に、リーダーが口を開く。

 そして。

「……我々は、第二王子の命を受けてやってきた」

 ほー。

 ……一番イヤなのが来た!うおおおおおん!




 心の中でソーラン節を踊りつつも、外側はしっかり不敵な笑みでコーティングしておく。これ、アレだな。外こんがり中とろーりみたいなかんじだな。はーどっこいしょー、どっこいしょー。

「ふーん。まあ、その名乗りが正しいかどうかは判断できねえけど」

 まあまだ慌てる時間じゃない。相手が『実は教会のものだが、様子見のために第二王子派を装うことにしている』とかの可能性もあるからね。慎重にいこう。慎重に。

「まあいいや。じゃあさ、お前ら、何のためにここに来たの?第二王子はなんて言ってたって?」

「……それを聞きたいなら、こちらの質問に答えてもらおう。お前は何者だ?」

「あ、俺が答えたら教えてくれるの?なら教えるよ。俺はね、このダンジョンに呼ばれて来たんだよ。今はね、ここのダンジョンのお手伝いをしてるんだ」

「ダンジョンの……!?」

 情報はちょっと色々誤魔化したりぼやかしたりしつつ、小出しにしていく。そして相手の反応を見て、相手が何をどの程度まで知っているのか測るってわけだな。

 ……この反応を見る限り、『ダンジョンに意思がある』みたいなところからして、半信半疑だったんじゃねえかな。少なくとも、『ダンジョンにはダンジョンを操るダンジョンの主が居る』っていうところにすら、辿り着けてない気がする。

 少なくともこいつら、『ダンジョンの主の腕輪』には無反応だからな……。マジで何も知らん可能性すらあるぞコレ。

「あ、まさかそこらへん知らずにここに来たかんじ?第二王子は何て言ってお前らをここに寄こしたわけ?」

 ということで、俺としてはもうちょっとここをちゃんと突っ込んで聞きたい。少々呆れた顔で連中を見つめてやれば、連中は明らかに困惑した様子だ。だが、『我々は捨て駒ということか……!?』みたいな反応ではない。

 ってことは、かなり第二王子に近しい組織の可能性が高いな。多分、近衛兵とかそこらへん?その割には何も知らないっぽいが……えっ、ということは、第二王子自体が何も知らない可能性が!?マジで!?やだー!

「……殿下は、『教会を探れ』と仰った」

「ほー、成程なー」

「ここへ先に来た聖騎士達が居たはずだ。先程の言葉を聞く限り、彼らは囚われの身になった、ということか……?」

「うん、まあそういうことになるわな」

 成程ね。こいつらの言葉が正しければ、第二王子派は流石に、大聖堂や教会の動きが妙だ、ってところには気づいてるんだろうな。

 ……逆に言えば、俺達の予測通り、本当に大聖堂と教会は第二王子派おいてけぼりでダンジョン攻略に挑んでる、ってことになる。奴らが第二王子派を裏切りたい気持ちいっぱいなのが分かってきちまったぜ!


 いや、まあ、深読みするなら、『今、俺の目の前に居る連中は実は教会関係者で、第二王子派と見せかけてここに来ている。俺に嘘の情報を与えて攪乱しようとしていて、実際は大聖堂と教会と第二王子派は仲良し!』っていう可能性も無くもないんだけど……それをやるにしちゃあ、色々と厳しいだろうしなあ。

 何せ、実際、ダンジョンの主が入れ替わったダンジョンはそう多くなかった。どう見ても人員不足は間違いない。大聖堂や教会の中ですら、ダンジョンの主の情報を知ってる奴は限られるんだろう。

 あと、第二王子派まで一気に動いたんだったら、既にダンジョンパワー利用によってラペレシアナ様が死んでると思う。第二王子にとってはもう、さっさとラペレシアナ様と第一王子を殺しちまうのが手っ取り早い勝ち筋な訳だし……。


