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転生令嬢ヴィルミーナの場合  作者: 白煙モクスケ
第4部:美魔女時代

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335/336

22:10a

お待たせして申し訳ない。

大陸共通暦1786年:ベルネシア王国暦286年:年末

大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:王都オーステルガム

――――――――――

 しんしんと白雪が降り注ぐ昼下がりの王都。その一角に佇む大きな王妹大公屋敷。


 ヴィルミーナはテラスでキャンプ用コンロに火を焚き、暖を取りながら遅い昼食を手ずからこさえていた。子供達は学校。旦那は仕事。母はお友達と観劇に。御付き侍女と愛犬達は温かい屋敷の中で待機中。

 愛狸が傍らでおこぼれに与ろうと愛想よく振る舞っている。


 コンロには薬缶と小鍋が掛けられており、小鍋の中で鴨と根野菜のクリームシチューがことことと煮られている。


 厚着に赤いマントを羽織り、ニット帽で耳まで覆ってはいたものの、ヴィルミーナの鼻と頬は寒気にあてられ仄かに赤くなっていた。

 ヴィルミーナはシチューの匂いを嗅ぎながら、降雪と雪化粧が施された庭を眺め、思案する。


 南小大陸領スリネアの戦況は停滞しているらしい。

 バリマ河対岸に構築されたミランディア軍の防御陣地の攻略と渡河に手間取ったところ、雨季が到来してしまったようだ。


 戦争の推移そのものは開戦劈頭から一貫してベルネシア軍が圧倒している。ただし、ミランディア公国東部の交通網の貧弱さと、スリネア山地密林地帯の環境と生態系の難儀さは、事前調査で把握していた以上だった。


 特に、鉄道敷設地域とバルマ河に出没した大型竜種は想定外に縄張りが広かったようで、二種類の対策――短期的には現個体の狩猟討伐、中長期的には別個体の侵入防止――を要する。


 エル・パチョなる鉄道敷設/鉄橋建設予定地の村だか町だかを襲った鱗甲泥竜は、スリネア領の最高位冒険者チームを派遣して討伐した。先頃、討伐した泥竜と共に、誇らしげに笑う冒険者達の写真が掲載された現地新聞が届いている。なお、大角密林竜の討伐に派遣した別チームは返り討ちにあったという。


 そない化物共が跋扈しゆう土地にまあ住み着いたわ。先祖伝来の知恵とか土地付きの経験とか、その手のもんがあるんかもしれへんな。

 いずれにせよ、線路の防衛態勢をより強固にした方がええやろ。資材と労力が余計に掛かってまうけど、軌道両側の敷地境界に敷く鉄条網と柵を二重にして、水堀を通すしかないか。


