表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/139

コネ コネ

3月12日 13日 14日 の三日間で19時更新となります。

13日更新分の次話は暴力表現等割りとショッキングな内容を含みますので苦手な方はスルーして14日以降に更新される回の前書きダイジェストをご覧下さい。

14日はホワイトデーネタのいつものユルイ感じの幕間となります。

また短編で現代が舞台の復讐物とあべこべ作品紹介エッセイを投稿しておりますので併せて読んで頂けたら幸いです。



「ぐっぐぅ」


 俊郎はうなり声を漏らしてしまった。


「いや、ほんとごめんなさい」


 いつもの喫茶店の一画、声の届く範囲に他の客は居ない席で詩季と俊郎は向かい合っていた。


「いや……むぅ……実の兄としては、いかんともし難いのだが」


 内容的には簡単な話である。

 逆ハーレム構築に向け、詩季が動いた事を詩季本人がオブラートにオブラートで包んで更に過剰包装したような物言いで俊郎に伝えたことである。

 幸か不幸か察しの良い俊郎も意図するところは読みとった。


 要約すれば『お前の妹、俺っちの女にしていい? 勿論他の女も囲うけど文句は聞かないぜイェア!』である。


 わざわざ相手の肉親に宣言するとかどんな人格破綻者だ、と言われかねない所行を実行に移す事が出来る男、それが暦詩季である。


「えっと……こう言ってはなんですけど、俊郎さんとのこうやって話せる関係が無かったら、そもそも考えなかったことなので、もし駄目でしたらそれはそれで」

「解ってる。解ってるから。その先は言うな。脅しでしかない」


 手を前にかざし詩季の言葉を止める。

 兄である俊郎が妹の宮子が詩季の逆ハーレム入りを拒絶するならば素直に選択肢から外す、というのは俊郎にとっては脅迫にしかならない。


 断れば詩季との関係どころか妹に一生恨まれ、そこから家族関係も破綻しかねない。


「詩季君。君は本当に解っているのか? 大丈夫なのか?」

「勿論、皆が幸せに暮らせるよう努力もします」


 いずれセックスもするつもりだが努力も惜しまない所存である。


 内容が内容だけに、詩季も気を使い、ずっと敬語であった。

 一発くらいは殴られる覚悟で対面しているのだが、宮子の詩季に対する恋愛感情と俊郎と詩季の関係、万が一暴力に訴えた場合にどういう事態を引き起こすか、などの俊郎の分別からそこまで到らないであろうとは思いつつ、緊張していた。


 人間とは感情の生き物だ、と詩季は思っているからである。

 詩季にしてみれば、自分なら殴るどころではない。仮に自分の姉妹を逆ハーレムに入れるという自分以外の男が居たら、まずは水の入ったピッチャーで頭をかち割り男の大事な場所を踏み砕くくらいのことはしてしまいそうだ、と。

 詩季はブーメランの名手であった。


「ならば、俺にどうこう言うつもりはない。あいつが望むならば、加えてやって欲しい。断る筈もないがな。ただ、あんなでも俺にとっては妹だ。出来るだけ、悲しませないでやってくれ」

「それは勿論です」


 頭を下げる俊郎。この世界の男子、特にこの先進諸国では様々な面で優遇されている。贅沢をしなければまともに働かずとも並より少し良い程度の暮らしは保証されている。


 そんな中で意識の高い低いはあれど、パートナーとなる女性に対して暴力や金銭的負担を悪気もなく押し付け我慢させる男は非常に多い、どころかオーソドックスな男性像と言えた。


 自分の取り巻きを良いように使う俊郎はまだ借りを返す面があるだけかなり誠実な方なのである。


 大事に育ててきたと言える妹が、まだ一生独身で人工授精で家庭を持つというのならば良い、むしろ一般的だ。


 それどころか下衆な男に良いように食い物にされたり、本来の性癖ではなくパートナーを見つけられないことから同性愛に無理に走ったり、商売男に病気を貰ったりするよりも、兄としては詩季の提案は遙かに魅力的に映っていた。


 贅沢を言えば、妹を正妻ポジションに、と思っていたがあまり欲をかくと禄なことにならないだろう、という危機感もあった。


 他の女性の存在があろうとも、兄貴分のように自分を慕っている(ように見える)詩季ならば俊郎の妹を無碍(むげ)にはしないと思われるし、自分との関係が良好ならばなおのことその心配はしなくて良い。


