三百二十話
「ん……」
「あ、ユキカズ、もう起きたのか?」
「ここは……」
周囲を見渡すとまだ俺はムーイの体の中に居るっぽい?
けれどすぐにムーイが体を開いて出してくれる。
痛みは……もう無い。
不思議と体の中から力が満ちあふれていて、それがしっかりと潤滑している。
「お義父さん、大丈夫っきゅ?」
「ユキカズの兄貴! 良かったんだな」
「神獣の申し子様!」
みんな揃って俺を見ていた。
「あれからどれくらい経った?」
「まだ数分です。その僅かな時間に神獣の申し子様がムーイさんを元に進化を果たしました」
あ、そうだ! 俺は急いでムーイから出てムーイの様子を見る。
力の源とか色々と危険な事をしてしまっていたよな?
大丈夫だったのか?
と、見るとムーイは特に異常は無いとばかりに軽く小首を傾げて微笑む。
「ユキカズ、凄くムーイを心配して、やらないようにって思ってたみたいだけど大丈夫だったぞ」
「本当に大丈夫だったのか?」
実はとかだと立ち直れない。
「ユキカズからムーイも使える力が流れて来ててな、それで増殖してた。ムーイが減らないようにって言うユキカズの意志も感じたし力の源も無事だぞ。凄く余裕だった」
「そ、そうか……」
進化の苗床として利用した分、ムーイが増殖して保管してくれたのか。
本当……無事で良かった。
「えへへーユキカズがムーイで進化してくれたぞ。ムーイのお腹でな、ドキドキしてた」
照れるというか誇らしげにムーイが笑う。
な、なんだろ……この気恥ずかしさ。
「それで神獣の申し子様、聖獣様方はどうなっていらっしゃるのでしょうか?」
「あ、そうだ」
『まったく……君は随分と無茶をする』
『どうやら私達の力を受けても耐えられる程にまで至ったようだが……なんて危険な真似を平気でする奴だ』
『君らしいと言えばそうだが随分と肝が冷えたよ』
と、抱えた聖獣達の声もしっかりと聞こえる。
上手くヴァイリオ達を座に戻すこと無く抱えられているようだ。
「問題無い。リンクして居る所で元気に声を発しているよ」
ヴァイリオ達が今いるのは座と俺の間の空間と言うべきか……今なら分かる。
俺が目として座から少しだけずれた場所から見える様にしているんだ。
俺は自分の手を確認する。
んー……ケモノっぽい前足って感じかな?
首を回して背中を確認……今の俺、どんな姿なんだ?
見る神獣の影響を受けて目玉が特徴の魔物だから、とりあえず魔眼を意識するのだけど……。
常時開いている? 三ツ目なのは変わらない感じだけど……。
「きゅ? お義父さん。オウセラの声が聞こえるっきゅ。今の君は既に最後の神獣の眷属者を越えた。その宝石の目が何よりの証だって言ってるっきゅ。君の世界で語られる空想の生き物、幻獣に酷似しているって」
幻獣? 神獣に聖獣と来て今度は幻獣ってか?
