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【第五部完結】1万5千PV突破 勇者パーティーをリストラされた俺(モブオ)はC級スキルをどんどん集めて、ざまぁ無双する。  作者: 虫松
第四部 魔王軍侵攻編

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第3話 C級冒険者の異常値

戦場の片隅。


誰にも期待されていない場所で、

静かな異変が起きていた。


C級冒険者

本来なら、最も早く崩れ、

最も多く死ぬはずの殿。


だが。


デブリの前に張られた

守る+守る+守る+守る+守る

《多重防壁》(C級)は、

獣の爪も、魔物の体当たりも、

まるで「順番待ち」をさせるかのように受け止め続けていた。


牙が砕け、

爪が滑り、

巨体が跳ね返される。


一枚目が軋み、

二枚目にひびが走り、

三枚目が鈍く鳴る。


だが、崩れない。


一枚破られれば、

その奥から、また一枚。

さらにその奥から、もう一枚。


重ねた防壁が、

魔物の突進を“勢いだけの自殺行為”に変えていく。


「……まだ、防御壁があるぞ……?」


前列の魔物が立ち止まる。

後ろから押され、前に進めず、

防壁の前で渋滞が起きる。


群れが、詰まる。


そこへ、モブオの《乱打》が叩き込まれる。


《殴る+空振り+殴る》

《空振り+殴る+空振り+殴る》(C級)


一撃一撃は軽い。

だが、数が違う。


一撃は軽い。

骨を砕くほどではない。

首を落とすほどでもない。


だが

同じ箇所を、

同じ関節を、

同じ足首を、何度も叩く。


鈍い音。

嫌な感触。

力が抜ける感覚。


膝が折れる。

体勢が崩れる。

倒れた魔物に、後続が躓く。


「――ギャッ」


倒れた瞬間、

別の魔物が踏みつけ、

さらに別の個体が覆いかぶさる。


削る。

止める。

転ばせる。


致命打ではないはずの攻撃が、

“群れ”という形態そのものを破壊していく。


怒号が混じる。

咆哮が乱れる。

魔物同士が噛み合い、引っ掻き合い、

列が完全に崩壊する。


その隙間を縫うように、

モモの魔法が重なる。


《ファイヤー+ファイヤー》

《二連ファイヤー》(C級)


火が、線になる。

魔物の列が、崩れる。



炎が走る。

だが広がらない。


そこに風。

燃焼だけを押し出す。


さらに光。

影を消し、味方の視界を確保する。


最後に衝撃。

倒れた魔物だけを弾き飛ばす。


炎の上に風。

風の中に光。

光の中に衝撃。


派手さはない。

爆音もない。

だが――確実だ。


味方に被害が出ない。

魔力が暴走しない。

連携が寸分も狂わない。


魔物の群れは、

数では圧倒しているはずだった。


それでも。


防壁の前で止まり、

乱打で削られ、

重ね魔法で整理される。


気づけば、

“攻めていたはずの群れ”が、

“処理される対象”に変わっていた。


誰もが理解する。

これは、C級の戦い方じゃない。



◇◇◇



やがて、戦況報告が上がる。


「C級ライン、崩壊なし」


「突撃兵が……前に押し返しています」


伝令の声に、

前線指揮官が思わず地図を見直す。


位置が、違う。


本来、後退しているはずのC級の印が、

わずかだが、確実に前へ動いていた。


「……C級だろ?」

誰かが呟く。


だが、数字は嘘をつかない。


“異常値”。


そう呼ぶしかない存在が、

戦場の最底辺で、静かに牙を剥いていた。

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