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幕間 オッパ ニュウム



 暦詩季は下は女子中学生から上は五十代まで発情出来るマルチプレイヤーである。

 紋女は合法ロリなのでまだ実戦経験(コンバットプルーフ)は『暦詩季』としてはないが、前世では安価な風俗店なら何度か経験済みで『暗くて良かった』と安堵することしばしばであった。

 

「オパニュウム分が足りない」


 そして、とある部位にはことさら執着を持っていた。

 

「は?」


「何? おぱ、何?」


 たまには男同士で話をしたい時も有るので、詩季と熊田、川原木は下校途中でドドールに寄り道をしていた。もちろん十メートルほど離れて須藤香菜と針生、そして絵馬も居た。他の智恵子・肉山・宮子の三人は所用で居ない。詩季はもちろん周囲の人間にも解らぬよう須藤香菜の同僚、紋女の私設護衛も四名貼りついていた。

 

「オパニュウム分」


「どうせ下品かアホなやつだよ」


 熊田が瞬時に理解する。


「また始まったか」


 川原木は呆れ顔でブラックのホットコーヒーを啜った。


「こいつ、なんでこんなルックスでこんな奴に育ったんだよ」


「頭でも強く打って記憶と共に配線が狂ったんじゃない?」


 過去の事故について、詩季からは詳しく聞いていないが、軽く話せるほど三人は仲を深めていたのでからかうのに躊躇が無い。


「あー」


 女なんて望めばよりどり緑。そんな男が下品というのが彼らの中では非常にアンバランスと言える。


「おっぱいって良いだろう?」


 詩季はアホである。そしてある程度は自制が利くとはいえ、その自制をたまに振り切ってしまうほどにアホである。


「……はぁ」


「お前、彼女っつーか、逆ハーレム居るだろうが。あいつらなら喜んで差し出すだろ」


「多分、秋子先輩たちにその後くっちゃくちゃにねじ切られるだろうけど」


 詩季は最近、紋女との逢瀬で性欲はそこそこ満たされていた。

 だが、違うのだ、とも思う。紋女とのセックスは非常に楽しい。快感だ。だが、違うのだ、と。

 それだけでは満ち足りない。何故ならば。


「紋女、貧乳だからなぁ」


「聞いてねぇよっ」


「詩季君、スキャンダるっ」


 詩季が紋女のお手付きになった上に他の女達もキープしているという事実を二人は内密にだが知らされていたので慌てて詩季の口を塞ぐ。

 地元じゃなくとも日本人なら一度は耳にしたことがあるであろう十鬼紋女が高校生を囲っている(実際には逆に確保されている)などスキャンダル物である。保護者の許可はなし崩しで得ているとはいえ外聞は非常に悪く、その保護者が勤め先の社長に息子を献上したように見えないこともない状況だ。


「今はもっと、ボリューミーなのが揉みたいんだよね」


 十メートル離れた場所で香菜・針生・絵馬が居たが会話は香菜しか聞こえておらず流れ弾に当たらずに済んだ。

 ちなみに香菜は『一応うっすら?』な貧乳、絵馬は『まぁ有るっちゃー有るけど』な微乳、そして針生は『え?……え? あ、うん? え?』なほぼ無乳である。


「話聞けよっ」


「姉ちゃんのでも揉んでろ馬鹿」


 熊田と川原木のチョップで一旦止めるがすぐに再起動する。

 

「姉ちゃんのおっぱいねぇ……忙しそうだけど、秋子お姉ちゃんでもデートに誘うかなぁ」


 くっ……

 

 秋子にあこがれを抱いていた熊田は歯を食いしばる。そして夏紀に憧れを持つ川原木はホッとする。確かに、おっぱいのサイズにおいて秋子と夏紀であれば秋子に軍配が上がる。何気に姉妹の中では一番大きかった。二番は春姫、三番は夏紀、当然ながら最後が冬美である。殿堂入りとして節子なのだが、節子の場合は弾力面で今回は除外した。

 

 今の詩季は節子の包み込むような、人間を駄目にするような柔らかさではなく、蹂躙したくなるような大きくも反抗的なおっぱいを征服したかったのである。

 

 二人とも、詩季が家族と血の繋がりがないことも聞いており、もう諦めては居るが感情面ではまだすっきりしていない。それも若さであるが、詩季に何も負の感情を行動としてぶつけないだけ立派なものと言える。

 

