第9話 狩られる側から、狩る側へ
角笛は、二度鳴った。
それは合流の合図。
つまり――斥候戦は終わり、本隊が来る。
「来る数、少なくない」
モモが、魔力の流れを読む。
「……五、いや六。小隊規模です」
デブリが盾を構える。
「逃げる?」
モブオは、首を振った。
「ここで逃げたら、また追われる」
「――今日は、迎え撃つ」
それが、B級の初陣だった。
魔王軍・制圧小隊
現れたのは六体。
・前衛二
・中衛二
・後衛二
無駄のない布陣。
人間の冒険者を“狩る”ことに特化した編成。
小隊長が、低く言う。
「対象は、連携型」
「殺すな。観測せよ」
モブオは、背筋が冷える。
“殺す価値がない”のではない。
“生かしたまま、分析する価値がある”
それが、魔王軍の判断だった。
戦闘開始
後衛の魔族が、詠唱に入る。
《抑圧結界》
空間が、重くなる。
モモの顔が強張る。
「……詠唱、通りにくい」
ノエルが、息を吸う。
「……大丈夫」
旗を、振る。
《大応援》が、静かに広がる。
今回は、声を張らない。
・急がない
・焦らせない
・無理をさせない
応援は、テンポを整える。
モブオの+が、安定する。
《多重防壁》ではない。
「デブリ」
「分かってる」
守る+移動+選別
防壁は、波のように動く。
仲間の足場だけを、守る。
敵の踏み込みは、逆に誘導される。
前衛の一体が、体勢を崩す。
そこへ
「今!」
モブオ。
《打撃+角度》
ノエルの応援が、
“踏み込みすぎない距離”を示す。
拳は、深追いしない。
倒さない。
削る。
モモが、続ける。
《灯風》
火ではない。
視界と動線を乱すための魔法。
安全に、確実に。
魔王軍前衛が、分断される。
小隊長の判断
「……異常だ」
小隊長が、初めて声を荒げる。
「火力が低い」
「なのに、被害が出る」
それは
事故らない戦い。
回復の隙も、詠唱の乱れもない。
削られ続ける。
「後衛、前へ!」
命令が、遅い。
デブリが、前に出る。
「……ここだ」
《守る+圧》
防壁が、敵だけを押し返す。
逃げ場が、消える。
ノエルの声が、変わる。
「今なら、いける!」
《大応援》が、もう一段深くなる。
士気ではない。
判断力への介入。
モブオが、+を重ねる。
《ファイヤー+圧縮》
小規模。
だが、逃げ場のない一点。
後衛一体、戦闘不能。
小隊長が、歯噛みする。
「……撤退」
霧。
残った魔族が、消える。
戦場に残ったのは、
倒れた一体と静寂。
戦闘後
誰も、勝鬨を上げなかった。
ノエルが、小さく言う。
「……怖いですね」
「うん」
モブオは、頷く。
「俺たちの戦い方が、見られた」
「でも」
デブリが、盾を下ろす。
「狩られなかった」
モモが、息を整えながら言う。
「……それだけじゃない」
「私たち、狩った」
魔王軍側の評価ログが、更新される。
危険度:上昇
脅威分類:
『安全な連携戦闘を行う異常個体群』
モブオは、静かに笑った。
「……悪くない」
狩られる側だった者たちは、
まだ弱い。
だが
狩り方を、覚え始めていた。




