三百三十一話
「ユキカズ、バルトを改造するんだな?」
「そこに持っていくのか?」
パラサイト故に確かにバルトは一番改造しても良心が痛まないというかパーツの組み換えで済むんだけどさ。
「必要になったらで……まあ、コアの方のバルトに再会出来たら説明を任せる」
「ギャウ!」
って事でラルオンから事情を聴くのはこのくらいで切り上げることにして、みんな勝利を喜び合う事にしたのだった。
「さて……今回、凄く頑張ったムーイの為にお菓子を沢山作ってあげないとな」
そんな訳で今回の勝利の立役者であるムーイに俺は出来る限りの真心としてお菓子を山のように作り続ける。
あ、作りやすいようにカーバンクルから変身してラビュリントスイーター姿になってるぞ。
外見要素は大分カーバンクルなんだけどな。
聖獣化みたいな変身以外に思った形にもある程度安易に変われるようになっているんだ。
気を抜くとこっちの姿みたいになってしまう。
ま、小動物姿は色々と不便と言えば不便だからなー。
四足で歩き回るのはどうもね。カーバンクル姿でも二足歩行できるけどさ。
魔法や念動力とか色々と駆使して一人で何十人分もの菓子作り作業を行う。
「わー! やったー! ユキカズが沢山お菓子作ってくれたぞー!」
現在、文字通り山のようにお菓子が鎮座している。
お菓子の家だって作れるぞ。
むしゃむしゃとムーイが作ったお菓子の山に手を伸ばして夢中で食べ始める。
色々と本当、よく頑張ってくれたからなぁ……お腹いっぱいでこれ以上食えない、三日食っても尽きないくらい作ってやろうと思って厨房で色々とテキパキ作ってるぞ。
もちろん食糧庫の在庫が尽きる可能性もあるのでその都度ムーイに材料は用意して貰うけどさ。
「みんなも一緒に食べようなー! ほら、ラウも!」
「きゅー!」
「わーい!」
「ムーイ、俺たちも食べて良いのかー?」
「私もー?」
「もちろんだぞー! みんなでユキカズが作ったお菓子をこれでもかと食べつくすんだぞー!」
「「「わーい!」」」
と、まあ子供たちも集まってみんなで楽しくお菓子パーティーが広がっている。
うん。作らされるのは嫌だけど作りたくて作ってみんなが喜んでくれているのならうれしいね。
どうもこの世界に来てからお菓子作りばかりしてるような気はするけどムーイが美味しそうに食べてくれるなら満足だ。
常に助けられてばかりだし、これくらいはしてあげたい。
今回もムーイが居なかったらどうなっていたか、常日頃から感謝しないといけないね。
そんな沢山作ったお菓子の中でムーイはジュエルキャンディをつまんで見つめている。
宝石みたいに大きな飴玉だ。作るのにコツがいる。
「なんかユキカズみたい」
ペロっとムーイがジュエルキャンディを舐める。
俺の額の宝石とでもいう気か?
大福好きとか言ってたのと同じようにジュエルキャンディも好きになるんだろうか?
「ケントが言ってたんだけど、宝石ってユキカズの方の世界の女性は好きな人多いんだって聞いたぞー」
「ムーイは宝石欲しいか?」
「んー……キラキラしてるけど別にそんな欲しくないぞー、でもおしゃれで女の子になるなら良いと思うぞ」
女の子であると意識したムーイとしての認識かー。
実際どうなんだろ?
フィリンとかはダンスパーティーとかの席とかだとかなりおしゃれな感じに似合う範囲でアクセサリー付けてたな。
普段もさりげなくアクセサリーやヘアバンドを変えてたし。
見た目が変わるのは何となくわかるんだよね。アサモルトがフィリンと話をしてると「さすが上位互換」って時々言ってたけどあれはどういう意味だったんだろ?
「キラキラ好きっきゅ」
ラウがジュエルキャンディを目をキラキラさせて食べずに見つめている。
ああ、鳥は光物好きだもんね。鳥人も好きなのかな?
