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三百六十三話


「これで地下の方の問題はあっさり解決だが、少し時間が掛かりそうだな」

「やったぞー」

「そんで次は上に行くんだが……」


 エミールが世界樹を維持するように手を前に出している。

 力を使うのをやめるとすぐに世界樹は消えてしまうようだ。


「作戦通りなんだな。オデはここでこの植物さんを維持して、ここを完全に止めるんだな。ユキカズの兄貴はムーイの姉貴と一緒に行くんだな」

「寄生解除して大丈夫なのか?」


 現場で思うのは、俺が寄生しているからこそ使える力だから解除した瞬間維持できなくなりそうで怖いんだが。


「発動させれば維持は……大丈夫なんだな。それにユキカズの兄貴が用意してくれた鱗粉があるからしばらくは持つんだな」

「無茶させてしまってるな……」


 相手の作戦を妨害するためにエミールをここに残さねばいけないというのは中々に辛い。


「気にしちゃダメなんだな。オデ、みんなの役に立ててうれしいんだな。ユキカズの兄貴に出会えなかったらこんな凄い事できなかったんだな」

「ムーイも気持ちわかるぞーだからユキカズ、エミールの為にも早く行くぞー」

「わかった」


 そうして俺は寄生解除してエミールから出る。


「frogな彼の警護はMEとバルトに任せるんDAZE!」

「ギャウ」


 パカっとバルトがコックピットを開けて健人を降ろし、ラルオンが俺たちの方に親指を立てる。その顔は笑っていたけど同時に強い決意が感じられた。

 もしも……ラルオンの仲間とあっても躊躇はするな。だったな。

 出来れば遭遇せずに進みたい。


「空気は吸えるようになってるけどよー俺がここで降りるってのはどうなんだ?」

「ま、ウロチョロと陽動を頼むぜ?」


 ここじゃ攻撃力に若干の難はあるけど何も戦いは攻撃だけが全てじゃない。

 何より健人じゃないと出来ない奥の手と言うのも……実はある。


「へいへい。そんじゃ二手に分かれていくか」

「おー! ユキカズ、今度はムーイとだぞー」

「ああ……自分で選んだ選択だけど、寄生が俺の戦いになってるなー」


 後悔が無いかと言えばあるけれど、誰かの力になるために寄生を選んだ。

 最終決戦でもこれってどうなんだろうね。

 まあ……あっちの異世界での戦いとかの方がよかったかと言うと命を削って戦う辛い戦いであったのは間違いないけどね。

 とかちょっと感傷に浸りつつ今度はムーイに寄生する。


「任せたぞムーイ」

「おー! 早く戦いを終わらせるぞー! そしてお菓子を食べてお日様が当たる所でみんなで楽しくお昼寝するんだぞー」

「おう」


 平和な夢だな。

 さっさとこんな戦いを終わらせてのどかで平和な時間を少しは味わいたいもんだ。

 そうしたら今度こそ神って奴の所に殴り込みだ。

 世界を平和にしたんだから礼を寄越せってな。


「よーし出発ー!」


 と、こうして俺たちは来た道を戻り、塔の上を目指して進む事にしたのだった。




「しかしまー……さっきのやべえ空気はどこへやらって位に浄化されてんな」

「そうだな」


 ムーイに寄生したまま俺たちは迅速に移動をして出てくる魔物を屠りながら進む。

 垂直な穴だった所はエミールが呼び出した世界樹が伸びて足場として十分な段差を作り出していた。

 その世界樹は地脈のエネルギーを吸って俺たちを味方するように空気を浄化し続けてくれている。

 魔力の回復効果もあるんじゃないか? それ以外に徐々に傷を治療する効果も鑑定で分かる。


「とんでもない木を生やしてるじゃねえか」

「イグドラシルだとさ」

「ゲームで見聞きした世界樹じゃねえか、そんなもんを生やしやがったのか」

「ああ」

「せかいじゅって言うんだなーエミールの呼び出した植物」

「すげえな。あのカエル。なんだかんだ迷宮種って事か」

「弱い弱いと本人は言ってるけど力が集まればこんな植物を生やせる力を秘めてるんだって事さ。場合によっちゃ世界創造とかも迷宮種は出来たりしてな」


 何処かの神話だと世界樹が世界を支えているなんて設定だったりするだろ。


「はは、そんな半端ない生き物だってか?」

「ありえなくはないと思うかな。俺は」


 それほどまでに凄まじい力をエミールやムーイは見せてくれる。

 そもそも今の俺の体はムーイを苗床にして作られたようなもんだ。

