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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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ダンジョン防衛力向上研修*1

 コンサルというのは、コンサルタントということです。つまりダンジョン経営をサポートするのがお仕事。

「こんさるって何?」

「えーと、経営に助言する仕事。俺の地元では、内情もよく知らないのに口だけ出した挙句理想論に終始するばっかで結局何の役にも立たねえのにガッツリ金持ってくゴミみてえな奴が多かったよ!」

「何か憎悪を感じるな……」


 はい。まあ、コンサルというものへのあれこれは置いておくとして、まあ、ダンジョンコンサルだ。

「現状、パニス村周辺だけでダンジョン被害は収まってるものと見込まれるけどさ。いずれ、これってじわじわ拡大してっちゃうでしょ、多分。で、その時、ウパルパみたいな奴だと、ダンジョン防衛が苦手なわけでさ……」

「ああ、ウパルパだもんねえ……」

 俺の腕の中でウパルパが『ぷぁ!』みたいな声を上げている。抗議の声だろうか。だがこいつはダンジョンをやられかけてしまったダンジョンの主だ。安心と実績の『防衛能力が低いダンジョンの主』なのである!まあ、ウパルパだしなあ。しょうがない。

「で、多分、ダンジョンの主ってもの自体、人間とかの知的生命体がダンジョンの主をやってる例はかなり少ないと思われる。つまり、ウパルパみたいなダンジョンの主ばっかりなわけだ」

「つまり、揃いも揃って全員、防衛力が低いんだね!」

「そう!そういうこと!」

 ……ウパルパみたいな奴がいっぱい居ると見込まれる以上、他のダンジョンも『狙われたが最後、普通にやられる』という運命を辿る可能性が高い。そうじゃないダンジョンは多分、うちと、オウラ様のところの金鉱ダンジョンぐらい。

「なので……えーと、せめて『防衛力は上げろ』と助言してあげる奴が必要だと思うんだよね。或いは、ダンジョンの中に爆弾とか設置しておいてあげて、侵入者が来たら爆発するようにしておくとか……」

 まあ、そういうわけで、俺達は他のダンジョンを守るため……つまり、教会だの大聖堂だのの連中に奪わせないために、他のダンジョンを助けてやらなきゃいけないのである!

 だからこその!ダンジョンコンサル!

 ……まあ、ダンジョンの主が俺の助言を聞いてくれるかっていうのは、また別の話なんだけどさ……。




「さっき、『急場しのぎ』と言っていたが……」

「ああ、えーとね、他のダンジョンを守らなきゃいけない状況って限られてて、かつ、他のダンジョンに助言とか補助とかする形で対策する例っていうのも限られると思うし、そもそも、あんまり効率的じゃねえから……」

 さて。

 リーザスさんの疑問の通り、このダンジョンコンサルは『急場しのぎ』なのだ。

「ダンジョンの主を交代する方法が見つかればそれまでだからね」

「ああー、成程ね!ウパルパダンジョンをスライムダンジョンにできちゃうんだったら問題ないよね、っていうことだね!」

「うん。そういうこと」

 ……現状、ダンジョンの主を交代する方法は、『ダンジョンの主が死んだ後にダンジョンの主の腕輪を拾って装着する』以外に分かっていない。が、できることなら、ダンジョンの主を殺さないままダンジョンの主を交代することができるといいんだよな。それができるなら、ウパルパ相手にコンサルやらなくて済む。

 いや、まあ、スライムに交代したとして、スライムがちゃんとダンジョン運営できるかっていうと微妙なんだけど……。でも、スライム達、そこそこぼちぼちいいかんじにやってくれてる気配はあるから、まあ、現状よりはマシだと思うんだけど……。

