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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第四章「傲慢で敬虔な異世界人達に捧ぐ王教滅亡曲〜ルーグラン王国聖戦戦争篇〜」

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大日本皇国とグレートブリテン帝国連邦が古の日英同盟を復活させて世界の覇権を握るなんて、こんな展開誰も予想できないよね……作者も予想していなかったくらいだし。

 雷鋒市立雷鋒高校の二年一組で起きた集団神隠し事件は当時、大きな衝撃を大日本皇国に与えることとなった。

 しかし、そんな衝撃的な話題も時間が経てば風化する。


 集団神隠しの詳細について捜査がほとんど進展せず、捜査機関からもたらされる情報もないままでは報道を続けることはできない。

 それに、メディアが報道しなければならない話題は数多あるのだ。特に最近は世界各地にネガティブノイズの大規模侵攻が仕掛けられたこともあって一昔前の集団神隠しのことなど世間からすっかり忘れられてしまっていた。


 失踪した生徒達の家族や、周囲の人間達を除き忘れ去られた一大事件。

 それが、再び世間に衝撃を与えたのはルーグラン聖戦戦争から三日後のことであった。


「雷鋒市立雷鋒高校の二年一組で起きた集団神隠し事件――これは、ルーグラン王国という異世界の王国によって行われた勇者召喚によって引き起こされたものだ。我々大日本皇国政府は保有する空間移動技術を利用して異世界に転移し、兵隊として戦場に送り込まれそうになっていた当該生徒達を保護し、地球へと帰還させることに成功した」


 記者団の前で大日本皇国政府の内閣総理大臣――大田原惣之助が語ったその言葉は人々の常識を根底から覆した。

 異世界というファンタジー小説にしかなかった概念が実際していたという事実。大日本皇国が世界を渡る技術を有していたという秘匿されていた情報。

 この二つだけでも世間を騒がせるには充分だった。


 ――しかし、事はそれだけでは終わらない。


「今回のルーグラン王国への異世界遠征を経ていくつか大きな変革があった。それに合わせて政府も方針を一部転換し、これまで秘匿されてきた情報を開示しようと思っている」


 そう前置きをして惣之助が語ったのは次の三つのことであった。


 まず、秘匿されてきた内務省異界特異能力特務課に関する情報の一部開示。鬼斬や陰陽師といった秘匿されてきた組織のことはこれまで通り秘匿しつつもネガティブノイズ、地底人、虚界人、鬼や妖怪、異世界――そういった様々な外患から国民を守る組織があることを明らかにした。


 続いて、以前から内務省異界特異能力特務課が築いてきたネットワークを基礎として構築された異世界の国々と大日本皇国による通商と安全保障――異界間共同防衛条約と異界間通商条約を規模とした異世界同盟の公表。

 今回召喚された異世界ジェッソにあるクリフォート魔族王国の加盟もこのタイミングで公表され、大きな波紋を呼んだ。

 これまで全く関わりが無かった異世界の者達がどのような影響をもたらすか未知数のため世間の印象は不安が大きいようだが、中には新たな市場の開拓に向けて策を練り始める性根逞しい者達もいるようである。


 三つ目……これは、前述の二つよりも遥かに大きな波紋を呼んだ。

 それは、独立国家ロードガオン地球担当第一部隊隊長フィーネリア=レーネと共同で行われたロードガオンとの和睦である。


「虚界に存在するロードガオンから派遣されたフィーネリア殿達は星の危機を回避するために、移住先として侵略活動を行っていた。我々も国民を平穏を守るためにそのような活動は断固として認められないと抗戦の姿勢を取っていた。これまでも魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスを筆頭に内務省職員が対処していた……が、正直、避けられる戦いは避けたいというのが本音だ。今回の異世界での遠征の期間中に、運良く移住先になり得る星を入手することに成功した。その星の元々の保有者の問題を解決してご厚意で譲ってもらったため蟠りが発生する余地もない。大日本皇国はこの地をロードガオンに譲ることを対価に即日終戦を提案した」


「私達も星の存続の危機ということでやむに止まれず侵略という形で移住先を探しているという状況よ。……その地に住む先住民を滅亡に追い込んでその地を根刮ぎ奪おうと思っているじゃなくて、ロードガオン人が移住できる場所さえあれば、それで十分だと思っているわ。土地を奪っている侵略者である以上、良き隣人というのは難しいと思うけど……そういった関係になれたら、と思っているの。私に最終決定権がある訳ではないから本国の支持を仰ぐことにはなるけど、きっとロードガオンの問題も解決するし、認めてくれると思うわ」


「……フィーネリア殿の考えは些か希望的観測が過ぎると考えている。ロードガオンがどのような結論を出すかは分からないが、少なくともフィーネリア殿率いる独立国家ロードガオン地球担当第一部隊とは本日をもって講和することとなった。大日本皇国はロードガオンのこれまでの侵略活動を水に流し、ロードガオンとも友好関係を結ぶ準備がある。……彼らの求める移住先の提供の準備もな。だが、ここまで我らが譲歩しても彼らが侵略活動をやめないのであれば、大日本皇国はロードガオンと戦争をする準備がある」


「……えぇ、その時はレーネ家がロードガオンに反乱を起こすわ。私は家族と領民を守りたい……そのためならどんなことでもしてみせると覚悟をして侵略部隊に志願したもの。その時は、同盟加盟国の代表(・・・・・・・・)として大日本皇国に共闘を要請するわ」


 これまで完全に敵対していたロードガオンの侵略者との和睦。そして、大日本皇国の提案にロードガオンが応じなかった場合にフィーネリアが反乱を起こし、大日本皇国がその内乱にレーネ家側として参戦するという宣言。

