なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6 • 7 参加作品
木枯らしの吹きすさぶ丘の上で
見晴らしの良い丘の上に掘った穴にギリースーツを着込んだ俺はライフル銃のスコープを覗きながら寝そべり、眼下に広がる平原に獲物が現れるのを待っている。
丘の上は見晴らしは良いのだが、木枯らしが吹きすさんでいて寒い。
全く2〜30年程前までは地球温暖化により地球は高温になるなんて言われていたのに、その地球温暖化が引き金になって氷河期が到来しちまったんだからな。
お陰で長い長い冬を超す為に大量の食料を備蓄しなくちゃならなくなる。
短い夏の間に採れた食料だけでは心許ないからな。
平原の彼方にポツンと黒い点が現れた。
十数メートル程離れたところで双眼鏡を覗き込むリーダーに目を向ける。
リーダーは暫しの間双眼鏡を覗き込んでいたが双眼鏡から目を離すと、俺や同じようにギリースーツを着込み丘の上に掘った穴に伏せている仲間たちにハンドサインの合図を寄越した。
獲物だ。
最初は1つだけだった黒い点は数を増し、数十の点が此方に近寄って来るのが見える。
親子連れや番で構成された群れだ。
俺たちは息を潜め群れ全体がキルゾーンに入るのを待つ。
リーダーから撃ての合図が来た。
俺は先頭を歩く男の頭を撃ち抜く。
俺の発砲を皮切りに仲間たちも発砲する。
獲物の群れの中からも反撃の銃声が聞こえて来るが、俺たちの姿を見つける事が出来ず盲滅法撃つだけ。
リーダーから撃ち方止めの合図が来た。
暫しの間待機してから油断せずに死体の山に近づく。
地球温暖化が転じて氷河期になった所為で文明は崩壊した。
その所為で、人も動物たちと同じように弱肉強食の世界の住人になる。
そんな世界になった所為で1番狩りやすい獲物に人間はなったのだ。
丘の下に隠してあった荷車に、撃ち殺した獲物の死体と死体になった者たちが所持していた物を載せる。
荷車を引っ張っりながら思う、此等の獲物のお陰で部落で待つ家族や仲間たちが冬を乗り越えられるのだと。
何時か俺や俺の家族それに仲間たちも獲物にされるかも知れない、だけど……、そうなるまで……、俺は人を狩って獲物にしてでも生き続けてやると思っている。




