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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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スライム親善大使*1

「おおお……エルフからの書状がお詫び文から始まるの、かなりレアなんじゃない?」

「そうだな。恐らくこの国始まって以来の珍事だ」


 ……届いたエルフからの書状は、『こっちが急に仕掛けちゃったみたいになっちゃってごめんねー』みたいなかんじのお詫び文から始まっていた。

 まあ、舐め腐ったお詫び文ではあるが。『色々勘違いがあってー』とか『まあお互い被害が無くてよかったじゃん?』とか、そういう舐め腐った内容がぽんぽこ出てきているが。

 ついでに、『まあそもそもそっちは人間でこっちはエルフだし』とかそういう態度も透けて見えるが。お前らまとめて佃煮にするぞ。

「……まあ、こんなんでも一応、エルフが出した公的文書にこういうお詫びの文章があるってこと自体、かなり珍しいことではあると思うよ。これがあるってことは一応、エルフはこっち側につく用意があるってことだと思う」

「成程ね」

 まあ、ミシシアさんの見解に俺も賛成だぜ。うちの捕虜エルフ5人を見てても分かったが、エルフってのはかなり高慢ちきな連中らしいからな。そいつらが一応、こんなんでもお詫び文を書いてきたってことは、まあ……えーと、多分、それだけ世界樹の存在が、デカい!

「世界樹とミシシアさん様様だな」

「えへへ。褒められちゃった!褒められちゃった!」

「褒めちゃった!褒めちゃった!」

 エルフの価値観がどうだかってのはさておくとしても、まあ、世界樹を見せたのは正解だったな。これでエルフにとことん舐め腐られるってことは無くなった、っぽい。……本当に、エルフにとって世界樹ってデカい存在なんだなあ。面倒っちゃ面倒だが、ありがたいっちゃありがたい。


「さて。中身の薄い詫び文はさておき、その続きだが」

 で、ばっさり切って捨てるタイプのラペレシアナ様に先導されて、俺達は続きを読んでいく。

 ……すると、そこにはエルフの里の窮状が記してあった。

「近所のダンジョンから魔物がめっちゃ湧いてて困ってる、と。ほー」

「一方、アスマ様のダンジョンには世界樹が生えている、ということを知って、ダンジョンをエルフの統治下におく方法があるのでは、と期待しているんだな、これは。うーむ」

 どうも、エルフ達はダンジョンに大層お困りであるらしい。




 エルフ達の文書には、そう詳しくはないが事情が書かれていた。それが、『ダンジョンから魔物がめっちゃ出てきて困るんだよね』である。

 エルフの魔法はかなり強力なファンタジーパワーであるわけで、ついでにミシシアさんを見ていたら分かる通り、弓の腕もすごいのがゴロゴロいるんだろうと思われるから、まあ、武力はかなり高いんだと思う。

 が、それでも苦戦するレベルの量の魔物がワキワキと湧いてくるんだとしたら、そりゃもう、大分やべえ状況じゃないのかなそれは。

「ダンジョンから魔物が出るようになったのはここ一月くらい、らしいね。エルフの里がたった一か月で動き出すなんて、よっぽどのことなんだなあ……」

「あー、エルフってのんびり屋、多いんだもんね……」

 俺は忘れませんよミシシアさん。『今はもうちょっとこの村に居るつもり!』と言っていた、世界樹を植える前のミシシアさん。彼女、『5年くらいは!』とも言っていたからな。……エルフにとって、5年は、『NOW』な訳だ!となったら1か月なんて、マジで一瞬の内の話ってことになるよね。すげえスピード感!

「……それほど困っている、ということであろうな。まあ、そのくらいなんとかせよ、と思わないでもないが」

「エルフは人間よりもダンジョンとの付き合いが下手なんだよ、ラペレ。私もそうだったけれど……金鉱ダンジョンみたいに、ダンジョンの中に住むなんてこと、考えたことも無いエルフが大多数だと思うよ!」

 まあ、うん。エルフは割と保守的な性質らしいからね。そういう発想に至らないし、そういう考え自体に忌避感がある、ってかんじかもね。

「しかし、ラペレシアナ様。エルフでも手を焼くほどの魔物がダンジョンから出るようになった、とするならば……嫌な予感がします」

 ……まあね。リーザスさんの言う通りよ。

 なんか、めっちゃ嫌な予感がする。エルフが舐め腐っているとはいえ、不慣れなお詫び文を出してきたあたりからも、なんとかしてこっちが知るダンジョンの情報を引き出そうとしているのをひしひしと感じる。