 これは、当初発生した「あれだけの被害を出したロードガオンの人間をそんな簡単に許して良い訳がない!」という世間の言葉をあっさりと塗り潰した。


 第二次大戦での敗戦により大日本皇国は戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定めた条文を憲法に盛り込んだ。

 その憲法の条文――憲法九条は第三次世界大戦を目前としてアメリカの圧力で改正され、消滅した……が、長年不戦を貫いてきた国として未だに再改正を望む声は大きいのである。


「魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスを含めて大日本皇国の戦力(・・)と呼ぶべき存在は各国でネガティブノイズと戦ってきた。それが、防衛かそれとも侵攻かの違いに過ぎない。……第三次世界大戦のゴタゴタで第九条は消滅した。しかし、あの改正により我が国が牙を取り戻したことをよく思わない者達があの改正そのものを無かったことにしようと動いている。実に身勝手な話だ。しかし、そもそも、交戦権の不保持など成立しない話なのだ。魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスをはじめとした我が国の戦力は各国で戦い、世界を守ってきた。それを黙認、否、率先して受け入れた時点で各国にそのようなことを言う権利はないのだ。よって、改めてこの場で宣言しよう! 大日本皇国は第九条を永久に放棄すると! 勿論、この放棄は国会で既に採決を取り、満場一致で可決している。とはいえ、大日本皇国が世界各国に対して戦争を仕掛けるつもりは毛頭ない。今後は大国の顔色を窺う必要がなくなるというだけだ。大日本皇国は永世中立国となる。西側も東側も我々には関係ない。ただ、これまでのように仲良くしていくつもりではある……今後は対等な存在としてな」


 本来であれば、東側からも西側からも大日本皇国首相の言葉は非難の対象となっただろう。

 大日本皇国が急速に力をつけ、第二次大戦前のように暴走する懸念があったからだ。しかし、不運なことにステイツもロシアも中国も――世界の主要な国々はそれどころでは無かった。


 まずはステイツ、ロシア、フランス――この三ヵ国はそれぞれの首都が完全に崩壊。

 三国の大統領も【七皇】率いる戦力による襲撃で死亡し、生き延びた一部の者達が彼らの帰還後に政府機能を別の都市に移して復興を進めていた。

 そんな矢先に時計塔の正騎士団ナイツ・オブ・ラウンズとグレートブリテン軍が奇襲を仕掛けて侵略を成功させ、三ヶ国の大部分を併合した。


 現在、ステイツ、ロシア、フランスの臨時政府はグレートブリテンの侵略活動を非難して打倒のために動き出しているが、あまりにも戦力差があるため領土奪還は絶望的な状態である。


 一方、ステイツ、ロシア、フランスの領土を奪うと共に【七皇】の一人であるミザールを撃破したグレートブリテンはというと、議会を解散してエリザベス三世を頂点とするグレートブリテン帝国連邦へと移行した。

 遂にあの英国が再び天下を取る瞬間がやってきたのである。


 中国では仙人勢力が【七皇】の侵攻を食い止めるも少なくない被害が出た。

 それでも、首相が死亡して政府機能が麻痺した挙句、領土まで奪われた三国に比べたらまだマシと言えるだろう。


 一方、イタリアでも【七皇】の侵攻を食い止めることには成功している。

 しかし、マフィアの最大派閥で国の統治をしていたファミリーのボスが戦線で命を落とし、ファミリーは複数の派閥へと分派――これに伴いファミリーの力は大きく弱体化することになったようである。

 治安はこれまで以上に悪化しており、イタリアは更なる暗黒期へと突入していた。

 以上が襲撃を受けた七ヶ国の現状である。


 今回の一件を機に絶対な力を手にしたグレートブリテンと、異世界とのネットワークを公表すると共に永世中立国となる宣言をした大日本皇国――今後、この二つの国が双璧を成し、冷戦時のステイツとソ連のような緊張状態を維持してステイツ、中国、ロシアといった所謂大国に成り変わり、世界の行く末を左右していくことになる。

 ……と、誰もが信じていた。まさか、あの同盟が復活するとは誰も予想していなかったのである。


 この記者会見から十日後、大日本皇国に女王の使者として時計塔の正騎士団ナイツ・オブ・ラウンズが派遣された。

 代表としてやってきた騎士団長――デイム・アデル・クリスティ爵は惣之助に女王からの親書を手渡し、にっこりと微笑む。


「――女王陛下は日英同盟の復活を心より望んでおりますわ」


 この日、旧世界の秩序は完全に崩壊した。

 ステイツ、ロシア、フランスのほとんどの地を手に入れてなお勢力を拡大するグレートブリテン帝国連邦と異世界との強固な繋がりを持つ大日本皇国――この二つの国で手を結び、地球はこの二ヶ国を頂点とする新秩序へと移行することとなったのである。

◆キャラクタープロフィール

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・ミザール

性別、男。

年齢、四百八十三万……歳。

誕生日、八月十日。

血液型、X型Rh+。(フェアリマナの妖精の血液型はF型、S型、X型のいずれかである)。

出生地、魔法の世界フェアリマナ。

一人称、私。

好きなもの、特に無し。

嫌いなもの、魔法の世界フェアリマナ。

座右の銘、特に無し。

尊敬する人、特に無し。

嫌いな人、魔法の世界フェアリマナの妖精、エルセフィリア。

職業、【七皇】。

主格因子、無し。


「ネガティブノイズを支配する【七皇】の一角。作中ではグレートブリテン及び北アイルランド連合王国に現れて時計塔の正騎士団ナイツ・オブ・ラウンズと対峙して敗北した。そのため、多分作中にもう出ることはない。イメージは痩せ型で、頭脳派」

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