表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/378

#129 これまでの復習Ⅰ


 テスト用紙を眺めると、右上の方に"Co'd ferlk es ____________."と書いてある。翠は下線のところに名前を入れて、その下に続く問題を見た。


---

F.1sti

Text julesn ftless fua krandiurg.


"Mi es ___________."


[salarua], [ales], [pernal], [mer]

---


(なるほど、これくらいなら解けるな)


 どうやら、穴埋め問題が多いようだ。クラスのレベル分けに使われるテストだから最初の方でこそ簡単なものなのだろう。


 これまでのリパライン語学習の復習といこう。

 "名詞+es+名詞"という文は、リパライン語で等式文を表す文章だ。等式文を作る"es"のような動詞のことは、コピュラ動詞というらしい。英語では"is" "am" "are"、ドイツ語では"ist" "bin" "bist"というように主語によって 単語がぜんぜん違うが、リパライン語はどうやら主語が"si"だろうが、"mi"だろうが、"co"だろうがコピュラ動詞"es"の形は変わらない。

 というわけで、自分がなにかであることを表明している文章を穴埋めするうえで、挨拶である"salarua"や間投詞の"mer"はここには入らないことが分かる。"pernal"か"ales"なんだろう。自分が椅子だなんて言う人間は特殊な性癖の人間に限られるので、ここは"ales"を記述しておこう。


 翠は続いて次の問題へと目を向けた。


---

F.2sti

Text julesn noleu fua krandiurg.


"Alefis es tvasnk____ lipalaone'd lartassa'st."


[-erl], [-al], [-el], [-il]

---


 これはなかなか文化的で難しい問題だ。アレフィスがリパラオネ教徒の信仰の対象であるということは、非常に文化的な話題だと思う。カリアホのようなリパライン語に全く触れ合っていないような人間では解けそうもない。それとも、そんなことはここでは常識だったりするのだろうか?

 そういえばと思って、横にいるカリアホに目を向ける。テストを前にして手も足も出ないという様子であった。手を膝の上について、ぼーっと用紙を眺めている。その表情は悲しそうな虚しそうな、なんとも言えない表情だった。

 もしかしたら彼女は文字すら読めないのかもしれない。助けてやりたいが、カンニング扱いにされればそれこそもっと面倒なことになる。胸が痛むが、何もしてやることは出来ない。


 問題に戻ろう。

 前回は"julesn ftless"を選べという問題だったが、今回の問題文は"julesn noleu"を選べというふうに書いてある。選択肢には前回は単語、今回は単語にくっつける接辞が書いてあるということは"ftless"は「単語」で、"noleu"は「接辞」だと思えてくる。そうなると、"julesn"は「正しい」のような意味を持つのだろう。"krandiurg"が何なのかは分からないが、とりあえずこれで「正しい接辞を選びなさい」という問題文であることは理解できた。

 "Alefis es tvasnk____ lipalaone'd lartassa'st."という問題文に動詞を派生させる接辞のうち、どれを挿入すれば良いのかという問題だが、ここは"alefis"がリパラオネ教徒の信仰対象であることが明白なので"-erl"という接辞を入れるのが正解だろう。格の接辞に"-t"が付いた場合は動詞の従属節に取られているということなので、"tvasnkerl lipalaone'd lartassa'st"で「リパラオネ教徒たちが信仰するもの」という意味になる。


---

F.3sti

Text julesn ftless fua krandiurg.


"Lersser's zu klie lineparine'd lersse fua niv fagrigeciover i, elx ______ lkurf lineparine fal fgir'd lersse."


[selene], [deliu], [cene], [lecu]

---


 長い文章でいくつか意味が取れない単語もあったが、なんとか大意は取れた。今回は文章に助動詞のようなものを挿入する時、どれを挿入すべきかという問題のようだ。挿入される文章は「リパライン語非母語話者向けクラスに来る生徒は、リパライン語をこのクラスで話す」というように訳せる。助動詞の挿入する場所から、助動詞が係る動詞は"lkurf"ということになりそうだ。

 非母語話者向けクラスに来るような人々は、多分リパライン語を習得しようとしているのだから"selene"を使って「話したい」というのはおかしいだろう。"cene"で「話せる」というのもなんだかしっくりこない。"deliu"「話さなければならない」と"lecu"「話そう」のどちらかであるが、多分先生方は話させたいはずだから"deliu"を答えとして書いておこう。


 サクサクと問題が解けると非常に清々しい気持ちになるものだ。だが、問題はまだまだ続いている。まだ、周りからは鉛筆が紙上を走る音が聞こえている。カリアホはというと、全く分らないテストを前にうとうとと眠そうな顔をしていた。どうせ一番下のレベルに向かうことになるなら、寝てしまえばいいのに。彼女のリパライン語力に一番合うのはそういったクラスのはずだ。だが、何か心の中では彼女に対する心配が渦巻いていた。全くわからないのに生活のために言語を習得する必要がある――という困難な状況に置かれている彼女は過去の自分にそっくりだ。困惑し、立ち向かって、それでもなお多くの人に助けられて自分はここまできた。彼女は……そういう身寄りが居るのだろうか? シャリヤやエレーナ、フェリーサのようなリパライン語を話す親切な仲間が周りに居ないのならば、自分が助けてやるのが一番じゃないだろうか? 過去が似ている自分こそ彼女の気持ちを出来るだけ理解できるんじゃないだろうか?


(まあ、とりあえず今は問題を解くことに集中しよう。)


 頭を振って、続く問題に意識を切り替える。カリアホのことはあとで面倒を見てやればいい。彼女のことだけでなく、自分のリパライン語力にも心配なところがある。人助けも良いが、自分の身を削ってまで他人を助けようとすれば一緒に滅びるだけだ。

 翠はペンを持ち直して、テスト用紙に向き直った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
cont_access.php?citi_cont_id=499590840&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