表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五部完結】1万5千PV突破 勇者パーティーをリストラされた俺(モブオ)はC級スキルをどんどん集めて、ざまぁ無双する。  作者: 虫松
第五部 修行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/55

第2話 敗者の逃亡

夜が、味方にならない。


カイザーランドの占領地では、

闇ですら魔王軍に管理されている。


空を巡回する飛行魔獣。

地を嗅ぎ回る追跡獣。

遠くで響く、規律正しい足音。


残党狩りの追撃部隊。


数は多くない。

だが、逃げる者を仕留めるには十分すぎる。


「止まるな!」


モブオが低く叫ぶ。


瓦礫を越え、

崩れた街路を抜け、

三人は影から影へと身を移す。


背後で、

何かが“潰れる音”がした。


遅れた誰かが、

見つかったのだ。


叫びは上がらない。

一瞬で、音が消える。


途中、かつての冒険者ギルド支部が見えた。


半壊。

掲示板は焼かれ、

依頼書は風に舞っている。


そこにあるはずのものが、ない。


人がいない。

受付嬢も、管理者も、

見慣れた顔は一人も。


「……ギルド、終わったのか」


デブリの声が、かすれる。


否定できる材料は、どこにもなかった。


名のある冒険者たちも、消えている。


A級剣士グラナート。

防御職の名手バルド。

回復専門の聖女リュシア。


戦死か。

捕縛か。

それとも粛清か。


確認する術はない。


姿を消した

それだけが事実だった。


モモが、足を止めかける。


「……私、魔法……意味あったのかな」


声が、弱い。


戦場で、

超竜が現れ、

英雄が砕かれた光景。


重ねてきた詠唱が、

あまりにも小さく感じられた。


デブリは歯を食いしばる。


「俺が……もっと硬ければ……」

「前線、守れたかもしれないのに……」


盾役として、

守れなかった現実が、胸をえぐる。


その時


モブオが立ち止まった。


振り返り、

二人を見る。


「逃げてるんじゃない」


静かだが、

はっきりとした声。


「探しに行くんだ」


モモが顔を上げる。


「……何を?」


モブオは、前を見た。


占領された大陸。

英雄なき世界。

単発最強が支配する現実。


「勝ち方だ」


「俺たちの、“+(プラス)”が通じる場所を」

「通じる戦い方を」


追撃部隊の気配が、近づく。


時間はない。


だが、

三人の足取りは、さっきよりも重くない。


敗者の逃亡は、

同時に再起の旅でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