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第十九話 決闘

5/11 一部、登場人物の名前の間違いがあったので修正しました。



「マリアを賭けて決闘をしろっ!」


 

 ベリトは俺に向かって人差し指を向けて吠える。

優男の雰囲気が完全に消えていた。

先ほどの事が余程、屈辱的だったみたいだ。


 しかし、なに言ってんだコイツ。

そもそもマリアは賭けの賞品じゃないぞ。



「なに言ってんだお前、マリアは賭けの賞品じゃない」



 心の声が漏れた。



「だまれっ! だまれっ! ふぁぁああっ!」



 さらに激昂したベレトの魔力が膨れあがった。

どうやら本気のようだ。

魔王であるマリア程ではないが、中々の魔力量だ。

魔力量だけ見れば4帝以上あるかもしれない。


 腰に差してある剣を抜き、ベレトに向かって構える。

コイツはここで叩いておいたほうがいいだろう。後々、絡まれても面倒だ。




 ドゴッ!




 突然、鳴り響いた轟音の音源はマリア。

それはとても綺麗なフォームでベレトの顔面に拳を打ち込んでいた。

ブワッと攻撃の余波が顔を撫でる。



「マコトの敵になるのなら、容赦はしないよ」



 マリアがおそろしく低い声と重い殺気を放って話す。

さすが魔王と呼ばれるだけはある。

放たれた殺気が地面に亀裂を生み、まわりにある建物の壁を剥がした。


 まぁ、当の本人は顔面に食らったパンチで気を失っているみたいだが。

本当になんの為に来たんだろうなコイツは。



「はっははは―――っ。ほんにめずらしいものが見れて愉快じゃ」



 マステマが豪快な笑い声をあげた。

口元を扇子のようなもので隠しているが、本当に楽しそうな表情だ。



「マリアがこんなに怒りをあらわにするとはのう。婿殿のことを余程、好きとみえる」



 マステマは愉快じゃ、愉快じゃとコロコロと笑い続ける。

マリアはというと顔を真っ赤にして、今にでも蒸気が吹きだしそうな勢いだ。

この二人は本当に仲が良いみたいだな、その様子が見てとれる。



「ザベスチャン」



「はっ」



 マステマに呼ばれた執事風の男は阿吽の呼吸で理解をしたのか、気を失い倒れていたベリトを肩に担ぐ。

てか、ザベスチャンって何だよ。


 


「邪魔したのう、マリア。また会おうぞ、婿殿」



 意味深な目つきと言葉を残してマステマ一行と担がれたベリトは飛翔魔法で去っていった。

バタバタと騒がしいヤツラだったな、これはまた近いうちに会いそうな気がする。

まったく面倒くさい連中が次から次へと……。

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