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三百四十八話


『世界の滅ぼし方を既にあの方に教えられているようだぞ』


 うわぁ……本能的な所に説明書が記載されているようで嫌だなこれ。

 健人たちには黙っておこう。少なくともこの手段は使う訳には行かない。

 であると同時に……うん。俺の体は人類の敵として作られたんだろうというのが分かる。


『どんな力も使い手次第だ』


 わかってる。ヴァイリオ達に言われるまでもない。

 異世界の戦士の力だって使い方次第で誰かを救う事も出来たんだ。

 この程度はわからない訳じゃない。


「ユキカズ?」

「あ、ああ。なんでもない。実験はこんなもんか?」

「ギャウ」


 で、ここでバルトが挙手している。


「バルト? 健人とラルオンとでどっちにするか決めたか?」

「ギャウギャウ」


 違うとばかりにバルトが首を横に振っている。


「ユキカズがバルトを操縦するのはどうかって事じゃないかー? 操縦、きっと上手だぞ」

「おいおい。そんな事されたら俺たちが何も出来ねえだろ」

「そうだYO!」


 確かに、現状だとバルトが健人たちにとって一番強力な武器であるのは変わらない。


「強くはなれると思うぞー?」

「それも手だとは思うけどな」

「後はユキカズがバルトに化けるとかかー? ムーイもバルトの真似、出来るかなー?」

「健人やラルオンが俺やムーイ自身より体の動かし方が上手けりゃそういう手立てが無い訳じゃないと思うけど……」

「雪一はともかく、ムーイより戦える自信はねえな」

「操縦に自信はあるけど優れていると言うほど自惚れてないNE! そもそもYOUの体はYOUが一番知ってるものだと思うYO」


 そうなるよなぁ。


「ムーイに寄生して、エネルギー源として戦っていたのを思い出すな。ただ……ムーイ自身が強いからなぁ」

「むしろ……」


 変身に巻き込む素材としてなら健人は使えるかもしれない。

 って健人を見たらブワッと何やら毛が逆立っているようだ。


「やめろ! 何か気色悪い事を考えてるだろ!」

「まあ、バルトに化けるってのはあまり得策じゃないな」


 ムーイに寄生して力を合わせるのが最適解、エミールの能力を引き出すとか……どちらかと言えば俺が力を貸す流れが自然なんだし。

 俺が変身して健人たちには本末転倒だ。


「ギャウギャウ」


 で、バルトは違うとばかりに手を振っている。

 それから徐に乗り込む様にコアを展開している。


「ああ、身振り手振りじゃなくしっかりと会話と言うか意思疎通したいって事?」

「ギャウ」


 そう尋ねるとバルトは頷いた。


「寄生して竜騎兵のシステムアップデートとか出来ねえの?」

「知識があれば出来るとは思うけど、メカニックって程の専門知識はなぁ……」


 フィリンが俺のポジションだったら出来そうだけどさ。

 俺も概要程度しかわかってない事は沢山ある。


「まあいいや。じゃあちょっとバルトと詳しく話をしてみるとするか……そういやラルオンを助けた際に乗ってからコックピットにお邪魔してなかったし」


 という訳で、俺はバルトのコックピットに乗り込む。




 ようこそ、マスター。前回搭乗時に事情を後で説明するという件に関して、口頭での説明をある程度聞きましたが更なる把握の為に搭乗を要求しました。


 と言う文字が浮かび上がる。


「あー……まあ、事態が事態だったからね。で、何を知りたい訳? ある程度は既に把握しただろ?」


 肯定……個体認識名バルト=ズィーベンフィア、訂正、バイオモンスターシリーズの製造目的である敵高度生命体勢力の対抗手段としての存在意義は除外するとして、敵対勢力の世界状況を把握致しました。


