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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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ダンジョン防衛力向上研修*4

 はい。ということで、俺達はウパルパダンジョンを点検。

 ウパルパが作り替えたらしいこのダンジョン、まあ……温泉と酒温泉が生まれた以外は、概ね元の通りである。

 とはいえ、じめっ、としてひんやり、とした洞窟が、ほかっ、として、酒ッ!とした洞窟に変化しちゃったっていうのは、結構デカい変化のように思うが。

「相変わらず、防衛力という観点からしてみると微妙だなあ……」

 ……で、洞窟の中には、相変わらず魔物が居る。魔物の死体は無いから、多分、魔物の死体を分解吸収してから別の魔物を召喚した、とかそういうかんじなんだと思う。多分。この分解吸収をウパルパの意思でやってるのか、ダンジョンが自然とそうなってるのかは分からんけどね。

「魔物の顔ぶれが……いや、それ以上に、顔つきが、こう……変わったな」

「うん。なんか……なんか、のほほん、とした顔になっちゃってるよ、アスマ様ぁ!」

「なんてこった」

 で、現在のウパルパダンジョンに居る魔物は……うぱっ、とした顔の大亀とか、るぱっ、とした小型のドラゴンとか、なんかそんなかんじである。全体的に覇気が無い。魔物としての誇りみたいなのは無いのかお前ら!


「で、えーと……こいつら、強い魔物なの?」

 が、もしかしたら顔がこうなだけで、強いかもしれない!ダンジョン防衛を一挙に任せても大丈夫なくらいに!

 ……という望みをかけて、ミシシアさんとリーザスさんに聞いてみたところ。

「えー……うん、まあ、そこそこには……?」

「まあ……ダンジョン内で真っ向から相手にすると厄介な魔物では、あるんだが……」

 2人は、顔を見合わせて……。

「顔が……なあ……」

「顔が、ねえ……」

 ……うん。

 平和で何よりだが、防衛はしてくれよォ!なんでダンジョンが温泉と酒愛好会になっちゃったんだよォ!


 くぴくぴくぴ、と酒を飲んで、『ぷぁー』と嬉しそうな声を上げるウパルパの横で、やっぱり酒をくぴくぴやって、『もぁー』って鳴くデカい亀とか、やはり同じように飲酒中のドラゴンとか、なんかそういうのが沢山見られる謎ダンジョンになっちまったところで……えーと。

「……えーと、ウパルパをもう一回パニス村に連れて帰っていいかな。そこで……ちょっと、こう、教育しねえと……」

「そうだね……。ダンジョンとしての防衛力の前に、お酒の飲みすぎで死んじゃいそうだよね……」

 ……俺は、ウパルパをそっと持ち上げた。ウパルパは『ぷぃっ!』と抗議の声を上げていたが、無視して抱きかかえた。

 こいつには……こう、ちょっと、教育を……教育を、施さねば……!




 ということで戻ってきましたパニス村。

 ここはダンジョンエリア内の一番端っこの方だ。えーと、山の裏手。村に影響が無いあたり。

「はい、ウパルパ君。君にはダンジョンの防衛力向上研修を受けてもらうからね」

 そこで俺は、ウパルパ君にダンジョンの例をいくつか見せることにした。

「はい。まずはこれが落とし穴トラップ。こういう風にしておくと、侵入者が乗っただけで勝手に床が落ちる仕掛けを作れるからね。それからこっちは滝トラップ。滝はどんどん作れ。通路を滝で隠せば隠せるし、見つけられたとしても侵入者の体力を奪える。というかもう君のところは水系ダンジョンになれ」

 ウパルパに理解できているのかは分からないが、とりあえずダンジョンのトラップを紹介していく。ウパルパが理解しやすいような、単純なつくりのものを中心に紹介していくから、見て学んでくれることに期待するしかねえ。

「滝……滝の良さを覚えさせないといけないのか。えーと……はい、綺麗な滝つぼ!」

 まあ、酒と温泉の例からして、ウパルパは気に入ったものがあったらそれをダンジョンに再現しようとするわけだからな。ウパルパが気に入るといいなあ、と思いながら、清流の滝つぼを作って見せてみる。

 するとウパルパ、『ぷぁー!』と声を上げつつ、出来上がったばかりの滝つぼに飛び込んでいった。

 ……そのまま、ぱしゃぱしゃと泳ぎ始めている。『ぷぁ!ぷぁ!』と鳴き声を聞く限り、まあ、ご機嫌なんだと思う。よかったな。お前、酒じゃなくて普通の水でコレ作れよ?いいな?


 滝トラップの紹介がてら、ウパルパ専用、脱出用隠し通路の提案なんかをさせてもらって、まあ、そっちもウパルパのお気に召したかなあ、というところ。

 ……『本当にコレで大丈夫かなあ!?』と滅茶苦茶心配になりつつ、俺は最後に、とても大事なことをウパルパに教える。

 ということで、お茶を出す。

 香り高く、上品な甘みのある玉露である!

