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03・ヴァジエーニ と 雪山




 北の山は雪におおわれて真っ白。

 一歩、み出す度に雪に足がまってしまい、引きくのも一苦労。

 たくさんのおくり物を背負せおったヴァジエーニは、フラフラと雪山を登ります。

 でも、ヴァジエーニがよろめくたびに、やりが落ち、弓矢が落ち、よろいが落ち……。

 真っ白な雪の上に、ポツポツと後が残ります。


 いくら強くても、寒さにふるえ、つかれ果てたヴァジエーニは、大きな荷物がどんどん減っているにもかかわらず、むしろ、体がどんどん重くなっていくように感じていました。

 だから、一休みしようとこしを下ろし、荷物が半分ほどになっていることに気づき、仰天ぎょうてんしました。


「しまった! 疲れていて、荷物が減っていることにぜんぜん気がつなかった。はやく、拾いに行かないとっ!」


 そう言って歩いてきた道に目をやったヴァジエーニは、点々と続く落とし物のかげ視線しせんで追って、ため息をつきました。


「いったい、どこまでもどればいいんだろう?」


 贈り物の山を置いて、ヴァジエーニはトボトボと来た道をもどります。

 そして、一番最初に落とした荷物の元にたどり着いて、さぁ、また登るか、と暗い表情で落とし物を拾い上げました。


やりか」


 拾い上げた物を確認かくにんし、ヴァジエーニはつぶやきました。


「次に、弓矢」


 そうやって、贈り物を確認しながら登っていくと、贈り物は武器ばかり。

 ヴァジエーニは温かい毛布や、食べ物がないことにがっかりしながら拾い続けました。


「みんな、ドラゴンをたおすことしか考えていなかったんだな……」


 ヴァジエーニは、なんだか、がっかりしてしまいました。

 家族でもないのだから、仕方がない。初めてあった人間を心配する人の方がめずらしいだろう。

 そう思いつつも、道中の無事を案じてくれる人がいないのは、さびしく感じられました。

 だからでしょうか。ヴァジエーニはふと、考えました。


 ――もしも……。もし、自分が雪山に行くと母親が知ったなら……。


 自分がすでにコートや帽子ぼうし、マフラー、手袋てぶくろを身につけていても、全く同じものを一つ一つ「これも持っていきなさい」と言いながらまとわりつく、心配そうな母親の姿すがた脳裏のうりかびました。

 心配して、あれも、これも、と持ちきれないほどの物を差し出してくる姿が目に浮かぶようです。

 ……そして、そんな母親を冷たい目で見ている自分の姿も。

 そこまで考えて、ヴァジエーニは顔をしかめました。そして、想像したものをはらうように首を振ると、また、落とし物を拾い上げながら、山を登り始めました。

 けれども、黙々もくもくと物を拾い上げながら歩いていると、さまざまな考えがかんできます。


 ――絶対にありえないことだけれども、もし、母さんがドラゴン退治に向かうとしたら、自分は何をおくるだろう?


 ヴァジエーニの脳裏のうりに、どうでもよさそうな顔で、けんを持つ母親に「こっちの武器の方が向いているんじゃない?」と、やりを放り投げる自分が浮かびました。


 ピタリと足を止めたヴァジエーニは苦々しい顔で悪態をつき、また、雪をき散らしながら、ずんずんと登り始めました。

 まるで、いやな考えを置き去りにするかのように……。


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