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死の運命を回避するために、未来の大公様、私と結婚してください!  作者: 江本マシメサ
第六章 父の死の謎を追って

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追憶のエルーシア

 幼少期より予知夢能力を持つ私、エルーシアは、ある日とんでもない夢を〝みた〟。

 それは、古くよりライバル関係にある剣の一族、シュヴェールト大公家の当主、クラウスに殺される夢だった。


 そのときの私は、クズでいいところなしの男ウベルと婚姻関係にあり、彼と継母イヤコーベ、継子ジルケが犯した罪をなすりつけられていたのだ。

 もう何もかも終わりだ。これ以上生きたって仕方ないと思った私は、粛清にやってきたクラウスに殺すよう懇願した、というわけである。


 目覚めた瞬間、絶望しかない未来に冷や汗が止まらなかった。

 未来を変えないと、とんでもないことになる。

 そう判断した私は、イヤコーベと父の再婚だけでも阻止しなければならないと決意。

 父は再婚しないと約束したのに、舌の根の乾かぬうちにイヤコーベとジルケを家に連れ帰ったのだ。

 運命は変えられないのか。嘆きつつも、別の未来になるよう努力する。

 イヤコーベとジルケがやってきてからというもの、私は花嫁修業と称して、下働きを命じられるようになった。

 その水面下で、家から脱出し、独り暮らしをすることを夢見る。

 ウベルとの結婚だけは避けないと、大変なことになるからだ。

 しかしながら、絶望的な予知夢をみてしまう。

 家を出ても、家族やウベルが地の果てまで私を追いかけてきて、連れ戻してしまうのだ。

 やはり、予知夢でみた運命は変えられないのか。

 何度ももがく中で、私は母が遺した遺品をイヤコーベとジルケに奪われるという予知夢でみた未来を変えることに成功した。

 代償として大量の出血と目眩に襲われたものの、大切な物を死守したのだ。

 未来は私の行動次第で変えられる。私の将来が明るく照らされた瞬間であった。

 ウベルとの結婚は、ジルケの私が欲しがるものをなんでも奪ってしまう性格を利用した。

 私がウベルに恋い焦がれる様子を見せれば見せるほど、婚約を羨ましがる。

 その結果、ジルケは父にウベルとの婚約したいと望み、その結果、ふたりは婚約した。

 ホッとしていたのも束の間のこと。

 収納に隠していた母の遺品をイヤコーベとジルケが発見し、すべて奪われてしまったのだ。

 どうあがいても、予知夢でみた未来は変えられないものなのか。

 頭を抱え込む。

 どうしたものかと考えた結果、私は未来のシュヴェールト大公となるクラウスとの結婚を決意する。

 彼と会おうと画策する中で、さまざまな騒動に巻き込まれる。

 そんな中で、クラウスと出会った。

 クラウスは予知夢でみたときほど恐ろしくなかったものの、黒髪と赤い瞳を持っているからか迫力があった。

 ただ、彼は彼なりの正義感を持ち、間違ったことはしない公平でやましいところがなく、堂々とした人物だったのだ。

 彼の傍にいたら、罪をなすりつけられて惨めな思いなどしないだろう。そう確信し、結婚してほしいと頼みこむ。

 しかしながら、クラウスの答えは「お断りだ」だった。

 それでも私は食い下がる。イヤコーベとジルケ、ウベルがいるような家で生涯を終えたくなかったから。

 クラウスからなぜ、自分なのかと問いかけられた。

 もうあとがないような状況だと思い、私は夢でクラウスから殺されたのだと告げる。

 夢でみた私にとって、死は救いだった。

 そう告げると、クラウスは瞳に嫌悪感を滲ませていた。

 もう終わりだと思った。

 その後、最悪な出来事が続く。

 社交界デビュー用のドレスをジルケに奪われたり、ジルケのドレスを破いたという冤罪をかけられたり、罰として鞭打ちを受けたり……。

 鞭打ちの傷から雑菌が入り、熱を出してしまう。そんな中で洗濯を命じられ、私は倒れた。

 幸いにも、情報のやりとりをしていたパン屋のおじさんに助けられ、私は中央街のミミ医院に運ばれた。

 元気を取り戻した私はそこで働くこととなったのだが、ジルケが破った社交界デビュー用のドレスを修繕しようとする中で、クラウスと再会する。

 クラウスの馬車が私のドレスを牽いてしまったことをきっかけに、コルヴィッツ侯爵夫人の屋敷でお世話になるようになった。

 コルヴィッツ侯爵夫人はクラウスの母方の祖母にあたる女性で、本当の孫娘のように優しく接してくれたのだ。

 破けたドレスも、王妃殿下の針子だったコルヴィッツ侯爵夫人がきれいに修繕してくれる。

 無事、社交界デビューできることとなった私は、会場となった大広間でとんでもない事態を目にすることとなる。

 あろうことかウベルとジルケは婚約破棄してしまったのだ。

 その場面を目撃しただけでも最悪なのに、ウベルはさらなる最悪の申し出をしてくる。

 ウベルは私との結婚を望んだのだ。

 ジルケと上手くいかなかったからといって、私に申し込むなんて。呆れたの一言である。

 結局、運命は変えられないのか。私は絶望と死を迎えるしかないのか。

 今すぐ逃げ出したいのに、銅像のように固まって動けない。

 もう終わりだ――そう思った瞬間、クラウスが私のもとに現れた。

 それだけでも驚きなのに、彼は私との結婚をウベルに宣言してくれた。

 死が救いだと言う私を心配してくれたのだろう。

 彼は私に、「死は救いではない。逃げるな。現実から目を逸らすんじゃない」と言ってくれた。

 厳しい一言だったが、その言葉は私の心に深く刻まれることとなる。

 そんなわけで、私はクラウスの婚約者となったのだった。


 ホッとしたのも束の間のこと。父の死が知らされた上に、隣国に旅行に行っていた兄が終身刑になったと告げられる。

 父は突然死だと医者は判断したようだが、後頭部に人が殴ったような跡があったらしい。

 詳しく調査をしていたところ、遺体は何者かに奪われていたという。

 頭が痛くなるような事件が次々と起こった。


 その後、奪われないようにと回収にいったヒンドルの盾が消えてなくなったり、盗まれたレーヴァテインをクラウスが奪還したらシュヴェールト大公に任命されたりと、さまざまな出来事があった。

 これからも苦難はたくさん訪れるだろうが、クラウスと一緒ならば大丈夫。

 不思議と、そう思えてしまうのだった。

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