 この前はカーラルジュ……まあ、俺自身が過負荷に耐えられない程度の進化だったわけだけど今は幻神獣とカテゴリーされる存在にまでなってしまっている。


「それこそ神様に届くってか、盛りすぎだな」

「さてね。何にしても足早に上に行って決着を付けなきゃいけない」


 俺が日本から異世界に召喚された出来事の黒幕がこの上で待ち構えている。

 あの神を僭称した奴もどうやらこの黒幕が裏で糸を引いていたようだし、その決着をここで付けなきゃいけない。

 思えば長い因縁に決着をつける時だ。付けられたら苦労はしないけどさ。


「結局今暴れている奴ってのは何なんだ? 滅茶苦茶殺意高い挙句、この世界のすべてに問題を起こす野郎だがよ」

「名前自体はわかってるし、バルトから得られた名前からの情報からすると世界救済センター・邪神討伐プログラム・アポ・メーカネース・テオスって奴らしいのは説明したな。元々はラグナロクってプログラムみたいだが」

「ここの神様を仕留める為に作られたってのはわかるような気がするけど、巻き込まれた俺たちからすると迷惑な話だぜ」

「だな。むしろ神獣の力なんて忌むべきものとして使おうとするなよとは思うけど。一体どれくらい古いポンコツかって話だ」


 平和な日本でごく普通の生活をしていた俺を含めたクラスのみんなをあんな風にした奴だ。

 俺は我が身可愛さに生き残ってしまい、死ぬ気でナンバースキルを使って黒幕だと思った奴を倒したのにその後ろに潜んでるなんて厄介極まりない。

 もしも俺が自我まで異形化してしまっていたら無駄死にとはこの事か……飛野が俺の仇とか言って今回の敵を仕留めてくれたらいいのだけどそんな状況にならず、俺たちがこうして決戦に挑んでいる形だ。

 そもそもこんな真似してるなら生き残った最後の神獣とやらが敵の本拠地に乗り込んで報いでも受けさせてくれてたら良いんだけどなー。

 結局……神って奴の手の平で俺は操られて決戦に挑んでるのかね……なんかやる気が滅入るような気もするけど、この世界で出会った人たちやムーイ、エミールを思うと戦わないという選択は選べない。


「とにかく……」


 建物の外へと壁をぶち破って出る。


「健人、一気に駆け上がるから乗れ!」

「いくぞー」


 バサァっとムーイの背中から俺の羽を出して飛び立つ準備を済ませる。

 ちなみに建物は現在、エミールの呼び出した世界樹が絡まり、更にカオスな形状をしている。

 ある意味、バルトと出会った時の建物に近づいたとも言えるかもしれない。


「おう! とは思うけどよ。俺がそのままついてきてよかったのか? 神獣様よーなんか安全だけど超凄いバフとかかけてくれね? てめえのナンバースキルはいらねえけどよ」

「ワガママ言うんじゃねえよ。しょうがねえなー……」


 何て言いつつゲイザーに寄生しながら変化して健人に補助魔法で能力アップを掛けておく。

 焼け石に水かもしれないけど無いよりマシだろ。


「どうしてもパワーアップしたかったらケントもユキカズに寄生して貰うと良いぞー」

「よくねえ! 死んでもごめんだ」

「俺も健人はなー……良い人じゃない女好きの問題児だし」


 リイやカトレアさん、ルセトさん辺りならどうしてもやらなきゃいけないって状況なら考えても良いけど健人は嫌だな。

 やるんだったらブルが良い。

 きっとブルなら俺が力を供給したら凄い力を発揮できるはずだし。


『ブヒャアアアア!?』

『ブルさんがこれまでにない位の声を上げて鳥肌を立ててます! どうしたんですか?』

『ギャウウウ?』

『兎束の奴が生霊にでもなってブルに憑依でもしたとか……?』

『ありえますけど、そんな比じゃないくらいに鳥肌立ててますよ?』

『一体どんな気配を感じ取ったんだろうな。ブルは』

『ブブーブー……ブブ』

『どうも最近、何か強い気配を感じるようになったようです。ルリーゼ姉さんもその気配を感じられると仰ってましたね』

『悪い予感じゃないと良いんだけど……ほら、敵も最近は苛烈だから』

『ええ……ユキカズさん、早く帰って来てください……』

「ワガママ言ってないで行くぞ」

「おう。やー良い女の背中に乗るってのは戦場でも気持ちが良いもんだぜー」


 ムーイの背中に乗るだけで喜ぶなっての!


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[一言] またブルに流れ弾が被弾してる
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