三百七十一話
「ムーイからユキカズを出すなんてやめて欲しいぞ! それにしっかりとムーイがイメージした大事な器官があるんだぞ!」
プンスカと怒るムーイが拳を握って怒鳴る。
胃袋と力の源……それと敢えてここで言わない大事な所ね。
「おかえしだぞー! ブッ!」
腹に入れられた石をムーイは口から放って反撃していく。
ムーイの恐ろしい程の力が込められた口から放たれる石はそれだけで大抵の魔物を屠れる。
ドゴォ! っと壁に当たるだけで簡単に穴が開いてしまう訳で。
「ふん! この程度の攻撃、当たる物か!」
ムーイの反撃が叩き落される。
「こっちも喰らえ!」
で、地下でも見た毒リンゴ爆弾が放たれる。
からの……なんだ? 青い影が背後に突然現れたので視界を向けると大量の毒リンゴとカボチャの爆弾があった。
バササと青い鳥が飛び立つと同時に霧のように霧散する。
「おっと! ムーイの力を忘れちゃダメだぞー! それとエミールが作った樹だってムーイ達の味方だぞ」
ムーイが手を広げて毒リンゴとカボチャをお菓子へと変化させる。
周囲を漂う毒や幻覚を……世界樹が浄化していく。
「それとー! とう!」
ブっと吐き出した石が避けられたが直後、地面で跳ねて跳ね返ってくる。
バックスピンでも仕掛けたのか?
時間差でカボチャ爆弾に変化してムーフリスに命中して爆発する。
「何!? まだまだぁああああ!」
と、迷宮種由来の様々な攻撃を繰り出した勢いのまま、ムーフリスは翼を広げ、俺たちに殴りかかってきた。
まあ……ムーイは衝撃吸収のスキル持ちなので殴りは全く効果が無い訳だけど。
斬撃とかじゃないとさ。
「負けないぞぉおおお!」
ムーイが拳を握りしめ殴り返す。
色合いは違えど同じ姿での殴り合い。
ただ、材質が異なるのかムーフリスの方から大きく黒い瘴気の飛沫が発生していく。
何よりムーイは攻撃を巧みに見切って反撃をしている。
『君に寄生して貰う事で未来視が可能だからね。相応に能力が高ければ選択肢は加速的に増えていく、君が思うよりも寄生されることによる恩恵は多い』
『ヴァイリオと君がどんな状態だったのかの詳細を知らなかったから余裕があるように見えたが、よくもまああんな状態であそこまで戦えたのか関心したぞ』
『そうだろう? それが今、君が寄生しているムーイは私に勝るとも劣らない……いや、今や君から得られる私たちを含めたエネルギーで私たちを超えるほどの力を持っていると言っても過言ではない。鬼に金棒とはこの事だろう』
『どうも寄生と悪しき言い方を好むようだが、もはや合体で良いのではないか?』
聖獣たちが解説してるけど今は答える余裕はない。
ピピピ! っとアポ・メーカネース・テオスに起こるパーセント上昇が気になるけれど同時に俺の目はムーフリスの解析も行われている。
何分、見て凌駕する神獣由来の力は相変わらずある訳で、解析が進めば何処か弱点となる何かを見出すことだって可能かもしれない。
何が苦手なのかとか……ね。
今までは戦闘中に全部解析が済むなんて事は能力不足で間に合わなかったけれど、今なら出来なくはないはずだ。
「油断はしない! そこだぁあああ!」
と、ムーフリスは下のボディと上のボディの両方から異世界の戦士由来の剣を四本出して切りつけてくるのを、ムーイがナンバースキル由来の力を拳に乗せ下のボディの剣を弾き、上のボディの攻撃を耳を剣のように鋭くさせてつばぜり合いにする。
そこを俺が魔眼の障壁を出してムーフリスの両目から放たれる熱線を弾き、そのまま障壁を顔面にぶっ飛ばしてぶつけてやった。
「ぐぬぬ……化け物が! 私より深層階層出身の恵まれた奴に……負けるわけにはいかないぃいいいああああ!」
ムーフリスがそう、ムーイへの憎悪を滾らせて叫ぶ。
「果てたはずの癖に邪神に気に入られ、恩恵を授かるとは……どこまでも邪魔をぉおおお!」
で、上のボディは俺への憎悪……。
こいつは、憎悪で形作られた存在とでも言うべきなのだろうか。
前に戦った時の今際の台詞を思うに、会話の成立する迷宮種でどんな人生を歩んであのような凶行に手を染めたのかをはかり知る事は出来ない。
「はああああああ!」
ムーフリスがバッと距離を取ったかと思うと手を空中に掲げる。
すると……大量の魔法の弾が浮かび上がり俺たち目掛けて飛ばす。
と同時に笑みを浮かべる。
ああ、わかってるよ。
『後ろには町があるぞ! 避難が間に合っているのか?』
『密度が予測できんが当たったら町の防御結界で耐えきれるか?』
聖獣たちの懸念くらい、俺も把握しててムーイもわかっている。
「町には行かせないぞー!」
ムーイがナンバースキルを更に発動して飛んでくる魔法弾を全て弾き飛ばす。
が、その度にナンバースキルの侵食が増加していく。
ピピ……と、これだけでムーイの中にある侵食率が40%まで増加している。
これ以上の侵食はムーイの力の源単位で危険じゃないか?
