三百七十八話
「してやったりだ。完全に読みきれるというのは相応に満足できるものだ。まあ、ユキカズ、君にはわからん感情だろう」
「わかりたくもない」
「そういうな。喜べ新たな神獣よ。世界の危機は汝が見せた善性により避けられたようだ。後で感謝する時が来る」
「はいはい」
森の賢者って事らしいけど振り回される方の身になってほしいと思えてしまう。
こいつと仲良くして聖獣を倒して神に会わせた仲間たちの度量が凄く感じてしまうよ。
『そこは……まあ、仲良くしていたよ』
『理解ある者たちが居れば問題ない。今の君たちのように』
そんなもんかねー。
「さて、そろそろワシは眠る。ラウが早く君たちに逢いたいと駄々を捏ねたので連れてきたようなものなのでね」
そう言うとパァっとオウセラは変身を解除してラウになり、ムーイの分身が本体に戻っていく。
「きゅー!」
ムーイがジャンプするラウを受け止めて高い高いをしながらくるくると回る。
「あはは、ラウームーイ達やったぞー」
「きゅー! すごかったきゅー! なんか最初の神獣様が敵を倒したっきゅー、あれ、みんなでやったのー?」
「ああ、俺を生贄に呼び出しやがったんだ!」
「生贄とは心外な、変身の因子素材に使っただけだ」
「やったぞー、なんか倒す直前にケントへの叫びをしてたんだぞーユキカズと同じ感想だったみたいだったー」
「きゅー?」
ってラウへと報告をした。
「それじゃ早くエミールとバルト、ラルオンの所に行くぞー! もうムーイ達はここに用はないんだぞ」
「俺だけ先に行かせたかったって事だったのかよ。危険な真似をするな」
ったく、ムーイの奴……俺の行動を読み切ってこんな暴挙に出て、本当に危険な事ばかりする。
本当はムーフリスなんて背負わなくても良いだろうに。
「ユキカズの真似だぞー」
「ハッ! こりゃあ言い返せねえな目玉の化け物さんよーお前も無茶をしまくるからな」
「健人はうるせー!」
そんな訳で……俺たちはエミール達の方へ揃って移動を開始したのだった。
エミールやラルオン、バルト達の方に駆けつけるとみんなぐったりしたように疲れ切っていて壁に寄りかかる形で休んでいた。
けれどボロボロと言った様相で、世界樹から得られる治療の力で回復中って感じだ。
「OH……YOUたちがこっちに来たって事は結果は勝ったでOKって事で良いのかYO?」
「ギャウウ」
「ああ、この世界のみんなで勝ち取ったようなもんだよ」
「それはベリーナイスだYO」
ラルオン達の近くにも数名の冒険者たちが意識なく倒れている。
死んではいないようだ。
そして、エミールの体の方はと言うと……。
「……」
手を前にかざし、ぐったりとしたまま世界樹への力の使用をしたまま固まっていた。
その体には植物が無数に生え……うん、とても立派な、誇りとしか言いようがない姿で居た。
何もかも能力の使用に意識を回しているのか目は何も見えていないかのようだ。
「エミール……よく頑張ったな」
「ぁ……ああ……ユキ……ズ、の兄……」
おお、かすかだけどまだ生きている。
力の源が失われていたのに、辛うじて生命を繋いでいたというのは快挙としか言いようがない。
「ケ……ホ……オデ……」
「黙って居ろ、上での戦いはお前の本来の力の源がしっかりと意識を持って俺の目を通してみてた。これから繋げるからしっかりと意識してくれよ」
エミールの体は返事をする力も無いのかコクリと頷く。
「それはそうと……俺を騙してこんな無茶をしたからにはしっかりと、お仕置きをするから覚悟するように!」
俺の言葉にパクパクとムーフリスが見せたような青い表情をエミールの体の方はしている。
何をするかって、わからないはずないだろう?
『ユキカズの兄貴! やめて欲しいんだな! オデが壊れちゃうんだな』
尚、力の源の方の意識はしっかりと拒絶をしてるけど聞きません!
