8:0:白獅子は静かに爪を研ぐ。
再開します。ちょっと長めです。
大陸共通暦1767年:王国暦250年:初春。
大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:王都オーステルガム
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後方に戻されたヴィルミーナはまず母ユーフェリアへたっぷりと甘え、御付き侍女メリーナを始めとする家人達にたっぷりと甘やかされ、心身の消耗を癒した。
甘えられるって、素敵やなあ……
ヴィルミーナは一糸まとわぬ姿で浴室へ入った。細長い莢型の浴槽は魔導術で作り出したお湯で満たされ、香り良い彩り鮮やかなハーブを散らしている。掛け湯をした後、顎先まで湯に浸る。適温のお湯と芳醇なハーブの芳香が快い。
魔導技術文明のおかげか、大陸西方の上流階級は入浴文化が根付いている。入浴で体を清潔に保つことが出来る=高度な魔導術(もしくは高価な魔道具)が使える=上流階級の証みたいな三段論法があるらしい。
ま、風呂に入れるなら何でもいい。垢塗れの体の臭いを香水で誤魔化すような生活は嫌すぎる。
ヴィルミーナは浴槽に浸かりながら『白獅子』について考える。
近代財閥は基本的に得意事業――カーネギーなら鉄鋼、ロックフェラーなら石油、と得意分野の市場を独占するか、カルテル(旧名はトラスト)を組んで寡占することで莫大な財産を築き上げた。
翻って、ヴィルミーナは違う。出資と投資を軸に様々な業種の事業に手を出し、それらのアガリから資産を構築している。
であるから、今から特定市場の独占を狙うのは少々面倒が伴う。
それに、『白獅子』が半官半民の政商であることを考慮すると、特定市場を独占したところで国有化され、国に成果を掻っ攫われる、という笑えないオチを迎えかねない。
基本的にヴィルミーナは政府という組織をまったく信頼していない。公権力に対して既成概念的なほど強烈な不信感と猜疑心と警戒心を抱いている。
政府なんて信頼できるか。日本政府を見てみぃ。戦後だけでも、大企業に肩入れして公害を誤魔化そうとするわ、国民を南米に捨てるわ、薬害をばらまくわ……どこに信頼できる要素があんねや。
将来的にエドワードがベルネシア王になった時、自分の肩書も王妹大公令嬢からヴィルミーナ・レンデルバッハ女伯家の当主になる。母ユーフェリアも王妹大公から名誉爵位の大公に代わる。王弟妹大公の爵位は今生陛下の弟妹にしか許されない。
『白獅子』を半官半民組織から、このレンデルバッハ女伯家を頂点とした財閥に変えていく必要がある。苦労しいしいで育ててきた麾下組織を国なんぞにやるものか。
持ち株会社(レンデルバッハ女伯家)の許に、金融銀行業、海運物流業、ゼネコン事業、各種製造業、福祉事業、研究開発事業を再編し、将来を見越して資源事業と通信事業、メディア事業を整備する。もちろん、組織力を活かした情報収集能力と分析能力も強化。各主要事業が軌道に乗ったら、細分化と系列化を促進して枝葉を広げよう。
ヴィルミーナは手足をマッサージしながら思考を継続する。
金融銀行業はその莫大な資産を武器として扱うためだ。そもそもヴィルミーナは投資と出資によって個人資産を作り出し、その資金を元手に各商会や工房を買収ないし出資による経営権獲得で麾下に納めてきたから、おかしくはない。
ただし、資本主義経済世界は常に不況や恐慌の危機を孕むため、金融銀行業の暴走を抑止する安全弁が必要。調子こいてリーマンみたいな破滅は避けたい。よって、当座はヴィルミーナが完全支配権を握っておく。将来的にも銀行業は女伯家の隷下に留めるべきか。