俺からしたら魔物から何まで空想の生き物だったんだけどさ。
今の俺は一体どんな姿をしているのか。ターミナルポイントで確認すべきか。
いや、なんとなく今ならターミナルを確認せずとも見れる気がした。
溢れる魔力で自身を鑑定するような……あ、見る力と体の可能性が反発している。
一部しか見えないな。これ。
ステータスの表示と魔眼で反射壁を展開して自身の姿を確認する。
メインフレーム。
幻神獣カーバンクル(兎束雪一) Lv1
所持スキル 信愛 属性熱線 宝石魔眼 収束魔眼 魔力飛行 LDBBG 分析理解 分析力向上(極) フュージョン 進化補助 EX変身? 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化拡張 自己再生 分裂&合体 寄生&分離 収縮&膨張 因子吸収 毒使い 全属性耐性 ラーニング 輝石回路 魔導の極み 空間跳躍 ターミナルジャンプ 世界の断片 聖獣の加護 聖獣を内包せし者 迷宮種の力▽ 迷宮王の加護 機械仕掛けの神を討つ者
不変部位 尻尾
外見は……カーラルジュの尻尾に似た二尾の尻尾は相変わらず生えているけど卵体系では無くなっている。
いや、それに近い姿には何時でも変化出来るか、気を抜いたらその姿になってしまう気もするけど今は……一言で言うなら兎のようなリスのような生き物で額には大きな宝石が付いている。
なるほど、確かにこれはゲームとかで見たカーバンクルによく似ている。
この宝石部分が魔眼と同じ役割を持って居て、魔眼を使うとエネルギー状の目が形成されるんだ。
単純に光っているだけでも同様の効果はありそう。
いろんなスキルを習得したり変化したりしている。信愛ってなんだよ恥ずかしい。説明しがたいこれは何なんだよ。
他にムーイの要素がかなり反映されている。
メインフレームってのは……どうやらこの姿がデフォルトだぞって事の様だ。
輝石回路は……なんとなく神迷コアが変質したスキルなんだろうというのは感じる。
因子系は迷宮種の力に統合されてしまったようだ。その部分を調べると今まで手にした因子が表示される。
もちろん今までの変身も据え置きで使える様だ。
ただ……今までよりも遙かに出力が出る気がする。ただ、ヴァイリオ達に並べるほどの強さかと言うと怪しいなぁ。
まあ、俺自身が決めた進化だししょうがない。
俺は最強とかくだらないものが欲しい訳じゃ無い。
良い人の力になりたいんだ。その良い人が俺が協力する事で最強になれば俺は満足なのかもね。
にしても……なんか可愛い方向へと進化してしまっていくもんだ。
体格というか大きさもある程度調整可能と。
「この力は……みんなが俺にくれたものだな」
ムーイに始まりヴァイリオ達から貰ったもので今の俺は出来ている。
所詮は仮初めの力だけど……この力で、みんなを助けたい。
何より……内包したヴァイリオ達の解析を進めれば早く座から呼び戻せるかもしれない。
今の俺に出来る事をしよう。
「今はとにかくラルオンを止めに行かなきゃいけないよな。健人の方も気になる」
「ユキカズ! 進化したんだから今度こそ力の源を所持したムーイに寄生する事が出来るようになったかー?」
ムーイが聞いてくる。
まあ、もしもそれが出来たら一番効率が良いかもしれないが……。
「やってみようユキカズ! 絶対にラルオンを助けるんだぞ」
「おう!」
ムーイが寄生して欲しいと胸をこじ開けているので試しとばかりに入り込み寄生を行う。
するとカッと体の中にある神迷コアに該当する部分……輝石回路が動き出して力の源は元より聖獣達の力さえも一緒に混ざって力が迸って行く。
ああ、この感覚……俺単独よりもムーイや他の誰かと力を合わせる事で俺はより力を出せるのが分かる。
一人では俺は強く無い。
けれど誰かの力となる事が出来る。
あまりに強かったムーイの出力に体が追いついた。
「おおおお……すごい! もの凄く力があふれ出してくるぞー! ユキカズから貰った凄い力に匹敵する!」
「やっぱり使ってやがったのか!」
「えへへ……ごめんなさいユキカズ、使わないとラルオンと竜騎兵の動きに追いつけなかった」
危ない真似をして、本気で辞めてほしい。
今ならラルオンを相手に出力で負ける事は無いはずだ。
ならば助ける事は間違い無く……出来る!
「兄貴達が行くならオデも頑張るんだな!」
「ああ、ここが踏ん張り所だ。何より……今の俺は聖獣達の代わりだ。神の道って奴を開けさせない」
今ならヴァイリオ達を通じて分かる。
奴等が開けようとしている道は、俺が居る限り開ける事はもう叶わない。
俺が居る限りこの世界を消させたりなんかさせない。
「私達はどうしましょうか? ラウ、オウセラ様からの意見はありますか?」
「大丈夫、もうお義父さん達に任せれば良いって言ってるっきゅ」
「そうですか、とは言えませんね」
「きゅ、町に入り込んで来る迷宮種達が絶対に居るからお義父さん達とケントさん達が来るまで時間を稼ぐっきゅ」
「そうしましょう。皆さん! 厳戒態勢を維持して下さい! ここが正念場です」
リイを筆頭に町の人々が頷く。
「よし! いくぞ!」
俺達はムーイの分身が時間稼ぎをして居る戦場へとトンボ帰りをしたのだった。