「秋子先輩『でも』というのがなんか凄く上から目線で駄目男って感じがするなぁ」


「いや、こいつ基本駄目だろ。大丈夫なとこは顔と八方美人なとこだけじゃね?」


「あー」


「あーって」


「あーしか出ないわ」


「だな」


 詩季の戯言は流されるのが通常営業である。


「もー。酷い奴らだなぁ。僕はこんなに誠実なのに」


「性事通?」


「漢字がわかるのが本当に嫌だ」


 詩季は思い立ったが吉日と秋子にラインする。


『よーよーねーちゃんよー、一回帰ったら、速攻で夕飯作っちゃうから僕らは外で食べねー? あはーん?』


 ピコン♪


「早っ! 返信早っ!」


 2秒で返信が来た。通信・端末・そして秋子の対応速度、どれに対してもツッコミ所が多い。

 秋子は突発的な事態に弱いだけで、脊髄反射が出来ない訳ではないのである。

 

『何が食べたいでしょうおふぁうふぉあふぁおえあふぃだsfじゃおいふあ』


 ただ、脊髄反射でしかなく慌てた結果がこれであり、ある意味で姉妹の中で最も能力が低いのが秋子とも言えた。

 

 prrrr♪

 

「あ、秋子お姉ちゃんから電話。切っちゃお」


「なんで!?」


「なんでだよ!?」


 からかいモードに入った詩季は反射的に応答せずに切る。


「いやなんとなく?」


「ひでぇ!」


「お前ちょっとそれはどうなんだ!?」


「大丈夫大丈夫」


 そして再度電話が掛かってくる。

 

「ほら、来た」


「まったく」


「何やってんだよ、お前」


「だが切る」


「「おおい!?」」


 詩季、からかいモードである。非常に性格が悪い。ただ、詩季は秋子をある面で見抜いて(・・・・)いた。

 

 唖然とする二人を放置し、詩季は鬼のように掛かってくる秋子からの電話を切り続ける。

 そして十回を超えたあたりで今度は香菜のスマホが鳴った。

 

「おいおい、秋子先輩あっちに掛けたんじゃね?」


「あ、須藤さん、切ったっぽいね」


 無表情でサムズアップを詩季に向ける香菜。そして良い笑顔で応える詩季。


「さすが香菜ちゃんだ」


「意味解らねぇよお前ら」


「そして次はハリーに掛けてくると思うよ」


 お前も切れよ? と詩季は針生に視線を向ける。針生は針生で苦笑いで応え、掛かってくる前にスマホの電源を落とした。とりあえずは秋子にも詩季にも角が立たない賢い方法と言えよう。


「次はエマッチね。ちゃんと誰が一緒か把握してるんだからすごいわぁ愛されてるわぁ愛で返すわぁ」


「もうちょっと真面目に生きろよ」


 困り顔でスマホと睨めっこの絵馬は詩季に近づきながら画面を見せる。


「出て良いよ。そしてこのセリフを言って」


 ナプキンに殴り書きをしたものを絵馬に見せる。

 

「詩季君、これ、電話越しでも何かの暦家パワーで殺されない?」

 

「雑誌で見た言ってみたいセリフ№10に入ってたよ? チャンスじゃない?」


「命がけなんですけど、やるしかないねぇ」


 詩季の悪ふざけに付き合えない人間は詩季そのものとも付き合えない、と割り切る絵馬。こういうところが度胸ある、と一緒に近づいてきていた針生は感心する。真似はしたくないが凄いとは思う、というパターンである。

 

「はい、伊達です」


『今そこに詩季君が!』


 漏れ出る秋子の声に詩季はくっくっく、と笑う。

 そして仕方ないなぁ、と苦笑いを浮かべる絵馬。妙な度胸と奇妙な策謀の才、そして人望の持ち主が絵馬である。

 

「詩季君なら今私の隣で寝てますが何か?」


『…………』


「邪魔しないで貰えます?」


『…………出』


 秋子が言い終わるより速く、これに逆らったらすぐに死ぬ、とビビーンと直感した絵馬は詩季に投げるようにスマホを渡した。危機回避能力も長けているのが絵馬である。


 あとは詩季に文字通り丸投げ、そのままスマホを差し上げます、な気分であった。少し優越感があって楽しい小芝居でもあったので絵馬の中では貧乏くじとも感じていない。そんな鋼の心臓の持ち主が絵馬である。



「もっし~。ごめんねぇ、携帯なんか操作ミスっちゃって」


『あ、あ、そうだったのさね、びっくりしたさっ』


「うん、本当にごめんね? でさ、デートしようよ」


『喜んでさ!』


 こうして、詩季と秋子のデートが行われることとなった。



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