「大丈夫、ユキカズ」
ぐぐぐ……と、ムーイがナンバースキルの使用をセーブすると侵食率が今度は低下していくし、ブチっと侵食している部分を大きく千切って剣の形で固定化させる。更に……俺にくっつけるとその部分が俺に溶けていった。
それだけでごっそりと侵食率が減り、減った分を体の中を駆け巡るエネルギーで補充している。
もちろん、俺に溶けていくムーイの体の分、俺の何かが増加している。
ピコっとムーフリスの解析の一部が終わり、弱点と言うか内部構造が判明する。
ムーフリスの状態
耐性 全耐性
弱点 結合崩壊 結合部分の解析完了 力の源の奪取及び分解 及びアポ・メーカネース・テオス
アポ・メーカネース・テオスの状態
ムーフリスの進化した能力……メフィストによるアセンションを実行中
結合崩壊を狙うって事だけど……狙うべき部分が線のように現れる。
が、結びつきがかなり強固だなぁ。
力の源の奪取はこっちも狙っているのでお互い様か。
他に手立ては無いかな?
解析……対象より意志の強固な迷宮種の力の源を複数ぶつける。
って視界に浮かぶけど俺の手持ちにある意志のある力の源ってムーイとエミールくらいか?
カーラルジュとフレーディンもムーイによる性質変化を受けてない力の源とも言えるけど……これは出来る手立てじゃないなぁ。
まあ、無難に弱点部位である力の源の有りかをムーイへと教える。
ただ場所がグネグネ動くたびに変わって非常に狙い辛い挙句、むしり取るためには防御膜を形成しているようで難しい。
「おのれ……だが、何時まで持つかな!」
と、ムーフリスが隙あらば町の方へと魔法弾を放ってくる。
くそ……。
「だから……ムーイとユキカズだけじゃないんだぞー!」
カッと俺たちが戦っている足場になっている世界樹の葉が緑色に輝き、町へ飛んでいく魔法弾を反らしていく。
おお……エミールの作り出した樹が凄い活躍をしている。
あれって地下に居るエミールたちが手伝ってくれているんだろうか……。
『違うんだな……植物さんがユキカズの兄貴たちに力を貸してくれているんだな』
ああ、そうなの?
「邪魔をしやがってええええええええええ!」
「神に逆らう雑草がぁああああああ!」
ムーフリスとアポ・メーカネース・テオスが憎悪の感情を向けて世界樹に向かって熱線を放つ。
させるかよ!
今度は俺たちが守るようにムーフリス共を殴って軌道を逸らす。
更に翼を展開し、見開いている奴らに久しぶりにアイズウイングでぶちかましてやる。
「ぐぁあああああ!?」
さすがに対処しきれずにムーフリスたちは吹き飛ばされて転がったが即座に受け身を取って立ち上がる。
何ていうか、こっちが言うのもなんだけど頑丈だな。
「あの時のように勝ったつもりか! そうはいかない!」
と、幾重にもブリンクと言うか……うわ、ムーイみたいに分裂して取り囲むように回り込んでくる。
本体じゃない奴が接近戦を挑んでくるぞ。
えっと……本体はアポ・メーカネース・テオスがくっついた奴だから、と目で探すと一番後ろで構えてる。