 で、そういう風に『ダンジョンの主の交代』が技術的に可能になったなら、その次にもう一つ、目指すべきところがある。

「……最終的には、管理できない全てのダンジョンの機能停止を目指すことになると思うんだよね」

 それは、ダンジョン自体の機能停止である。




 技術は人を幸福にすると思う。俺はそう信じている。

 が、技術は万人に扱えるものではないとも思っている。……というか、万人が全ての技術を扱えるわけじゃないからこそ『専門家』ってもんがあるんだよな。

 であるからして、技術というものは……その恩恵は万人に齎されるものであれども……技術自体については、『専門家』以外には気軽に触れない方がいいものも多い、と思う。

 というか、触れる触れないはさておくにしても、技術には制約が伴うべきだと考える。

 だから、自動車の運転にはちゃんと試験をパスした人だけに与えられる免許証が伴って然るべきだし、劇物の購入には身分証の提示が必須であるべきなんだよな。


 そしてそれは、この世界における『ダンジョン』についても同じだと考える。

 現時点でこの世界のダンジョンには、何の制約も課されていない。ただダンジョン最奥に居ることが多いウパルパみたいなのをぶっ飛ばして、腕輪を奪って、それを装備するだけで手に入っちゃう技術の塊なわけだ。

 で、この『ダンジョンを攻略する』っていう制約が、緩すぎる。そもそも、『ダンジョンを運営する』のと『ダンジョンを攻略する』のはそれぞれ別の技能が必要になるわけで、そこんとこも噛み合ってない。

 ……まあ、結論を急ぐなら、『全てのダンジョンは適切に、知識のある者だけによって管理されるべき』なんだよな。

 で、現状はそうではない、と。そういうこと。


 ……ということを考えていくと、まあ……安全を取るなら、全てのダンジョンを機能停止させて、永遠にダンジョンが生まれないようにするのが手っ取り早いんだろうな、というところまでは、考えが行き着く。

 ダンジョンは魔物という資源を生み出す場であり、多くの労働者が食い扶持を稼ぐ手段になっているわけだけれど、それだって何かの拍子にダンジョンの主の座が奪われて、殺人ダンジョンになっちまう可能性が常にあり続けるわけだから。

 だが……やっぱり、ダンジョンは資源だし。技術は、希望だし。それらを捨てるなんてとんでもない!という風に、俺は思う。

 だって、パニス村ダンジョンを見てみろよ。温泉だぜ?温泉にスライムがぷかぷか浮いててベリーキュートなんだぜ?

 ついでに、スライムによって育つ作物が美味しい酒や食事や質の良い布やいい香りの香油なんかを生み出してくれるし、ダンジョンから産出する宝石で工芸品や装飾品が作られるわけだし、ダンジョンパワーで湧いてる温泉はいい気持ちなんだし。

 ……こういうものを生み出すことだってできるんだから、全てのダンジョンを消すのは勿体ないだろ、と思う。

 だが、規制も無いと、ダンジョンってものをこういう風に運用できなくなっていくだろうな、とも思う。まあ、主に大聖堂とかの連中のせいで、そうなる。そうなってる。

 だから、最終的には……管理できないダンジョン全ての機能停止を目指す、ってことになると思う。

 というか、それが、この世界にダンジョンを残すために必要な措置だと思う。

 ……勿論、ここらへんはラペレシアナ様とか、この国の有識者とかに考えてもらって、決めてもらわなきゃいけないと思うけどさ。




 ま、そういうわけで、最終的に目指すところは『ダンジョンを管理下に置くこと』と『管理下に置けないダンジョンを全て機能停止させること』なんだよね。

 となると、ダンジョンコンサルをやる必要は、無い。無いのである!

 ……が、結局、ダンジョンを管理するにも機能停止するにも、その決まりというか、法律というか、そういうものを作ってもらってからの方がよろしいので……で、それらの完成を待っている時間はなさそうなので……。

「まあ、現状、必要なのはこの場しのぎの手段だから!敵が占拠しちゃったダンジョンを潰してスライムをダンジョンの主に据え直して、まだ敵が占拠していないダンジョンは占拠されないようにコンサルする、ってことになると思う!」

「そっか!そういうことなんだね!」

 そう!そういうことなの!

 ……ということでいかがでしょう、とミシシアさんとリーザスさんを見つめてみたところ、『まあ、それが妥当だよなあ』という顔で頷いてくれたので、俺としても一安心。よかった、これで『ダンジョンを奪い合い、滅ぼし合う世界こそが至高!』とか言われちゃったらどうしようかと思ったぜ!