貿易や交易関係への出資と投資の延長から麾下に収めた各種業者や商会をまとめ、海運会社と物流会社を設立。自活能力を持つため、造船や馬車製造/整備関係の会社も保有する。
小街区建設で獲得したノウハウを基に各種組織を統廃合し、ゼネコン会社を設立。その活動を支える各種資材製造会社も併せて興す。
福祉事業と教育関係は採算を無視してでも維持だ。社会的評価と世論の支持、将来的な人材の確保を得るために絶対不可欠。世界から嫌われても憎まれても良いが、同胞に嫌われてはならない。ユダヤ人商人みたいに不況の度に襲撃されるなんて御免や。
前世覚醒者のアドバンテージを活かすためにも、自社で研究開発組織を持つことも絶対だ。毎度毎度、国や余所に利権を奪われてはかなわない。私の利権は私の物や。
産業革命が世界規模に発展すれば、次に生じるのは資源獲得競争だ。今から資源関係の専門会社を作ってノウハウと販路を掌握しておく。同様に情報確保のために通信事業も不可欠。それに、自社メディアを使って世論形成や情報操作は組織護身の基本やし。
各種製造業に関しては、研究開発事業を活かせるもの以外は独立採算でよろしい。鉄鋼に関しては合資会社で必要量を確保できれば、充分。近代の鉄鋼事業は国が目の色変えて迫るから、自分が持つには面倒が多過ぎる。
新体制が落ち着くまで3年。資源採掘が軌道に乗るまでは5年を見よう。パッケージング・ビジネスはそれからかな。
ヴィルミーナは浴槽に頭まで沈めた。眼前を漂うハーブの葉や花弁が熱帯魚のようだ。鼻と口からぽこぽこと空気をこぼしながら、思う。
色々大変ではあるけれど……やっぱりデカい仕事は楽しいなぁ。
〇
ヴィルミーナは大手高級ホテルの大会場へ集結させた幹部達へ告げる。
「白獅子の基本方針として市場の寡占や独占は狙わない。私はその必要を認めない」
先にも触れたが、地球史における近代列強の諸財閥は得意分野市場の独占ないし寡占で成り上がった。日本の諸財閥にしても国内市場の独占や利権占有といった手法で利殖していた。ようするに、そういう手法が標準の時代なのだ。
が、『白獅子』の組織実態にこうした市場独占戦略はそぐわない。それに、自由市場経済圏を確立するには、競争の余地(あるいは余地があるように見える)が必要だ。
白獅子は市場の独占ではなく、市場の強者で充分だ。それに――
「我々は特定市場の独占ではなく、広範な自由市場経済圏を作り出す。白獅子に必要なのは狭い庭ではなく、広大な狩場だ」
ヴィルミーナの計画するパッケージング・ビジネスは一分野の寡占独占にこだわらない。重要なのは活動領域――商業経済圏だ。
例を取って説明しよう。
たとえば、某国が国内で資源開発したいと考え、白獅子へ発注する。
A:白獅子はまず現地へ警備会社(PMC)の護衛の下、資源調査会社を送りこんで、
その国や現地の状況をつぶさに確認。
B:次に警備会社の本隊を送り込んで現地の安全を確保。
C:資源採掘準備とインフラと通信の整備を開始。
D:本格稼働を始めたら、物流会社が乗り込んで資源移送を担う。
これらに必要な武器弾薬から車両や船舶まで全て自グループで揃える。
E:現地の労働者や出向人のために福祉や教育事業、メディアが参加。
F:その地域から生じる多方面の利益を白獅子が掌握する。
言い換えるなら、白獅子抜きでは一切回らない地域を作り上げる。
悪名高き新植民地主義的手法。
「当座は港湾や大街道、水利といった大規模インフラ整備を主導に据えるが、将来的には資源採掘を軸にする。そのための人材育成と技術研究には投資を惜しまない」
「しかし、こうしたビジネスは依頼国が契約を反故にする例もありますし、現地勢力に奪われる危険がありますが」
