パーティー パーティー
更新詐欺師ですみませぬ!
暦冬美。
それが僕の氏名。
名前の響きが芸人みたいで気に入っている普通の中学生。
趣味はゲーム。ゲームは良い。没頭してしまう。最近はスマホゲーにハマっている。課金したいけどお兄ちゃんに先日怒られたので自重。あの時はヤバかった。お小遣いカットはキツ過ぎる。
「冬ちゃん。食器出してくれる?」
「ラジャった」
兄。暦詩季。高校2年生。優しくて美形。
昔は酷い性格だったのだけど、怪我をして記憶を失ってから『優しくなって新発売』。買い占めたい。
「お兄ちゃん」
「ん? ……触られた」
「触った」
料理中の兄はエロい。特にお尻がエロい。触らない手は無い。最高の弾力だ。湿る。
「冬ちゃん……何か言うことは?」
普通の家ならシバかれて家を追い出されるか強制入院な事案だが、兄は優しい。
「ご馳走様」
「お粗末様」
「大丈夫。極上」
サムズアップでギャランティーがマイジャスティス。
「冬ちゃんはエロエロだねー」
からかうように笑って僕の額をデコピンする兄の懐の深さは海より深い。お尻に顔を埋めても恥ずかしがるだけで怒らないとかどれだけ深いのか。マントルも突き抜けていそう。
「中学生らしく生きようかと」
「へー。いや、うん、変だよね、それ」
またペロンと兄のお尻を撫でようとするとガシッと掴まれた。
「冬美。何をしている」
春姉がいつの間にか背後に居た。流石にまだ奇襲無しでは春姉に勝てないので一旦引くことにする。
「春姉。おは。お兄ちゃんがおはようのキスを春姉にしたいって言ってた」
姉は兄に弱い。
「ぬ……詩季がそんなこと言うわけがないだろう」
と言いつつ欲しがりさんな視線になっている春姉にお兄ちゃんは苦笑しながら
「おはよ。言わなくても思ってたりするかもよ」
と言いながら春姉の右頬に軽くキスをした。
「ふぉ!? ……お、おはよう」
「はい、おはよ。もうすぐ出来るから新聞でも読んでなよ」
春姉は う、うむ などと呟きながらフラフラとリビングに行った。助かったようだ。
「僕にも」
「もう。イタズラばっかして悪い子だねー。おしおきだべー」
頬を少し噛まれた。ちょっと痛い。
「むぅ」
僕は毎朝こんなやり取りが出来て幸せだ。
「冬は良いよなー。あんなイケメンな兄ちゃん居て」
「だよなぁ。メッチャ優しいし」
学校、昼休み。友人の飯島と蒼井がいつもの如く羨ましがる。
「日頃の行い」
「いや、せめて前世とか言えよ」
「冬はエキセントリックなとこあるよな」
「むしろそこしか無いだろ」
失礼な。至って普通だ。
「今日お兄さん居る?」
「多分。今日はお母さんも早く帰ってくるからちょっとご馳走になると思う」
兄は料理好きだ。
「良いなぁ。ウチの母親は仕事変わって前より早く帰ってくるようになったけど買った総菜率高いわ」
「ああ、ウチも。前より大分良いけどなぁ」
二人の母親は今、メッティの会社に勤めているらしい。秋姉に言わせると『我が家への利益供与さね』とのことだ。兄の婚約者だからということらしいが彼らに言う必要はない。
そう言えば、今週末の日曜日はメッティの部屋のテラスでお昼の予定だ。餃子とたこ焼きと鉄板焼きだと聞いている。メッティも賑やかなのが好きだから多少増えても大丈夫だろう。
「今度の日曜日、お昼食べ来る? 親と一緒に来ると良い。言っておく」
僕の誘いに一瞬で二人とも乗った。男の手料理は高いのだ。それが美男子で笑顔で迎えられるのだからそんなお店は超高級店くらいだろう。
そして当日。
「あの、今日はありがとうございます」
「私達まで本当に良いのでしょうか……」
飯島と蒼井の母親が恐縮しているが、家主のメッティは笑い飛ばす。
「勿論歓迎じゃ。おぬしらも頑張ってると聞いているが今日は我の友人である冬美の友人らとその保護者じゃから無礼講じゃぞ? 目一杯楽しむようにな!」
ご機嫌だ。賑やかなのは確かに楽しい。
二人の親は我が母にお金らしき包んだものを渡そうとするが当然断られていた。
「家庭料理だし、お菓子もさっき頂きましたから」
恐縮する友人親と友二人に兄は
「妹がいつもお世話になってます。今日は一杯食べていってくださいね」
エンジェルスマイル。銃弾で撃たれたようによろめく四人。芸人か? 負けられない。
「冬美がいつもお世話になってます。今日は一杯食べます」
「こちらこそ。お嬢さん、どうぞこちらへ」
笑いながら僕の手を取り流れでお手伝いすることに。まぁ良いけど。
「良いなぁ」
「マジあんな兄が欲しい、母ちゃん」
「俺も俺も!」
「カッカッカ! ミッティの友は面白いのぉ! 大人はほれ、酒じゃ酒。駆け付け一杯! おい、秋子」
「はいさー」
「「ありが、は?」」
困惑する友人親二人にそれぞれ一升瓶を渡す姉。
「鬼か!」
「あだっ詩季君、空とはいえペットボトル投げるのは非道いのぉ」
「あんたは鬼か! 止めなさい、そういうパワハラアルハラは!」
「軽いジョークじゃろうに」
「一升は重いさね」
「いや、その前に秋子、おぬしの独断じゃろうが」
「未来の雇い主の心を読んで動くのが良い飼い犬と思ったものでゴニョゴニョーさ」
未成年の癖に既にビールを飲んでいた秋姉。我が家では高校生から特別なイベント時のみ酔いすぎない程度の飲酒は許されている。
その後、パーティーはワイワイガヤガヤと楽しく進み、帰り際に友人達には兄お手製のマジ美味いレアチーズケーキをお土産で渡した。友人親二人も大人同士で会話して、笑顔だった。
どうやら兄のことで母は二人の親に尊敬されたようだ。時たま兄も親達に混じり、僕らとも騒ぎ、酒をグイグイ飲む姉達を窘め相手しつつも料理が切れないよう作り続けていたけど、超人かな? 男子力天限突破。
メッティも縦横無尽に好き勝手行き来し楽しんでいた。
「冬、今日はありがとな! 楽しかった!」
「また呼んでくれよ!」
「ん。また皆で騒ぐ」
楽しかった。またやりたい。
「また来てね」
「は、はい!」
「絶対来ます!」
兄が二人の頭を撫で顔を真っ赤にする友人二人。そして羨ましそうな友人親二人。
「お兄ちゃん」
僕の言葉と視線で以心伝心。困った顔の兄も可愛い。
「えっと……嫌じゃなければ」
「是非!」
「お願いします!」
アハハ、と苦笑しながら友人親二人の頭を撫でる兄。
「おぬしら、次のボーナスはないと思」
「紋女?」
「うことなぞ絶対に思うでないぞ!? 我がグループは成果主義じゃからな! 死んでも働き稼ぐのじゃ! アダッ」
「ライフワークバランス!」
日本でもトップクラスの超有名実業家は兄の尻に敷かれている。
尻……敷かれたい。あとで兄がソファーに座る瞬間にヘッドスライディングを成功させよう。
何はともあれ、楽しい一日だった。




