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体調が悪いです

 週末の楽しかった? デートも終わり、普通の学校生活が始まる。

 天気は僕の気分を表すように曇り空。

「はぁ……」

 溜息交じりに教室の窓の外を見れば今にも雨が降りそうな気配である。

 前の席の奈菜ちゃんは長いポニーテールを揺らしながら、次の数学の宿題を必死に写している最中だ。

 それをボーッと眺めていた僕は手が自然と動いてしまう。

「ふぎゃ!」

 突然、ポニーを引っ張られ、奈菜ちゃんが悲鳴を上げた。

 そこに山があったら登ると一緒で、そこに奈菜ちゃんのポニーがあれば引っ張るのは仕方ないと思うんだよね。

「何するですの!」

 奈菜ちゃんが振り向き、非難するような目で僕を見る。

 まだ僕の手には奈菜ちゃんのポニーが握られていてクイクイ引っ張っていた。

「うーん、奈菜ちゃんのポニーはわたしのものだよね? あははは」

 乾いた笑いが自然に零れ出た。

「……由乃ちゃん今日元気ないみたいですけど、何かあったですの?」

 そんな僕に奈菜ちゃんが心配そうな声を掛けてくれる。

 優しいよ、只のロリじゃないね……

 ポニーは諦めたようで、僕の好きにさせてくれていた。

「うーん、何にも無いといえば何もないんだけどね、あると言えばあるかな……」

「意味判らないですの?」

「うん、奈菜ちゃんには意味判らないかもしれないね」

 何故なら奈菜ちゃんのロリ体型なら、きっとまだに違いない筈だから……

 そう思いながら奈々ちゃんの体を見ていたら、奈菜ちゃんの目がジトーっとなる。

「今不愉快な気配を感じたですの!」

「気のせいだよぉ……」

 クイクイと奈菜ちゃんの長いポニーを引っ張る。

 艶のある滑らかな指通り、癒されるね!

「むむむ……」奈菜ちゃんは納得いかなそうに唸り声を出している。 

 こういう拗ねた感じが可愛いよね。

「でも、本当にどうしたですの? 奈菜心配ですの!」

「うーん、でもこればっかりはね。奈菜ちゃんに頼る訳にもいかないし……」

「それでもですの――奈菜は由乃ちゃんの力に成りたいですの!」

 僕のノートを写してる時じゃなければ、もっと感動できた台詞かもしれない……

 苦笑しそうになる。

「ありがとね、でも、奈菜ちゃんは十分ポニーとして役に立ってるから大丈夫」

「……それは何だか嫌ですの」

 僕はむくれる奈菜ちゃんをまぁまぁと宥めて、

「時間が無いから早く写した方がいいよ」と前を向かせた。

 奈菜ちゃんは渋々従った感じだが、ポニーだけはそのままにしてくれた。

 くいくい、「うぐぅ」奈菜ちゃんのポニーは和むねぇ。

 一つ1000円ぐらいで販売して欲しいぐらいだよ。



 ――なんで僕がこんなに弱っているかといえば、そう……アレである。

 由乃の記憶からそろそろ来るだろうと判っていた、女の子の日が来てしまったからだ。

 お腹の中がシクシク痛み、経験の無い血が股の間から流れ落ちている。

 朝起きて、ショーツが血に染まっているのを見た時は真っ青になったぐらいだ。

 現在はお薬を飲んで、痛みはなんとかなっているけど、その代わりにボーっとなってしまいやる気が出ない。

 これが毎月あるのだから女の子は大変だと頭が下がる思いだよ。

 奈菜ちゃんが本当に羨ましいね……


  