「そうだよな。神獣ってのと戦うためにバルトって作られたんだろうって話だったはずだし」


 肯定、であると同時に訂正、正式には大型魔物との戦闘も目的であります。


 人間が大型魔物と戦う場合に必要な手段としての戦力ってのも目的と言えば目的か。

 ドラゴンとかと戦いやすいようにドラゴンを模した生体兵器に乗り込むって事のようだし。


「どうも最近、この辺りの感覚がマヒしてきてさ。こう……仲間が強いのもさることながら俺も色々とあって大型魔物に寄生したりしてね。脅威に感じづらくなって来てる」


 思えばラビュリントスイーターに進化した辺りで普通の大型魔物は寄生対象にしか感じられなくなってしまった。あまり使いたくはない手段だったんだけどさ。

 それもいつの間にかエミールやムーイに変わって行って、寄生しなくなった。

 いや、この二人が大型魔物よりも強いってのが理由なんだけどさ。

 ……。

 バルトのコックピット内の文字が思考しているのか点滅している。


「で、俺にこれ以上知りたい事ってなんだ? 結構今の俺なら出来る事が多いから……システム的なエラーの修復とか、出来る範囲で手伝いは出来ると思うけど」


 データサルベージ及び自己アップデートは継続しております。大きなエラーは今の所軽微、直に完全修復を完了します。


 おお、さすがは古代のテクノロジーって事かな?

 ボディ側とはいえバルトは優秀だ。


「まあ、次の戦いとかに備えてボディの改造とかしたいなら……寄生能力でどうにか出来るか。倒した魔物とかのパーツを拒否反応がないように移植するとかは出来るし」


 たぶん、その辺りはこの体だからこそ出来る方法だ。

 まあ、鹵獲した際のバルトのボディが中々優秀であるとは思うけど、その分、敵方の改造が施されている。

 具体的には異世界の戦士の力を通しやすいような加工か。

 もう少し弄るとかは出来そう。


 提案に関して、優先度はマスターの決定を優先。強力なボディへの改良は可能との判断。


「他にボディ側とはいえ、コアのシステム再現とかの手伝いとか? それくらいなら……ムーイみたいな感じでこのコックピットの素材でできるか?」

 こっちの世界に来る前のバルトみたいな感じで俺や健人、ラルオンが竜騎兵に乗らない状態で付いてくる小竜形態があると良いかな?


 分離体の構築、及び複製も課題として存在するのは肯定ではありますが急務ではないと判断します。


 うーむ……急がなくても良いって判断か。


 マスターへ最低限の情報保存を更新中。


「えっと、それって俺の何処かに、バルトのデータが保存されてる訳?」


 肯定。認証データを更新中。


 言われて確認すると……あ、なんか俺の体に何か書き込んでる。バルトの奴、こんな事をさりげなくしてたんだな。

 とはいえ、大した情報を書き込んでいる訳じゃないようだけど。

 個人認証的な小さなデータだけみたいな? 免許証的な情報を書き込んでいる。バルトにしか読み解けないハッキングするのが面倒な分解データのようだ。


「そういやムーイを迷宮階層主反応のある個体って判断していたけど、それはどういう意味かここで聞いて良いか?」


 ムーイ達迷宮種はまだ謎が転がっている。

 魔物の上位存在なんだろうというふんわりとした認識だけど、力の源に始まり、この世界の住人に末裔のような者が居る。

 バルトの分析も聞いて置いて損じゃない。


 命令確認。分析情報開示。

 マスターの協力者として説明した個体たちの分析情報、及び敵勢力が使役していた者たちの分析結果。

 迷宮階層主反応のある個体……仮名・迷宮種の分析。


「迷宮階層主反応……ってのは、あれか? 迷宮の階層でボスをしている奴で良いのか?」


 文字的な含みだとそう読み取れるよな。

 ムーフリス迷宮とかダンジョン内の階層でボスをしている魔物だ。ウォーターグリーンオルトロスとかがそれだろう。

 あれは回遊型の大型ボスだってフィリンが説明していたけれど、他に守護型……次の階層への入り口を縄張りにして侵入者を排除するようなのも居る。

 ゲーム風で表現するならどくろマークで表示されるような奴。


 肯定……階層の主の反応を持った魔物を迷宮階層主反応のある個体と定義されています。

 その反応が強力な特異個体、階層を跨いで徘徊するイレギュラー個体をマスターたちが迷宮種と定義していると判断。


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