婚約者はめんどくさい(2)
人族と魔族の間には、未だに決定的な溝がある。父と母の尽力や半魔が増えている事から無くなりつつあるが、それでも確実に両種族の間で諍いが絶えないのも事実だ。仮に俺が、どちらかの種族と結婚した場合、選ばれなかった種族が不平等だと言い出すだろう。
だから、それを避ける為に俺が2人を妻として迎えるということらしい。あぁぁ、国内問題めんどくせぇー!
半魔じゃダメなのか、よく考えたら長男、次男の妻が両方半魔というのもそれもそれで大問題だ。
こういう問題が次から次へとやってくるからこの両親のハッピーエンドは嫌なんだよ!
そんな俺の気持ちはよそに父は、
「後は、若い者同士でよろしく!」
とゲンさんとボレアスさんを連れて部屋を出ていってしまった。
「それで、何を話し合えばいいんだ」
「ふん!私は、こんな暗い女と一緒にアンタの嫁になるなんて絶対嫌なんだからね!」
とアルテナ嬢。
逆にディーナ嬢はと言うと
「はわわわ」
と絶賛混乱中。
このまま沈黙というのも困るので、仕方なく俺は口を開く。
「2人共、初対面だから。俺は、君達の事をしりたい」
「なんか、言い方が気に入らないけど。仕方ないからその位は許してあげる」
とアルテナ嬢はツンケンしたままだ。
「しょ初対面……。私もいいですよ」
とディーナ嬢は何か言いたげな気がしたが、気の所為だと思う。
「もう一度言うが、俺はアイン・アーサリオン。一応第1王子で今は、両親の手伝いをしている。公の場以外では、アインと呼んでくれて構わない」
そつなく、俺は再び自己紹介をした。
「わかったわ」
「分かりました」
婚約者達は、そんな興味がなさそうだった。
「次は、私ね。アルテナ・ジークフリート、剣術が得意よ。大変不服だけど、あんたの妻になってあげるわ、光栄に思いなさい。まぁ私もアルテナも呼ぶと良いわ」
ちょっと小生意気にアルテナは自己紹介を終えた。
「ディーナ・シュバリエです。しゅ趣味は、読書です。ディーナとお呼びください、よろしくお願いします」
ディーナは逆に気弱な気がした。
その後もお互い腹を探り合うような感じで会話を1時間ほど続けたらバカ父達が帰ってきた。
「おうおう、どうだったか」
「まぁまぁかな」
「そうね、ふつうだったわ」
「はい、大丈夫です」
その後解散となり、俺達はユピテルから立ち去った。
王宮に帰ってくると、すぐに父の応接室に呼ばれた。
応接室のソファに向かい合って座った後に父が口を開けた。
「それでアイン、婚約者とはどうだった?」
「二人とも前途多難だよ」
「ハッハッ、そりゃそうだ。二人とも嫁ぐ先が見つからないからお前に当てたんだよ」
はーー!
「そんなん聞いてねぇよ!」
「まぁまぁ、よく聞け。お前も分かってると思うが魔族と人族、どちらかと結婚するのは今の国の状態だとあまり良くない。だからお前の花嫁は2人なのだ。それは、分かるな」
「うん」
「ハッキリ言って両種族とも、もっとマトモな権力者の娘というのは何人もいる」
じゃあその子を婚約者にしてくれよ。
「でもな、お前はアーサリオンの王になる人間だ。そして、その妻はアーサリオンの妃になる人間だ。だから、彼女たちしかダメなんだよ」
なんとなく父が言いたいことが分かってきた気がする。
「アーサリオンは歪な国だ、俺とルナの英雄性だけで保っている。だからアイン、お前は英雄にならなければいけない。そして、お前の妻も英雄でなければいけないんだ。だから、あの二人が選ばれたんだ。分かったかアイン」
「あぁ、分かった」
俺は、アーサリオンが建国された時に生まれてない。だから、国にとって両親はお飾りだと思ってた。だけど、両親は国にとっての心臓だということに初めて気付かされた。
そして、俺がいつか背負う王というものが、如何に重く尊いものかを初めて理解した。改めて言わせてくれ、どうしてこのハッピーエンドはこんなにもめんどくさいんだよ!
「それと、アイン。明日アルテナ嬢とデートだから」
そう言って、付け足す父に俺は、
「はあああああ!!」
と叫ぶしかなかった。




