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三百三十五話


「もしかして背中に乗せて飛んだ所とかも実はと怪しんでいたの?」

「僅かに……もしくはそのまま何処かに連れて行って神獣様の何かを満たす贄になってしまうのかと、町の方々が話すには気に入った者の体の中に入り込み力を蓄えるとも言われています」

「う……」


 今までの経緯をまとめると否定できない。

 ムーイに始まりエミール、ヴァイリオと寄生して生命維持をした後に力や何かを貰ってきた。


「なのでケントのような事でなくても私に何かをお求めであるのならば……人々を救った代価として贄になるのはしょうがないと思っておりました」


 何そのよくある神様が生贄を求める図式……俺はそんなんじゃないって言ってるのに。


「神獣様はみんなの為にその身を犠牲にする勢いで事に挑んだ。その代価を相応に払わねばならないのではないか? と、私は思います」


 く……俺の今までの行いからこんな疑いを掛けられてしまったという事なのか。

 確かに寄生する魔物の本能と言う物は無意識化に無いかと言えばなくはない。

 だってムーイに寄生した時とか何かが満たされるし飢えもあるのが今ならわかるからね?

 毎度思うけどムーイを助ける為に選んだ道は常にこの疑惑を周囲にばらまき続けるのだろうか……。

 と言うかルセトさん、俺に寄生されても良いとか受け入れている訳?


「ですので、望まれるのでしたら……」


 少し照れ気味だったようにも見えてしまうけど……。

 あれかな? 健人の楽しい事はさすがに困るけど寄生は別みたいな。

 健人の良い事も今までの信頼から別に良いと思ってそうな反応だったし。

 寄生はさ……健康診断的な事は出来なくはないけどさ……そうポンポンするのは違わない?

 ああもう泥沼だ。


『狙っていたのではなかったのか』

『本能かと思ってた』

『違うのだな』

『寄生することで強化する、戦士に改造するのだと思っていた』

『眷属化させようとしているのではないのだな』


 聖獣共……違うから! ヴァイリオまで言うとはどういうことだ? ノリで言ってるな?

 確かにそういった考えも聖獣クラスならあるのかもしれないけど、違うから!


「本当に働きすぎで倒れられたら寄生とか緊急手段でそういった事もできなくはないけど、虎視眈々と狙っていた訳じゃなく純粋な善意で休むようにお願いしてるだけだから!」


 って俺が困っているとルセトさんが子供をあやす様な笑みを浮かべる。


「わかりました。神獣様はケントとは違って純粋に私を心配して下さっていたのですね」

「う、うん。そもそも生贄なんて大切な子供のいるルセトさんを求めたりする訳ないでしょ!」


 どんな鬼畜だよ。それとも何? 生娘が良いとかそういう所から来てるの? 聖獣共!


『生憎と私たちはそんな者を望んでいないが……』

『侵食による体力回復が出来るとしたら体力のありそうな者が良くないか?』

『雌個体の方が力になるのか?』


 聖獣共もよくわからないのかよ!


