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三百二十二話


「アイツらの人となりを知っていた訳じゃないからさ、気にしなくて良い。困るのはラルオンに逃げられたり、より厄介な状態になることだ」


 今の俺は恐ろしいほどの万能感に支配されているのは否定できない。

 そんな状況で己惚れないためにムーイがより果てしない真似をしたという事で納得するしかない。

 何より操られている迷宮種の人となりは全く知らないから同情のしようもない。

 もしかしたらあの中にムーイやエミールみたいなタイプの奴も居たのかもしれないけれど、巡り合わせが悪かった。


「ただ、力の源をそんなに抱えたら食性とかめちゃくちゃになっちゃうんじゃないのか?」

「それはな……力の源はムーイが一番知ってる、ムーイとしての部分を、ユキカズの力で増えた分の力で変えた」


 倒した迷宮種の力の源を……ムーイは自身の力の源として書き換えって出来たのかよ。


「そんな真似できたのか」

「最初は出来ないなーと思ったけどなんか出来るようになってきた。力の源をムーイの源に変えるのは出来るけど石を源は無理だぞ。それとそれをするとな。アイツらの能力使えないし、ムーイの力の源とも少し性能が落ちたのになる。けど力の源として動かせるから大丈夫」


 ムーイのミダスの手は触れた、かざした近くの物を知っている思った物に変える力だ。ただし、若干薄まるのが特徴でお菓子作りに例えると砂糖は味が薄くなる。

 一番知っている自身の力の源へと変化させると性能が落ちるけれどムーイの力の源へと変えられる訳で、食性とか自我への影響は極端に落ちると。

 確かにそうしたら人格へのダメージは無いに等しくなるわけだが……。

 ムーイ、お前はどれだけ可能性を宿しているんだろう。

 あまりにも強すぎてカーラルジュの勝利がまさに奇跡、俺という弱点があったからこそ勝てたって話じゃないか。


「こりゃあ中々HARDだZE……でも勝つのはこっちだYO!」

「ラルオン……」


 まだ諦めていない……じゃないな、何か後方で健人が追いかけて行った奴がこっちに来るのを待っているという所ではあるのだろう。


「とはいえ、増援は厳しいNE。ランナウェイするのも手だYO……」

「いや……それはさせない!」


 俺は溢れるほどのエネルギーを展開させて結界を作り出す。

 ムーイの額から宝石の輝きが周囲に展開されたように見えただろう。

 何が何でもラルオンは助け出して見せる。だから、逃走不可、少なくとも多少の時間を稼ぐ障壁をここで作り出した。

 ナンバースキルを喰らっても多少は……耐えてくれるはずだ。


「OH! どうも言葉が分かるみたいだねYOU」

「悪いがラルオン。お前を逃がす訳にはいかないんでね」

「おう? レラリア語がよく聞き取れるよ。YOUは何者DA?」


 ギギっと嫌な音がラルオンの声音に混ざって聞こえてくる。


「さてな、俺を倒して白状させてみな。俺こそが本当の神獣、さっきはどうも上手く騙されてくれて感謝するよ。あれは俺の力を利用し、成りすましていたヴァイリオ本人だったのさ」


