表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第四章「傲慢で敬虔な異世界人達に捧ぐ王教滅亡曲〜ルーグラン王国聖戦戦争篇〜」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/261

一方その頃みたいな感じで、並行世界のカオスファンタジーシリーズの主人公達の暴れっぷりが見れるのってやっぱり最高だよね!? って話。

 ――所変わって大日本皇国。


 無縫達がルーグラン王国への侵攻を開始した頃、大日本皇国もまたネガティブノイズからの襲撃を受けていた。


「――ッ!! 総理も内藤さんもいないタイミングで……狙い澄ましたように!!」


 案の定、東京都、中京都、西京都にある内務省の庁舎は荒れに荒れていた。

 なんとか大日本皇国に惣之助達を呼び戻すべくアラートを鳴らし、同時に官房長官に「非常事態宣言」の発動を打診――それと同時に、公民館関係なく大日本皇国に残っている戦力への協力要請を各所に打診した。


「――これは、過去最悪の状況ね。だからといって、諦める訳にはいかないわ! 患者(クランケ)を守るのが私達の役目ですもの!!」


 防衛省直轄の自衛軍病院にて病院長を務める陸将の医官――森凍子は陸軍に応援要請を打診した。

 しかし、防衛大臣である逢坂詠の不在により指揮監督権を譲渡されていた陸上幕僚長は「大日本皇国全土がネガティブノイズの大規模侵攻を受けており、防衛医科大学校病院や科学厚生省管轄の国立高度医療センター、その他様々な場所から応援要請が届いているため、自衛軍病院だけに戦力を割けない。各部隊を分散して戦力を派遣するので、しばらく耐えて欲しい」と凍子に同情しつつも無茶な要求を突きつけた。


 だが、凍子にとって最悪な情報は大日本皇国最強の矛である庚澤無縫がルーグラン王国に戦争を仕掛けるために大日本皇国の主力戦力を連れていってしまったということだ。

 ……まあ、庚澤無縫であれば異世界に居ようと対処は可能だろうが、交戦中であれば大日本皇国の現状に気づくのが遅れる可能性がある。そして、この僅かな遅れも大日本皇国に致命的なダメージを与える切っ掛けになりかねないものである。


「私達は医者の前に軍人よ! 都合のいい助けが来るのを待っているだけじゃダメ!! 覚悟を決めるのよ! 森凍子!!」



 大日本皇国に残っている戦力で、公営の組織は鬼斬機関、陰陽連、自衛陸軍、自衛海軍、自衛空軍、そして科学戦隊ライズ=サンレンジャーの四つのみである。

 彼らは開戦と同時に、鬼斬局長代理、陰陽連陰陽頭名代、各幕僚長、地底人対策機関総司令官などの指揮権を委任された者や指揮権を持つ者が的確な指示を出し、大日本皇国の各地に戦力を派遣した。


 鬼斬機関も陰陽連もトップ不在の場合にも対処できるように保険を用意しており、上手くそれが働いた形である。


 だが、それでも圧倒的に戦力が不足していた。

 今回の侵攻は明らかに規模が違う。大日本皇国全土が対象となっており、北は北海道、南は沖縄まで全国各地に膨大な数のネガティブノイズが出現して猛威を振るっていた。

 それは、本来この機に乗じて侵略活動をするべき独立国家ロードガオン地球担当第二部隊が防衛に徹する選択肢を選んだことからも明らかである。……まあ、今回の襲撃は自分の身を守るだけで精一杯の密度であり、ドルグエスやマリンアクアといった優秀な戦力が不在の中で守りに徹する作戦に出たのは何も不自然なことはないのだが、その一方でガラウスの性格を考えれば無縫不在というこの状況を利用して無茶を承知で一気呵成に侵略行為を仕掛けても特段おかしくはないため、今回の防衛に徹する作戦には少し不自然な部分もあったが。


 もっとも、大日本皇国にとってはただでさえネガティブノイズの襲撃で苦しいのに、その上侵略者達の侵攻にまで対処しなければならないとなれば確実に大日本皇国の対応できる限界を超えてしまうため、ネガティブノイズだけで手一杯の現状ではそれを僥倖だと捉えていた。

 ……まあ、大半の者達はネガティブノイズに対処するので精一杯で、そもそもロードガオンにまで気は回せていなかったのだが。


 そのため、ロードガオンが動いていたら完璧な奇襲に成功し、僅かな時間ではあるものの大日本皇国を支配下に置くことは理論上可能ではあった。……まあ、その後無縫達に確実に取り返されるため、文字通り三日天下に終わってしまう最悪手ではあるのだが。


