三百四十七話
「な、なんだな?」
エミールが自身の肉球付きの手を見て困惑の声を上げている。
「ユ、ユキカズの兄貴……な、何をしたんだな?」
「ん? フレーディンの力の源を変身の因子選択に混ぜた」
「あ、兄貴の力の源を使ったんだなぁああ!?」
あ、エミールが昏倒しかけてる。
苦手と言うか触れて欲しくない所だったかー……。
「おう。気に入っている割に心が無い事やってるじゃねえか! さすが兵士様だぜ!」
「OH……何が理由かわからないけどfrogな彼が困る選択だったようだNE!」
「きゅー」
「エミール、すごく驚いてるぞー」
まあ、時々エミールの体に反応させて居たのだけどね。
ここまで露骨には出してなかったっけ。
「と言うのは嘘。カーラルジュって言うエミールと出会う前に倒したムーイの力の源を奪って俺たちがリベンジした奴だ。誰が心ない兵士だって?」
元々虎っぽい魔物のカーラルジュだからフレーディンとも似た特徴があるからね。
誰が心ないか。俺だって配慮くらいするわ!
「驚いて力の源が飛び出るかと思ったんだな! ユキカズの兄貴、冗談も程々にしてほしいんだな!」
「ま、まあ落ち着けエミール。調子はどうだ?」
「よくわかんないんだな!」
うーん……ちょっとエミールを怒らせちゃったかもしれない。
「カエル猫って感じになった。おい。目だけだと普通にカエルに居るけど体毛付きだとさすがに魔物って感じだな」
「何が出来るんだYO?」
「んー……俺のスキルとエミールが出来る事が基本で全体的にパワーアップしてる感じ、後は」
ピョンっと跳ねたりして体を操作すると素のエミールよりも運動神経が良いか。音を立てずに動けるのが特徴で、姿を消せるけど……問題はエミールに寄生した状態の俺はこのステルス能力、使えるんだよなぁ。
「夜目は元々エミールはそこそこ利くし……ぶっちゃけ失敗か」
「変身も強力な切り札じゃないようだNE」
「いや……ムーイと変身使うと聖獣を呼び出せるし、解析出来てない力の源とか使うとそのまま変身できるんだと思う」
こう、ムーイや俺単体で使うと強力な代物にエミールを混ぜるとどうなるかって感じだ。
「もしくはエミールが戻れない進化をしてしまった後に別の可能性にスワップ進化する感じの変身なら出来そうな気がする」
とりあえず変身解除してっと。
元のエミール姿に戻る。
「エミールも疲れただろうから分離するぞー」
「わかったんだな……あ、兄貴、そこからうぶ――」
花から出るのが面倒だったのでエミールの胃袋経由で吐き出される形で出た。
ああ、胃袋の方に置き土産として虫に少し変化して寝転がってから出たぞ。
「あ、兄貴……出る直前にオデのお腹が――」
「実験に協力したエミールが元気になるようにご褒美をしたぞ」
ぐぎゅうううう……とエミールのお腹が元気よく鳴る。おなか壊したんじゃなく張りが出てエミールの体が瑞々しくなっていくぞ。
「ああ……つ、疲れが吹き飛ばされたんだな……あぁ……」
と、エミールが気持ちよさそうに日光浴を始める。
ラルオンと黙って見ていたバルトがそんなエミールを見つめていた。
「エミールの実験はこんな感じだな。ムーイ、何かあるか?」
「エミールじゃないと出来ない事もきっとあるのがわかったぞー」
「ちなみにエミールの因子を使えば……」
さっと俺単独で変身を使い、エミールの因子、ムーイの因子を使って起動させる。
すると尻尾が俺を包み込んで魔力膜を破くことでエミールによく似た姿に変身を終える。
「こんな感じにエミールに似た変身も可能だ。まあ……スキルはかなり劣化するみたいだけど」
エミールの持っているいばらの魔女ではなく植物魔法と薬学知識言う代物に置き換わり、周辺の植物を操る魔法に落ち着いている。
本物は何もない所から植物を生やせるから劣化も良い所だ。
「はー雪一、お前……そんな事も出来るんだな」
「ムーイのはー?」