「そのために我々自身も抵抗手段を持つし、政府への影響力を保有する」
“客”が権力や武力を笠に着て、この利権を無理やり奪おうとした場合に備え、白獅子は自身で抵抗する手段――武力を含めた各種能力を整える。必要なら政府や国を動かして恫喝や脅迫、武力制裁を実施させるだけの影響力を持つ。
ヴィルミーナは淡々と語る。
「しかし、私は『白獅子』の独立性を極めて重視する。事実上、半官半民の組織ではあるが、国有化を前提とした国への帰属、政府主導の組織統廃合指導には断固として抵抗する。そのために、『白獅子』は常に相当額の債券を保有する」
魔導技術文明世界のこの時代、列強国の大半が財政の一環として国債を発行しており、戦費調達や国庫補填のために用いられ、相応量が流通している。もちろん価値はピンキリだし、諸々の事情で変動する。
そして、当然ながら、株式会社において大株主が強い権限を持つように、国債をたらふく持てば御国へ強い影響力を持つ。その債券が紙屑になるリスクを覚悟すれば、だが。
「リスクを負ってこその独立性だ。獅子に首輪は不要。我々は我々の利益追求活動の結果として国や民に貢献するのであり、国や民に貢献するために活動するのではない」
「ヴィルミーナ様の御意向は理解できました。しかし、計画を進めるにはいささか予算が足りません。組織作りだけで手いっぱいです。経済圏の確立まで何年かかるか……」
「金なら用意可能だ。いや、今だからこそ用意できるというべきか」
「当てがあるので?」
訝る幹部達へ、ヴィルミーナは魔女のように微笑んだ。
「クレテアだ」
〇
その日の昼、王都軍司令部傍のレストランで、ヴィルミーナはグウェンドリンの伯父であるハイスターカンプ少将と会食していた。
レストランの内外に銃や刀剣を抱えた護衛が配され、油断なく周囲を窺っている。
ヴィルミーナはタルタルソースが掛かった北洋鮭のムニエルを切り分け、口に運ぶ。脂の乗った鮭の身と爽やかな酸味を持つタルタルソースがよく合う。付け合わせは酢漬けホウレン草と人参のグラッセ。白ワインはアルグシア産だ。
「クレテアが春季攻勢を図っていること。これは確定なので?」
「間違いありません。前線からの報告で、既に兆候を確認しています」
向かい側に座り、ポークステーキを切り分けていたデレク・デア・ハイスターカンプ少将が淡々と答えた。軍官僚である彼は最前線に行かない。代わりに前線を支える後方業務のあらゆる苦労を味わっている。
「閣下。その攻勢を跳ねのけ、クレテアを打ち負かすことは可能ですか?」
「厳しいですな。強固な防衛線はともかく、即席陣地の突出部は耐えきれるかどうか」
ハイスターカンプ少将は切り分けた豚肉をフォークでブスリと刺す。
「大公令嬢様は何を企図してらっしゃるのです? 王国府の知人から巨額の資金を動かす準備をなさっていると聞きました。よもや、国を脱出する準備ではございますまい?」
「私は王族です。死ぬならこの地で死にます」
ヴィルミーナは薄く微笑む。
「資金は戦時国債を調達するためです。御国には資金が必要ですから」
「それは……殊勝な御心掛けですな」
ハイスターカンプ少将は豚肉を咀嚼しながら少し考えこみ、ごくんと嚥下して言った。
「決して他言しないでください。水漏れが確認されたなら、王妹大公令嬢と言えど、無事では済みません」
「承知しております」とヴィルミーナは強く首肯した。
「外洋派遣軍の先行部隊が晩春に、主力が夏に到着します。敵の春季攻勢を抑えることが出来れば、夏に戦況を逆転できるでしょう」
「失礼ながら外洋派遣軍で確実に戦況を覆せるのですか?」
「外洋派遣軍なら可能です。我褒めになりますが、我が国の外洋派遣軍は世界的にみても第一級の戦闘部隊です。防衛線に開いた穴を塞ぐことが出来るでしょう。さすれば、突出部の敵軍は包囲撃滅できます」
