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【第五部完結】1万5千PV突破 勇者パーティーをリストラされた俺(モブオ)はC級スキルをどんどん集めて、ざまぁ無双する。  作者: 虫松
第二部 出会い・成長編

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第1話 落ちこぼれ同士、同じ町で

挿絵(By みてみん)

置き去りにされた町のギルドは、昼でも薄暗かった。


大きな街のような活気はない。

掲示板に貼られた依頼も、文字が剥げている。


・倉庫の掃除

・畑の見回り

・スライム三体の討伐


危険度は低い。

報酬も安い。

簡単な仕事。


俺には、ちょうどいい。


モブオは掲示板の前で立ち止まり、依頼書を一枚ずつ眺めていた。


背後で、派手な音がした。


「いったぁ……」


振り返ると、少女が床に座り込んでいた。

椅子につまずいたらしい。


慌てて立ち上がろうとして、またバランスを崩す。


「あ、あの……すみません……」


赤くなって頭を下げる。


ローブは少し大きめで、袖が余っている。

腰には細い杖。

魔法使い――だが、どこか頼りない。


ギルド職員が、ため息混じりに言った。


「モモ。詠唱を噛むのは致命的だぞ」

「魔力制御も不安定だし……正直、将来性はない」


淡々と、事務的な声。


「伸び代も、あまり見えないな」


その言葉に、少女モモは小さく「はい……」と返した。


覚えているスキルは、

C級 《ファイヤー》《灯り》《水出し》。


どれも、初心者が最初に覚えるものだ。


俺と同じだ。


モブオは、思わず自分のスキル欄を思い出す。


《殴る》


それだけ。


評価欄に書かれた言葉も、きっと似たようなものだ。


モモは、ギルドの端にある長椅子へ向かい、腰を下ろした。


……そして、なぜか。


モブオの隣だった。


少し、間を空けて。


けれど、わざわざそこを選んだようにも見えた。


「……ひとり、ですか?」


小さな声。


モブオは、少しだけ驚いてから答える。


「ああ」


それだけ。


会話は、それで終わるはずだった。


「……私もです」


モモはそう言って、膝の上で手を組んだ。


沈黙。


気まずさは、不思議となかった。


むしろ、落ち着く。


視線を合わせなくてもいい。

無理に笑わなくてもいい。


この空気

知っている。


ダメな人間の特有な


仲間から外れた者同士の、匂い。


モブオは、胸の奥が、わずかにざわつくのを感じた。


ああ。


俺は今、

この子に、惹かれている。


それは恋でも、同情でもない。


「ここにいていい」と、

無言で言い合える相手。


そんな存在に、久しぶりに出会った気がした。


ギルドの喧騒の中で、

二人の時間だけが、静かに流れていた。


まだ、何も始まっていない。


けれど

確かに、何かが動き出していた。


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