 他の女性メンバーについても、その多くが元々宮子の友人関係だということも詩季から聞いており、むしろ宮子が俊郎本人と詩季との交友という下駄を履かせてのメンバー入りは、詩季に感謝こそすれ不満を言うべきではないだろう、と思い始めた。


 なおかつ、詩季の一番のパートナーとして新聞で何度も見たことがある人物が居ると知り、冷静になってくるとむしろ乗り気になってきた。

 詩季が自分を頼りにしている感覚はあり、可能な限り応えるつもりも俊郎にはある。


 ならば多少打算を働かせても良いのではないか、と思うのも責められないことである。


「ところで話は変わるが、うちの母の勤めている会社、最近abecobe corporationのグループとして吸収された。

 これまでも忙しい人だったが、体を壊さないかと少し心配でな」


 一応は雑談の体で話始める。詩季が俊郎の意図を汲み取ってそれとなく母の待遇が改善されることを期待して。

 ただ、公私混同の要求は度を過ぎると毒になる、または藪をつついて蛇が出る、というのはまだ年若い俊郎でも解ることなので、あくまで雑談の体で、詩季の逆ハーレムから話を変えたという流れで告げた。


 俊郎の母が勤める会社が紋女のグループ化になったことにより、詳しく内容は解らないが母はこれまで以上に多忙を極めているのを俊郎も心配していた。

 ただでさえ自分達を養うため、そして男子税という少なくはない税金を納めるため必死になっている母である。


 グループ入りにより収入は良くなるようだが、倒れられでもしたらと俊郎も心配していた。


 このあとは、何か元気になるような料理メニューはないか、と続けようとしていた。

 が、詩季は俊郎の想像の斜め上を行く馬鹿である。


「あ、そうなんですか。なら紋女さんに宜しく言っておきましょうか?」


 あからさまであった。馬鹿とも言う。


「…………良いのか? それは、非常に有り難いのだが」


 話が早いのは助かるが、あまりに露骨で俊郎も一瞬止まってしまい、その公私混同な提案に乗ってしまう。


「僕がお願いすれば、常識的な範囲でなら優遇してくれると思いますよ」

「……ふぷっ」


 詩季の物言いに俊郎は思わず笑ってしまった。


「あれ、今ウケるとこありましたっけ?」


 素で首を傾げた。


「非常識な君の常識的な範囲というのは恐ろしいなと思ってな。中道でも右翼から見れば左翼になる、というのは知っているか?」

「失礼な。僕ほど常識的な人間なんてこの世に居ませんよ?」


 怒ってもいなければ大して思考もせずに受け答えしている詩季に俊郎は笑いが止まらない。右翼左翼で例えたのをを理解していないのが解りやすかった。


「ふ、はっはっは! 全く、君は面白いなぁ」

「むむ、これは喧嘩売ってるね? 買った!」


 座ったままファイティングポーズを取る詩季だが俊郎は両手をあげ、だが降参する訳でもなく告げる。


「残念、売り切れだ」

「む。次回入荷予定は?」

「あっても俺のは相手によってだし、時価だから詩季君には買えない。それどころか詩季君の前には陳列すらするつもりはないな」


 自称”常識人”に対し、俊郎は笑いながらも””良心的”であればまだ笑わなかったんだがなぁ”という言葉を飲み込んだ。


 詩季は詩季であって常識・知識とはあまり馴染みのない存在であり、つまり、世間一般から見ると詩季は結構な非常識なのは疑いようもない。


「お兄ちゃん、改めてよろしく」


 今まで『俊郎さん』『俊兄さん』『俊郎お兄ちゃん』など色々呼んでみたが一番反応が良かった呼び方をすることにした。『兄貴』とだけは薔薇的な意味で決して口にしなかったが。


「あ……ああ。俺も詩季が弟になるのならば歓迎だ。よろしくな」


 妹本人が詩季との関係を望んでいるのが明白だとはいえ、己の『弟が欲しかった』という幼少期からの悲願達成のために妹を出汁に使ってきた時点で俊郎もまた、詩季とどっこいどっこいのワガママ男である。幸いなことに特別誰かが損をする訳ではないが。



 こうして、詩季は紋女とは別方面で味方となる仲間を固めていくのであった。




短編で現代が舞台の復讐物を投稿しておりますので併せて読んで頂けたら幸いです。

下記リンクか下記URLにて読んで頂けたら幸いです。


イジメられっ子中学生による復讐のススメ

https://book1.adouzi.eu.org/n9000ep/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