婚約者はめんどくさい(1)
「それじゃあ、挨拶から始めようか」
と父の一声から婚約者との会談は始まった。2人の少女は2人とも面倒くさそうにしたけど、2人の横にそれぞれ座ってるそれぞれの父親が有無を言わせないオーラを感じた。
「俺は、全員知ってると思うけど。ソル・アーサリオン、この国の王様だ。そしてこっちが、君達の婚約者になる愚息のアイン・アーサリオンだ」
「アイン・アーサリオンだ。これからよろしく頼む」
一連の挨拶を終えた後、俺は1つ疑問に思った。君達?どういう事なのか俺の理解は追いつかないまま会談は、進む。
次に話始めたのは、父とさほど変わらない歳だが圧倒的な力を感じる白い鎧を装備した人族の中年男性。
「私は、王国軍白龍隊隊長ゲン・ジークフリート。こっちが娘のアルテナ・ジークフリートになります。アイン様、どうか娘をよろしくお願いします」
とゲンさんは頭を下げた。
「私は、アルテナ・ジークフリート10歳よ。大変不本意だけど、あなたの婚約者になってあげるわ、よろしく頼むわ」
金髪の人族の少女アルテナは生意気そうにそう挨拶をした。
「こら、アルテナ失礼だろ」
「別にいいじゃない」
「すみません、ソル様、アイン様」
と謝るゲンさん。
「はっはっはっ、別に構わん。にしてもアイン第一印象最悪だな」
「うるせぇ」
アルテナ嬢は、
「ほら、王様も言ってるんだしいいじゃない」
と完全に開き直っていた。
アルテナ嬢に会うのは、初めてだがゲンさんとは勇者時代の父の知り合いらしく、俺も昔何回か稽古を付けて貰ったことがある。さらに現在は王国軍の人族部隊である白龍隊のトップなので会議などでちょくちょく会っている。ちなみに、魔族部隊の黒龍隊の隊長は、ペテロの父のアイオロスさんだ。
軍部のトップのゲンさんの娘である、アルテナ嬢が俺の婚約者なのは、身分的にはなんも問題ないのだが、彼女自身には問題がある。
アルテナ・ジークフリート、令嬢らしからぬ事に剣の訓練を好み、さらには幾度と街の道場に道場破りをしに行くという問題児だ。付いた呼び名は、金髪に優れた容姿から『わんぱく妖精姫』。
「じゃあ、次は私達ですね。私は、王国左大臣ボレアス・シュバリエです。そしてこちらが私の娘のディーナになります。アイン様うちの娘もお願いします」
「ディ、ディーナ!……シュバリエです。よろしくお願いします」
ボレアスさんは、旧魔王軍四天王でなんというか仲間だ。ボレアスさんも、父と母の自由気ままな行動に付き合わされて何回も腹痛に悩まされている。こういう面で俺とボレアスさん達は振り回されてる仲間なのだ。
そして、ディーナ嬢。俺とボレアスさんは何回か食事をしたことがあるが、ディーナ嬢とはそもそも会ったことがない。というより、外出をディーナ嬢はしない。それもそのはずディーナ嬢は、もう10年も屋敷に引きこもっているのだから。こうやってここまで出てこれたのも奇跡と呼ばれるぐらだと思う。そして彼女の呼び名は、薔薇の魔法を使う事から『引きこもりいばら姫』と呼ばれているそうだ。
それにしても、なんで2人いるんだ。アーサリオンは一夫一妻だ。なのに、2人というのはおかしい。人族と魔族で婚約者候補を1人上げて最終的にどっちか1人を選べとかいうやつなのだろうか。うわぁ、めんどくさい。そんな俺の嘆きはバカ父の一言でさらに悪化するのだった。
「アイン。お前には、この2人を両方とも妻として迎えてもらう」
「え?」