ワインを小さく呷り、ハイスターカンプ少将はふ、と息を吐いた。
「そのためにも春季攻勢を何としても耐えきらねばならないのですが、今度は敵もかなり気合を入れているようで。中々に難しいのが実情です」
今度はヴィルミーナが考えこむ番だった。前世晩年に激ハマりした乙女ゲーの作中ミニゲームを攻略するため、実際の戦術戦略まで研究した時のニワカ知識を穿り出す。
「素人考えですが、敵の攻撃正面は突出部。戦闘の焦点はおそらく防衛線突破口。これは合っていますか?」
「ええ。その通りです。敵が突出部から攻勢に出るためには突破口の維持が絶対条件。我々には敵の前進を止めるため、突破口を扼して補給を断つことが最適戦略となりますな。当然、敵もその点を考慮しているでしょう。既に相当数の部隊を配しています。偵察の報告では我が軍の航空戦力を警戒し、対空火器の回廊と化しているそうです。スノワブージュがよほど堪えたようですな」
「ふむ」ヴィルミーナは赤々としたニンジンのグラッセを見つめ「閣下。軍はどの程度の犠牲を許容できますか?」
「それは、どういう意味です?」
不穏な質問に訝るハイスターカンプ少将へ、ヴィルミーナは言った。
「たとえば、の話です。敵突破口内に装甲化した飛空船を強引に突入着地させ、トーチカして機能させる。突出部の敵は後方を遮断され、攻勢を鈍らせることになりますよね?」
堤の決壊部に土嚢を放り込んで流入を妨げる。別段、特別なアイデアでもない。
「理屈としては分かります。我々も既に検討しました。しかし、突入させた部隊は確実に玉砕しますし、敵攻勢を頓挫させる確実性に欠きます。最悪、貴重な兵力と資源を浪費するだけとなるでしょう」
創作物で用いられる”天才軍師サマ名将サマ”の詭計奇策は、プロからすると『おもいついたけどあえてやらない』に該当する”愚行”が大半である(ゆうても、面白ければええんやで)。まあ、歴史にはそのプロがやらかしたヘマが山ほど記録されているけれど。
「そのおっしゃりようですと、真剣に検討を重ねたようですね」
ヴィルミーナは目を細めた。紺碧色の瞳が冷たく光る。
「いくつかの問題が解消されたならば、実施可能と聞こえますよ」
ハイスターカンプ少将は大きな嘆息をこぼした。
「その通りです。問題が解決できれば、実施可能です。ただ、たとえ諸問題を解決しても、投じた戦力の壊滅は避けられないということです。敵軍の全てが排除に襲い掛かってきますからね。その犠牲の要求が正しいのかどうか……」
「必要性は全ての行為を肯定しますよ、閣下。軍の要求する犠牲で勝てるなら、私はあらゆる協力を惜しみません。それが、後ろ指差されるものであっても、です」
「……何をお考えなのです? いや、貴女は何をされるつもりなのですか?」
ワイングラスを手に薄く微笑み、ヴィルミーナは告げた。
「クレテアの背骨をへし折ろうかと」
〇
会食を終え、ヴィルミーナは馬車の中で計画を組み立てていく。
外洋派遣軍がようやく本国へ向けて発ったことは掴めた。この情報はじきにクレテアも掴むだろうし、大陸西方中の金融業界にも広まる。
そこで、ヴィルミーナはワーテルローの勝敗情報を操作して莫大な儲けを出したロスチャイルド家に倣い、春季攻勢を利用してクレテア国債の価格操作を仕掛ける気だった。
これまでの調査によって、クレテア財政は非常に危うい代物と分かっている。先代クレテア王の莫大な浪費と放漫な治政による巨額の負債、社会構造から生じる慢性的な恒常赤字。はっきり言って、現代地球の民間企業ならとっくに倒産していてもおかしくない。
