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【第五部完結】1万5千PV突破 勇者パーティーをリストラされた俺(モブオ)はC級スキルをどんどん集めて、ざまぁ無双する。  作者: 虫松
第五部 修行編

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第4話 重ね方が違う者

小島を発って三日。


海沿いの街道は、

人の気配が極端に少なかった。


魔王軍占領地の外縁。

逃げ延びた者たちが、噂だけを残して消えていく場所。


焚き火のそばで、モブオは聞いた。


「……妙な女がいるらしい」


旅商人の、ひそひそ声。


「戦えない。魔法も攻撃もない」

「なのに、そいつのそばにいる連中は――死なない」


「応援、だと?」


モブオは眉をひそめる。


「応援しかできない支援職」

「C級。いや、元C級だったかな」


デブリが首をかしげる。


「それ……役に立つのか?」


商人は肩をすくめた。


「さあな。でもな」

「そいつの声が聞こえた戦場じゃ、撤退が一度も失敗してない」


その日の夕方。


彼らは、

街道脇の小さな野営地で“彼女”を見つけた。


旗。

派手でも、立派でもない。


手作りの布に、

歪んだ星のマーク。


その前で、

一人の少女が声を張り上げていた。


「――いけるよ! まだ立ってる!」


明るい声。

だが、軽くはない。


「深呼吸! 今は守る番!」


魔物に追われる小規模パーティー。

明らかに不利。


なのに。


誰も、パニックになっていない。


「右、避けて! 今!」


次の瞬間。

剣士が紙一重で爪をかわす。


「盾役、あと一歩前!」


デブリが息を呑む。


「……指示が、全部合ってる」


魔法でもない。

スキル演出もない。


だが、確かに――

何かが重なっている。


戦闘が終わる。


魔物は倒されていない。

だが、被害ゼロ。


少女が振り返る。


「……あれ?」


視線が、モブオたちに向く。


「見てた?」


ノエル。


元C級冒険者。

支援職――チアガール。


武器は持たない。

防具も軽装。


スキルは一つだけ。


《応援》


「応援って……それだけ?」


モモが聞く。


ノエルは、にこっと笑った。


「うん。それだけ」


「でもね」


少し、声の調子が変わる。


「“どう応援するか”で、全然違うよ?」


モブオは、息を詰める。


《応援》

微弱な能力上昇。

集中力微増。

士気上昇。


教本に載っている、最低ランクスキル。


それなのに。


さっきの戦場では、


・判断速度

・恐怖耐性

・連携精度


すべてが、明確に底上げされていた。


「……同じ+でも」


モブオは、思わず呟く。


「方向が違う」


ノエルが首をかしげる。


「+?」


「俺は、数を重ねる」

「防御を、攻撃を、時間を」


拳を握る。


「でも、あんたは」

「“人”に重ねてる」


ノエルは、少し照れたように笑った。

「……どうやって、重ねてる?」


モブオが問う。


少女は首を傾げる。


「え? その時に必要なことを言ってるだけだよ?」


「同じ《応援》でも?」

「毎回、違う内容で?」


「そりゃそうでしょ」


当たり前のように言う。


「怖い時は、安心する言葉」

「焦ってる時は、区切る言葉」

「攻めたい時は、背中押す言葉」


少し照れたように笑う。


「応援って、そういうもんじゃない?」


「だったら」

「戦う人が“一番戦いやすい形”を重ねるしかないでしょ?」


その言葉に、

モブオの背筋が、ぞくりとする。


(もし――)


(もし、この《応援》が)


(重なっていったら?)


頭の中で、自然と段階が浮かぶ。


C級《応援》

B級《大応援》

A級《応援団》

S級《大応援団》

SS級《神応援団》


数値を上げるのではない。

行動を変える。

判断を変える。

運命の分岐点を、ずらす。


戦況そのものを、

人の力で書き換えるスキル。


モブオは確信する。


これは、

単発最強への“別解”。


重ねる力の、

もう一つの到達点。


そして


この少女は、

まだ自分の異常さに気づいていない。


ノエルが、無邪気に言った。


「ねえ」

「一緒に行く?」


「逃げるんじゃなくて」

「……勝ち方、探しに」


焚き火が揺れる。


モブオは、ゆっくり頷いた。


「……ああ」

「探そう」


重ね方が違う者たちで。

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