 御上に追加予算を飲ませな。またぞろ根回しの挨拶行脚か。山吹色の饅頭を用意せんと。あー、メンドい。


 ヴィルミーナは木製大匙で小鍋を掻き混ぜ、一口分取り出して味を見る。牛乳の甘みと隠し味のチーズのコク、鴨肉と野菜のうま味がよく出ていた。


 鴨肉を愛狸ポンタへ与えると、ポンタはアツアツの鴨肉に難儀しつつも、瞬く間に平らげて鼻先に付着したシチューを器用に舐めとった。


 小鍋をコンロから降ろし、ヴィルミーナはテーブルからパンを取ってナイフで切り分け、コンロの火で軽く炙り始めた。


 急造の艀は制圧した別の河港町に運び込まれ、問題なく部隊と機材をバリマ河対岸へ渡しているようだが、やはり渡河の時間的労力的コストは疎ましい状況だ。

 まあ、スリネア山地から外れるバルマ河対岸地域はそれなりに交通網が整っているらしく、虎の子の機甲部隊がいよいよ真価を発揮するだろう。


 ただし、多種多様な怪物達が猖獗を極め、入植どころか冒険者達すらろくに根づかないスリネア山地密林地帯と違い、バルマ河対岸は人の手が多く入っている。


 バルマ河対岸地域は平野と緩い丘陵が主で、ブランケロ湖とその河川により水も豊富だ。

 そのため、森は開墾され、土地は開拓され、灌漑も整備され、畑や果樹園や牧場、大農園(プランテーション)に化けていた。幹線道路だけでなく開拓道路も少なくない。


 つまり、それだけ権利者が多いということだ。特に入植貴族や大地主、自作農の連中は自分の土地や利権を守ろうと死に物狂いで抵抗するに違いなかった。


 出来る限り戦争で死んでくれた方が、戦後の面倒が減るな。

 冷酷な算盤を弾きながら、ヴィルミーナは焼けたパンにバターを塗り、ぱくりと齧る。焼いたパン特有の香ばしさ。サクサクとした食感と仄かな甘み。


 片眉を上げ、ヴィルミーナは小鍋から直接シチューを食べ始める。冷えた体に熱いシチューが沁みる。

 すかさずポンタがヴィルミーナの足を突き、あざとい眼差しを向けてきた。仕方ないので小皿にシチューを注ぎ、ポンタにお裾分け。


 エル・パチョの架橋工事は五年くらい掛かるか。鉄とコンクリートで建設する予定だから、もっと掛かるかもしれない。

 問題は橋ができるまでの間だ。エル・パチョと中州と対岸。ここに橋が架かるまでの間、黒色油を満載した貨車をどう渡河させるか。艀を使う場合は中州が邪魔。かといって橋を渡すなら中州があるここがベスト。どうしたものか……


 専門家にアイデアを募ろう。私には分からん。

 シチューとパンを平らげ、ヴィルミーナは薬缶のお湯をポットに移し、紅茶を淹れる。黒々とした濃い紅茶へ柑橘のジャムをひと匙。ミルクは無し。イストリア人が見たら『なっとらん』と顔をしかめるかもしれない。


 食後の甘酸っぱい紅茶を嗜みながら、ヴィルミーナは思考のベクトルを変えた。


 白獅子財閥のビジネスは手広い。

 銀行業と金融業(財閥内の株と資金管理、全従業員の給与管理等が主)。陸海空の流通。

 製造方面は多岐に渡る。王都小街区の繊維はしっかり操業が続いていて、衣服製造こそ扱ってないが、その分野の有力事業者であるメルフィナと提携している。


 流通部門の補佐で始まった造船業は拡大しつつあり、製鉄と製鋼は資材から根幹部品に産業用工作機械まで。それに動力機関事業も順調だ。


 パッケージング・ビジネス用の土地開発からインフラ整備まで担うゼネコン関連も、市場シェアこそ大きくないが業界内で存在感を放っている。


 メディアと通信関係はもはや国内どころか大陸西方圏でも有数の能力を持つ。地中海戦争時に情報宣伝戦をやるため、地味ながら強力に拡大された分野だ。

 教育関係は私塾から大学まで広がり、白獅子の技術研究所と密接な関係にある。芸術その他の支援事業、私設奨学金制度なども推進しており、病院や診療所へもリソースを注いでいる。


 白獅子財閥が本拠地として根を広げたクレーユベーレ市は今や白獅子財閥の街であり、街の有力者の名簿は白獅子関係者で埋まっている。もちろん代官の面目を損なわぬよう、ヴィルミーナもニーナも気を配っているが、それも数代後にはどうなっているか分からない。


 いろいろ広がり過ぎたな。ヴィルミーナは愛狸を湯たんぽ代わりに膝へ乗せ、横髪を弄りながら思案する。


 ウィレムももう十代半ば。もう数年すれば王立学園を卒業する。どういう進路を進むかは本人に委ねるけれど、財閥後継者として立つ気なら数年は外で修行させよう。貴族か民間か。いずれにせよ私の目と手が届きつつ、私の傘の下にないところで経験を積ませたい。


