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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第一章「Welcome to gesso」

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「アーソニスト村焼失RTA!」……ではなかった。知らぬ間に破壊された迷宮が修復されているのは迷宮保全の匠がいるからかもしれない。……ヘルメットを被ってシャベルを持ったダンディーなモグラみたいな。

 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスを除いた面々が一通りスキルの内容を確認し、無縫と茉莉華の競争が引き分けという形で一応の決着を付けた頃、その魔物達(・・・)は姿を見せた。


 見た目は全てモグラを二足歩行させたような姿だ。

 しかし、何故か人工物である筈のヘルメットを被っており、それぞれがシャベルや鶴嘴(ツルハシ)などの道具を装備している。


 群れは七十匹ほどで、その中にはサングラス(グラサン)を掛けた現場監督のような個体や、薄く加工した金属のプレートを複数持ち歩いている個体もいるようだ。


「見たことない魔物ね。私が倒してあげるわ!!」


「……茉莉華、少し待て」


「何よ! 命令する気!?」


「頼むから攻撃するのはやめてくれ」


 最初は魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスに止められて喧嘩腰になっていた魔法少女プリンセス・カレントディーヴァだったが、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが真剣な顔で静止していることを知るとそれ以上何も言うことは無かった。普段から些細なことで喧嘩しているが、だからといって空気が読めない訳ではないという不思議な関係である。


 謎のモグラの魔物の群れから一匹のモグラがトコトコと歩いてきた。

 そして、魔物達に警戒する魔法少女プリンセス・カレントディーヴァに近づくと徐に手に持っていたシャベルを手渡して……そのまま群れの中に戻っていった。


「はぁ!? どういうことよ!? つい受け取っちゃったけど……もしかして、シャベルを使って仕事をしろってこと!?」


「無縫君、これは一体どう言うことなんでしょうか?」


「内藤さん……【魔物言語】というスキルで魔物達の言葉を翻訳したところ、彼らは我々に協力を求めているようです。サングラスを掛けた魔物はモールコンサーバター・リーダー、シャベルなどの道具を持っている魔物はモール・コンサーバター、薄い板を持っている魔物はモール・マッパーといい、迷宮の保全と修復を生業としているようで、仕事を手伝ってくれればお礼をするとのことです。……手伝わないのであれば先に進ませないと言っていますし、ここは大人しく手伝いましょうか?」


「なんでこの超絶プリティーアイドルの私がガテン系の力仕事をしないといけないのよ!? それに、汚れるのはごめんだわ!!」


「魔法少女の姿なら変身を解けば問題ないだろう? もう一度変身し直せば汚れも落ちるし。ということで、うだうだ言ってないでやるぞ!! ……内藤さん達はどうします?」


「先に進めないとなればやるしかないでしょう。……力仕事は苦手なのですが」


「迷宮を保全して、いつでも挑戦する冒険者達を迎えられるようにする。実に! 素晴らしい!! 私も微力ながら協力するぞ!!」


「俺は構いませんよ!」


「私は……あまりお力になれないと思いますが」


「自分は得意分野なので頑張ります! モグラさん達、よろしくお願いします! いい汗流しましょう!!」


「……それって怪人を呼び出して仕事をさせてもいいかしら? 私ってそういう力仕事、苦手なのよね」


「では、吾輩がフィーネリアの分も代わりにやろうではないか!!」


「あら? 頼めるかしら? (こういう時だけは)頼りになるわ、ドルグエス」


 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス、魔法少女プリンセス・カレントディーヴァ、龍吾、リリス、廉、紬、遊大、ドルグエスが協力を申し出て、フィーネリアがドルグエスに力仕事を任せる中、ガラウスはというと……。


「……………っ!? あぁぁ、やってしまった! 今日の十八時から村のメンバーと宇宙人狼をする約束をしていたんだった!?」


 大切な約束を今更ながら思い出して発狂していた。


「おい、何忘れているんだよ!? 約束を守るのは社会人の常識だろ!?」


「貴方のせいですよ、無縫!! 貴方が来たせいで予定が全部吹っ飛んだんです!! 急いで元の世界に……いや、でも、それだと私が見張れなく……一体どうすれば!?」


「……たく、仕方ねぇな! シルフィアとヴィオレットが異世界でも配信できるようにって頼まれて組み立てたパソコン……のプロトタイプが確かここに。よし、こいつを貸してやるよ」


