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三百八十二話


「兎束雪一、無垢な子供が好きに描いて良いと、大きな白い紙を与えられて絵を描こうとしていた。そこに土足でやってきた連中が白い紙に身勝手な落書きを始めるんだ。無垢な子供はやめてと身勝手な奴らに注意する。すると身勝手な連中はこの紙は自分たちのもんだと身勝手な自己主張をし始め暴力まで振るってきた。さて、君がこの無垢な子供だったらどうする? 守ってくれる保護者はいないとする。子供からすると紙は命に等しい宝物だ」


 何の例え話だとは思うけれど、神が語るものに当てはめると……無垢な子供が神か? 大きな白い紙、創造主って所で世界?

 土足……神獣は他世界を破壊する力を持っている。他世界からの侵略者……がこの神の世界を我が物だと主張して神に暴力を振るった。


「そりゃあ……話し合いで通じないなら紙を取り返すために行動するよな」

「うん。その時に抗った子供が創造したのが……僕の子供たち、神獣さ。ただし身勝手な連中は自らが侵略者でありながら返討ちにされるなり被害者面をして更なる暴力に打って出た。もう歯向かうことができないほどに……殺すしか道はないよね。慈悲をもって生き残らせても報復に来るんだから」


 それが世界を股に掛けた大戦争にしてこの世界……元の異世界での古代の出来事だという事なのだろう。

 だから科学技術がちぐはぐなのか。


「こうして身勝手な侵略者の世界、相手が元々持って居た紙を破り捨て周囲に捨て去った。だが、次の侵略者が子供の白い紙を狙って乗り込んでくる。長い戦いのうちに無数の創造した子供たちが倒され利用され、新しい子供がその仇を取る」


 神獣たちは時に討伐され、その後、新たな神獣が生み出されては世界を破壊していく……か。


「そうして争っている内に僕の力の全てを使って使った自信作の子供がね、言うんだよ。こんなくだらないことをするよりもあなたの創造力で好きに紙を彩りましょうとね。だから紙は非常に小さくなったけど僕は君たちに譲ってあげたんだ。これが何を意味するか、何となく君ならわかるんじゃないかな?」

「あっちの異世界の成り立ちで、こっちの異世界がある理由」

「理解してくれたようで何より、そう……ゴチャゴチャと色々と落書きまみれとなってしまった僕が描いた訳じゃない僕の紙さ。君たち人間共に良い感情なんて持つはずもない。今でも許しがたいと思っているよ。けど……子供たちはそんな者たちへ称賛と羨望を持っていてね。気に入っているならしょうがない」


 神は宇宙空間を指さすとそこには土星のように輪がある星が浮かび上がっていた。輪の中で一つ、大きな月のようなものが浮かんでいる。

 これが俺たちのいる世界……いや、この異世界なんだろう。


「君たちも知っているだろうけれどダンジョンとは……僕が神獣たちに命じて破壊させた世界、ここに浮かんでいる残骸共さ」


 と、神は土星の輪のような部分を指し示した。


「ここの残骸が幾重にも組み合わさりダンジョンとなって形を作っている。ここまでは理解できたかい?」

「おー」

「そうなんだなー」


 と、ムーイとエミールは映像を見て素直な感想を述べていた。


「話を続けようか……やっと自由に紙に描く事が出来ると思って色々とやったんだけどね、どうにも面白く無い。難儀なものだよ。敵が居た方がやりがいってのがあったのに気付いてしまったんだ。だからこの世界は、君達の世界に似た要素を内包させてしまったよ。我ながら悲しいね」


 規格が同じ理由の提示か。

 神自体が酷く嘆いているような声音ではあった。


「さてさて、兎束雪一、君の世界の認識で言う所のかわいい子供、神獣に憎い嫁・人間ができたような物かな。で、君はその憎い嫁から生まれたかわいい子供の子供……孫だね。試練を乗り越え、よくここまで来た。子供たちを楽しませるために招かれた孫よ」

「孫とか勘弁してほしいんだが?」

「ふふ、あくまで創造主として子供たちのお気に入りだった子がね……面白い事ばかりするんで認めてあげたんだよ。君は新しい種類の神獣だよ。その後も実に、僕を笑わせてくれたじゃないか」

「笑わせているつもりはねえ!」

「ははは、君は実に君らしい。自らが行った功績がどれだけの代物なのかをわからず、実に身の程を知らないからこそできる面白い真似をしてくれたのさ」


 ムーフリスみたいな事を抜かしてくるなぁ。

 俺の何処がおかしいんだっての!