現国王による増税と緊縮財政で瀕死から重体に回復したようだが、この戦争でそんな余裕は既に吹っ飛んでいる。今は戦時国債の発行で延命している状態だった。
この状況で国債が暴落すれば、クレテア経済は回復困難な状況に追い込まれるだろう。
もちろん、経済破綻を迎えたところで即時戦争終結につながるかは不透明。
たとえば、二次大戦の日本は国家破綻状態で戦い続け、その莫大な負債が敗戦で困窮となって襲い掛かった(仮に戦争で勝っていても、結局は困窮の地獄を見ただろう)。
それに当然、クレテア政府はあらゆる措置を講じる。聖冠連合やエスパーナに婚姻同盟の筋からある程度援助を求めるかもしれない。だが、両国には利がほとんどない。むしろ、クレテアに関わることで戦争不況に巻き込まれる可能性まである。そのリスクを負ってまで助けるとは思えない。
春季攻勢。
これがこの戦争の山場だ。
ここで奴らの攻勢を頓挫させ、そこに合わせて国債を暴落させられれば、クレテア経済の背骨をへし折れる。仮に折れずとも、重大な損傷を与えられる。
いや、奴らの背骨をへし折るのだ。
私の手で。
前世の性分が色濃く蠢き、ヴィルミーナは体の芯に興奮と昂揚の熱を感じる。
ビッグ・ビジネスはいつだって楽しい。国と数多の命を賭した重圧と重責は心地良いほどだ。はしたない言い方をすれば、“濡れる”ほどに楽しい。一流大企業の取締役にまで昇った前世でも、これほどの大勝負は経験がない。
ヴィルミーナは細い顎先を撫でながら思案した。
現代と違い、この時代は外国の債券や株式、通貨を購入することは簡単ではない。敵国となればなおのことだ。フルツレーテン公国の時も、いくつもカバーをこさえた上で行った。
逆にいえば、そういう搦め手に対し、この時代はほとんどの国がノーガードだった。まあ、近代では経済戦や金融行政の概念が薄い。貿易摩擦によって戦争が生じることはあったが(地球史で言えば英蘭戦争だ)、これは権益を巡る闘争と認識されていたし、通商破壊作戦に関しても、兵糧攻めという低次元の認識から継戦能力の破壊へ昇華したのは二次大戦である(なお、この場合の継戦能力の破壊とは、敵国市民の大量殺戮も含まれる)。
しかも、近代はこの手の法的規制がほとんど皆無だし、政府が個人や組織の資産を完全に把握することは出来なかった。ヴィルミーナにしても、フルツレーテンの件でやらかすまで国に気づかれていなかった。
クレテアの背骨をへし折るには、大掛かりに仕掛けるしかない。ただし、クレテア国内に乗りこんでの活動は注意を引きすぎる。より強固な隠蔽と迂回路が必要だ。
そういえば、クレテアは大陸西方コルヴォラントとも関係が深かったな。あちらに注意は向いてないだろうから、攻め易いかもしれない。
でも、コルヴォラント方面はほとんど手付かずや。どうしたもんか。
コルヴォラントは大陸西方南部にあって主要地域が地中海に臨む土地だ。地中海貿易はコルヴォラント諸国と大陸南方勢力の既得権益層がガッチガチに握っており、クレテアやイストリアですら遠慮がちになっている海だった。
ヴィルミーナとしては、そんな面倒臭そうな地中海方面に手を伸ばさずとも、国内事業と外洋/北洋貿易で充分稼げたし、手いっぱいだった。
自身の半分のルーツであるコルヴォラント(のベルモンテ)に関心は少々あったものの、ベルモンテから出戻った母の心境を慮れば、積極的に乗りこみたい場所でもなかった。
とはいえ、今回は手を出さぬわけにもいかない。
ヴィルミーナは額を押さえて小さく息を吐く。
頭の痛い話だった。
最大の庇護者である母が障害になるかもしれない。
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ほんとに、お願いします……