「もしかしたら、エルフを釣るにあたって、スライム農法よりもダンジョン関係の話の方が興味持たれるやつかなあ、これ」

「でも、ダンジョンの主の座を奪える話とかはしない方がいいと思うよ。じゃないと、人間の国を亡ぼすためにダンジョンの力を使おうとするエルフが絶対に出てくるもん!」

「ワァオー……そいつはやべえな」

 ダンジョンの話、ねえ……難しいところではあるが、内密にしつつことを進めるしかねえな。特に、エルフ連中と……あと、元大聖堂の連中には、知られたくない。

 下手すると、こっちの国内のダンジョンが支配されて、魔物を吐き出し続けるやべえ場所になりかねないし……。

 ダンジョンって、そういうテロ行為にめっちゃ向いてる訳だし……。

 ……嫌な予感しかしねえ!




 ということで、捕虜エルフ5人の処遇も決まった。

 何せ、エルフからの書状に捕虜エルフ5人に対する処遇の申し出も書き添えてあって、更に、エルフ5人宛ての辞令が同封されてたからな。

 ……彼らは俺達が『万一』ぐらいで考えていた『エルフが人間に対して友好的にしてきた場合には橋渡し役になってもらう』のルートを辿ることになる。あいつらが最初に来た時にはマジで全く考えてなかったルートだよこんなん……。

 まあ、住み心地が良いとはいえ地下に閉じ込めとくと、エルフは段々しおしおしてきてしまうモンらしいので、さっさと伝えて出してやるとしよう。流石にエルフの里からの辞令があって尚、人間を襲おうとかは思ってないと思うよ。多分。


「はい。あんた達は今日から捕虜じゃなくて、人間とエルフの橋渡し役らしいです。よろしくね」

 ……ということで、俺達はエルフ5人を地下の中庭に集めてそう伝えた。すると、やかましい弓エルフが思いっきり喜んでた。『自由だ!』ってことらしい。お前、そんなに地下が嫌か?まあ嫌なんでしょうね……。この中で一番しおしお度合いが大きかったのがこの弓エルフなので、まあ、分かる。

「じゃあこれ、着替えね!外に出てもらうことになるから、服が無いとね!あっ、パニス村の麻はとっても質がいいんだよ!着心地いいと思うから、存分に味わってね!」

 ということでミシシアさんがにこにこ笑顔でエルフ達に配布しているのは、パニス村名物、『クソデカスライムから生やした麻で織り上げた布』から作った衣類である。

「スライム達が手伝ってくれるから、こんなに良質な麻ができるんだ!」

「スライムが……」

 早速、スライム大好きお姉さんは興味津々で服を着た。それを見て、他4人も服を着た。で、着心地の良さとかを確かめて、『おお』『柔らかくて軽いじゃない。いいわね……』なんて話をしていた。

 まあ、中々の好印象であるらしい。既に散々、パニス村アピールをしまくってるからな。彼らのパニス村に対する印象は既にかなり良いのだよ!

 ……ところで。

 今の今までこのエルフ達、着ているものが下着だったんですよ。

 いや……その、他意は無くてね?ただ、地下の貴賓牢の整備に集中してたら、服のことまで頭が回らなかったからそのままになっちゃったっていうか。

 スライムからは出すにしても、装備を下手に返すとなんかやられそうだし、しょうがなく、こういうことに……。

 が、このエルフ達、下着だけでふらついていても、特に寒くなければ抵抗が無いっぽいんだよね。だから今の今まで、『まあ、そういうモンならこのままでいいか……』と放置してたんだけどね……。

 尚、ミシシアさん曰く、『エルフは全裸でいることもそんなに気にしない人が多い』そうだ。すげえなエルフ。

 だが、捕虜じゃなくなるんだから服は着てもらうぞ!じゃないと公然わいせつになっちまうからな!




 ということで、エルフ5人には早速、スライムに埋もれて気絶してもらってから地上へ運搬。エレベーターみたいなものを作って、それでよっこいしょ、と。

 で、エルフ5人が居なくなった直後に、地下貴賓牢は全部分解吸収して、元の岩盤に再構築しておいた。事故防止。

 ついでに、ダンジョンの道順とかも全部一旦潰して再構築し直した。これも事故防止。こういうの大事だからね。

「外だ……!ああ、風だ!太陽だ!」

「ああ、すごく久しぶりに思えるわ……」

 まあ、外に出たところでエルフ達を起こしたら、彼らは非常に喜んでいた。主にやかましい弓エルフとやかましい杖エルフ。そうか、そんなに外に出たかったんだね……。よかったね……。