「……して、そちらは、捕虜を提供する、と言っていたな?」

「あ、うん。捕まえた教会関係者が居るよ、とは言ったけど。欲しいの?欲しいってことは、やっぱり第二王子派は教会と大聖堂に何か隠し事をされてると思ってて、それの探りを入れたいってかんじかな?」

 向こうの『そわそわ……』ってかんじの質問に答えつつ質問を投げ返してやると、向こうは控えめに頷いてみせた。成程ねー。とりあえずそういうかんじ、と。はいはい。

「それについては、俺が奴らから聞き出した情報を提供するだけならできるよ。或いは、俺達が見てる前でそいつらを尋問するってんなら、それでもいい。こっちから提供できるのはそこまでだな。そこから先は何もあげない。どうする?」

「……分かった。それでいい」

「そっか。じゃあそっちは代わりに『現時点でそっちが知ってる大聖堂と教会の動き』を教えてね」

 まあ、ここらへんまでしか情報は出せないだろうな、と思ってるので、とりあえずここまででいいや。向こうは『ダンジョンというものにも意思があるらしく、それらは大聖堂と教会と敵対しているっぽい』くらいに認識してくれてるだろうし、今はここで一旦キープ。後は向こう待ちだ。


「……大聖堂と教会は、今、ダンジョンに派兵している」

 そうして、向こうは割とすぐ、話し始めてくれた。話が早くて助かるぜ。

「それと同時に、王都南東部で魔物の異常な発生が見られている。どうも、大聖堂と教会が立ち入ったダンジョンで異常が発生している様子だ」

 王都南東部っていうのは、パニス村近辺ってことだな。成程ね。そこまでは分かってんのね。ちゃんと監視してるっぽいね。

 ……ってことは、『どうにかしてダンジョンを操るか、ダンジョンに異変を起こす方法があるらしく、大聖堂と教会はその方法を知っているっぽい』というところまでは予測してるんだろうなあ。うーん。


「以上だ」

「成程ね。分かった。そっちはそういうかんじなのね。じゃあ、お前らは俺達のことはあんまり知らないかんじかー」

「ああ。……先程も聞いたが、お前は何者だ?ダンジョンの手伝いをしている、というのは、一体……」

 さて。情報交換はここまでかなあ。なんとなく相手の状況が分かったっていうのはありがたいことだな。

 ここから先は、聖騎士達をこいつらに尋問させる、ってのがいい気がする。そこでのお互いの反応を見れば、こいつらが現時点で吐いてる嘘がどこらへんなのかとかも分かるだろうし。




 ということで。

「じゃ……くらえダイナマイト!」

「なっ」

 俺は、ダイナマイトを起爆!

 同時に起こる爆発!天井が崩れて埋まる通路!そして失われる、彼らの退路!

「こ、これは……!?」

 ここでこいつら、また危機感を覚えたらしい。まあそうだろうなあ。もうちょい早めに気づいていればこうならなかったのになあ。深入りしすぎたね。

「はい、お前らの帰り道は無くなりました。分かってると思うけど、今のやつ、お前らの足元とか頭上とかでも起こせるからな。今、お前らの命は俺に握られてるってこと、忘れないでね。お前らダンジョン舐めすぎだぜ?」

 勝ち誇った笑みを浮かべてみせてやると、奴らは明らかに青ざめた。まあね。いきなり爆発したらびっくりするよね。俺も自分でやったんじゃなかったらびっくりしてると思うよ。

「くそ……我々をどうするつもりだ!」

「気になる?」

 俺はにんまり笑ってみせてやって……そして、奴らに宣告するのだ。


「お前らにはこれから……温泉に入ってもらう!」


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― 新着の感想 ―
え?揉むの?
大学ってこんなコウショウ=ジツまで学べれるんだ >世界樹は高度限界突破できる はい、そーゆー記述があったかもしれません!ただ ・パニスのダンジョンと同じように天井高くにあったら世界樹植えなきゃダメそ…
初心者に優しいカラスダンジョンのぬる湯でスライムに揉まれるといい! そうして混乱からリラックス状態になった可哀想な捨て駒さんたちを洗脳ですね。
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