「では私も休みますよ」

「うん。じゃあ送るよ」

「はい。ではいつまでもご厄介になるのは心苦しいので、空は飛ばずに歩いて子供たちのいる孤児院に行きましょうか」

「わかった」


 と言う訳で俺はルセトさんを降ろしてその足で孤児院へと向かう。

 その道中でも軽く見回りながらね。

 で――。


「ういいい……オーッス! 軍人様はこんな日でもまーだ見回りかー?」

「イエーイ! まだまだ夜は長いYO!」


 良い女コレクションをしているハーレム狼男がラルオンと一緒に酔いどれの千鳥足で町を闊歩していた。


「ルセトも、まーた見回りしてたのかー? こういう時は楽しまねえと疲れちまうぞぉおお! ヒック、ったく、しょうがねえなぁ」


 と、ルセトさんに気づくなり千鳥足でフラフラしながら一応心配している口調で近寄ってくる。

 ルセトさんはと言うとケントのそんな様子を眉を寄せつつしょうがない奴だなぁって顔で見てやがるぞ。


「いくらガキ共が寝ているからつーてもよー起きた時にお母さんがいねーってのは不安になるだろうが、抱えられるだけの幸せを守るのだって母親の仕事だぜぇ……ヒック」


 お前が言うのかお前が! どこでも女作りやがる狼男の分際で何を抜かしてんだ。


「耳に痛い話をしてきますねケントも、ええ、ここは神獣様にお任せして先に休もうと思ってますよ。心配して下さっていました」

「あ?」


 健人が目の座った感じに俺を睨みつける。

 それから俺を警戒するようにルセトさんを抱き寄せてきた。

 なんだよその態度?


「ルセト! こいつには気を付けねえと隙を見せたら寄生されちまうぞ! ルセトちゃんの中、あったかいニャリとかやらかすかもしれねえ!」


 何言ってんだコラ。心外な事を言うんじゃねえよ。

 酔っ払いに付き合うのって本気で疲れるから勘弁してくれ。


「いYO! NTリー! トツカも中々の趣味だYO! やーこの世界の人たち優しいから気持ちわかるNE! ウエーイ!」


 ラルオンも泥酔してるのか訳が分からない事を抜かしている。


「いい加減、お前ら遊び歩くのも程々にしろ」


 魔眼を展開してさっさとこいつらを寝かせるのが無難な選択か? 健人に関しちゃ洗脳でもしてちゃんと責任のある大人の行動をさせる方が良い気も……。


「うっせー! 俺はなー! 良い女が、良い思いをしてねーと我慢がなんねーの! まだ見ぬ報われない良い女がどこかにいる! それを見つけて幸せにする! これが男ってもんだ! ワハハハハ!」

「ワハハハ! ヒャッホー! だYO!」


 はぁ……マジで酔っ払いだこの狼男とチャラ男風冒険者。

 仲が悪そうだとも思ったけど意気投合してる。

 声をかけた女を無体な事を回しそうな二人だけど本気で大丈夫だろうか?


「ルセトさん。この状態の健人とは一緒に居ない方が良いと思うよ? こう、送り狼になるのは元より、ラルオンも相手にさせそう」

「な、なに言ってんだ。俺のイイ女を、こんなチャラ男にやる訳、ねー!」


 グルル! っといっちょ前に独占欲を見せながら唸っている。

 酔っぱらってもそこは譲らないのか……ならもっとしっかりとしてほしいんだが。


「ワハハ! イイ女は好きだよー! 一夜のドリームにも花があるNE! ただ今のMEは、そういうのは出来ない立場だYO! イエーイ」


 ……なんだろ、泥酔してるけど何か妙な意思を感じる二人だなこの狼男とチャラ男風冒険者。

 本質的な所で道を踏み外してないって事なのか?

 いや……ハーレム狼男は独占欲を出してるだけか。

 ルセトさんが俺の方を見て、軽く謝るように口元に指を当てる。


「はいはい。ケント、あなたもそろそろ家に帰らないと私も神獣様にお願いしちゃうかもしれませんよ。神獣様に選ばれるのは栄誉ある事ですしね。私の中が温かいならどうぞお休みくださいとね」


 ルセトさん? 俺をネタに健人を誘導してない?

 それともこの流れに乗れば良いのかな?


「させねー! チッ! しょうがねえなー家に送るぜ。ラルオン! おめーはそこで飲んだくれてろよ」

「ヒュー! お持ち帰りDANE!」


 チェキラ! っとラルオンは酔っぱらいながら毎度のポーズを健人にしている。

 で、健人は俺から守るかのようにルセトさんの肩に腕を伸ばして孤児院の方へと連れて行こうとしているようだ。

 送り狼しようとしてないか? 不安なんだが……。

 ルセトさんが大丈夫だって俺に目で意志を伝えてるけど……不安だ。

 カトレアさんやリイが居るから大丈夫……って訳じゃないんだよなー、あの人たちも健人の行いに関しちゃ寛容だ。

 祝いの席だから多めに見るとかやってそうだし。


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