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勇者と魔王が結婚するハッピーエンドのその後はめんどくさい  作者: 名古屋 大八
王子というのはめんどくさい -婚約者編-
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婚約者というのはめんどくさい(9)

 心地よい潮風、どこまで続く地平線。そして沢山の船。これが、アーサリオンで3つ目に大きい街かつ外交都市サウスフィッシュの最初の感想である。次に感じるのは、活気ある商人たちと他国の人達の多さである。


 俺は、何回か外交の執務で訪れてるから何も感じないのだが、初めてきたアルテナとディーナは、はしゃいでるみたいだ。


「アイン、早く観光しましょ!」


 とアルテナは俺の服の裾をグイグイ引っ張る。


「残念ながら、教会にいかなければいけない」

「やだやだ観光したい!」

「アルテナさん、昨日みたいに早く終わらせれば観光出来ますよ!お姉ちゃんに任せなしゃい」


 わがままいう、アルテナを宥めようとしたディーナはまた、噛んで顔を真っ赤にした。


 そんなやり取りがあったが特に何事も無く教会に着いた。中に入るとガラの悪い魔族の男が出迎えた。


「よお、王子とその婚約者か。よく来たな」


 ソロの街の時と同じように奥の部屋に通された。


「サウスフィッシュの試練はダンジョンになっている。奥にある宝珠を取ればこっちに戻って来れる仕組みだ。そこの魔法陣を踏めばダンジョンに入れる。それでは、頑張ってくれ」


 そう気だるげに言って男は部屋の外へ出ていった。


「それじゃ、行くか」


 俺達3人は魔法陣の中に入っていった。


 ダンジョンは、約50メートルの正方形の大部屋で俺達はその真ん中に飛ばされた。そして、目の前に宝珠があった。


「宝珠!近くにあるじゃん!」


 ゴン!


 そう言って近づいたアルテナは、宝珠の周りにあった壁状のナニカに跳ね返された。


「条件達成型絶対防壁……」


 そう言ってディーナは、絶句した。


「なにそれ?壊せないの?」


 というアルテナの質問にディーナは答える。


「無理ね、これは指定した条件を達成すれば必ず壊れるというのを設定することで絶対的な強度を持つ防壁なの。壊すなら、その条件を……」


 ディーナがそう話してると周りから魔物が現れた。狼型の魔物だ、俺は剣を構える。


 しかし、その魔物達はアルテナの剣戟によって一網打尽になった。


 フントに負けたとはいえ、人族最強の男の娘というのは、ただならんなと思った。その後何回も現れた魔物もアルテナによって一撃でやられた。


 インフェルノタートルというめちゃくちゃ強い亀の魔物もアルテナは一瞬で倒した。すると防壁は割れた。


「ふふ、どうよ!」


 そう言ってアルテナはドヤ顔した。


「さすがだな」

「凄いね、アルテナちゃん」

「へへへ」


 褒められるとは、思っていなかったらしくアルテナは顔を真っ赤にして照れた。


 宝珠を取ってダンジョンから抜け出すと、あのガラの悪そうや魔族の男がいた。


「さすが王子だな。当初の予定よりだいぶ早い。宿は取ってあるからゆっくりするといい。それと、この街の夜は危険だ用心しときな」


 悪そうに見えて意外と気が利く男だと思った。


「ありがとう、助かった」


 そう感謝の言葉を伝えて教会を出た。



 ■■■



「ふー、遊んだ遊んだ」


 そう言ってアルテナはベットに倒れ込んだ。教会を出たあと、少しサウスフィッシュを観光した。サウスフィッシュに伝わる異世界料理の寿司を食べたり、船着場にある沢山の船の迫力におどろかされたりした。


 用意されたホテルは各国の要人が泊まるとこらしく非常に快適だ。ホテルのベランダからは、海が一望できとても綺麗だった。そこから入る潮風がより気持ちよかった。


 だからだろうか、ベットに倒れこむとすぐに俺の意識は夢の中に落ちていった。



 ■■■



 アーサリオン城に沢山の人がいる。見覚えのある人からない人まで大勢だ。なにかのパーティみたいだ。見覚えのある人は、そろいも揃って今よりずっと若かった。父さんも母さんもみんながずっと若い。俺は、それをずっと下から見つめていた。


「よーしよーし、肩車だー!」


 そう言って父さんは、俺を肩の上に載せた。その時になって俺はようやく気づいた。これは、過去の記憶だと。俺の背、周りの雰囲気から20年ほど昔だろう。


 その後、子供の俺は肩の上から降りて城の庭を探索していた。すると、庭の隅っこで泣いてる魔族の少女がいた。


「うぅ、ランティーナ。どうしていなくなっちゃの。ねぇ、ねぇ!ランティーナ……」


 そう言って泣き続けたのは、幼き日のディーナだった。


 その彼女に子供の俺は、


「ねぇ、どうして泣いてるの」


 と聞いた。俺に気づいたディーナは、


「あのね……」


 まとまってはいなかったが起きた事を話してくれた。


 ディーナには、ランティーナという護衛がいた。そのランティーナをディーナは姉のように思っていた。しかし、ランティーナは隣国との戦争に駆り出されかえらぬ人となった。そして、ディーナはさっきその話を聞いて泣いていたという訳だ。


 その話を聞いたかつての俺は、


「お姉ちゃん、僕にまかせてよ!僕は、世界一強い勇者と魔王の2人の子供だよ!だから、お姉ちゃんの事は絶対に守るし幸せにするよ!」


 こんな事言った覚えないぞ。ていうかこれプロポーズじゃん。その後、笑顔になった幼いディーナを見て俺の意識は戻された。



 ■■■



「起きなさい!敵よ!」


 そう言うアルテナに俺は叩き起された。


 当たりを見回すと下位悪魔が8体、ディーナが相手をしてるけど、召喚者がよっぽど強いらしくディーナが押されてた。


 夢の内容がフラッシュバックする。俺は最強の勇者と魔王の子供なのだ。


 だから、ディーナもアルテナも守りきってやる。

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