第2話 C級スキルの革命はじまる
即席パーティーは、あまりにも頼りなかった。
剣士でもなく戦士でもない、
上級魔法使いでもない。
C級スキルしか持たない男と、
C級スキルしか使えない魔法少女。
それが
モブオと、魔法使いモモ。
最初の依頼は、畑荒らしのゴブリン討伐。
危険度は低い。
……はずだった。
「え、えっと……詠唱、いきます!」
モモが杖を構え、声を張り上げる。
「えっと……火よ、集まれ……あ、ちがっ……」
ゴブリンが首を傾げる。
次の瞬間。
《ファイヤー》
火球は放たれた…………,が。
「外れたぁ!?」
ゴブリンの横を素通りし、
畑の藁に燃え移る。
「モモ! 畑!」
「ひゃっ!? す、すみません!」
モブオは前に出る。
《殴る》
拳を振るうが、
ゴブリンはひょいとかわす。
反撃の棍棒。
「くっ……!」
致命傷ではない。
だが、決定打にもならない。
やっぱり、C級はC級か。
連携は噛み合わず、
攻撃は当たらず。
典型的な“失敗パーティー”だった。
だが。
モブオは、ある違和感を覚えていた。
今のファイヤー。
外れたが、
火力そのものは、悪くない。
「モモ」
「は、はい!」
「もう一度、ファイヤーを撃て」
「俺が、合わせる」
「え? で、でも……」
「大丈夫」
理由は言わなかった。
モブオは、左手に意識を集中させる。
スキル欄に表示されない、
《+(プラス)》。
今だ。
モモの杖から、火球が生まれる。
《ファイヤー》
その瞬間、
モブオは“殴る”を重ねた。
《ファイヤー + 殴る》
次の瞬間
火球に、衝撃が乗った。
「――え?」
燃えながら、パンチを叩き込む。
《ファイヤーパンチ》
着火。
そして、打撃。
二段構えの一撃が、
ゴブリンの胴を貫いた。
「ぎゃっー!」
ゴブリンは火だるまになり吹き飛び、
地面に転がって動かなくなる。
一瞬の静寂。
「……え?」
モモが、目を丸くする。
「い、今の……私の、魔法……?」
モブオは、拳を見つめた。
成功だ。
偶然じゃない。
暴発でもない。
意図した通りの結果。
C級 《ファイヤー》と、
C級 《殴る》。
それを、+(プラス)で繋げただけ。
なのに
威力は、明らかにC級の域を超えていた。
モブオは、静かに息を吐く。
そして、小さく笑った。
「……これは、いけるな」
モモが、恐る恐る聞く。
「な、なにが……ですか?」
モブオは、はっきりと言った。
「C級スキルの革命だ」
意味は、まだ分からなくていい。
だが
世界の“スキル常識”が、今、少しだけ揺らいだ。
落ちこぼれ二人の前に、
誰も知らない蛇の道が、確かに開いていた。