 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが旅先用ゲーミングパソコンセットを取り出すと、ガラウスは無言でさも当たり前と言わんばかりの態度で椅子に座って宇宙人狼のログイン画面を呼び出した。

 お礼の一言すらもらえなかった魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスは不服顔で……八つ当たり気味に光に干渉してレーザーを生成、遠くにいた死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)を撃ち落とした。



「はぁはぁ……なんでアイドルの私が、こんなことを……」


 全身泥だらけになりながら、ひたすらモールコンサーバター・リーダーの指示に従って迷宮の破損箇所を修理していた魔法少女プリンセス・カレントディーヴァは本日何度目か分からない恨み節を口にした。

 顔も汚れ、髪も泥に塗れ、美しい衣装も見る影もないほど無惨な状況になってしまっているが、そんな中でも掃き溜めに舞い降りた鶴の如く絵になるのはやはり魔法少女だからだろうか?


「こんなことになるなら、ジャージに着替えた方が良かったわ」


 不満そうな顔をしつつも肉体労働自体には全く不満を見せずに作業を行っていたところを見ると、こういった肉体労働をするのは実は嫌いではないのかもしれない。


 汗を拭い、次の指示をモールコンサーバター・リーダーから受けようと魔法少女プリンセス・カレントディーヴァが視線を向けると、モールコンサーバター・リーダーが首から下げていた笛を吹いた。

 すると、作業をしていたモグラ達は作業の手を止めてモールコンサーバター・リーダーの元へと集合する。


「どうやらここまでみたいですね。モールコンサーバター・リーダーが仕事の報酬を支払いたいので集まってもらいたいと言っています」


 仕事の手を止めた魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが泥を落とすために一瞬だけ無縫の姿になり、再び変身した後、仕事をしている他の面々に声を掛けた。

 魔法少女プリンセス・カレントディーヴァ、龍吾、リリス、廉、紬、遊大、ドルグエス……と、力仕事は無理だからと迷宮内の再マッピングをするモール・マッパーに協力していたフィーネリアも仕事の手を止めてモールコンサーバター・リーダーの元へと向かった。


『もっふ、もっふふふ!!』


 一列に並んだ無縫達にモールコンサーバター・リーダーはお礼の気持ちを込めて一人ずつ丁寧に何かを手渡していく。


「もしかして、これって宝石!?」


 キラキラと輝く大粒の鉱石に茉莉華は思わず目を輝かせた。やっぱり女の子は宝石の魅力に惹かれるのだろうか?

 なお、フィーネリアは「これ高く売れるかしら?」と別の意味で宝石に興味を示していた。……まあ、そういう見方もあるよね?


「ちょっと! 無縫! 貴方だけ多過ぎじゃない!?」


「いや、代表してこの階層のマップをもらっただけだよ。別に俺だけ貰い過ぎてはいない。……モールさん達にとって宝石や鉱石は通貨として使われているそうだよ。それぞれの働きに応じて支払っているらしい。……非常に残念だけど、茉莉華に渡された大粒のアレキサンドライトはなかなかに高価な品だよ」


「アレキサンドライト!? なかなかいいお値段する宝石じゃない!? ……で、貴方は何をもらったの?」


「ゾディアック鉱石っていう聞いたことのない鉱石と、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの金属塊、後はダイアモンド……かな?」


「なんでこんなに大差付いているのよ!? ダイアモンド以外は分からないけど、当たりばかりなんでしょ!?」


「まあ、魔物討伐や迷宮保全、マッピング……やれることは全部やったからね」


 ちなみに、モール達の保全活動はマップに記録された情報を元にした魔物達に荒らされた箇所や経年劣化で傷んだ迷宮各所の修復と、修復した情報を元に新たなマップの作成(紙はないため、薄い金属板や粘土板に文字を刻みつけるというなかなか高度な方法を取っている)の他に、増え過ぎた魔物達の討伐もある。

 シャベルや鶴嘴(ツルハシ)などを武器に連携して攻撃を仕掛けるモール達はなかなかに強く、三つ首の猛犬(サーベラス)などの七百層クラスの強力な魔物が相手でも瞬く間に制圧してしまった。

 実は、この階層最強の魔物はモール達なのかもしれない。


「地下七百五十層と、地下七百五十一層の境目にモール達の街があるみたいですね。宝石や鉱石を持っていけば買い物もできるようです。あっ、現場監督が『下の階層で同僚に会ったら手伝ってやってくれ』って言ってました。手伝ったらその分の報酬は支払ってくれるそうです」