 そして、ウィレムが外で修行している間に事業を整理する。

 政府の動きにも注意しておかな。地中海戦争の件を根に持っとる奴多いし。


 ポンタの顎下をくすぐりながら、ヴィルミーナはふと思い出す。

「そういえば、そろそろアレックスが帰ってくる頃ね」

 彼女から何か景気の良い話が聞けると良いのだけれど。


       ○


 白獅子製の内燃機関式機械化車輛が白雪の踊る王都内を走っていく。

 とはいえ、速度はそう速くない。車道の中心はいまだ馬車であるし、普及が進む蒸気機関車輌もそう速度が出る乗り物ではなかった。

 車輛の前後を進む護衛車輛では、防寒着をまとった護衛達――民間軍事会社の精鋭達が油断なく周囲を窺っている。


 車窓から雪化粧が施された石造りの街並みを眺め、白獅子財閥総帥代理“侍従長”アレックスは思う。

 やっと帰ってこられたわね。


 アレックスはつい先ごろまで大冥洋群島帯に派遣されており、助っ人として諸々の指導と引継ぎを済ませて帰国してきた。検疫休暇とお忍びで王家へ報告(国王夫妻は娘の群島帯総督クラリーナをとても気に掛けている)し、ようやっとの出社だ。


「群島帯は素敵なところだったけれど、やっぱり故郷は落ち着くわ」

「ですね」と女性秘書が大きく頷く。「ベルネシアが一番です」

 アレックスに帯同して群島帯に赴いた彼女は、現地の熱帯気候に馴染めずヒーヒー言っていた。


 しみじみとする秘書に微苦笑を返し、アレックスは車窓から見慣れた王都を眺める。

 国外は20代の頃にカロルレンへ赴いて以来。大冥洋を渡ったことは初めてだ。『御家族を連れて休暇も満喫してきなさいな』とヴィルミーナが気を回してくれたので、アレックスは群島帯行きに夫と子供達を伴った(実家と義両親も誘ってみたが『蛮地はちょっと……』と拒否された)。


 夫と子供達は未知の南国と異文化を大いに楽しんでいたけれど、アレックス自身は日程の半分が仕事だった。ミランディア侵攻に伴う流通の混乱の整理と改善、現地事業の視察、現地有力者と外交等々。


 ちなみに逗留先は高級ホテルを予定していたものの、王女総督クラリーナから『是非この宮殿に御滞在してくださいな』と“お願い”されてしまい、王家一門衆の端くれである夫すら気後れを覚える厚遇を受けてしまった。

 長男がクラリーナの娘と親しくなった時は、婚約を言い出されるのではないかと冷や冷やしたものだ。幸い、取り越し苦労で済んだけれども。


 アレックスはふと思い出して、秘書に尋ねた。

「ニーナはまだ帰国していないそうね?」


「連絡によりますと、ニーナ様は現地で辣腕を振るわれておられるそうで」と秘書。「先の地中海戦争では後方支援に終始されておられましたから、此度の現場出向に張り切っておられるのかも」


「あり得るわ。きっと楽しくなっちゃったのよ」

 アレックスは玲瓏な面差しに和やかな笑みを湛えた。

「南小大陸黒色油鉄道は歴史的事業だもの。面白くないはずがないわ」


 ヴィルミーナの側近衆ナンバー2、言い換えるなら次姉であるアレックスの考察は正しかった。

 南小大陸に派遣されたニーナは、母屋を完全に乗っ取っている。


 今や鉄道事業に限らずベルネシア領スリネア内の全事業に手を付け、他の協商圏南小大陸植民地とパイプを築き、独自の人脈網を広げ、イストリアとクレテアの現地高官と悪企みを始めていた。