 俺が何者であるかはラルオンを救出してからでも遅くはない。


「ムーイ、行けるか?」

「もちろんいけるぞ。ユキカズがいれば今までの何十倍だって、どんな敵だってムーイ負けない!」


 その意気はよし! さあ、ローティガを完全に助けることはできなかったけれど、ラルオンは何が何でも救い出さねばいけない。

 体は救えず魂を俺がその身に宿したとかは絶対に避けたい。

 本当だったらローティガとヴァイリオを無事に助けたかったんだから。


『頑張るのだ。私たちが応援している』

『ああ、私たちの分も頑張ってくれ』

『いけ! 新たなる神獣よ!』


 聖獣たちの応援を聞きながら俺はムーイに前進を合図する。

 ドクンドクンと俺の体からムーイへと恐ろしいほどの力が潤滑していく。

 ムーイを苗床に進化した俺の体はムーイとの親和性が上がり、どんなエネルギーだって抱え込める器になったんだろう。

 そして俺は無数の進化の可能性の中から良い人の力になりたいと願った。

 だから俺が出来ることはきっと誰かの力になること。

 寄生することで寄生した相手を強化する。

 ムーイに寄生した状態で今まで通りの変身の一つにムーンライトプラズマゴーストをセットしておく。

 これでラルオンに施された改造、主に自爆機能を停止させることが出来る。

 ゲイザーもセットするか悩んだが今のスキルに大分組み込まれているので問題無い。

 もともと目玉の魔物だった名残かね。

 まあ、なんとなく機械仕掛けの神を討つ者ってスキルにムーンライトプラズマゴーストのスキルがあるような感覚がするのだけどさ。

 詳細確認をしたら内包してた。重複するかが興味あるって所だ。


「ここでやられるわけには行かないNE! 何があっても諦めないZE! じゃあYOUKILL!」


 カッとラルオンの竜騎兵、試作第一世代バイオモンスター・ホワイトマシンミュータント・デビルドラゴンが翼を広げてナンバースキルと聖獣の力を合わせたオーラを放つ。

 名前が長いからデビルドラゴンと省略しよう。

 攻撃からしてエイミングバーストによく似た攻撃だ。

 ブレスと剣の突き。下手に当たると風穴どころか消し飛ぶかもしれない。

 ラルオンが得意とする高速突きをミラージュブリンクという多重分身を発生させるスキルを使って、竜騎兵が何体もいるように見せて俺とムーイに接近しながら高密度のエネルギーブレイド化した竜騎兵サイズの剣で突き刺してきた。

 ムーイもナンバースキルで対処はしていたけれどかなりの頻度で切り刻まれていた攻撃だ。

 対策をしてそこそこ避けれるようになっていたようだけどそれでも出力の関係で厳しかったようだ。

 しかもこの速度による突進……どうにもあっちの世界の最終決戦でアイツがやっていた高速攻撃を思い出してしまう。

 それに匹敵するほどの速度が、目の前にいるラルオンが搭乗したデビルドラゴンから感じられる。


「はぁああああ!」


 俺とムーイはその突進を見切って、本物のデビルドラゴンへとカウンターの殴りつけを行う。

 もちろん、ムーイの物質変化、ミダスの手を高密度で作動させたまま。


「おっと! それにあたるとYABAそうだYO!」


 おい! ラルオンがカウンターを見切って紙一重で避けやがったぞ。

 よく見抜きやがったな! 当たったらその部分が砂糖菓子に代わる想定だったというのに。

 攻撃は空を切り、空気を砂糖に変化させてしまった。


「ヒュー! 危なかったNE!」

「ユキカズ、あいつ凄く強いのは本当だな。ユキカズが色々と教えてくれなかったらムーイ最初の段階でやられてた」

「そうだな。ここまで本気じゃなかったのかって位だ」


 ローティガと戦っている最中にムーイに足止めして貰ったけど、よく足止め出来ていたもんだ。

 バルトのシミュレーションが本当、こんな所で役に立つ。

 帰ったら精一杯お礼を言わないとな。

 今の俺じゃ認識されずに威嚇されそうだけどさ。


「しかもムーイがな。攻撃してるとどんどん動きが良くなっていくんだぞ。戦うのが凄く大変」


 戦闘センスの塊のムーイが舌を巻くほどの動きなのは否定しない。

 だって未来視まで作動させてラルオンに必中の一撃を当てようとしたのに避けられたぞ。

 未来は幾重にも分岐してるって言っても、直近を変えるなんて簡単じゃない。

 ナンバースキルの力によってあっちも未来を見ているって事でもあるんだろう。

 何かバチバチと予知の部分がぶつかる感じがする。


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