 公の戦力が動く一方、民間でも独自に動く者達がいた。

 京都の稲荷宮神社に棲まう玉藻楪は、今後、恐れ迫害されることを承知の上で周辺住民に正体を明かし、ネガティブノイズと戦う決意を固めた。

 多くの住民を稲荷宮神社の境内に匿い、雪女の三栖丸雪芽と共にネガティブノイズに立ち向かった。


「……雪芽、すまないのじゃ。……お主まで正体を明かすことになってしまって」


「いいのよぉ〜。それより、今はネガティブノイズ討伐に集中しないとぉ」


「楪様! 雪芽さん! 俺達も一緒に戦います!! 戦わせてください!!」


 正体露見によって恐怖を抱かれると思っていた楪と雪芽だが、匿われた地域住民達は二人を迫害することも恐怖することもなく二人と共に戦おうと声を上げた。


「馬鹿者!! お主達は隠れておるのじゃ!! ……昨夏(さくな)よ! 内務省への連絡はついたのか!?」


 戦う気満々で境内にあった様々なものをとりあえず武器として装備したといった姿の地域住民達に社殿の中に戻るように促しつつ、神社の巫女の一人である那月(なつき)昨夏に確認を取る楪。


「それが……連絡はつきましたが、無縫さん達は不在で」


「クソッ……こんな時に!! こうなったら、雪芽!! 妾達で奴らを止めるぞ!!」


「ふふっ、愛の共同作業みたいですわねぇ〜。勿論ですわぁ〜」


「そんなこと言っている場合か!!」



 楪と雪芽もネガティブノイズ相手に善戦していたが、他を寄せ付けない圧倒的な殲滅力でネガティブノイズの波を退けている二つの勢力がいた。


「――ッ!! 能因先生!!」


「ああ、君は益若(ますわか)先生のところの安城(あんじょう)光穂(みつほ)さんだね。無事で何よりだ。……しかし、なんで俺が大規模侵攻? に対処しないといけないんだろうなぁ。こんなの、本好きを拗らせたただの変態……っていうか、モブキャラの仕事じゃねぇだろ」


「……いえ、あの。どう考えても先生の仕事だと思いますよ。あれだけの強さを見せつけられたら……と言いますか、先生って戦えたんですね」


「過去に異世界召喚されてね。その時は最弱とか雑魚とか散々言われたよ。……まあ、実際そんな強くないし、俺の得意分野は文学研究だからそっちでそこそこ活躍できればそれで十分なんだけどね」


「……先生ほどの強さで最弱ってどんな人外魔境ですか!?」


「あー、駄目だよ。草子君の認識はバグっているからね。話半分で聞いておかないと」


 ライダーキックの如き華麗な蹴りで大学の窓を蹴破り、青白い炎を空中に浮かせながら一人の少女(・・)が姿を見せる。

 真っ白なワンピースを纏ったその少女は床に降り立つと、人差し指を正面少し斜め上方向に向けて決めポーズを取った。


「セイちゃん参上!!」


 あまりにも場違いな聖の登場に、場の空気が凍る。「あれ? もしかしてスベった?」と夫である草子から向けられる冷たい視線に居心地の悪さを感じていた聖だったが。


「も、もしかして能因先生の奥様で直木賞を受賞された高野聖(こうやひじり)先生ですか!? 私、先生の大ファンで卒業論文も先生の代表作『幽界奇譚』で書かせて頂こうと思っています!! 後で、その、もし、よろしければ、サインを頂けると……」


 ……どうやら、場違いな登場で情報を処理しきれなくなって困惑していたのではなく、尊敬する作家先生に会うことができたショックでフリーズしていただけのようだ。

 すぐにショックから立ち直ると光穂はオタク特有の早口で聖に言葉のマシンガンを放つ。


「えっ、えっと……とりあえず読んでくれてありがとうね。――ねぇ、草子君草子君! ついにあたしもテクスト研究されるレベルになったみたいだよ!!」


「そういや、光穂さんって近世から現代まで幅広く担当している益若先生のところで聖さんのテクスト研究していたっけ。俺のところにも何回か助言を求めてきたし、そういや発表していたなぁ。ゼミ発表で『幽界奇譚』と近世怪談文学の関わりについて……って内容で」


「なんでそれもっと早く思い出してくれないの!? 仮にもあたしの夫だよね!!」


「いや……受け持つ生徒が多くてね。まあ、全部覚えているけど、引き出しが多いから探すのが面倒っていうか。とりあえず、聖。近況報告といこう。大学のネガティブノイズは全て排除した。とりあえず自治は確保したってところだな」