「……じゃ、早速目の前の問題から片付けていくとしましょうかね。はーやれやれ」

 はい。じゃあ方針が固まったところで早速動くか。

「まずは、パニス村周辺の魔物。そいつらを片っ端から片付けていこう」

 ……まずはここから片付けないとね。ラペレシアナ様、うちに来られないからね。




「ダンジョン範囲外の魔物をどうやって倒すか。それが大きな問題なんだよなあー……」

 さて。では早速、問題の解決に勤しむよ。

 ……問題は、今居る魔物がパニス村を包囲する形になっている、ということ。同時に、それら魔物の群れがダンジョンエリア外に居るってのも問題だな。つまり、ダンジョンパワーで直に一掃する、みたいなのが難しい。

「線引いて高圧電流流して道を作るとか……いや、俺、科学の徒だけど化学の徒だからあんまり電気関係詳しくないのよね……」

「アスマ様がなんかまたよく分かんないこと言ってる……」

 うん。そうだろうね。でも科学の徒って言っても、化学の徒から生物の徒から物理の徒から地学の徒から、色々居る訳でさ。細分化していったらマジでもう分かんねえぐらいの細かさになっちゃうわけでさ……。

 ……うん。

「そうね。あんまり難しく考えなくてもいいのか……」

 まあ、相手は魔物だ。ファンタジーではあるが、獣だ。なんかよくわかんねえ見た目の奴とかも居るが、まあ……生物であることに間違いは無かった、と思う。

「装甲車作ろう」

 ならばこれでよし。




 魔物を殲滅しようと考えるから大変なのだ。逆に考えればいいのだ。『魔物が居ても移動できればいいや』って。そう考えればいいのだ。

 まあ、自動車というものの素体はラペレシアナ様達が作ってくださったんでな、俺はそれを改造して、再構築でひたすら頑丈な箱を作ってやればいいだけである。素材使い放題なのはありがたいね。

 ……で、まあ、頑丈にして、かつひっくり返されないような車にしようとすると、当然ながら4輪駆動って訳にいかない。沈む。舗装されてない土の道が続くこの異世界において、重量ゴリゴリ4輪車ってのは、動けなくなる!

 ならしょうがねえからキャタピラである。設地面積を増やすことによって、自重に耐えられるようにするのだ。ついでに、悪路を走れるようにもなって大変よろしい。

 問題は、運転の感覚が大分変わっちゃうことだが……まあ、異世界だからね。村とかに突っ込みでもしない限りは、コースアウトして大変、みたいなことは無いのである。障害物に引っかかって動けなくなるとかが起きない限りはいくらでもコースアウトしてよろしい。この世界にはジュゲムも居ないことだし……。




 ということで、装甲車ができてしまった。

 なので、帰ってきてそうそう申し訳ないが、リーザスさんとミシシアさんに出発してもらう。俺は引き続き、パニス村の防衛に努めます。

「いってらっしゃーい」

 ぎゃりぎゃりぎゃり、とキャタピラが元気に駆動して、二台の装甲車……というか、戦車が村を出ていく。これでラペレシアナ様側の戦力を貸していただければ、周辺のダンジョン攻略が現実的なものになるからな。

 そうしたらいよいよ……俺のダンジョンコンサル業が始まる、というわけだ!




 が。

「あれっ、帰ってくるの早くね?」

 城壁の上から周辺を警戒していた俺の目に、出ていったばかりのはずの戦車二台の姿が飛び込んでくる。

 ……そして。

「流石ラペレシアナ様だぜ!」

 なんか、見覚えのない車……『戦うための車です!』ってかんじのブツが数台、付いてくるのである!

 流石だ!流石だぜ姫様!

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― 新着の感想 ―
さすラペ、貴様らのいる場所はすでに通過している!
ラペレシアナ様の世紀末覇者化が進んでいくゥ! そこに痺れる憧れるゥ!! イメージは世紀末漫画のラオウ様でハート様でも無く、錬金術マンガのブリッグズの北壁。
ラペレシアナ様、機械似合っちゃう系女子ですね。ウーパーを小脇に抱えてても絵になるんでしょうね、見てみたいw
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