「ムーイ単体だと何故か変身できない。まあ……ムーイの体を苗床にした影響で今のままそれっぽく化けられるからなぁ」
スキルの再現は全くできないけど、見た目だけならね。
ただ、寄せているだけでムーイそっくりにはムーイが寄せないと難しいかな。
何だろうな。ムーイは元々強力な迷宮種だからかこれだけ進化しても再現が出来ないんだ。
「なるほどなー」
「ま、元々ムーイに似せる場合、ムーイの分身に寄生するだけで良いから良いだろ?」
今でもムーイの分身が俺の尻尾に引っ付いているんだし、この体に進化する前にやっていた事で良いはず。
「うん」
サッとエミールに化けるのをやめて元の姿に戻る。
「そんだけ色々と姿を変えられるようになったのに人間姿には戻れねえわけ?」
「あー……そっちね。俺もムーイの影響でコロコロ姿を変えれるようになったんだけどさ」
と、俺は人間姿に化けられないかを意識するのだけど変身で人間姿になる方法が分からない。
こう、システム的に存在しないというかの様な形で無いのだ。
「ムーイに化けて貰うなら出来そうだけどさ」
「やってみるかー?」
俺に告白した際にフィリンに化けようとしたのが思い出される。
と、同時にぞわっとした嫌な感じがした。
本能的な忌避と言うのだろうか。
「いや……何だろうな。妙な鳥肌みたいな感覚がする。どうも上手く行かないような気がする。神って奴はどうも人嫌いらしくて俺が人姿に戻る、近い姿になるのは禁じている気がする」
「戻してほしけりゃ会いに来いってか?」
「かもしれない。もしくは……健人だけじゃ模倣材料が足りないって事かもしれない。まあ、何度も話題に上げちゃいるが急務じゃないから良い。ただー……さ」
サッと俺は解析を終えてあるオウルエンス、ラウやリイの種にパッと姿を変えてみる。
ああ、尻尾は相変わらず化けれない。
「きゅー」
「この世界の人種には化けてもOKっぽい」
ラウが俺の姿に驚きの声を上げている。
あっちの人種にはなるなって事かね。
まあ、避難している町の人たちの解析を行えばある程度の種族には化けれそうではある。
ここまで簡単に化けられるようになったのは……ま、進化の成果かな。
ただ、ちょっと窮屈なんだけどさ。
……これって上手くすればブルやドーティスさんみたいなオーク姿に化けれるのではないだろうか?
ちょっとやって見たくなるなぁ。
けどこっちも模倣材料が足りないっぽい? ああ、ブルに逢いたいね。
「ムーイのお陰で出来る事が本当増えたもんだ」
ムーイを苗床に進化したら一気に出来る事が増えて駆け足で聖獣を超えた存在になってしまった。
神獣の領域に居るのかな?
「えへへ……」
「たださ、思うのだけど本物の神獣って、この程度の強さなのだろうか?」
「確かに疑問だNE! MEの知識だと伝承で語られる化け物と見ると、まだ発展途上なんじゃないかと思うZE!」
「さてな、まあ異世界の戦士の力から見て雪一、お前はどう判断するんだよ」
ラルオンと健人の反応から考えて……まあ、この程度の強さではきっと無いのだろうなぁというのは間違いないだろう。
ヴァイリオ達、知ってるか?
『直に見た訳では無いから私たちもわからないな』
『うむ。私たちもこの世界では上位の存在だと思うが、何分神獣様方の領域では無い』
『世界を滅ぼせるほどの強さを持ったあの方の直属の子供である神獣様であるからなぁ……だが、私は信じているよ。君がその領域にいずれ至るとね』
いや……そんな化け物に俺が成るのってどうなんだ?
俺は一体どこへ行こうとしているのか本気でわからなくなって来てる。
そもそも世界の滅ぼし方ってどうやる訳?
って考えた瞬間……なんか脳裏に、浮かんで来る。
龍脈にある……何かをすべて引き抜くか破壊する……?
この世界では出来ない方法……のようだけどいざと言う時のやり方が浮かんできてる。
少なくとも脳裏に俺が元々いた日本を模倣した場所の滅ぼし方みたいな映像が浮かんで来る。