 お昼休みになる頃には僕があの日なことは、親しい女子の間には知れ渡っていた。

 奈菜ちゃんにもバレて、

「良く判るですの、奈菜も重い方なんですの!」

 とか言われ、思わず、

「冗談だよね? 奈菜ちゃんはまだあるわけないじゃない」

 と真剣に聞き返してしまい、怒りの矛先をかわすのに苦労したのは痛い思い出だ。

 食欲もイマイチ沸かず、お昼ご飯に買ってあったホイップメロンパンを眺めていると、玲と京香さんの二人が近付いてくるのが判った。

 二人共学食に行っていたので、食べ終わって戻ってきたのだろう。

 いつも一緒に食べている奈菜ちゃんはデザートのいちごをハムスターのように頬張っていた。

「おいおい、まだ食べてないのか?」

 玲が僕のホイップメロンパンを見て、呆れている。

 京香さんの方は心配そうに僕を見ていた。

「うん、食欲がないんだよね……」

「そかそか、なら京香食べてやれば? 運がよければ平らな胸が大きくなるかもしれないからな?」

「あんですって!」

 いきなり話を振られた京香さんが玲を睨みつける。

「いやだって、寸胴だろ? 女としてそれはどうかと思う訳だ」

「……私の胸は、適度な大きさなのよ。由乃さんと大差ないじゃない!」

 京香さんに言われ玲の視線が僕の胸を捉える。まるで鷹のようだ。

「うむ、由乃は体が小さいから似合っているけど、京香はもうちょっと無いと駄目だろ?」

「ふん、女は胸だけじゃないわ!」

 強がっている京香さんを見て玲がヤレヤレと首を振る。

「あるに越したことはないと思うんだよな? 揉み応えが足りないじゃないか」

「な、何、変な手の動きさせてるのよ!」

 ニギニギしていやらしく動く玲の手から逃げるように、京香さんは一歩後退し自分の胸を両手で防御した。

 僕はというと……奈菜ちゃんに視線を向けている。

 ロリ体系、奈菜ちゃんの胸こそあった方が――いや体系に合っているからこれでいいのかもしれないね。

 その瞬間、奈菜ちゃんがイチゴをごくりと飲み込んで僕に半眼を向けた。

「由乃ちゃん、目付きが嫌ですの!」

 今日の奈菜ちゃんには僕の考えが判るかのように素早い反応だ。

 そんなに急いで食べなくても、奈菜ちゃんの体がナイスバディになることは無いと思うんだけどね。

 かといってこのままだと、また不機嫌になるのが判る……ヤレヤレ――

「わたしの澄んだこの瞳の何が不満なの?」

 小首を傾げて、目に少女漫画の主人公並の煌く星を浮べてニッコリ微笑む。

「う……」奈菜ちゃんは一瞬言い淀むが、

「そんなので騙されないですの!」

 すぐに首を振って気持ちを切り替えたらしく僕に迫ってきた。

 ……これで駄目だとは、奈菜ちゃんも進歩したもんだと関心する。

 その僕と奈菜ちゃんの言い合い? に玲が口を挟む。

「まぉまぁ、二人でいちゃついてないでアタシ達も混ぜてくれよ、寂しいだろ?」

「別にいちゃついてないですの!」

「そかそか」

 奈菜ちゃんの怒りの声は玲にスルーされ、勿論僕も聞かなかったことにした。

 京香さんはというと、玲の注意が此方にそれてホッとしたように胸を撫で下ろしている。「納得いかないですの!」

「はいはい、奈菜ちゃんはおとなちくちまちょうね?」

「その言い方……奈菜は子供じゃないですの! ウサぴょん!」

「勿論違うよ、幼児だもの!」玲はニコっと白い歯を見せた。

「………はぅあう」奈菜ちゃんは余りの言い様に口をパクパクさせて言葉に詰まっているようだ。

 そのおかげで僕の件は完璧に忘れたみたいでホッとする。

 うん、世の中平和が大事だよ。体調も悪いしね。

「うわぁーん。全部由乃ちゃんのせいですの!」

 しかし……世の中そんなには甘くないらしい。

 奈菜ちゃんの涙声が僕の頭に響くのだった。

 京香さんはというと、奈菜ちゃんの頭をよしよしと撫でていた。

 その仕草は正に子供扱い。

 僕だけじゃないよ!



 勿論僕の体調が劇的に回復する訳も無く、放課後になっても辛いままだった。

 今日は大人しく帰ろうと、とぼとぼ歩いて校門を潜ろうとした、その時、

「上杉さんちょっといいかな!」

 背後から呼び止められた。

 うん、何だろう?

 僕が後を振り向くと、小麦色の肌に筋肉質な体付きをした男子が、サッカーの練習着姿で立っていた。

 見覚えがある。

 そう確か先日あった……うん、荒川君だ。僕の記憶も捨てたものじゃないね。

 走ってきたのか、少しはぁはぁ息をしている。

 これが宏隆なら変質者みたいと冗談を言いそうなぐらいだ。

「なんですか?」

 一応、男の人相手には愛想笑いを浮べる。

 体調が悪くても、この姿勢は大事にしないといけない。

 男とは意外とナイーブな生物だからね。

「あ、うん、急にゴメン、それで……ちょっと時間あるかな?」

「それほど掛からない用事でしたら――今日は夕飯の準備をしないといけないので、急いで帰らないといけないんです」

 実際は、そんな用事は無いのだが、さっさと帰りたいから嘘も方便である。

「そうなんだ……」

 荒川くんは少し困った風な様子を見せた後、

「判った、引き止めてゴメンね、又明日にでも話させてもらうよ」

 一つ頭を下げてニコっと笑った。

「すいません時間が無くて」

「いや、こっちこそ急に呼び止めたのだから、ではまたね」 

 僕も釣られて頭を下げると荒川さんは爽やかに言ってグラウンドの方に走っていった。

 グラウンドには他にもサッカー部員が居て、すでに準備運動を開始していた。

 うーん、今の反応からして恋人にして欲しいという告白系ではないのだと判明した。

 普通なら、少しの時間だから等と言われて用件を告げてくるのが定番だ。

 入学してから、何件もこのようなことがあり、もう慣れっこなのである。

 僕の相手を傷つけないで断る技術は熟練の技にまで進化していた。

 さて、このまま眺めてていても仕方なし、僕は再び帰ろうと校門から出たが…… 

「おーい由乃、なんでオレを置いていくんだ、待ってくれよ!」

 馴染みの声が背後から降りかかり、顔を顰めることになった。

 宏隆には体調が悪い理由を知られたくないから先に帰ろうとしてたのに、何の意味も無かったよ!


TSモノですしね、このシーンは入れても怒られないでしょう……きっと

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