「……それで無縫君? このルビーってどれくらいの価格になるのかしら?」


「フィーネリアさんの持っているルビーだと……Sランク相当ですから、末端価格でも七百万くらいでしょうか? 加工をしっかりすればもっと値段がつけられるようになるかと」


「もしかして、これって割が良すぎるバイトなんじゃないかしら!?」


 目を輝かせるのはフィーネリアだけではなかったようで、龍吾、リリス、廉、紬、遊大も揃ってモールのバイトを引き受ける気満々になっていた。


「……ふむ、彼らの技術はなかなか素晴らしいですね。一度国土交通省の方に彼らに保全を依頼するという提案を……いえ、その前に彼らにその気があるかを確認する必要もありますか」


 まあ、約一名(龍吾)は全く別のことも考えていたみたいだが……。


「……じゃ、そろそろ阿呆に声を掛けてきますね」


「お願いするわ。……まあ、本当はこのまま置いていってもらいたいのだけど」


「えっ? じゃあ、そうしますか? 持ち運べるゲーミングパソコンはもう二台くらいありますし」


 その後、フィーネリアの言葉に甘えた魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが未だ宇宙人狼をプレイしているガラウスを放置して魔法少女プリンセス・カレントディーヴァ、龍吾、リリス、廉、紬、遊大、フィーネリア、ドルグエスを伴って次の階層に向かおうとして、慌てたガラウスが追いかけてくるという一幕があった。

 ちなみに、肝心の宇宙人狼の結果はというと、火付け師(アーソニスト)にガラウスを含めて全員焼かれて、村が完全焼失したようだ。


 その後、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス達が自分がゲームをしている間に宝石や貴重な鉱石を大量に手に入れていることを知って悔しがるガラウスの姿があったとか、無かったとか……。

◆ネタ等解説・二十九話目

モール

 初出は自作『文学少年(変態さん)は世界最恐!?』。当時はモールマッパー・リーダーとモール・マッパーという名称だったが、マッパー以外の要素が強いため本作では仕事ごとに名前を与えている。

 見た目はヘルメットを被ってシャベルなどを持った二足歩行するモグラのイメージ。


ゾディアック鉱

 元ネタは「チョコボの不思議なダンジョン『時忘れの迷宮』」のDS版に登場した新要素「シドベンチャー」で登場する鉱石。

 ゾディアックとは、天球上の十二星座を指す言葉である。


火付け師(アーソニスト)

 宇宙人狼『Among Us』に登場する第三陣営の役職。全てのプレイヤーに着火剤を掛けて、最終的に着火することで勝利となる。


◆キャラクタープロフィール

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・ガラウス=ルノヴィア

性別、男。

年齢、二十三歳。

種族、ロードガオン人。

誕生日、五月二十日。

血液型、K型Rh+。(ロードガオン人の血液型はL型、K型、D型、LK型のいずれかである)。

出生地、独立国家ロードガオン。

一人称、私。

好きなもの、カフェオレ、カフェラテ、チョコレート。

嫌いなもの、ピーマン、ゴーヤ。

座右の銘、忠実なる侵攻。

尊敬する人、ヴァッドルード=エドワリオ(独立国家ロードガオン君主)。

嫌いな人、フィーネリア=レーネ(直属ではない上司)、庚澤無縫(宿敵)。

好きな言葉、赤心奉国、滅私奉公。

嫌いな言葉、特に無し。

趣味、神話研究。

好きなゲーム、宇宙人狼。

好きな動画配信者、めめ村関係者等、宇宙人狼に関する動画を投稿している実況者全般。

職業、独立国家ロードガオン地球担当第二部隊隊長補佐、動画配信者(DMr(ドクミスター).クラウソス/クラウソス村村長/登録者19万人)。

主格因子、無し。


「ドルグエスの側近の一人。無縫を一方的に宿敵だと認識している。典型的なロードガオン人で独立国家ロードガオンに全てを捧げている。独立国家ロードガオンこそが至高と考えており、基本的に侵略対象については見下している。とある動画配信者の影響で宇宙人狼に嵌って動画配信を始め、遂には宇宙人狼のグループまで立ち上げた。村長として他の配信者達を気遣うことはできるらしい。最近は本人も無意識だが、他の者達ほどではないものの大日本皇国に染まってきている」

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