「ま、こっちの世界に今度こそ侵略者が来ようものなら容赦はしないようにしておいたんだけどね……やれやれ、本当はもっと僕の自信作を見て貰いたかったよ。概要だけでも聞いてくれないかい?」

「あんまり聞きたくない雰囲気じゃね?」

「そう言わないでくれないかい? 大上健人、君が知恵と勇気で聖獣たちを倒してくれたらよかったというのに」

「ならもっと強さの調整しやがれ」

「それは失敬、折角……第一階層、神の庭園外殻だったのに、聖獣たちを強く設定しすぎたよ」

「……第一階層、っててめぇ……まさか!」


 俺も嫌な汗が流れてきた。


「そうだよ。第二階層ももちろん、あったさ。さすがに今度は幾重にも防壁をね」


 過去のトラウマから神は何層もの世界を作ってしまっているって事ね。


「内側に内側に、本当だったら何層も超える冒険をして貰いたかったけどねー……まあ、頑張ったのを認めて僕の所に来る道を繋げて置いてあげたって事さ」

「そんなのやってたら寿命で死ぬだろ! オウセラ! 知ってやがったか!」

「場合によっては近道に誘導するから知らないよ」


 健人が大人げなくラウをギロっとにらんだので俺とムーイが庇う。


「まあ、兎束雪一には是非とも制覇して貰いたかったんだけどね」

「勘弁してくれ!」


 俺をご指名でそんな冒険をさせようってしてたのかよ! 元の世界に戻す気ないだろ!


「この世界に招かなきゃまだよかったものを……いや、その場合はムーイにもエミールにもラウやみんな、今回の騒動の解決も出来なかったからこれ以上は言わないが」


 出会いは大事だ。

 こいつが居なきゃムーイにもエミールにも会えなかったと思うからこれ以上の抗議はしない。

 迷惑な事をしたもんだ……本当、神獣もそうだがその親も碌なもんじゃないな。

 召喚した主犯格じゃないから恨むのはお門違いだし、臨界を迎えて自我を失って獣になり果てるよりはましなのかもしれないけど。


「で……さっきのは何なんだよ」

「そりゃあ……この領域に来る最後の階層さ、正しいプロセスならば絶対に通らないね。本来、あそこに落ちたら絶対に助からない、神獣であっても死ぬって場所だった所さ」

「……」


 ムーイが神の返事に黙って見つめたままラウをあやしている。


「少なくとも聖獣たちを操り、無理やり道を開いて通ったらおしまいさ。元からあのポンコツ機械共が僕の所になんて到達なんて出来ないよ。いや……開かれた道からね……何が出て来て、世界を消滅させるかが分かったかな?」

「わかんねえよ。なんでムーイを先に行かせたらここに来れたんだよ」

「その答えは……ムーイ、君ならわかるんじゃないかい?」


 と、神がムーイに向けて親し気な声音で尋ねる。

 ムーイ当人は珍しく目を細めて嫌そうな顔をしているように見えるぞ。


「君はミダスの手と言う望んだ物に変える能力だ。だが……この能力が強化されたらどんな能力になるか想像するのは容易いのじゃないか? きみたちの世界の童話にあるだろう?」


 神はまた俺の方に顔を向ける。


「ボクが願いを叶えるまでもない。望めば実に何でも叶うというのに君は願いを直接叶えず。ムーイの願いを……叶え続けた。その辺りは実に好評価しているよ」

「願いを叶える……」

「迷宮種はどうも童話モチーフの能力名がついている……ムーイはミダスの手だったな。ミダスと言う王が黄金を欲するから手が触れた物を全て黄金に変えたという……求める物に物質を変化させる能力って事になるな」


 健人がムーイを見ながら分析を続ける。


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