ぐったりとしているエミールの口を無理やり開いて、俺は昆虫系の魔物に体を変化させ、丁寧に舌に絡みつきながら喉を通って胃袋内でグネグネと刺激してやる。
ビク! ビクビクン! っとエミールの体がこれ以上ない位、痙攣してるけど知りません。
寿命を消費し尽くすかのような事をしたんだからこれでも足りないくらいだろ。
現にエミールの体……カッサカサで体の中にあるエネルギーを全て吐き出しきったとばかりにガリガッリなんだからさ。
で、そこから……カサカサな胃袋、ちょっと触るだけで破けそうなところに手を通して力の源がある所にエミールの力の源を戻す。
「あ、あぁぁあああああ……ううう、ユキカズ、の兄貴……ゆるして欲しいんだなぁあああ……」
「ダメだ。ブックブクになるまで……俺を味合わせてやる」
ぶっ壊してやる。とは言わないけど、エミールが壊さないギリギリの所で治療をしてやる。
俺自身、相当疲れてるけどそれでもかまわずエミールにエネルギーを流し込んで治療だ。
「ううううう」
おおう。エミールがとても描写しきれない程に体からまあ色々とあふれ出し始めているのでそこはしっかりと抑え込んでやり、しっかりと……治療を終える。
ま、俺も疲れてるけど、エミールには元気になって貰わないとね。
「おーエミールがどんどんピカピカしてくぞー」
「きゅー」
ビク! ビク! っと思いっきり痙攣してる。
目がやばい感じで白目気味だ。
「ダイエットをしていた奴の観察記録を逆再生してデブにしていくみてえだ」
「OH! 枯れ枝があっという間に水風船みたいになっていくYO」
「ギャウー」
さて、こんな所かね。
ってくらい、エミールを治療して生命力を回復させた後、俺は最後のお仕置きとばかりに胃袋の方から喉を通って、これでもかと舌を相手に遊んで口内でモグモゴされてから外に出てやる。
「あああうううう……ユキカズの、兄貴ぃいいい……だ、だめ……兄貴無しじゃ生きて……いけなくなっちゃうんだなぁああ……」
クタっとエミールはその場に倒れ込み、更にビクビクっと痙攣していた。
「ご褒美とお仕置きの両方を兼ねてるNE!」
「寄生する目玉の化け物がカエルを犯した事後」
「うるせえ健人。さっきからトゲがあるな。無茶をしたお仕置きだよ。当然の怒りだ」
エミールは流れ込む力を逃がすとばかりに世界樹へと溢れるエネルギーを飛ばしているようだった。
「うう、頑張ったのに散々なんだな。オデ、今度こそ壊れるかと思ったんだな。敵に追い詰められて殺されるかと思った時より怖かったんだな」
「頑張りすぎだから俺は怒ったんだ。いくらみんなのためだからって無茶をし過ぎだよ」
お前が言うなって顔をみんなにされたけど知らない。
エミールは無茶をしてはいけません。
「わかってるのか? エミール、俺はな……お前に死なれるのが嫌なんだよ。二度とするなよ?」
「……わかったんだな。ユキカズの兄貴」
被害者面をしていたけれどエミールはしっかりと頷いた。
後にエミールは、こんな俺だから力になりたいし尊敬していると思い出のように語る。
「ラルオンとバルト、お前らの方はどうなんだ?」
「結構派手な負傷はしたけど、frogな彼が呼び出した樹が力をくれたYO」
「ギャウ」
おお、どうやら手当はしっかりとしてくれたようでよかった。
とは思うのだけど……この世界樹、エミールが維持をもうしてないのに活動してて大丈夫だろうか?
「この樹……枯れない訳?」
「しっかりと育って存在が固定化されたみたいなんだな。ユキカズの兄貴たちの力を集約するとこんな凄い事がオデでも出来るんだな」
「まあ……そうだよな。地脈に根付いてるけど……本当、大丈夫なのかねー」
ヴァイリオ達ーわかるー?
『詳しくは私たちも判断しかねるが邪悪な気配もなく地脈からのエネルギーも循環している。おそらく問題あるまい』
『もしも致命的な問題があるのならば神様からの指示があるだろう』
『そうだ』
『ああ……』
助けた聖獣はまだ復帰しきれていないみたいだ。
ただ、世界樹から俺に聖獣たちへ向けて力が流れてくるのを感じられる。
この調子なら聖獣たちを復活させるのも時間の問題かな。
「そんな訳で、この世界の敵に捕らえられていた冒険者たちの治療をするために搬送をしていくとしますか。バルト、ラルオン。俺も魔眼で運ぶけどよろしく」
「OH……いくら多少回復したと言っても無茶な事をYOUは言うYO。まあ了解だZE」
「ギャウ」
って感じで俺たちは……決戦を終えてみんなの元へと戻ったのだった。





