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海と風の王国  作者: 梨香
第七章 王太子への道 プロポーズは大変!

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2  思いがけない難問

 ショウとロジーナはマリオ島で、短い時間だけど素敵な時間を過ごして、カドフェル号へ帰艦した。祖父から山ほど貰ったお土産の魚の干物の一部は、夕食に提供された。


 シリンを海水浴に連れて行ってやらなかったので、サンズは山羊の脚を食べ残して持って帰ってプレゼントする。シリンはサンズの心遣いを喜んで山羊の脚を食べたが、魚の干物で作ったスープを飲んだカドフェル号の全員が、ラブラブの二人がどのような時間を過ごしたのか想像する。


「明日にはレイテに着くのが、せめてもの救いだなぁ……」


 レッサ艦長は甲板で手すりに寄り添って立っている二人の熱々ぶりに、乗組員達や、士官候補生達が気もそぞろなのに溜め息をつく。チェンナイやメーリングで羽目を外した乗組員達もいたが、ゾルダス港の滞在中は大人しくしていたので、そろそろ妻やレイテの綺麗なお姉さんが恋しくなっている者が多かったからだ。


 レッサ艦長やカドフェル号の乗組員達がショウとロジーナが寄り添って立っているだけなのに、あてられているとは当人達は知らず、普通に会話をしているだけだ。


「レイテに帰ったら、ショウ様に頂いた真珠を指輪にして肌身離さず大事にするわ」


 嬉しそうなロジーナの言葉にショウは喜んだが、少し指輪は意味深かなという考えが頭の隅をよぎる。


 それが婚約指輪みたいだとショウは、少し困惑したのだ。東南諸島連合王国には婚約指輪などの風習は無かったが、旧帝国三国にはプロポーズの時に指輪を贈るのが慣例化していた。


「指輪よりペンダントにしたら? 僕のペンダントを見ていたから、真珠で作ったら良いなと思いついたんだ」


 ショウは別に他の許嫁達にも指輪ぐらい贈っても良かったが、ロジーナの真珠だけ自分が海に潜って取って来たと知られたら、絶対に揉めるとペンダントにしたらと勧める。


「ショウ様のペンダント? とても綺麗な竜心石ですけど……いつも服の下に隠していらっしゃるのね? 何故かしら?」


「これは、魔力を秘めているから、あまり持っていることを人に知らせない方がいいんだよ」


 ロジーナは叔父のアスラン王の竜心石を見たことがあったので、ショウのペンダントの石が竜心石だとわかった。世界に数個しかない竜心石より、ロジーナの心は若い引き締まった身体に魅了されていた。


「真珠のペンダントも素敵だわ。でも、ショウ様は婚約指輪だと思われたら嫌なのね……」


 ショウが指輪ではなくペンダントにと言い出した本音をロジーナは見抜いて、少ししょんぼりする。


 しょんぼりしたロジーナが自分が他の許嫁達と揉めたくないと悟ったのだとショウは気づいた。


「この真珠は二人だけの秘密だよ。レイテに帰ったら、ロジーナに相応しい指輪を贈るよ」


 お金で買える指輪より、ロジーナはショウが取ってきてくれた真珠を指輪にしたいと我が儘を言いかけたが、そうしたら揉めて困らすだけだと我慢する。


「そうね、二人だけの秘密の方がロマンチックね。真珠の指輪も良いけど、秘密は隠していた方が良いからペンダントにするわ」


 ショウはロジーナがいつの間にか我が儘な王家の姫から、聞き分けの良い恋人になったのだろうと驚く。


「ロジーナ、ごめんね……」


 ローラン王国の訪問でもパートナーとして助けてくれたのに、ロジーナのしたいようにさせてあげれないのを詫びる。


「良いの、でも婚約指輪はショウ様が自分で選んでね。そして……プロポーズして欲しいの」


 最後の言葉を小さな声で呟くと、ロジーナは船室へと駆けていく。


「プロポーズ……」


 ショウは結婚するのに、プロポーズをしていなかったと愕然とする。


「そういえばララにも、ロジーナにも、メリッサにも、勿論ミミにもプロポーズなどしていない。父上に勝手に許嫁を決められたから。でも、来年には結婚するんだ……」


 思い掛けなかった難問に気づいたショウだ。




 カドフェル号の手すりにもたれて、夕日が沈んだ後の名残を留めている海の煌めきをぼんやりと眺めながら、ショウは許嫁達を一人一人思い浮かべる。


 ララを許嫁だと紹介された時は、養っていけないと思い込んでいて、そちらから断って欲しいと頼んだのを思い出し、自分が何も知らない子どもだったのだと苦笑する。


「ミヤが僕の独立資金を貯めてくれている事も、しらなかったんだよね。あの頃は第六王子にすぎなかったし、ララ一人と結婚するつもりだったんだ。後ろ盾もないし、サンズの食い扶持は国で面倒みて貰えると知って、カインズ船長とララとの暮らしていけるだけのお金を儲けたら良いかなと思っていた」


 ララは他のロジーナ、メリッサ、ミミよりも長い間を許嫁と過ごしてきたので、ショウは彼女にすらプロポーズしてなかったと呆れてしまう。


「プロポーズねぇ…… 父上が決めたと言えば、その通りだけど……結婚するんだから、プロポーズしなくちゃいけないのかな? いや、いけなくはないけど……ロジーナもして欲しいと言っているってことは、ララもメリッサも同じかなぁ……」


 未だ数年先のミミは置いといて、ララは成人式の時に、その三ヶ月後にロジーナと、半年後にメリッサと結婚するんだよなぁとショウはやはり困惑する。


「三ヶ月ったら、新婚ほやほやだよね。そこでロジーナと結婚して、また新婚ほやほやでメリッサと? メリッサはもう少しパロマ大学に通いたいのではないかな? 学生結婚ってありかな? できれば結婚を延ばして欲しいけど……」


 メリッサからの手紙にはパロマ大学での勉強を楽しんでいる様子が書かれていたし、もっと学びたいという意欲に溢れていた。しかし、どうしても東南諸島の一夫多妻制は、旧帝国三国では偏見の目で見られるのを、ショウは自分の体験からも知っていたので、メリッサが手紙に書いてこないだけに心配していた。


「メリッサが、男子学生に変な目で見られなければ良いんだけど……ナイスボディと、一夫多妻制を、間違って解釈して軽く思われたりしていたら嫌だな」


 メリッサが不快な事を手紙に書いてこないのは、パロマ大学の留学を打ち切られるのが嫌だからだろうと、ショウは自分の経験から推測していた。


「勿論、パシャム大使が護衛をつけているだろうけど、パロマ大学の校内は護衛は禁止だ。二、三人、パロマ大学にメリッサの学友兼護衛として文官を留学させよう。法律を整備したいし、大学も作りたい。パロマ大学で、学ばせるのも良いよね。それにパメラも短期で良いから、留学させてあげたいな……そうだ、ピップスなら学友兼護衛にぴったりだよ」


 ピップスをびしばし鍛えたら、聴講生のテストぐらい合格できそうだ。メリッサとパメラの護衛には、文官だけでは心もとないから、ピップスなら腕もあげてるから安心できると、ショウは脱線する。


 プロポーズを考えていた筈なのに、ロマンチックな言葉を言う気恥ずかしさから、法律の整備や、大学などに思考をそらしたショウだった。

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