第10話 一緒に、強くなろう
朝の霧が、町を包んでいた。
ギルドの前を通り過ぎるとき、
誰も声をかけてこない。
評価表は、C級スキル保有のCランク冒険者
昨日と同じまま。
それでも
モブオは、もう振り返らなかった。
町の外れ。
道は、いくつにも分かれている。
モモが、立ち止まって言う。
「……あの」
「私、ついていっていいですか?」
問いかけは、弱い。
けれど、
逃げ道を探す声ではなかった。
モブオは、即答した。
「もちろん」
「俺ひとりじゃ、魔法も使えないし」
「できないことが、沢山ある」
モモは、少し驚いたように目を見開き、
それから、ゆっくり頷いた。
「……はい」
二人は、並んで歩き出す。
C級スキルしか持たない者同士。
評価されない者同士。
だが、
役割は、もう決まっていた。
港町。
潮の匂いと、
異国の言葉が混じる場所。
掲示板には、
見たこともない魔物の名前。
見上げれば、
新大陸へ向かう船が停泊している。
モブオは、甲板へ足を踏み出した。
モモも、遅れずについてくる。
船が、ゆっくりと岸を離れる。
波が、過去を引き離していく。
落ちこぼれが、
“価値を再定義する”旅が始まる。
評価されるためではない。
生き残るためでもない。
一緒に、強くなるために。
【 第二部 出会い・成長編 完結】