「独断専行って範疇じゃ収まらない気がするんだけど……良いのかなぁ」

「本国から掣肘されてないし、良いのではないのか?」

 ケフィンとイダがそんなやり取りを交わしていたが、ニーナは決して勝手をしているわけではない。


 “信奉者”ニーナを始め、“姉妹”達は好き勝手に振る舞っているように見えても、また実際に独断専行に至っても、決してヴィルミーナに背かない。

 アレックスもニーナも敬愛する長姉が、裏切りと背信に対して病質的な怒りを示すことをよく理解している。


 それにしても、とアレックスは車窓の外を眺めながら口腔内で呟く。

 ニーナがこれだけ精力的に動いてもなお、侵攻計画が遅延しているのだから、やはり戦争というものは計画通りにいかないものね。

 ヴィーナ様も御国も成功を疑っていないけれど、大丈夫なのかしら。



 で。



「おかえり、アレックス」

 ヴィルミーナは総帥執務室へ帰還の報告にやってきたアレックスをハグで迎え、柔和な笑みで頬に手を添えた。

「少し日焼()けたようね。健康的な感じがして素敵よ、アレックス」


 大事な姉妹を応接用ソファに座らせ、長姉は手ずから飲み物を用意し始める。

「群島帯には御家族も連れていくよう勧めたけれど、問題はなかったかしら?」


「夫も子供達も楽しんでいました」アレックスは控えめと呼ぶには生々しい嘆息をこぼし「まぁ、総督府宮殿に逗留することになった時は少しばかり困りましたけれど」


「貴女は昔からリーナに振り回されてたものね」

 くすくすと上品に喉を鳴らすヴィルミーナへ、アレックスはちくりと棘を刺す。

「その始まりはヴィーナ様が私に男装させたからですよ」


「あははは」

 元凶は笑ってごまかし、アレックスの矛先をいなすべく話題を変える。

「そうだ。アリスとも会えたのよね?」


「ええ」心優しいアレックスは話題変更を受け容れて「二児の母親になっても相変わらずです。無邪気というか能天気というか。御子息の方がよほどしっかりしていましたね。御息女の方は逆に子供の頃のアリスとそっくりです」


 人並外れた魔力の持ち主であるアリシアは、教会からは失伝魔法復活の聖女候補として期待されていたが、望まれた結果を出すには至らなかった。

 現在は群島帯で実家の土地を管理しつつ、教会職員として活動しているという。


 かつてのヴィルミーナはアリシアのあまりにもアレな振舞いに、自身の転生が『ここぁ私の知らん乙女ゲー世界かっ!?』と慄いたものだが、実際はそんなこともなく。


「懐かしいわ」

 ヴィルミーナはお茶請けと紅茶を注いだカップをアレックスの手元に置き、向かいではなく隣に腰を下ろす。上司と部下としてではなく、姉妹と呼び合う親友と接するように。

「では聞かせて、アレックス。群島帯での貴女の活躍と、貴女が見聞きした現地の様子。そして、貴女の所感を貴女の言葉で」


 アレックスはカップを手に微笑み、大きく首肯した。

「はい、ヴィーナ様」


 アレックスはまだ知らない。

 これから自分がヴィルミーナの目の色を変えさせることを、まだ知らない。


     ○


 北洋沿岸産のプリプリな牡蠣に塩レモンを掛け、エステルは口へ運ぶ。

 貴族らしい高魔力適性と間断ない努力によって保たれている大人の魅貌に、率直な笑みを滲ませる。口腔内に残る牡蠣の風味と味わいを白ワインですすぎ、ほぅと満足げに息を吐く。


「やっぱり牡蠣は北洋沿岸産が一番ね。少し小振りだけど味わいが濃くて美味しい」

「生牡蠣なんか食って、当たっても知らないぞ」

 卓の向かい側に座るテレサがしかめ顔を作っていたけれど、エステルは気にせず次の牡蠣へ手を伸ばす。


「ここ北洋沿岸で三本指に入る名店よ? 鮮度と品質に心配はないわ。食べないなら貴女の分も貰うわよ」

「……食べないとは言ってない」

 仏頂面のままテレサも大皿から牡蠣を手に取り、プリプリの身を口に運んで表情を綻ばせる。


 それ見たことか、とエステルが口元を曲げれば、テレサはそっぽを向いて白ワインのグラスを呷った。

「そうだ。アレックスが帰ってきたじゃない?」


「ええ。お土産貰ったわ」エステルは首肯して「紅珊瑚のアクセサリと、なんかよく分からない現地の民俗衣装」

「私も貰った。正直、どこで着たら良いか分からないわよね、あれ」


 そんな前置きを挟み、テレサは周囲をちらりと見回してから、声のトーンを落として本題に入る。

「ヴィーナ様は帰ってきたアレックスから群島帯の報告を受けたんだけど、それで群島帯の水産業拡大を考え始めたみたい」


「水産」エステルは深青色の瞳を瞬かせ「え、なんで水産?」


 白獅子財閥は手広く商っており、農機や重機に各種機械と各種資材その他を開発製造、販売流通させている。が、第一次産業――農業、鉱業、水産業、林業といったものは経営していない。カロルレン・パッケージにしても、現地の天然素材やモンスター素材の狩猟採取そのものにはノータッチ。


