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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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スライム親善大使*6

 ということで、俺の手には『ダンジョンの主の腕輪』がある。

 あるよ。ある。めっちゃある。ちゃんと刻印されてる文字もそれ。ただし、『ダンジョンは、主を待っている』の文章がある。あるってことは……つまり、このダンジョンの主は死んだ、ということだな……。

「えええ……お前、これ、どうすんの……?いや、でも事故防止って点では持って帰ってきたのは偉いか……」

 スライムはもっちりもっちり、自慢げにこれらを持って帰ってきてくれたんだが、どう考えてもこれはまずい。特に、エルフに見られたらまずい。

 だって、『ダンジョンの主の腕輪』が存在していることをエルフに知られたら、そのままエルフに『ダンジョンを支配することができる』って情報まで伝わっちゃうから!

 更に、『ダンジョンの奥には俺の世界に通じる割れ目があってそこから情報および魔力が降り注いでいる!』とかまで知られたら、下手したら俺の世界にまでなんか影響が及びかねない!それは絶対に避けるべきである!

「アスマ様ー!スライム帰ってきたー!?」

「あ、あああうんまあ帰ってきたんだけどちょっと待ってちょっと待ってねミシシアさんああああちょっと待って待って待ってあああああああああ」

 が!ミシシアさんが善意だけで俺の方に来ている!そして、スライムが帰ってきたと見たスライム大好きお姉さんも来ている!その後ろからは更に、エルフ達があああああああああ!


 その間、一秒。

 俺ができたことは……目の前のクソデカスライムの頭に、もにょっ!と、ダンジョンの主の腕輪を埋めることだけであった!隠せ隠せ隠せ!




「……あの、アスマ様、この腕輪って」

 見て、ミシシアさんはすぐ気づいた。リーザスさんも『これは……!』と状況を把握した様子であった。ラペレシアナ様はなんか面白そうに眺めておいでである。そして、エルフ達にはまだ、バレてない!

「あー、なんか見つけたっぽい。でも気に入っちゃったみたいだから、取り上げないであげてね」

「そ、そっか!じゃあ、これは取り上げちゃったら可哀想だね!取らないであげようね!」

 ミシシアさんの大根役者っぷりが際立つが、俺とミシシアさんがおろおろしていたら、エルフ達は『そうか、スライムからこれを取り上げると何か面倒なことになるんだな……』と、非常に好意的な解釈をしてくれたらしい!そっ、と距離をとってくれた!ありがてえ!ありがてえ!

「……一応、スライムが持ち帰ったものを確認したいのだが」

「あー……すみません、スライムが飽きたら返しますんで、今はご勘弁を」

 エルフリーダーからは『確認……』と手が伸びてきたが、俺は背にスライムを庇うようにして、その手を、さっ、と遮った。

「あ、でもこっちは渡してくれるっぽいですね。ほい、ありがとありがと。うん、お前、そっちの車の中で遊んでなさい。お疲れ様。あ、ミシシアさん、ちょっとこいつ車に入れといてもらっていい?」

「わ、わかった!ほら、こっちだよー」

 ……スライムからは大聖堂の紋章のネックレスを回収して、ダンジョンの主の腕輪とスライム本体はエルフ達から隠すべく、さっさと車へイン。ありがとうミシシアさん。よろしく。

「で、これです。はい」

 まあ、エルフ達の目を引く分には、このネックレスさえあればOKだな。これ1つでかなり情報が多いから。




「これは……!」

 紋章を見て、エルフ達も気づいたらしい。そう。これは大聖堂の紋章。

 つまり、エルフ達に『祝福、要りませんか?あとパニス村には世界樹があると噂があったことがありまして』みたいな情報を持ってきて鬱陶しがられていた例の元大聖堂の連中。あいつらがこのダンジョン内に居たという証拠である。

「これがダンジョンの中にあった、ということは……例の人間達がダンジョンで何かしていた、ということか……」

「何をしていたのかしらね……。まさか、ドラゴンを操るようなことをしていたとは、思えないけれど……」

 エルフ達は早速、考察を始めた。頑張って考えてくれ。ダンジョンを操っていた、というところまで推測が行くかは分からんが、時間稼ぎはできると思う!

 それに何より……ダンジョンを操る方法自体は、手掛かりが無いからそこで止まってくれるはずではある。よし。頼む。頼むぞ。

「……だが、あの人間が何かしていた可能性は非常に高くなった。となると、ダンジョンの中を見てみたいが……」

「あっ、ちょっと換気が終わるまでは入らない方がいいですね。あと、ガスがどれくらい反応せず残っちゃってるかが分からないんで、まあ、丸3日くらいは置いといてもらえるといいかな、と……」

「……不便だな」

「いや便利でしょ何言ってんの……これ無かったらダンジョン攻略に死人が出てたかもしれないんだぞ……」

 エルフ達はダンジョンを調べたいみたいだが、今はそれも待ってもらおう!これがあると思ったからこそのシアン化水素だったからな!

 我が知略に敗北無し!




 はい。

 ということで、車の中。

「……この腕輪、ダンジョンの中にあったんだよね?」

「うん。『遺品とかあったら持ってきて』って言ったらこれ持ってきちゃった」

「わぁ……遺品……」

 ミシシアさんとリーザスさん、あとラペレシアナ様と一緒に会議中だ。だが、どうしようもない。どうもしないというか、どうしようもないのである!