「あたしは出版社付近のネガティブノイズを殲滅して、結界を張って守りつつここまで一直線に飛んできたよ。途中のネガティブノイズは倒せる範囲で倒してきた!」


「流石は聖さん! やっぱり俺と違って強いなぁ!!」


「流石に草子君には負けるよ。……あっ、それと大学の方向に向かっているストーカー、じゃなかった、白崎華代さんを道中で見つけたよ!」


「熾天超天使地母神様が!? 勝ったなガハハ! 風呂入ってくる!!」


「……それが負けフラグにならないのが草子君の恐ろしさだよね。じゃあ、あたしが大学に結界を張っておくよ。草子君でもできるだろうけど……」


「ああ頼む。……ところで聖。上空から見てどうだった? 具体的に言うと、政府は動いていたか?」


「いや、活発に動いていなかったと思うよ。魔法少女とかも見かけなかったし……」


「……となると、かなり状況はまずいな。とりあえず、上空まで跳んで、そこから戦力が薄いところに増援に入るか」


 草子はそのまま窓の外に向かって走り出す。そのまま空中を走って空へと飛び出した。

 続いて聖も窓の外へと向かう。謎の力でふわふわと浮きながら聖も草子の後を追う。


 二人が通過した直後に窓はまるで(・・・)時間が巻き戻るように(・・・・・・・・・・)修復され、非日常の痕跡は全て光穂の前から綺麗さっぱり消え去った。


「……まるでファンタジーですね。流石にキャパオーバーですが……やった! 高野聖先生のサインがもらえる!! あわよくば会談もできるかも!? ああ、先生とお話しできるだけで大満足なのに! 私! 幸せ過ぎて死んじゃいそう!!」


 散々目の前で常識を破壊するような光景を見せられたのに、そんなことよりも尊敬する作家との出会いに興奮を隠せず悶えてしまう光穂だった。……本当にそれでいいのかよ?

◆キャラクタープロフィール

-----------------------------------------------

那月(なつき)昨夏(さくな)

性別、女。

年齢、十九歳。

誕生日、五月十五日。

血液型、B型RH+。

出生地、京都府。

一人称、私。

好きなもの、アイスクリーム。

嫌いなもの、特に無し。

座右の銘、特に無し。

尊敬する人、玉藻楪様、三栖丸雪芽先輩。

嫌いな人、特に無し。

職業、稲荷宮神社巫女。

主格因子、無し。


「稲荷宮神社巫女の一人。それと同時に楪が九尾の狐であることを知っている人物でもある。その一方で、雪芽が妖怪の雪女であることは知らなかった。幼少の頃に家族が忙しくて相手をしてもらえず、一人神社に来ていた時に楪に遊んでもらったことが巫女を目指す切っ掛けになっており、現在は楪だけでなく先輩の雪芽のことを尊敬している。雪芽の正体に気づいてはいなかったものの彼女の気持ちには気づいており、二人の百合関係の進展を応援していた模様。内務省との連絡を任されていたりとかなり様々なことを知っている模様」

-----------------------------------------------


-----------------------------------------------

益若(ますわか)静音(しずね)

性別、女。

年齢、四十八歳。

誕生日、二月二十日。

血液型、A型RH+。

出生地、茨城県。

一人称、私。

好きなもの、文学。

嫌いなもの、特に無し。

座右の銘、特に無し。

尊敬する人、能因草子。

嫌いな人、特に無し。

職業、東京帝国大学文学部教授。

主格因子、無し。


「能因草子の同僚で東京帝国大学文学部教授。近世から現代までの幅広い時代の文学を研究している。主要な研究テーマは言文一致運動だが、現代のライトノベルやネット小説の研究にも対応できる」

-----------------------------------------------


-----------------------------------------------

安城(あんじょう)光穂(みつほ)

性別、女。

年齢、二十歳。

誕生日、六月三日。

血液型、B型RH+。

出生地、千葉県。

一人称、私。

好きなもの、物語文学。

嫌いなもの、特に無し。

座右の銘、特に無し。

尊敬する人、高野聖先生。

嫌いな人、特に無し。

職業、大学生。

主格因子、無し。


「東京帝国大学文学部の大学生。現在は三年生で、卒業論文の執筆に向けて準備を進めている。能因草子の妻である能因聖(ペンネーム・高野聖)の大ファンであり、卒業論文も高野聖のテクストをテーマに据えようとしている」

-----------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