「じゃあ、早速だがあんた達はエルフの国とこの国……の、とりあえずパニス村とを繋ぐ親善大使、っていう役割になったらしいので、俺達もあんた達を親善大使として出迎え直そうと思う」

 ということで早速、俺から一言のお時間だ。……まあ、あんまり釘ばっかり刺してたらかわいそうな気もするが、刺さずに後悔はしたくないので。

「勿論、あんた達がこっちを舐め腐った態度を取ってくれていたことは忘れちゃいない。……が、それだけだ。今のところはな。あんた達が、真っ当に、俺達と関係を築こうとしてくれている間は、俺達だって真っ当にあんた達と関係を築く努力をしていくよ」

 俺はこういう立場で、こういうつもりでいるぞ、と表明しておくことには意味があると思っている。まあ、相手も真っ当なやり取りができないわけじゃなさそうだ、ということはここ10日で分かったし。

「……ああ。こちらこそ、よろしく頼む」

 そうして、10日前からはおよそ考えられないことに、エルフのリーダーが俺に手を差し出してくれたので、俺はその手を握ってぶんぶん振った。

 ヨシ!


「ってことで早速だけど、ゆっくりしていってね!」

「お酒、地下には無かった奴もあるんだ!林檎を漬けたやつもおすすめだったけど、こっちの、ベリー類のブランデーもすごく美味しいんだよ!」

「温泉も、本当の空を見ながら入る露天風呂は格別だぞ。是非楽しんでくれ」

 俺達は早速、エルフ5人組をおもてなしし直すことにした。おもてなしし直し。なんか早口言葉みてえになっちまったが、実際、おもてなしし直しである。

 相手は俺に握手を求めてくる相手。思うところはお互いあるにせよ、ひとまずそれは腹の中に隠して、表面は上手くやっていこうと努力し合える者同士。

 だったらまあ、お互いに仲良くやっていきたいからね。ついでに、エルフ達に人間の価値を認めさせるためにも、この村のおもてなし力を見せつけてやるのだ。ほら見ろ、早速、やかましい方の弓エルフがミシシアさんによるベリーブランデーの誘惑によって陥落している……へっへっへ。




 エルフ達は、人間の冒険者達にもなんか受け入れられてしまった。

 まあ、酒飲んでいい気分になってるところで『エルフのお客さんは珍しいなあ!』『魔法が得意なんだって?エルフの里の暮らしの話を聞かせてくれよ!』『こっちも食え!』『飲め!』『舐めろ!』ってやってたら、まあ、エルフもそれに流されるわな。

 特に、やかましい杖エルフ……ちょっと高飛車でツンケンした態度の女性エルフだが、彼女はお気に入りになったアロマウォーターと、そのほぼほぼ上位互換みたいな精油とを手に、にこにこと温泉へ向かっていくところを女性冒険者達に捕まって、見事、流された。

 というのも、『若さの秘訣は!?』『綺麗な髪ですね!』『かわいい!』『だがお肌はスライムの勝ち!』とやられて、見事に『こんなに人気者なら人気者として振る舞ってやらねば……』と思っちゃったらしい。

 ……まあ、『相手はどうせこっちを嫌ってる』って思うなら容赦なく見下せるけど、『相手はどうも、無邪気にこっちを慕ってくるようだ……』となったらツンケンしてられねえよな……。

 うん。まあ、こういうところで流されちゃう連中なので、上手くやっていける気がしているよ。


 一方、リーダーエルフと寡黙な弓エルフも酒をちびちびと楽しみながら人間の冒険者達に囲まれて何やら話していて……そして、一番の問題児、スライム大好きお姉さんについては。

「スライムがいっぱい……それに、見たことのない魔法……!」

「あ、うん。ここはスライム農園。スライムが働く場所だぜ」

 ……スライム農法の現場を見て、ものすごく目を輝かせていた。

 やっぱり興味ある?ですよね?じゃあ、ひとまずこれは取引の材料にさせてもらっていい?


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― 新着の感想 ―
エルフの里や生活圏がダンジョンの範囲に含まれてしまったら魔力をモリモリ蓄えて魔物もジャンジャン生成されて溢れるだろうね
地下なら、風はあんまり無いわなぁ。閉鎖的なとこだもんね牢屋ってもんわさ。まぁ、全部アスマ様とスライム達のおかげでエルフも陥落早そうだw
このエルフたち、もし帰ってこいって言われた離れることができるのだろうか 無理だろうなぁ 特にスライムの人
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