 温泉に浸かるぐらいだから熱は全く心配ないだろうこのウパルパ君には、ややぬるめくらいの温度で提供させてもらうぜ。

「それから、ウパルパ君。君にはお茶の良さにも気づいてもらいます」

 ……ほら。酒ばっかりだと体を壊すからね。茶にも目覚めてもらっておこうね……。


 それからウパルパ君にお茶プレゼンをしまくった結果、ウパルパ君としてはアイスジャスミンティーがお気に入りになったらしい。

 ということで、チャノキとかジャスミンとかの植物の状態のやつを見せてやって、『こういうの生やすといいよ』と教えてやった。

 ……いや、まあ、よくよく考えたら、そのチャノキから葉っぱを採って適度に発酵させて、それに乾燥ジャスミンを混ぜて淹れて氷で冷やして、っていうのをウパルパ君ができるかっていったら微妙な気がしてきたけど……。

 いや、でも、酒温泉の横に、ジャスミンティーの池ができたら、それだけでもまあ、ウパルパ君の肝臓を守ることには繋がりそうなので……。




 そうして。

「はい、ウパルパ君!今こそ君のダンジョン力を見せるんだ!」

 ……俺達は再び、ウパルパダンジョンへやってきた。そして、ウパルパ君がまた、くしゃみの寸前みたいな顔でぷるぷるし始めた。多分この顔、ダンジョンパワーを使って気合を入れてる時の顔なんだろうなあ……。

 ウパルパ君は、なんか間の抜けた顔でぷるぷるしながら頑張ってくれて、またウパルパダンジョンは姿を変えた模様。

 その結果……。

「あっ!見て見てアスマ様!あそこ、さっきのお茶に使ったお花が生えてる!」

「おお、マジか」

 なんと、ジャスミンが咲いた。……ウパルパ、お前、こういうこともできたんだな。というか、本当にこれ気に入ったんだな……。

「あちらの池には茶葉が浮いているな」

「うわあーマジでこのウパルパやりやがった」

 そしてジャスミンティーの池もできてしまった。ウパルパは池からよく冷えたジャスミンティーを飲んで、『ぷぇー』と満足気である。よかったな……。

「……あっ!でも、ダンジョンに入ってすぐ、滝つぼだよアスマ様!」

「おおー、これで侵入者の体力を削ることはできそうだな」

 ついでに、ダンジョン内の様子も多少は変わっていた。

『水と岩の地下庭園』という様相で、まあ、中々悪くない。光が差し込む滝つぼは見ていてかなり綺麗だしな。

 ……それでいて、パニス村名物の水晶もお気に召したらしいウパルパ君、滝つぼにガンガン水晶の結晶を生やしたせいで、『うっかり滝つぼに足を滑らせたら水晶の結晶でざくざくやられる凶悪トラップ』が完成している。こわい。

「えーと、奥の方は……おー……?なんか、飲酒ドラゴンがデカくなってるね……?」

「このダンジョンのお酒、魔力が籠ってるんじゃないかなあ。それを飲んだドラゴンが大きくなっちゃった、っていうことかも」

 また、ダンジョンの奥の方には、さっきよりはちょっと強そうになった魔物がうようよ居るので……ええと、多少、防衛力が上がった、と思っていいだろうか。思いたい。思わせてくれ。

「……相変わらず、気の抜けた顔つきだな」

 リーザスさん!そういうこと言わないの!あのドラゴンとか大亀とかも、なんかこう……真面目かもしれないでしょ!真面目にあの顔だったら余計にヤバい気もするけど!ああなんかやっぱり駄目な気がしてきた!

「ほ、ほら。罠の類も多少はできたみたいだぞ」

「あ、ほんとだ……。ウパルパ、お前、ちゃんと学習したんだなあ……」

 まあ、トラップがいくらかあるみたいなので……。多分アレは『隠し方が下手な罠のすぐ後に滅茶苦茶上手に隠した罠を置いておけば、1つ目を解除して安心したところで2つ目に引っかけられるぞ』というアドバイスを実践したやつだ。うーん、ウパルパ、ちょっと頭がいいのか……?


 ダメな気はするんだが、それでも以前よりはよっぽどマシである。侵入者、特に人間にとって進みにくい道というものは、それだけで防衛力向上に寄与してくれるからな。その点、水に沈んだ通路とか、美しい滝の裏側に入らないと進めない場所とか、そういうのだらけのダンジョンっていうのは、まあ、悪くない。

 ……一方で、ダンジョンの中にジャスミンが咲いていていい香りがしたり、酒の池があったり、ジャスミンティーの池があったりするから、こう……ウパルパ、本当に、こいつ、趣味に走りやがったな、というかんじがするね……。




「じゃあウパルパ。お前、くれぐれも気を付けてな」

 ということで、俺達はウパルパダンジョンを辞した。ウパルパは、『ぷぁー』とお見送りしてくれた。元気でな、ウパルパ。

「さて。じゃあ次に向かうダンジョンはどこだ?」

「えーと、じゃあこのあたりで……」

 そして俺達はまた次のダンジョンへ向かう。ダンジョンコンサルとして俺が働くためにな!

「ところで、ダンジョンごとの罠って、当然、別の方がいいよね」

「まあ、そうだな……。一度見抜かれた罠は、見抜かれやすくなるからなあ」

 うん。だよね。

 ……俺、そんなにいっぱいダンジョンのアイデア、浮かぶかしら。


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― 新着の感想 ―
ウパルパダンジョン、とても恐ろしいダンジョンになりましたね。 一度入ると出たくない人続出しそうてす。 名物はウパルパ饅頭でどうでしょう。 いや、ダンジョン主を隠すためにはドラゴンや亀にすべき…?
ウーパーがドリンクバーダンジョンになりましたね。飲み放題のやつ。他のフレーバーも増えていきそうですね。平和がいちばん
ウパルパダンジョン、採取できるものの価値が上がっただけなような。 この魔物たちは果たして外敵に反応するのだろうか…… まあ通路が水没ならぬ酒没とかしていれば、なみの冒険者は奥まで来れないかな? あちこ…
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