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幕間 姉妹 すきんしっぷ



 夏紀の朝は早い。部活の朝練が週に二日有るのだがそれが無い日は早朝ランニングを日課としている。

 今日は日曜日で部活は休みである。


「まさか冬美と走ることになるとはなぁ」


 隣を走る冬美に話しかける。まだ暖まっていない朝の空気が軽く汗ばむ身体に心地よい。

 冬美は道場に通うようになってから夏紀が朝ランニングに行く際について行くようになった。以前の冬美は家に居ればひたすら本を読むかゲームをしているかのどれかであっただけに自分と共に進んで運動するようになるとは想像していなかったので感慨深いものがある。


「柔道、面白いか?」

「はっはっは」


 苦しげに頷く。何だかんだで体力はついたが高校生の夏紀のランニングについていくのは小学生の冬美にとっては簡単なことではない。まず身長も足の長さも違うのだから仕方ないことである。

 十キロ程をそこそこのスピードで走るので夏紀が話をする余裕はあっても冬美はついていくのがやっとであるからしてまともな会話は不可能である。


「ちょっと休むか?」

「はっはっは」


 犬みたいな息づかいだなぁと苦笑しつつ冬美を伴い近くの公園に設置された自販機でドリンクを買い与える。


「お前が通ってるとこの師範代の妹、今度の試合に出るって聞いたぞ」

「智恵子さん強いし、しぶとい」


 元々愛想が悪い印象の冬美だったが友田柔道場に通うようになってから変わった。兄弟はともかく他人には敬う態度を表面上だけではあるが身につけ始めた。取り繕うとも言うが、以前の冬美ならば少なくとも智恵子の事をさん付けして呼ぶことはなかったであろう。


「へぇ。良くしてもらってんのか?」


 そう言えば詩季の取り巻きの一人だと思い出す。夏紀は秋子や春姫ほど弟の交友関係に口出したり首を突っ込むつもりはなかった。明らかに害悪となりそうな場合は徹底的に潰す所存だが。


「ん。だけどお兄ちゃんにはふさわしくない。大分頭のネジが抜けてらっしゃる」


 取り繕い方にまだまだ難があるようだったが夏紀はこれはこれで味か、と詩季のようなことを考えつつ別な指摘をする。


「お前ほんとブラコンだよな」

「家に返ったら鏡見ると良いよ」


 しかも言うようになったもんだ、と夏紀は苦笑する。




「おかえり~」


 のほほんとした調子でキッチンから声を掛ける弟に笑顔で応える。


「朝ご飯、もうちょっと掛かるよ」

「だいじょぶ」

「ああ、俺らシャワー浴びてくるわ」


 二人は揃って風呂に向かう。風呂は広く、約二畳分の湯船とシャワーが二つ設置されている。二人並んで服を脱ぎ、各々シャワーを浴び頭や体を洗う。


「冬も多少育ったなッ」


 最も無防備な瞬間、冬美が頭皮を洗っている瞬間にほんのり育ってきた胸を背後から掴む夏紀。


「ぐっぃいっ」


 しかし冬美は冷静に後ろも見ずに踵で蹴り上げ、夏紀は悶絶する。

 姉のこのスキンシップという名の攻撃は二回目で有り前回は揉みしだかれたがそう何度も引っかかる冬美ではない。


「お……おま、やり、すぎ……だ、ろぅ」


 男でなくても股間を蹴り上げられれば我慢出来るものではない。


「体格差が有りすぎで逃げられない状態はもはや虐待。春姉にも許可貰ってる」


 長姉の名前を出されグゥの音も出ない。前回はくすぐったがる冬美が面白く、息も絶え絶えという状況までいじくり回したので虐待と言われると明確に反論できない前科持ちであった。


「手加減」


 手加減でこれかよ、と全裸で風呂の床にうずくまった夏紀の耳に不穏当な言葉が続いて聞こえた。


「するから安心して」

「ぎゃああっ!」

「水の陣」


 すると冷水シャワーを浴びせられ驚き悲鳴をあげてしまう。


「つ、つめてぇ! てめぇ!」

「死にはしない」


 今度は自分に突撃して抱きついてくる妹を何とか手で遮ろうとするが


「ぬるぬるの陣」

「うぉあ!?」


 既に全身を石鹸まみれにしていた冬美を捉えることが出来ず今度は背後を取られる。


「爆撃、みるくねっくあたっく」

「ひっ!? や、やめ! それまずい! どこ触って、うぃあッ!? ぁっいぃひぃっ」


 敢えてどこをとは冬美も応えない。だが己が前回やられた事はやっておかなければ格闘家として芽生え始めたプライドが許さない。

 とある箇所を執拗に執拗にぬるぬるの指で優しく、時に激しく、たまに爪をひっかけるようにして刺激する。


 夏紀にとって非常に苦しく刺激的で屈辱的だが、かと言って実の妹、それも秋子ならまだしもまだ小学生の妹を殴って止める訳にもいかず夏紀は悶えながらなんとか逃げようとする。だが小さな柔道家は巧く位置取り、這おうとする獲物の足をぬるぬるの手足で刈って潰し移動出来なくする。


「へいへいぴっちゃーびびってるー」

「ぃっあっあぃひぃッ」

「たいむたいむすっごい滑るよって言えば許す」

「た、タイムタイぃっあッ」


 言い始めた直後に冬美の指が激しく動く。


「失敗。残念。続行。ふぁいと」

「ヒィッ!」


 詩季が異変に気付き呼びに来るまでこのやり取りが数度繰り返され夏紀は体力も精神力も根こそぎ刈り取られるのであった。



 知らない人間から見たら非常にあれでそれな光景だったが二人は姉妹である。姉妹のスキンシップなのだから年齢制限が必要だったり何かの規制に引っかかることはない微笑ましい光景である。


「冬ちゃん、あの、なんで夏お姉ちゃんグッタリしてんの? お風呂で何してたの?」


 某栽培された地球外生命体に爆殺された地球人龍球戦士のような格好でソファーに倒れ込み、何故か煤けて動かない姉を見て詩季は事情を知っているであろう妹に尋ねる。


「お兄ちゃん、この味噌汁美味。おかわり欲しい」


 露骨に話題を逸らす妹に詩季は首を傾げつつもおかわりを用意するのであった。



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