リイとかもその辺り、さりげなく持ってるのを知ってる。
健人がプレゼントした品とか結構あるみたいなんだ。
俺もなんかムーイにアクセサリーとか上げるべきかなー日頃の感謝の意味で。
「何よりなー? 宝石ってのが欲しかったら自分で作れるぞー」
ポイっとムーイがジュエルキャンディを一つ、本物の宝石にしてしまった。
まあ……ムーイからすると宝石なんて簡単に手に入る代物で希少性を感じられないって事なんだろう。
付与とか刻印つけたアクセサリーとか戦闘でも役に立つのがあるけどそういうのじゃない見た目重視だとね。
多少劣化するとは言ってもムーイの前では脅威は得られないって事なんだろう。
「ガリガリ食べるのも前はよかったけど、今は口に含んで甘さを味わっていたい」
ペロペロとムーイがジュエルキャンディをゆっくりと楽し気に舐めていたのだった。
「ムーイにはユキカズがいるしこうしてお菓子沢山作って貰えるだけで幸せー!」
金目のものより食い気が実にムーイらしいね。
そんな感じで話をしながら俺はムーイへいろんなお菓子を作っていった。
設備も揃ってるから、本当……作れないお菓子は無いってくらいだ。
ちなみにデコレーションお菓子に手を出したぞ。
100分の1ヴァイリオなんてのも作って見せてムーイに食べさせたぞ。
『私そっくりのお菓子人形を作ってムーイに食べさせるのはどうなんだ? 頭からバリバリ食われた時は渇いた笑いが出たぞ』
『ははは、町の者たちには食す前の状態を見せて感心していたようだったではないか』
『一人良い身分で暴れていたからだろうな。実に羨ましい』
『ユキカズ! ローティガ達を模したお菓子を作るのだ! それを均等に切り分けて食べるのだぞ!』
そんなクリスマスケーキに乗っているサンタの砂糖人形を溶かす様を観察するような真似を何度もするのはなー。
聖獣たちのリクエストが騒がしい。
「わーい!」
まあ、言うまでもなく戦勝会のお菓子コーナーは子供たちが何処からともなく無数に集まってくる。
町にいる子供たちはすべて集まっているのではなかろうか。
ちなみに非常事態だった訳で近隣は元より避難民、救助者たちも祭りに参加しているのでものすごく規模が大きくなっているのを今更になって気づいた。
文字通り作ったその場でお菓子が消えて行く。
ムーイに最初の権利があるようにしているけれど、ムーイ自身はみんなとシェアして食べ続けているので……まあ、色々と大変だった。
そうして戦勝会が収まりを見せるのに随分と時間が掛かったもんだ。
あー……疲れた。日も完全に落ち、時刻も深夜……子供たちは親に呼ばれてみんな帰ってしまったよ。
ムーイもパクパク食べていたけれどだいぶ眠そうにしている。
「きゅー……」
ラウはムーイの耳を布団にして寝ている。
「起きたらすぐに食べられるようにしておくからそろそろ寝ようか」
「ユキカズも一緒に……寝てくれる? 一緒に寝たい……」
「ああ。俺も今日は一緒に寝るさ。まあ、ムーイより少し早めに起きてお菓子を作りに行くよ」
「やったー……じゃあムーイ寝るーでもその前に少しお散歩したい。ユキカズ、なんか良いところない?」
ムーイのちょっとした注文だな。
「きゅ? 移動っきゅー?」
寝てたラウも起きてきたぞ。
うーん……少し散歩ねー。
「今ならもうムーイを掴んで空を飛ぶとかもある程度は出来るから夜間飛行とかするか?」
重量のあるムーイも今では掴んで飛ぶくらいは出来るようになった。そう思うと色々と俺も強くなったなーと思う。
「それも楽しそうーだけどラウに頼んでオウセラで飛んでもらった事あるから知ってるぞ」
ああ、一応体はムーイなんだよな。
「じゃあ、ちょっとした所に行ってみるか……まあ、とんぼ返りするかもしれないけどさ」
良い場所へと行く手段を俺は持っている。
「それじゃあ行くぞ」
と、俺はムーイとラウを連れて町のターミナルポイントへと向かう。
そしてターミナルポイントに到着した所でムーイの肩に乗った。