「あー……つまり、元大聖堂の司祭の1人がダンジョンの主になっていた、ということか?」

「恐らくは、そうだと思う。で、まあ、確実に死んでるね」

「ここに腕輪があるんだもんねえ……」

 俺はなんとなく、南無、と手を合わせておく。元大聖堂の連中にはいい思い出が全く無いが、シアン化水素自体か、はたまたシアン化水素への引火かによって死んだことを思うと手の1つくらいは合わせとかなきゃね……という気持ちである。俺が殺しちゃったようなもんだからな、これ……。ううう、俺もこれで殺人犯……。

「ということは、この腕輪を身に付ければ、ダンジョンの主になってしまう、ということか」

 が、罪の意識に苛まれるより先にやるべきことがある。

 そう。この腕輪、どうしよう!


 今もクソデカスライムの中にふよふよ浮いているこの腕輪だが、まあ、こいつは大きな災害を巻き起こすレベルの代物だからな。ダンジョンを下手に使ったら、それこそ核戦争ぐらいのことができちまう。やろうと思えば、割と何でもできちゃうと思うよ。マジで。

「これは間違いなくダンジョンの主の腕輪……だな。うん。アスマ様の腕にあるものと同じに見える」

 ね。ついでに、ウパルパの前足にくっついてたやつとも同じに見えるぜ。つまるところ、ダンジョンの主の腕輪。オーケイ。

「不思議なものだな。特に何か、力があるものには見えないが……うむ、何か書いてあるのか。読めんが」

「え、あ、読めないですかこれ」

 そしてラペレシアナ様は、ダンジョンの主の腕輪に刻まれた文字を読めない、らしい。

「あの、リーザスさんとミシシアさんもこれ、読めない?」

「うん!読めない!何の文字?」

「俺も生憎、読めないな……」

 そ、そっかー。これ、何の文字なんだろ。というか、誰なら読めるんだろ。おおーん……。


「えーとね、この腕輪にはこう書いてありますよ、っと……」

 ということで、クソデカスライムの中にある腕輪の文字を読んでいく。

「ダンジョンは、あらゆる物質を食らい、魔力へと変じる機構である。ダンジョンは、魔力を用い、あらゆるものを生み出す機構である。ダンジョンは、新たな魔力を求めて活動する。ダンジョンは、眠れども滅びない……あれ?」

 ……が、スライム中の腕輪の文字を読んでいって、俺は、そこで止まることになる。

「ど、どしたの?アスマ様」

「……無い」

 恐ろしいことに。

「『ダンジョンは、主を待っている』が、無い……」

「へ?」

 ……スライムの中の腕輪には、『ダンジョンは、主を待っている』の文字が、無いのである。




「さ、さっきまであったのに!あったのに!え!?え!?これどういうこと!?」

「え!?あの、アスマ様!?なんかあった!?」

「めっちゃあった!」

 これはまずくないか!?今、あのダンジョンには主が居るってことか!?

 さっき確認した時には確かに、『ダンジョンは、主を待っている』の文字があったが、もしかして、あれからダンジョンの中で何かが復活……。


 ……いや、待てよ?

「……あー、スライム君。君、もしかしてダンジョンの主になっちゃった?」


 恐る恐る聞いてみたところ、クソデカスライムは、もっちり、ぷるるん、と体を震わせて、その体の中にしまった腕輪を揺らすのだった。

 ……おへんじして!




 が、クソデカスライムのおへんじは、別の形でやってきた。

「な、なんだ!?何が起こっている!?」

 ごごごごごご、と地鳴りのような音が聞こえ、エルフの焦った声が聞こえてきたので、俺達は慌てて車の外へ飛び出す。

 ……すると。

「温泉ができとる」

 そこには、温泉がほこほこと湯気を上げていた。

 なので俺の思考回路はショート寸前。何このミラクルスライム。




 それからもダンジョンの異変は続いた。

 温泉はほこほこと湯気を立て、その周りにはいいかんじに草花が生え、一度焼けてしまった大地からは木々がにょっきりと生えて育ち……そして!

 もっちり、もっちり、ぞろぞろぞろ……。

 ……ダンジョンの入り口から、10匹程度のスライムが這い出てきたのである!

「スライム!スライムスライムスライムスライムスライム」

「うわっあのお姉さんマジでこええなオイ」

 当然のように、スライム大好きお姉さんが飛びつきに行った。怖い怖い怖い。目がいっちゃってる。怖いよアレ。

「えっ、えっ、あの、アスマ様!?あれってもしかして、この子がやってるの!?」

「その可能性が高い!が、おいクソデカスライム君!いや、マスタースライム君!ちょっと一旦ここで止めとけ!じゃないとお前が討伐されかねねえ!」

 マスタースライム君がどこまで指示を理解できるかも、どこまで指示に従ってくれるかもわからん状態ではあるが、これはまずい。これはまずいのである!

 ここでなんとかしておかないと……俺も世界も、このマスタースライム君自身も、危険なんだよぉ!頼むよぉ!


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― 新着の感想 ―
そっか……持ってきた時点では「アスマに渡すもの」認識が有ったから装着してる判定にならなかったのかな??そしてアスマに渡された事で装着判定…………腕が無いスライムだからこその判定だよ……ね?金鉱ダンジョ…
やっぱり温泉好きなのねー
温泉ダンジョンだー!
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