 エステルが理事を務める民間軍事会社には猟団も編成されているけれど、これは僻地開発等における対モンスターの専門家集団という面が強い。


 では、なぜこれまで白獅子財閥が外洋領土経済の華とも言うべき、一次産業に手を出してこなかったか。


 簡単に言えば、白獅子財閥が後進の新興組織だから。

 外洋領土の一次産業、特に農業と鉱業は先行した入植貴族と成功者達ががっつり利権を掌握しており、ヴィルミーナも西方圏での各種事業の展開と育成に注力していた。精々が原料等の調達のために現地財閥と取引したり、投資したりしたくらいだった。


 そういう事情からエステルは当惑し、自分なりの考えを口にする。

「え……と、それは妹分のクラリーナ様の要請に御応えしてってこと? それとも、群島帯で事業拡大をするための布石?」


 前者なら“ほどほど”で済むだろう。後々には現地の有力者などに事業を売却することを考えてもいい。ただし、後者なら白獅子の海外展開強化を意味する。これはベルネシアのみならず協商圏全体に影響が及ぶデカい話だ。


「それが」テレサ自身もどこか困惑気味に「アレックスが大冥洋群島帯でマグロって魚を食べた話をしたら、それはもう言葉通り目の色が変わったらしいの」


「マグロ」

 鸚鵡返しに呟き、エステルは脳内の教養のページをめくってみるも、当たり無し。

「知らないわね。どんな魚なの?」


「聞いた話だと……とても美味しいけど身が腐り易いから、現地でも漁師が消費するくらい、とかなんとか」

 テレサの雑な説明を聞き、ん? とエステルは整えられた眉を寄せる。

「……ひょっとして、ヴィーナ様はそのマグロが食べたいがために、水産業に手を出す気だと?」


「多分」テレサはどこか遠い目で頷く。

「いやいや……いやいやいや、まさかそんな、流石にそれは……」


 敬愛してやまない長姉は基本的に公私を分けているけれど、時に平然と混同するし、割と気分やノリで物事を始めることも少なくない(それをビジネスとして成立させる過程を楽しんでいるようだ)。


「今は南小大陸黒色油鉄道に注力すべきだし、お諫めすべきかしら。どう思う?」

 テレサが眼鏡の奥に困惑を湛えたままエステルへ意見を求めるも、エステルだって困る。ボスが食い意地から新事業を起こすと言われて、どう思うと問われても、ねえ?


「うーん……事業として採算が取れるなら、まあやっても良いと思うけれど、準備の投資にどれくらい金と物と人を費やすかよね」

「それについてもね、軽く……本当に軽くよ? ヴィーナ様に聞いてみたんだけど」

「聞いてみたんだけど?」

 歯切れの悪いテレサに、エステルが何となく嫌な予感を覚えつつ先を促すと。

「魚介の鮮度を保ちながら超長距離移送を実現する新技術の開発も、視野に入れるって」


「………ええっ?!」

 ヴィルミーナがガチのマジの本気らしいことに、エステルは思わず吃驚を上げた。

なろう、変わり過ぎじゃない?

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― 新着の感想 ―
[一言] 私も、なろう、改悪だと思う。 責任者出てこい! BY 初期からの愛読者
[一言] マグロ食えるならそりゃやるわな、日本人マグロ大好きだし そして冷蔵技術は金のなる木でもあるから一石二鳥だぜ(開発費は見ないことにする まぁ冷媒はわからんでもクーラーの原理ぐらいは分かりやろし…
[良い点] マグロかあ、絶対、魔黒とかいるやろ。魔魚とかな水生モンスター枠。
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